シンセサイザーとキーボードの違い|初心者向け選び方まで比較

シンセサイザーとキーボードが並ぶ室内で、両者の違いと初心者向けの選び方を比較する記事のアイキャッチ画像。 シンセサイザー
本記事はプロモーションを含みます。画像はイメージを含みます。

シンセサイザー、電子キーボード、電子ピアノは、どれも鍵盤を使って演奏する電子楽器です。見た目がよく似ているため、初めて選ぶ人ほど「何が違うのか分からない」「機能が多いものを選べばいいのでは」と迷いやすいでしょう。

しかし、3種類にはそれぞれ得意分野があります。電子ピアノはピアノ演奏や練習、電子キーボードは手軽な演奏や自動伴奏、シンセサイザーは音作りやライブ、制作などを重視した設計です。

重要なのは、どれが上位でどれが下位かではなく、自分が何をしたいかから選ぶことです。多機能な楽器を選んでも、目的に合わなければ使わない機能が増えるだけです。反対に、一見シンプルな電子ピアノでも、ピアノ練習が目的なら非常に合理的な選択になります。

また、現在はカテゴリー同士の境界もかなり重なっています。88鍵のハンマーアクションを備えるシンセサイザー、多彩な音色を搭載した電子ピアノ、高度な音源や接続機能を持つ電子キーボードなどもあります。そのため、商品カテゴリー名だけでなく、鍵盤、音色、スピーカー、接続端子、重量などの仕様を確認することが大切です。

この記事では、シンセサイザーとキーボードの違いを中心に、電子ピアノを含めた3種類を比較します。さらに、ピアノ練習、趣味、弾き語り、バンド、ライブ、DTMなど、目的に応じた選び方も整理します。

  • シンセサイザー・電子キーボード・電子ピアノの基本的な違い
  • 鍵盤数と鍵盤タッチの考え方
  • 音色数と音作りの違い
  • スピーカーやMIDIなど接続面の違い
  • 61鍵と88鍵の選び分け
  • ピアノ練習・ライブ・DTMなど目的別の選び方

シンセサイザーとキーボードの違い

まず理解しておきたいのが、「キーボード」という言葉の使われ方です。

広い意味では、キーボードは鍵盤を持つ楽器全般を表します。ピアノ、オルガン、電子ピアノ、シンセサイザーなどを演奏する人を「キーボーディスト」と呼ぶことからも分かるように、シンセサイザーも広い意味ではキーボード楽器の一種です。

一方、楽器販売のカテゴリーで「キーボード」と書かれている場合は、家庭で気軽に演奏することを想定した「電子キーボード」や「ポータブルキーボード」を指すことが多くなります。

この記事では混乱を避けるため、家庭向けの電子鍵盤楽器を「電子キーボード」と表記し、「シンセサイザー」「電子キーボード」「電子ピアノ」の3種類に分けて説明します。

3種類の違いを一言で整理すると、電子ピアノはピアノ演奏、電子キーボードは手軽な演奏と伴奏、シンセサイザーは音作りとライブ・制作を重視した楽器です。

ただし、これはあくまで基本的な考え方です。実際の製品では機能が重なっているため、「シンセサイザーだから必ず音作り向け」「電子キーボードだから初心者専用」のように決めつけないほうがよいでしょう。

シンセサイザーの特徴

シンセサイザーは、電子回路やデジタル処理を使って音を作ったり、加工したりすることを重視した電子楽器です。

現在のデジタルシンセサイザーには、ピアノ、エレクトリックピアノ、オルガン、ストリングス、ブラス、ギター、ベース、ドラムなど、生楽器を再現した音色が多数収録されている製品があります。それだけでなく、シンセリード、パッド、ベースシンセ、効果音など、電子楽器らしい音も扱えます。

電子キーボードとの大きな違いは、既存の音色を選ぶだけでなく、自分で音色を変化させることを重視した製品が多い点です。

たとえば、フィルターを使って音を明るくしたり暗くしたり、エンベロープで音の立ち上がりや余韻を変えたり、LFOで音程や音量を周期的に揺らしたりできます。エフェクトを利用すれば、空間的な広がりや歪みなどを加えることも可能です。

シンセサイザーでは、こうした音作りを演奏中に操作できるよう、ノブ、スライダー、ホイール、パッドなどを備えている機種もあります。

ライブでは、複数の音色を重ねる「レイヤー」や、鍵盤の左右で違う音色を鳴らす「スプリット」も便利です。たとえば、右手をピアノ、左手をストリングスにするなど、1台で複数の役割を担当できます。

