クラリネットのチューナーはどう選ぶ?
クラリネットのチューナーを選ぶときは、「クラリネット専用」と書かれた製品だけを探す必要はありません。基本になるのは、さまざまな高さの音を判別できるクロマチックチューナーです。
特にB♭クラリネットを始めたばかりの人は、機能の多さだけで選ぶよりも、「表示を読み取りやすいか」「音への反応を確認しやすいか」「普段の練習で迷わず操作できるか」を考えると選びやすくなります。
また、チューナーは演奏前に基準の音へ合わせるだけの道具ではありません。ロングトーンでピッチが安定しているかを確認したり、スケールを吹きながら音ごとの傾向を調べたりすることもできます。
そのため、初心者が最初の1台を選ぶ場合は、毎日の基礎練習で無理なく使い続けられることを基準にするとよいでしょう。
初心者は見やすさと反応を優先
初心者がまず確認したいのが、チューナーの表示です。ロングトーンをしながら音程を見る場合、音名やメーターが小さすぎたり、表示の意味が分かりにくかったりすると、演奏より画面を読むことに意識が向きやすくなります。
譜面台に置いて使うなら、演奏姿勢を大きく崩さなくても「高い」「低い」「中央付近」と判断できる表示が便利です。暗い練習場所やステージ周辺でも使用する可能性があるなら、バックライトの有無も確認しておきたいポイントです。
もう一つ重要なのが、音を伸ばしている間の変化を確認しやすいことです。
クラリネットでは、音を出した瞬間だけ正しいピッチになっていても、その後に高くなったり低くなったりすることがあります。チューナーを見るときは、中央に合った瞬間だけを探すのではなく、音の立ち上がりから伸ばした後まで、メーターがどのように動くかを観察します。
この使い方をすると、チューナーが単なる「正解・不正解を判定する機械」ではなく、自分の音程傾向を知るための練習道具になります。
初心者だからといって、極端に高機能な製品が必要とは限りません。基本的なピッチを確認する用途では、一般的な管楽器向けクロマチックチューナーが候補になります。それよりも、練習するたびにすぐ使えて、表示の意味を理解しやすいことが重要です。
メトロノーム付きなら練習に便利
クラリネットの基礎練習では、音程だけでなくテンポやリズムも練習します。そのため、これからチューナーを購入する初心者にとっては、メトロノームを内蔵した一体型も使いやすい選択肢です。
チューナーとメトロノームを同時に使用できる製品なら、たとえばテンポを設定してスケールを吹きながら、各音のピッチも確認できます。
ロングトーンでもメトロノームは活用できます。「8拍伸ばす」「4拍休む」など長さをそろえれば、毎回の練習条件を統一しやすくなります。タンギング練習では一定のテンポを保ちながら発音し、同時にピッチが大きく動いていないか確認する方法もあります。
一方で、すでにメトロノームを持っている人や、スマートフォンなど別の方法でテンポを確認している人は、必ずしも一体型を選ぶ必要はありません。
チューナー単体のほうが操作項目が少ない製品もあるため、「音程確認だけできればよい」という人にはシンプルなモデルも候補になります。
つまり、メトロノームの有無は「多機能なほうが優れている」という考え方ではなく、普段の練習を1台にまとめたいかどうかで判断すると分かりやすくなります。
合奏ではコンタクトマイクも確認
自宅など静かな場所で一人で練習する場合は、チューナー本体の内蔵マイクでも音を拾いやすいでしょう。
ところが、吹奏楽部のパート練習や合奏のように、周囲で複数の楽器が同時に鳴っている場所では事情が変わります。内蔵マイクは周囲の音も拾うため、自分が吹いているのに別の奏者の音へ表示が反応することがあります。
このような環境で役立つのがコンタクトマイクです。
コンタクトマイクは楽器に取り付け、楽器の振動をチューナーへ送ります。内蔵マイクだけで測定する場合より、周囲に音がある状況で自分の楽器を検出しやすくなります。