バンドでは、曲ごとにピアノ、オルガン、ストリングス、ブラス、シンセなどを使い分ける場面があります。こうした用途では、1台で多くの音色を扱えるシンセサイザーが便利です。

一方、シンセサイザーには注意点もあります。

まず、本体スピーカーを搭載していない機種があります。その場合、音源そのものは内蔵していても、本体だけでは空気中へ音を出せません。ヘッドホン、モニタースピーカー、キーボードアンプ、PAなどに接続して使用します。

「シンセサイザーは単体で音が出ない」と説明されることがありますが、正確には音源がないのではなく、スピーカーが搭載されていない機種があるという意味です。

また、シンセサイザーというと61鍵の軽い鍵盤を想像しやすいですが、鍵盤数や鍵盤方式は製品によってさまざまです。37鍵や49鍵のコンパクトな製品もあれば、61鍵、76鍵、88鍵の製品もあります。

88鍵でハンマーアクションを採用したシンセサイザーも存在するため、「シンセサイザーではピアノを弾けない」とは言えません。

ただし、軽いシンセアクション鍵盤と重いハンマーアクション鍵盤では弾き心地が大きく異なります。ピアノ練習を目的にするなら、シンセサイザーかどうかだけでなく、鍵盤の仕様を確認する必要があります。

また、シンセサイザーにはアルペジエーター、シーケンサー、サンプラー、USB MIDI、USBオーディオなどの機能を備える製品もあります。これらはライブや作曲、DTMとの連携に役立ちます。

一方で、機能が多いモデルでは、初心者にとって操作が複雑に感じられることもあります。プリセット音色を選んで演奏するだけなら難しくありませんが、本格的な音作りをする場合は少しずつ機能を理解していく必要があります。

電子キーボードの特徴

電子キーボードは、家庭で手軽に鍵盤演奏を楽しむことを中心に設計された電子楽器です。

61鍵前後の製品が多く、本体にスピーカーを内蔵したモデルが一般的です。電源を入れるだけでそのまま音を出せるため、初めて電子楽器を使う人でも始めやすいでしょう。

電子キーボードには、ピアノだけでなく、オルガン、ストリングス、ギター、管楽器、シンセサイザー系など、多彩な音色を収録した製品があります。

特徴的なのが、自動伴奏機能です。

自動伴奏は、左手などでコードを指定すると、ドラム、ベース、ギターなどの伴奏パターンがコードに合わせて変化する機能です。イントロ、フィルイン、バリエーション、エンディングなどを切り替えられる製品もあります。

1人で演奏していてもバンドを伴奏につけたような感覚で楽しめるため、弾き語りや趣味の演奏とも相性があります。

さらに、内蔵曲、レッスン機能、メトロノーム、録音機能などを備える製品もあります。初心者が鍵盤に親しむための機能が充実しているモデルも少なくありません。

電子キーボードの大きなメリットは、比較的軽量で扱いやすい製品が多いことです。61鍵モデルなら、家庭内で移動させたり、必要なときにだけ出して演奏したりしやすいでしょう。

乾電池で動作する製品もあり、電源コンセントがない場所で使える場合もあります。

ただし、電子キーボードには、ピアノ練習という点で注意したい部分があります。

多くの電子キーボードは、電子ピアノに比べて鍵盤が軽く、61鍵前後の製品が中心です。簡単な曲やコード演奏では大きな問題になりにくいものの、本格的なクラシック曲やピアノ奏法を学ぶ場合には制約が出ることがあります。

「タッチレスポンス対応」と「鍵盤が重い」は同じ意味ではありません。タッチレスポンスは打鍵の強さを検知する機能で、鍵盤自体の重さとは別です。

タッチレスポンス対応なら、強く弾けば大きな音、弱く弾けば小さな音というように、演奏の強弱を表現できます。

ただし、タッチレスポンス対応の電子キーボードでも、鍵盤そのものは軽い場合があります。ピアノらしいタッチが必要なら、ハンマーアクションなど鍵盤機構の種類も確認しましょう。

電子キーボードは「安価な簡易楽器」とだけ考えるのも正確ではありません。現在は、USB MIDI、USBオーディオ、Bluetooth MIDI/Audio、多数の音色、録音機能などを備えた高機能な製品もあります。

そのため、電子キーボードを選ぶときは「初心者向けだから」と考えるのではなく、自動伴奏や内蔵スピーカー、多彩な音色など、自分が使いたい機能があるかで判断するとよいでしょう。

電子ピアノの特徴

電子ピアノは、アコースティックピアノの音や鍵盤タッチ、演奏感を電子技術で再現することを主目的とした鍵盤楽器です。

一般的には、アコースティックピアノと同じ88鍵を採用し、ハンマーアクションなど重みのある鍵盤を備えます。電子ピアノを具体的に比較したい場合は、電子ピアノの選び方と比較ポイントも参考にしてください。

アコースティックピアノでは、鍵盤を押すと内部のハンマーが弦を叩いて音が出ます。電子ピアノでは弦を叩いて発音するわけではありませんが、鍵盤内部のハンマー機構などによって、ピアノらしい重量感を再現しています。電子ピアノの発音機構については、ヤマハの楽器解体全書でも確認できます。

製品によっては、低音側を重く、高音側を軽く感じるよう設計された鍵盤もあります。これはアコースティックピアノの鍵盤感覚を意識したものです。

ピアノ練習では、音程を正しく弾くだけでなく、指の独立、強弱、連打、ペダル操作なども重要になります。そのため、将来的にピアノ教室へ通いたい人や、クラシック曲をしっかり練習したい人には電子ピアノが適しています。

電子ピアノには本体スピーカーを搭載した製品が一般的で、音量を調整できます。ヘッドホンを使えば、周囲へ出す音量を大幅に抑えて練習することもできます。自宅での練習環境を整えるなら、電子ピアノ練習用ヘッドホンの選び方も確認しておくとよいでしょう。

ただし、ヘッドホンを使っても鍵盤を物理的に押す打鍵音や振動まで完全になくなるわけではありません。集合住宅などで使う場合は、設置場所や防振対策も考えておくと安心です。

電子ピアノは基本的に調律が不要なのも特徴です。アコースティックピアノのように定期的な調律を前提とせず、音量調整や録音、メトロノームなど電子楽器ならではの機能も使えます。

電子ピアノはピアノ音しか出ないと思われることがありますが、多くの製品にはエレクトリックピアノ、オルガン、ストリングスなど、複数の音色が搭載されています。

ただし、シンセサイザーほど細かな音作りを重視する設計ではない製品が多く、音色数もシンセサイザーや電子キーボードより少ない場合があります。

電子ピアノの弱点は、88鍵とハンマー機構を備えることでサイズと重量が増えやすいことです。

家具型は常設に向きますが、頻繁に持ち運ぶには不向きです。ポータブル型でも、61鍵の電子キーボードやシンセサイザーより重くなる傾向があります。

3種類の違いを比較

ここまでの特徴を整理すると、3種類にはそれぞれ明確な傾向があります。

項目 シンセサイザー 電子キーボード 電子ピアノ
主な目的 音作り・ライブ・制作 手軽な演奏・多音色・自動伴奏 ピアノ演奏・練習
鍵盤数 37~88鍵など幅広い 61鍵前後が多い 88鍵が中心
鍵盤タッチ 軽いタイプからハンマー型まで幅広い 比較的軽いものが多い 重みのあるハンマー型が中心
ピアノ音 搭載機が多い 搭載機が多い 特に重視される
ピアノ以外の音色 豊富な製品が多い 豊富な製品が多い 搭載するが少数の場合もある
音色編集 得意 比較的簡易 主目的ではない
自動伴奏 機種による 得意な機種が多い 機種による
スピーカー 非搭載機も多い 内蔵が一般的 内蔵が一般的
持ち運び 61鍵などは比較的しやすい 軽量モデルが多い 比較的重い
ピアノ練習 鍵盤仕様による 本格用途では制約が出やすい 最も適する

この表を見ると分かるように、カテゴリー名だけで優劣をつけることはできません。

ピアノを練習する人にとっては電子ピアノの鍵盤が重要ですが、ライブで多くの音色を切り替える人にはシンセサイザーの操作性が重要です。家庭で気軽に自動伴奏を楽しみたい人なら、電子キーボードのほうが使いやすい場合があります。

鍵盤数とタッチの違い

鍵盤楽器を選ぶうえで、鍵盤数と鍵盤タッチは非常に重要です。

アコースティックピアノは通常88鍵です。ピアノ曲を原曲どおり幅広く演奏したい場合、88鍵が最も安心です。88鍵モデルを中心に比較したい場合は、88鍵盤電子ピアノの選び方も参考になります。

61鍵は5オクターブの範囲を持ち、ポップス、コード演奏、バンド、シンセ演奏、初歩的な鍵盤練習などには対応しやすい鍵盤数です。

しかし、高度なクラシック曲や広い音域を使うピアノ曲では、61鍵の範囲外の音が必要になる場合があります。

76鍵は、61鍵より音域が広く、88鍵より本体をコンパクトにしやすい中間的な選択肢です。

シンセサイザーやMIDIキーボードでは37鍵や49鍵もあります。これは省スペースや持ち運びを重視した用途、DTMなどで便利です。

シンセサイザーではオクターブシフトを使い、鍵盤数以上の音域を出せる製品もあります。ただし、オクターブシフトは、左右の手で広い音域を同時に弾くピアノ曲では88鍵そのものの代わりにはなりません。