吹奏楽部で使用する予定なら、チューナー本体だけを見るのではなく、対応するコンタクトマイクがあるかも購入前に確認しておくと安心です。
ただし、コンタクトマイクは端子規格まで確認して選ぶ必要があります。
同じメーカーの製品でも、世代によって入力端子が異なる場合があります。「同じメーカーだから接続できるだろう」と判断せず、チューナーとマイクの型番を確認しましょう。
KORG TM-70Fの場合は3.5mmモノラル・ミニ・フォーン・ジャックのINPUT端子を備え、別売のCM-400が対応しています。詳しい仕様はKORG公式のTM-70F製品情報で確認できます。ヤマハTDM-710にはミニジャック対応のTM-40を組み合わせられます。
コンタクトマイクを使用すると持ち物とケーブルは増えます。そのため、自宅で一人でしか練習しないのであれば、最初から必須とは限りません。一方、吹奏楽部などで頻繁に使うなら、購入時からマイクを含めて検討する価値があります。
初心者向けチューナー4機種を比較
クラリネット初心者が候補にしやすい製品には、チューナーとメトロノームを組み合わせたタイプと、チューニング機能を中心にしたタイプがあります。
ここでは、KORG TM-70F、ヤマハ TDM-710、KORG CA-2、ヤマハ TD-38Lの特徴を用途別に整理します。
| 機種 | タイプ | メトロノーム | 基準音発振 | 合奏時の使い方 | 向いている用途 |
|---|---|---|---|---|---|
| KORG TM-70F | 据え置き型 | あり | あり | CM-400を接続可能 | 日常の基礎練習全般 |
| ヤマハ TDM-710 | 据え置き型 | あり | あり | TM-40を接続可能 | 日常練習・音感練習 |
| KORG CA-2 | 据え置き型 | なし | あり | 対応マイクの端子確認が必要 | シンプルな音合わせ |
| ヤマハ TD-38L | クリップオン型 | なし | なし | 本体で楽器の振動を検出 | 合奏中の素早い確認 |
大まかに分けると、音程とリズムの練習を1台にまとめたい人はTM-70FやTDM-710、機能を絞ってチューニング中心で使いたい人はCA-2、楽器に取り付けた状態で確認したい人はTD-38Lが候補になります。
どの機種が適しているかは、練習場所やメトロノームをすでに持っているか、合奏で使用する頻度などによって変わります。
KORG TM-70F
KORG TM-70Fは、チューナーとメトロノームを1台にまとめたモデルです。両方の機能を同時に使用できるため、クラリネットの日常的な基礎練習をまとめて行いたい人に適した構成です。
チューナー部は12平均律で、測定範囲はC1~C8。基準ピッチはA4=410~480Hzを1Hz単位で設定できます。測定精度は±1セント以内です。
メトロノームは30~252回/分に対応し、0~9拍子のほか、2連符、3連符、3連符中抜き、4連符、4連符中抜きなどを備えています。タップ・テンポにも対応しています。
クラリネットの練習で注目したいのが、フォーカス・モードとトレース・モードです。
通常は±50セントの範囲を表示しますが、フォーカス・モードでは±25セントの表示になり、より細かなピッチの変化を確認できます。
トレース・モードでは、過去2秒間に検出したピッチ範囲が表示されます。ロングトーンで「今この瞬間に合っているか」だけでなく、伸ばしている間にどれくらいピッチが動いたかを見るときに利用できます。
ロングトーンの練習では、まず通常表示で大きな音程のずれを確認し、慣れてきたらトレース・モードを使って安定性を観察するという使い方もできます。
また、基準音を鳴らすサウンド・アウトと、自分の演奏に対して基準となる音を返すサウンド・バックにも対応しています。
本体サイズは107×72×18mm、質量は79g(電池除く)。単4形乾電池2本を使用します。INPUT端子は3.5mmモノラル・ミニ・フォーン・ジャックで、別売のコンタクトマイクCM-400を接続できます。
そのため、「自宅では本体だけを使い、吹奏楽部ではコンタクトマイクも使う」といった使い分けができます。
音程だけでなく、テンポ、ロングトーン、スケール、タンギングまで1台を中心に練習したい初心者には検討しやすいタイプです。
ヤマハ TDM-710
ヤマハ TDM-710も、チューナーとメトロノームを一体化したモデルです。2024年3月発売で、希望小売価格は5,940円(税込)です。
ヤマハ公式では使用できる楽器の例として、B♭クラリネット、Aクラリネット、アルトクラリネット、バスクラリネットなどが明記されています。
2段階バックライト付きの大型液晶を備え、チューナーとメトロノームを同時に表示できます。基準ピッチはA4=410~480Hz、測定範囲はC1~C8です。詳細な現行仕様はヤマハ公式のTDM-710製品情報で確認できます。
メトロノームは30~252BPM。0~9拍子に加えて、2連符、3連符、3連符中抜き、4連符、4連符中抜きに対応し、タップテンポも使用できます。
TDM-710の特徴は、通常のチューニングに加えて、サウンドバック・モード、トラック・モード、フォーカス・モードといった練習機能を備えていることです。
サウンドバック・モードでは、演奏した音を検知して正しいピッチをチューナーから返します。メーターだけを見て音程を合わせるのではなく、音を聞いて合わせる練習へ発展させられます。
トラック・モードは、チューナーに頼りすぎず安定したピッチを目指す練習を支援する機能です。
フォーカス・モードでは、通常±50セントのピッチ表示範囲を±25セントへ変更できます。大まかな高低だけではなく、より細かな傾向を確認したいときに使えます。
本体サイズは106×72×18mm、79g(電池除く)で、単4形乾電池2本を使用します。
合奏でコンタクトマイクを使用したい場合は、ヤマハTM-40を組み合わせられます。また、TDM-710GLMはTDM-710GLとTM-40BKを組み合わせたセットで、希望小売価格は8,360円(税込)です。
これから吹奏楽部などで使用し、最初からコンタクトマイクも必要になることが分かっている場合は、本体だけを選ぶ方法とマイク付きセットを選ぶ方法の両方を比較できます。
なお、2026年9月25日時点では、ヤマハからコンパクト型のTDM-600も発表されています。発売予定は2026年10月で、希望小売価格は4,180円(税込)です。
TDM-600は100×60×14mm、50g(電池除く)で、チューナーとメトロノームの同時使用に対応しています。基準ピッチ範囲はA4=438~450Hz、サウンド機能はC4~C5です。発売時期や仕様はヤマハ公式のTDM-600製品情報で確認できます。
ただし、2026年9月25日時点では発売前です。発売後の実売価格や在庫、購入者による長期的な使用評価はまだ確認できないため、すでに販売されている製品と同じ条件で判断しないようにしましょう。
KORG CA-2
KORG CA-2は、メトロノーム機能を省いたシンプルなクロマチックチューナーです。
「チューナーを買うならメトロノーム付きでなければならない」というわけではありません。すでに別のメトロノームを持っている場合や、まずは音合わせを中心に使いたい場合には、CA-2のようなシンプルなタイプも候補になります。
CA-2は12平均律で、測定範囲はA0~C8。基準ピッチはA4=410~480Hzを1Hz単位で設定でき、測定精度は±1セント以内です。
音名表示が大きく、音程のずれをLEDでも確認できます。また、C4~C5の基準音を鳴らすサウンド・アウト・モードを備えています。
基準音を聞いてから自分で同じ高さを作り、最後にメーターで確認するという練習にも利用できます。
本体は100×60×16mm、67g(電池含む)。単4形乾電池2本を使用します。アルカリ乾電池を使用してメーター・モードで連続使用する場合、電池寿命の目安は約200時間です。
注意したいのが、コンタクトマイクとの組み合わせです。