鍵盤タッチにも違いがあります。

シンセアクション

比較的軽く、素早く押しやすい鍵盤です。シンセリード、オルガン、速いフレーズなどと相性があります。

セミウェイテッド

軽いシンセ鍵盤と重いハンマー系の中間的な感触です。製品によって重さや戻り方に差があります。

ハンマーアクション

アコースティックピアノのハンマー機構による重さを意識した鍵盤です。電子ピアノや88鍵シンセサイザーなどで採用されます。

グレーデッド系

低音側を重く、高音側を軽く感じるように設計した鍵盤です。アコースティックピアノの傾向を再現することを目的としています。

88鍵であることと、ピアノらしい重い鍵盤であることは別です。88鍵でも軽い鍵盤を採用する製品はあります。

そのため、ピアノ練習を目的にする場合は「88鍵」と「ハンマーアクションなどの鍵盤方式」をセットで確認しましょう。

また、ベロシティ対応かどうかも確認したいポイントです。

ベロシティは、鍵盤をどの程度の速度や強さで弾いたかという演奏情報です。通常は強く弾くほど大きな音、弱く弾くほど小さな音になります。

シンセサイザーでは、ベロシティによって音量だけでなく音色の明るさなどを変化させる設定もできます。

一方、アフタータッチは、鍵盤を押したあと、さらに押し込む圧力を演奏情報として利用する機能です。ビブラート、音量、フィルターなどをリアルタイムに変化させる用途があります。

アフタータッチはシンセサイザーの一部に搭載されますが、初心者向け電子キーボードや電子ピアノでは必須ではありません。

音色と音作りの違い

音色の違いは、シンセサイザーと電子キーボードを比較するときに特に重要です。

電子キーボードやシンセサイザーには、数百以上の音色を搭載する機種があります。ピアノ、オルガン、ギター、ストリングス、ブラス、ドラムなど、非常に多くの音を1台で扱える製品もあります。

しかし、音色数が多ければ高性能というわけではありません。

電子キーボードは、用意された音色を選んですぐに演奏できることを重視します。音色を手軽に切り替えたり、簡単なエフェクトを加えたりする使い方が中心です。

シンセサイザーは、そこからさらに踏み込み、音そのものを積極的に作り変えます。

代表的な音作りには、オシレーター、フィルター、エンベロープ、LFO、エフェクトなどがあります。

オシレーターは音の基本となる波形を作る部分です。フィルターは音の周波数成分を調整し、明るさや丸みを変えます。エンベロープは音の立ち上がりや減衰、持続、余韻を変えます。LFOは音程や音量、フィルターなどを周期的に揺らすために使います。