現行のKORG公式日本ページではCA-2の別売アクセサリーとしてCM-300が記載され、INPUT端子はφ6.3mmモノラル標準ジャックです。仕様はKORG公式のCA-2仕様ページで確認できます。CM-400など端子規格が異なるマイクを、確認せずそのまま組み合わせないようにしましょう。
「音程確認を中心にしたい」「メトロノームは別にある」「多くのモードを使い分ける必要はない」という人なら、機能を絞ったモデルを選ぶ考え方もあります。
ヤマハ TD-38L
ヤマハ TD-38Lは、楽器へ直接取り付けて使用するクリップオンタイプのチューナーです。希望小売価格は5,720円(税込)です。
ヤマハ公式の対象楽器にはB♭クラリネット、E♭クラリネット、バスクラリネットが含まれています。
据え置き型との大きな違いは、PIEZO方式で楽器の振動を直接検出することです。
内蔵マイクで空気中の音を拾う方式ではないため、周囲でほかの楽器が演奏している環境でも、自分の楽器の振動を検出しやすい特徴があります。
また、楽器に装着したまま確認でき、表示画面の向きを調整できます。
その一方で、メトロノーム機能やMICモードはありません。
そのため、「ロングトーンからスケール、リズム練習まで1台でまとめたい」という場合は、TM-70FやTDM-710のような据え置き型チューナーメトロノームのほうが機能は豊富です。
反対に、「合奏中に素早くピッチを確認したい」「ケーブル付きのコンタクトマイクを別に用意したくない」という使い方なら、クリップオン型ならではの特徴を活かせます。
購入前には、普段どこでチューナーを見ることが多いかを考えてみましょう。譜面台に置いてじっくり基礎練習をするのか、合奏中に楽器へ付けたまま確認するのかで、必要なタイプは変わります。
B♭クラリネットの表示音名に注意
B♭クラリネットでチューナーを初めて使ったとき、初心者が特に戸惑いやすいのが表示される音名です。
たとえば、楽譜で「ド(C)」を吹いたつもりなのに、一般的なクロマチックチューナーには「B♭」と表示されることがあります。
このとき、「運指を間違えたのではないか」「チューナーが故障しているのではないか」と考える必要はありません。
B♭クラリネットは移調楽器なので、楽譜に書かれている音と、実際に鳴っている音が異なるためです。
記譜音と実音の違いを理解する
B♭クラリネットでは、記譜された音より実際に鳴る音が長2度低くなります。
一般的なクロマチックチューナーを実音表示のまま使用すると、楽譜に書かれた音名ではなく、実際に鳴っている音名が表示されます。
| 楽譜上の記譜音 | 実際に鳴る音 |
|---|---|
| C | B♭ |
| D | C |
| E | D |
| F | E♭ |
| G | F |
| A | G |
| B | A |
つまり、B♭クラリネットで記譜上のCを吹いてチューナーにB♭と表示されるのは、実音表示であれば正常です。
B♭クラリネットでは記譜音と実音が異なることを最初に理解しておくと、チューナーの表示で混乱しにくくなります。
チューナー側に移調表示機能がある場合は、設定によって楽譜上の音名に合わせて表示できる機種もあります。一方、移調表示を使わない場合は、実音との対応関係を理解して読み取ります。
吹奏楽部やアンサンブルでは、指導者からチューナーの設定方法を指定されることもあります。その場合は、自分だけ異なる設定にするのではなく、団体の指示に合わせましょう。
また、基準ピッチの設定と移調表示は別の問題です。「A=440Hz」「A=442Hz」といった設定は基準となるピッチの設定であり、B♭クラリネットの移調そのものを変更する設定ではありません。
この2つを混同しないことも大切です。
チューナーを使った音程の合わせ方
チューナーを用意したら、次は正しい使い方を覚えましょう。
クラリネットでは、ケースから取り出した直後の冷えた状態だけで最終的なチューニングを決めないことが大切です。管内へ十分に息を吹き込み、演奏するときに近い状態へ楽器を温めてから確認します。