現在のシンセサイザーには、PCMやサンプリング、バーチャルアナログ、FM、ウェーブテーブル、物理モデリングなど、さまざまな音源方式があります。

複数の音源方式を1台に搭載する製品もあります。

ただし、初心者が電子ピアノや電子キーボードを選ぶ場合、音源方式の名称を細かく理解する必要はありません。

重要なのは、自分が実際に使う音が入っているか、鍵盤が弾きやすいか、必要な機能があるかです。

一方、本格的にシンセサイザーで音作りをしたい場合は、音源方式や編集できる範囲が重要になります。

電子ピアノは、音色数よりもピアノ音の自然さや鍵盤との連動が重視されます。

ピアノ以外の音色が入っていても、基本設計はピアノ演奏が中心です。

「音色が多いから良い楽器」とは限りません。ピアノ練習なら鍵盤品質、ライブなら音色切り替えや出力、制作なら編集性や接続性など、目的に必要な性能を優先しましょう。

シンセサイザーでは、ピッチベンドやモジュレーションも重要です。

ピッチベンドは、演奏中に音程を滑らかに変化させる機能です。ギターのチョーキングのような表現や、シンセリードなどでよく使われます。

モジュレーション操作では、ビブラートなどを加えることができます。

電子ピアノでは通常のピアノ演奏に必要ないため、これらのコントローラーを搭載しない製品が多くなります。

スピーカーと接続の違い

電子楽器を購入するときに忘れやすいのが、スピーカーと接続端子です。

電子ピアノと電子キーボードは、本体スピーカーを搭載している製品が一般的です。

電源を入れるだけで本体から音が出るため、自宅では扱いやすいでしょう。

一方、シンセサイザーはスピーカー非搭載の製品も多くあります。

その場合は、ヘッドホンや外部スピーカーなどが必要です。

ライブでは、本体スピーカーがあるかどうかより、PAやミキサーへ接続できるライン出力のほうが重要になる場合があります。

ヘッドホン出力は3カテゴリーとも搭載されている製品が多く、自宅での練習に便利です。

ただし、前述したように、ヘッドホンを使っても鍵盤の物理的な打鍵音はなくなりません。

ペダル端子も確認しましょう。

電子ピアノではダンパーペダルが重要です。本格的なピアノ演奏では、踏み込み量によって効果が変化するハーフペダルに対応しているかも確認したいところです。ペダルの基本的な役割については、ピアノペダルの使い方と3本の役割で詳しく整理しています。

3本ペダルユニットへ対応する機種もあります。

電子キーボードやシンセサイザーでもサステインペダルを接続できる製品は多くあります。

シンセサイザーでは、エクスプレッションペダルやフットスイッチへさまざまな機能を割り当てられる場合もあります。

MIDIやUSBも、現在の電子楽器選びでは重要です。

MIDIは、どの音程を、いつ、どの程度の強さで弾いたかなどの演奏情報を機器同士でやり取りするための規格です。

MIDI自体は録音されたピアノ音やシンセ音ではありません。

USB MIDIに対応していれば、パソコンのDAWやソフトウェア音源へ演奏情報を送れる場合があります。

Bluetooth MIDIに対応する製品もあります。

USBオーディオに対応する機種では、本体の音そのものをUSB経由でパソコンへ送れる場合があります。

USB端子があるだけではUSBオーディオ対応とは限りません。MIDI通信だけに対応する場合もあるため、DTMで本体音源を録音したい人は仕様を確認しましょう。

目的別の選び方

シンセサイザー、電子キーボード、電子ピアノのどれを選ぶか迷ったときは、機能表を見比べる前に「何をしたいか」を決めると選びやすくなります。

ここでは、代表的な用途から考えてみましょう。

ピアノ練習なら電子ピアノ

ピアノ教室へ通う予定がある、クラシックを練習したい、将来的にアコースティックピアノを弾きたい場合は、電子ピアノが基本的な候補です。

優先したいのは、88鍵とハンマーアクションなどのピアノらしい鍵盤です。

ピアノ練習では、音程だけでなく、指の使い方、強弱、タッチ、ペダルなどを身につける必要があります。

61鍵の軽いキーボードでも、音名を覚えたり、コードを弾いたり、簡単な曲を演奏したりすることは可能です。

しかし、本格的なピアノ学習を続けていくと、音域や鍵盤タッチが不足する可能性があります。これから独学で始める場合は、ピアノ独学の練習方法と進め方も参考になります。

将来的にピアノ教室へ通うことを考えているなら、先生が88鍵やハンマー鍵盤を推奨することもあります。

また、ペダルも確認しましょう。ピアノ曲ではダンパーペダルを使用する場面が多く、本格的に練習するならハーフペダル対応も選択材料になります。

ヘッドホン練習ができることも、電子ピアノの大きなメリットです。

家族がいる時間帯や夜間でも、スピーカーから出す音量を抑えやすくなります。

シンセサイザーでもピアノ練習はできます。

ピアノ音を搭載し、88鍵ハンマーアクションを備えたシンセサイザーであれば、ピアノ演奏にも対応しやすくなります。

つまり、ピアノ練習では楽器名より鍵盤仕様を優先することが大切です。

反対に、61鍵の軽いシンセアクションでは、アコースティックピアノと同じ感覚での練習には向きにくくなります。

電子キーボードでもピアノ曲は弾けますが、61鍵では音域が不足する曲があります。タッチレスポンス対応なら強弱表現は練習できますが、鍵盤自体が軽い場合は電子ピアノとは演奏感が異なります。

手軽に楽しむならキーボード

自宅で趣味として鍵盤を楽しみたい、さまざまな音を鳴らしたい、伴奏付きで曲を弾きたいなら、電子キーボードが使いやすいでしょう。

本体スピーカーを搭載した製品が多いため、電源を入れてすぐ演奏できます。

ピアノだけでなく、オルガン、ギター、ストリングス、管楽器、シンセなど、いろいろな音色を試せることも魅力です。

自動伴奏を使えば、1人でもリズムやベースを加えて演奏できます。

たとえば弾き語りでは、自分でピアノ伴奏をすべて演奏する方法もありますが、自動伴奏を活用すればコードを指定するだけで複数の楽器を伴奏として鳴らすこともできます。

内蔵曲やレッスン機能がある製品なら、初めて鍵盤を触る人や子どもが興味を持つきっかけにもなります。

ただし、子ども向けに選ぶ場合は、遊びとして始めたいのか、本格的なピアノ学習を始めたいのかで選択が変わります。

ピアノ学習が目的なら、鍵盤数や鍵盤タッチ、スタンド、椅子の高さなども重要です。

一方、「まず楽しく鍵盤に触れたい」「多彩な音を楽しみたい」という目的なら、電子キーボードは魅力的な選択肢です。

電子キーボードは軽量な製品も多いため、部屋が狭い場合や、演奏するときだけ設置したい場合にも向いています。

ただし、将来的にピアノを本格的に学ぶ可能性があるなら、買い替えの可能性も考えておくとよいでしょう。

バンドや制作ならシンセ

バンド、ライブ、音作り、DTMなどに興味があるなら、シンセサイザーが有力な候補です。

バンドでは1人のキーボード担当者が、曲によってピアノ、オルガン、ストリングス、ブラス、シンセなどを使い分けることがあります。

そのような場合、多くの音色を搭載し、音色切り替え、レイヤー、スプリットを使いやすいシンセサイザーは便利です。

ライブでは、音質だけでなく操作性も重要です。

曲の途中ですぐ音色を変えられるか、よく使う音色を登録できるか、左右で別々の音色を鳴らせるか、ライン出力があるかなどを確認します。

持ち運びも重要な条件です。

61鍵の軽量シンセサイザーは、ライブやスタジオへ持ち込みやすい傾向があります。

88鍵ハンマーアクションはピアノ演奏には有利ですが、重量が増えやすく、ケースを含めると運搬負担が大きくなります。

ピアノパートが中心のバンドなら、88鍵シンセサイザーやステージピアノも候補です。

ステージピアノは、ライブでのピアノやエレクトリックピアノ、オルガンなどの演奏を重視した鍵盤楽器です。

内蔵スピーカーを持たない製品もあり、ライブ操作機能が豊富なため、シンセサイザーとの境界が近いカテゴリーです。

DTMでは、シンセサイザーのMIDIやUSBを使ってDAWへ演奏情報を入力できます。

本体音源を録音したい場合は、オーディオ出力やUSBオーディオ対応も確認しましょう。

また、本体内で制作したい場合は、シーケンサーやサンプラーを備えるワークステーション系シンセサイザーもあります。

ワークステーションは、音源、シーケンサー、エフェクトなど、楽曲制作に必要な機能を1台に統合したタイプです。

ただし、現在はパソコンのDAWを中心に制作する方法も一般的です。その場合、本体シーケンサーの有無より、MIDIやUSB、音色編集、鍵盤の使いやすさを重視する選び方もあります。

初心者が確認したいポイント

初めて鍵盤楽器を買う場合、メーカーの商品ページには多くの仕様が書かれています。

すべてを比較する必要はありませんが、最低限、自分の目的に関係する部分は確認したいところです。

特に確認したいのは次の項目です。

  • 鍵盤数
  • 鍵盤タイプ
  • タッチレスポンス・ベロシティ対応
  • 内蔵音色
  • 音色編集
  • 最大同時発音数
  • レイヤー・スプリット
  • 自動伴奏
  • アルペジエーター
  • 録音・シーケンサー
  • 内蔵スピーカー
  • ヘッドホン端子
  • ライン出力
  • ペダル端子
  • MIDI・USB MIDI
  • USBオーディオ
  • Bluetooth対応
  • 電池駆動
  • 本体サイズ・重量
  • 付属品