次に基準ピッチを確認します。
チューナーにはA4=440Hzだけでなく、基準ピッチを変更できる製品があります。吹奏楽団、学校、アンサンブルなどでは指導者から基準ピッチが指定される場合があるため、その値へ合わせます。
たとえばA=442Hzで合わせる団体なのにチューナーが別の値になっていれば、演奏そのものに問題がなくても表示がずれて見えます。
特に、知らないうちにCALIBRATIONなどの設定を変更してしまった場合は原因に気づきにくいため、「いつもより全体的に高い、または低い」と感じたときは基準ピッチも確認しましょう。
準備ができたら、普段と同じアンブシュアと息で音を伸ばします。自分では安定させているつもりでも音程が大きく動く場合など、アンブシュアや息の使い方を一人で判断しにくいときは、クラリネットをマンツーマンで学べるEYS音楽教室のようなレッスンで実際の吹き方を確認してもらう方法もあります。
チューナーのメーターを中央にするためだけに口を強く締めたり、反対に大きく緩めたりすると、楽器そのものの基本的なチューニング状態が分かりにくくなります。
音を出した瞬間だけではなく、安定して伸ばしている部分を中心に確認してください。
高い・低いときの調整方法
B♭クラリネットでは、基本的にバレルの抜き差しによって楽器全体のピッチを調整します。
音程が高い場合は、バレルを少し抜きます。管長が長くなることで、基本的なピッチを低くする方向へ調整できます。
反対に音程が低い場合は、バレルを入れる方向へ調整します。管長を短くして、基本的なピッチを高くする方向です。
このとき、一度に大きく抜き差しするのではなく、少し動かして音を出し、もう一度チューナーを見るという手順を繰り返します。
高ければ少し抜く、低ければ少し入れると覚えておくと、基本的な方向を判断しやすくなります。
ヤマハもクラリネットのバレルについて、ピッチが高い場合はバレルを抜いて管長を長くし、低い場合は入れて管長を短くする方法を案内しています。楽器が冷えた状態では演奏中に温まってピッチが変化するため、温度を考慮して調整することも重要です。
ただし、バレルを抜いたり入れたりすれば、すべての音域が完全に中央へそろうわけではありません。
クラリネットは音域や運指によって、それぞれ異なる音程傾向を持ちます。ある音だけ高いからといって、そのたびにバレルを大きく動かすと、ほかの音域まで変わってしまいます。
まず楽器全体の基本的なピッチを調整し、その後で低音、中音、高音など複数の音を吹いて傾向を確認することが大切です。
また、バレルがすでにしっかり入っているのに全体的に低い場合は、楽器の温度、アンブシュア、息、リードやセッティングなども確認する必要があります。
クラリネットのピッチはチューナーやバレルだけで決まるものではありません。演奏時のさまざまな条件が関係します。
なお、クラリネット族すべてを同じ方法で調整するわけではありません。
B♭クラリネット、Aクラリネット、E♭クラリネットでは基本的にバレルの抜き差しで調整しますが、アルトクラリネットでは吹込管、バスクラリネットでは吹込管上部を抜き差しして調整するタイプがあります。
自分が使用している楽器に合った調整方法を確認してください。
ロングトーンや基礎練習で活用する
チューナーを購入したら、演奏前の音合わせだけに使うのはもったいありません。毎日の基礎練習でも活用できます。
ロングトーンではピッチの動きを見る
ロングトーンでは、一定の音を伸ばしながらメーターの動きを観察します。
重要なのは、針や表示が一度中央に来たかどうかだけではありません。
音の立ち上がりでは低いのか、伸ばしている途中で高くなるのか、最後まで同じ範囲を保てるのか、といった変化を確認します。
KORG TM-70Fのトレース・モードのように、一定時間のピッチ範囲を確認できる機能は、このような練習に利用できます。