最大同時発音数は、同時に鳴らせる音の数です。

これは単純に「同時に何個鍵盤を押せるか」だけではありません。

サステインペダルで前の音を伸ばしたり、ステレオサンプルを使ったり、複数音色をレイヤーしたりすると、発音数を多く消費する場合があります。

ピアノ演奏や複雑なレイヤーを使う場合は、余裕があるほうが音切れしにくくなります。

ただし、最大同時発音数が大きければすべての面で音質が良いという意味ではありません。

周辺機器も忘れずに確認しましょう。

シンセサイザーや電子キーボードでは、スタンドが別売の場合があります。

ピアノ練習では、高さの合った椅子も重要です。

サステインペダルは付属する場合と別売の場合があります。極性などの互換性にも注意が必要です。

ライブへ持ち出すならケースも必要です。

スピーカー非搭載のシンセサイザーを自宅で鳴らすなら、モニタースピーカーやキーボードアンプなどを準備することもあります。

61鍵と88鍵の選び方

61鍵と88鍵のどちらを選ぶかは、多くの初心者が迷うポイントです。

基本的には、ピアノ演奏を重視するなら88鍵、コンパクトさや持ち運び、バンド、シンセ演奏などを重視するなら61鍵が有力です。

88鍵の最大のメリットは、アコースティックピアノと同じ鍵盤数を確保できることです。

クラシックや本格的な両手演奏では広い音域を使うため、61鍵では不足する場合があります。

将来的にさまざまなピアノ曲へ挑戦したいなら、88鍵を選んでおくと鍵盤数の制約を受けにくくなります。

一方、61鍵には、コンパクトで軽量になりやすいという大きなメリットがあります。

バンドやライブでは、すべての曲で88鍵を必要とするとは限りません。

ピアノよりシンセ、オルガン、ストリングスなどを中心に演奏するなら61鍵が使いやすい場合があります。

また、部屋のスペースが限られている場合にも61鍵は選びやすいでしょう。

76鍵はその中間です。

61鍵より音域が広く、88鍵よりコンパクトなため、「61鍵では少し狭いが88鍵は大きすぎる」という人に合う可能性があります。

61鍵か88鍵かを決めるときは、音域だけでなく、鍵盤の重さ、本体サイズ、重量、持ち運び頻度まで考えて選びましょう。

また、「88鍵なら電子ピアノと同じ」というわけではありません。

88鍵でも軽い鍵盤を採用した製品があります。

逆に、シンセサイザーでも88鍵ハンマーアクションを採用した製品があります。

そのため、ピアノ練習が目的なら、鍵盤数と鍵盤方式の両方を確認することが重要です。

鍵盤サイズにも注意しましょう。

61鍵でも一般的なフルサイズ鍵盤と、小型のミニ鍵盤があります。

鍵盤数が同じでも演奏感や本体サイズは異なるため、可能であれば実際に触って確認すると分かりやすいでしょう。

購入前に試奏できる場合は、鍵盤の重さだけでなく、押したあとの戻り方、弱く弾いたときの反応、強く弾いたときの変化なども確認します。

ピアノ音の好みや、スピーカーとヘッドホンで聴いたときの違いも確認すると、自分に合うか判断しやすくなります。

ライブ用途では、音色変更の操作が素早くできるかも重要です。

さらに、本体の重量だけではなく、ケースに入れて実際に持ち運べるかも考えましょう。

MIDIキーボードとの違い

MIDIキーボードは、シンセサイザーや電子キーボードと見た目が似ていますが、設計目的が異なります。

一般的なMIDIキーボードは、パソコン、スマートフォン、タブレット、外部音源などを操作するコントローラーです。

本体に楽器音源を搭載していない製品が多く、MIDIキーボード単体ではピアノやシンセサイザーの音が出ないことがあります。

MIDIで送信するのは、音そのものではありません。

「どの鍵盤を押したか」「どの程度の強さで弾いたか」「いつ離したか」といった演奏情報です。

パソコンのDAWやソフトウェア音源がその情報を受け取り、ピアノやシンセなどの音を鳴らします。

一方、シンセサイザーは通常、自分自身の音源を持っています。

電子キーボードや電子ピアノも音源を内蔵しています。

そのため、電源と必要な出力環境があれば、パソコンがなくても楽器として演奏できます。

ただし、シンセサイザーや電子ピアノもMIDIに対応していれば、DAWへ演奏情報を入力するためのMIDIコントローラーとして使える場合があります。

つまり、「MIDIキーボードとして使える楽器」と「MIDIキーボード専用機」は分けて考える必要があります。

DTM初心者の場合、何をしたいかで選択が変わります。

打ち込み中心で、省スペースと操作ノブやパッドを重視するなら、専用MIDIキーボードが候補になります。

パソコンがなくても楽器として弾きたい、本体の音色も録音したいならシンセサイザーが向いています。

ピアノ系ソフトウェア音源を自然なタッチで演奏したい場合は、88鍵ハンマーアクションの電子ピアノやシンセサイザーも候補になります。

鍵盤演奏経験が少なく、コードや簡単なメロディ入力が中心なら、49鍵や61鍵でも対応しやすいでしょう。

また、ノブ、フェーダー、パッドをDAWの操作に使いたい場合は、MIDIコントローラー機能を確認します。

シンセサイザーとキーボードの違いを理解するときは、「音が出るか」だけを見るのではなく、音源を持つ楽器なのか、外部音源を操作するコントローラーなのかという視点も重要です。

シンセサイザーとキーボードに関するよくある質問(FAQ)

Q1. シンセサイザーでもピアノの練習はできますか?