最初はメーターが大きく動いていても、それを無理に口で中央へ押し込もうとするのではなく、「自分の音はどう動く傾向があるのか」を観察することから始めます。
スケールでは音ごとの傾向を調べる
スケールをゆっくり演奏しながら、各音のピッチを確認する方法もあります。
低い音域から高い音域まで順番に吹いていくと、「この音だけ高くなりやすい」「この音域では低くなりやすい」といった傾向を見つけやすくなります。
ここでも、すべての音を口だけで無理に中央へ合わせることが目的ではありません。
まず傾向を把握し、そのうえで運指や息、アンブシュア、楽器固有の特性などを考えていきます。原因を自分だけでは切り分けにくい場合は、EYS音楽教室のクラリネットレッスンなどで、実際の音を聞いてもらいながら確認する方法もあります。
基準音を聞いてからメーターで確認する
基準音を発振できるチューナーでは、目だけでなく耳を使った練習もできます。
まずチューナーから基準音を鳴らして聞きます。その音を頭の中に残した状態で、自分のクラリネットで同じ高さを作ります。
その後でメーターを見て、実際のピッチを確認します。
最初から表示を見ながら合わせる方法とは違い、「自分の耳ではどう聞こえたか」と「実際の表示」が一致しているかを確かめられます。
チューナーは視覚的に分かりやすい道具ですが、音楽では最終的に周囲の音を聞くことが必要です。基準音を使う練習は、表示だけに依存しないためにも役立ちます。
メトロノームと組み合わせる
TM-70FやTDM-710のようにチューナーとメトロノームを同時使用できるモデルなら、ピッチとリズムを組み合わせた練習ができます。
たとえば、ゆっくりした一定テンポでスケールを吹き、それぞれの音を決めた拍数だけ伸ばします。テンポを保ちながら、各音のピッチも確認します。
タンギング練習では、一定テンポで発音しながら、音の立ち上がりごとにピッチが大きく変化していないかを見ることもできます。
ロングトーンなら、メトロノームを使って毎回同じ拍数だけ伸ばすことで、練習条件をそろえやすくなります。
こうして使うと、チューナーメトロノームは単なる「演奏前の準備用品」ではなく、毎日の基礎練習を支える道具になります。
チューナーを見続けないことも大切
便利なチューナーですが、メーターを常に見続ける練習だけにならないよう注意が必要です。
針を中央にすることだけが目的になると、表示に合わせるためにアンブシュアを極端に変える癖がつくことがあります。
また、合奏では自分一人のチューナー表示だけではなく、周囲との響きを聞く必要があります。和音の中では、状況によって求められるピッチの考え方も変わります。
そのため、チューナーは自分の音程傾向を知るために使うという考え方が大切です。
最初にチューナーで確認し、その後は画面から目を離して同じ状態を再現してみるなど、耳を使う時間も作りましょう。
クリップ式と据え置き型の違い
クラリネット用にチューナーを探していると、譜面台などへ置く据え置き型と、楽器へ直接取り付けるクリップオン型が見つかります。
どちらにも特徴があるため、単純に「クリップ式のほうが新しい」「据え置き型のほうが本格的」と判断するのではなく、使う場面で選びましょう。
据え置き型が向いている使い方
据え置き型は、比較的大きな画面を備えた製品が多く、譜面台などに置いて使用できます。
TM-70FやTDM-710のように、メトロノーム、基準音発振、練習支援機能などを備えた製品もあります。
ロングトーン、スケール、タンギングといった基礎練習を一つの機器を中心に行いたい場合に使いやすいタイプです。
自宅など静かな環境では内蔵マイクを使い、吹奏楽部など周囲に音が多い環境ではコンタクトマイクを接続するという使い分けもできます。
デメリットは、譜面台などの置き場所が必要になることです。また、内蔵マイクだけで合奏中に使用すると、周囲の音を拾う場合があります。
コンタクトマイクを追加すれば自分の楽器を検出しやすくなりますが、本体のほかにマイクとケーブルを持ち歩くことになります。