A. ピアノ音を搭載していれば、ピアノ曲を演奏することはできます。ただし、本格的なピアノ練習では鍵盤数と鍵盤タッチが重要です。61鍵の軽いシンセアクションより、88鍵でハンマーアクションを備えた機種のほうがピアノ演奏には向きやすいです。シンセサイザーかどうかではなく、鍵盤仕様で判断しましょう。

Q2. 電子キーボードでピアノ曲は弾けますか?

A. 簡単な曲、コード演奏、初歩的な練習などには利用できます。タッチレスポンス対応なら強弱表現も練習できます。ただし、61鍵では音域が不足する曲があり、軽い鍵盤ではアコースティックピアノと演奏感が異なります。本格的にピアノを学ぶ予定なら、88鍵・ハンマーアクションの電子ピアノを優先すると選びやすいでしょう。

Q3. 電子ピアノでもピアノ以外の音は出せますか?

A. 多くの電子ピアノには、エレクトリックピアノ、オルガン、ストリングスなど複数の音色があります。多機能モデルではさらに多くの音色を搭載する場合もあります。ただし、基本設計はピアノ演奏を中心としており、シンセサイザーほど細かな音作りを重視していない製品が多いです。

Q4. シンセサイザーは初心者には難しいですか?

A. プリセット音色を選んで弾くだけなら、初心者でも始められます。本格的な音作りでは、オシレーター、フィルター、エンベロープ、LFOなどの考え方を理解するとできることが増えます。目的が単純なピアノ練習なら電子ピアノのほうが分かりやすいですが、バンドや音作りへ進みたいならシンセサイザーを選び、必要な機能から少しずつ覚える方法もあります。

Q5. 機能が多いシンセサイザーを選べば間違いありませんか?

A. 機能が多ければ必ず自分に向いているとは限りません。ピアノ練習なら鍵盤タッチ、自動伴奏を楽しみたいなら電子キーボード、ライブや音作りならシンセサイザーというように、目的に必要な機能を優先することが重要です。使わない機能が多いモデルより、必要な機能が分かりやすく揃っている製品のほうが使いやすい場合もあります。

Q6. シンセサイザーにはピアノ音がありますか?

A. 現在のデジタルシンセサイザーにはピアノ音を搭載する製品が多くあります。ただし、ピアノ音が入っていることと、ピアノ練習に適した鍵盤であることは別です。ピアノ中心で使いたいなら、音質だけでなく鍵盤数と鍵盤タッチも確認しましょう。

Q7. 電子キーボードなら必ず自動伴奏がありますか?

A. 自動伴奏を搭載する製品は多いですが、すべてではありません。音色演奏を中心にした製品もあります。自動伴奏を使いたい場合は、「スタイル」「リズム」「自動伴奏」などの仕様を購入前に確認しましょう。

Q8. 88鍵ならどの楽器でもピアノ練習に向いていますか?

A. 88鍵でも鍵盤が軽い製品があります。本格的なピアノ練習では、鍵盤数だけでなくハンマーアクションなどの鍵盤方式が重要です。「88鍵=電子ピアノと同じ弾き心地」と考えず、鍵盤仕様を確認してください。

まとめ

シンセサイザー、電子キーボード、電子ピアノは、どれも鍵盤を使う電子楽器ですが、設計の中心が異なります。

電子ピアノは、88鍵やハンマーアクションなどを採用し、ピアノらしい演奏感や練習を重視した楽器です。

電子キーボードは、内蔵スピーカー、多彩な音色、自動伴奏などを使い、家庭で手軽に演奏を楽しむことに向いています。

シンセサイザーは、多彩な音色に加えて音作り、レイヤー、スプリット、ライブ操作、DTM連携などを重視する製品が多く、バンドや制作にも向いています。

ただし、現在はカテゴリーの境界が重なっています。シンセサイザーにも88鍵ハンマーアクションの製品があり、電子ピアノにも複数音色やUSB MIDIを備えた製品があります。

そのため、名称だけで決めるのではなく、鍵盤数、鍵盤タッチ、音色、音色編集、自動伴奏、スピーカー、接続端子、重量を確認しましょう。

ピアノ練習を重視するなら88鍵と鍵盤タッチ、家庭で手軽に楽しむならスピーカーや自動伴奏、ライブや制作を重視するなら音色編集や操作性、接続性が重要です。

機能の多さではなく目的との一致が最優先と考えると、シンセサイザー、電子キーボード、電子ピアノの違いで迷いにくくなります。

まずは「ピアノを練習したい」「伴奏付きで気軽に楽しみたい」「バンドや音作りをしたい」のどれを最も重視するか決め、その目的に合った仕様を持つ楽器を選びましょう。