クリップオン型が向いている使い方
クリップオン型は、楽器へ直接取り付けて使用します。
TD-38Lのように楽器の振動を検出するタイプは、周囲にほかの楽器音がある環境でも自分の楽器を検出しやすい点が特徴です。
譜面台の上にチューナーを置くスペースを確保する必要がなく、楽器に取り付けた状態ですぐ確認できます。
一方、据え置き型と比べると画面が小さく、メトロノームなどの練習機能を備えていないモデルもあります。
また、クラリネットのどこに取り付けるかによって表示の見やすさが変わります。楽器に何かを取り付けた状態で演奏したくない人には、据え置き型のほうが使いやすい場合もあります。
自宅練習中心か、合奏中の確認中心かを考えると、2つのタイプを比較しやすくなります。
スマートフォンのチューナーアプリという選択肢
専用チューナー以外に、スマートフォンのチューナーアプリを使う方法もあります。
スマートフォンを持っていれば追加の機器を用意せず始められるため、自宅で簡易的に音程を確認したい場合には便利です。
一方、専用チューナーには、練習中にすぐ起動できること、通知や着信などによる中断がないこと、物理ボタンで操作できる製品が多いことなどの特徴があります。
さらに、専用機にはコンタクトマイクを接続できるモデルや、チューナーとメトロノームを同時使用できるモデルがあります。
吹奏楽部やアンサンブルなどで継続的に使用するのであれば、単に「アプリなら無料または低コストで始められる」という点だけではなく、練習環境での操作性まで比較するとよいでしょう。
購入前に確認しておきたいこと
最後に、チューナーを購入する前には、クロマチック対応か、クラリネットの音域をカバーしているか、表示を見やすいかを確認しましょう。
そのうえで、メトロノームが必要か、チューナーとメトロノームを同時に使いたいか、バックライトが必要か、基準音を鳴らしたいかを考えます。
吹奏楽部で使用するなら、コンタクトマイクを接続できるか、対応するマイクの端子規格は何か、本体だけの商品なのかマイク付きセットなのかも確認しておくと購入後の行き違いを防ぎやすくなります。
さらに、持ち運びやすいサイズか、使用する電池は何かといった日常的な使い勝手も確認してください。
価格については、メーカー希望小売価格と実際の販売価格が同じとは限りません。特に通販サイトの実売価格、在庫、送料、ポイントなどは変動するため、購入時点で確認する必要があります。
旧型を購入するときも注意が必要です。生産完了品や旧在庫が販売されている場合があり、コンタクトマイクの入力端子が現行モデルと異なることがあります。
「安く販売されているから」という理由だけで型番を確認せず購入するのではなく、現行品か旧製品か、必要なアクセサリーを接続できるかまで確認すると安心です。
まとめ
クラリネット初心者がチューナーを選ぶときは、「クラリネット専用」という表記だけを探す必要はありません。管楽器に対応できるクロマチックチューナーを基本に、表示の見やすさ、反応の確認しやすさ、メトロノームの必要性、コンタクトマイクへの対応などを見て選びましょう。
音程とリズムの練習を1台にまとめたい場合はKORG TM-70Fやヤマハ TDM-710、機能を絞ってチューニングを中心に使いたい場合はKORG CA-2、合奏中に楽器へ取り付けた状態で確認したい場合はヤマハ TD-38Lというように、使用場面から候補を整理できます。
吹奏楽部など周囲で多くの楽器が鳴る場所で据え置き型を使う場合は、対応するコンタクトマイクも確認しておきましょう。本体とマイクの端子規格が合っていることを型番単位で確認することが大切です。
また、B♭クラリネットは移調楽器です。記譜上のCを吹いたときに、実音表示のチューナーへB♭と表示されても異常ではありません。記譜音と実音の関係を理解しておくと、初心者でもチューナーを扱いやすくなります。
実際に音程を合わせるときは、楽器を温め、団体で指定された基準ピッチを確認してから、普段のアンブシュアと息で音を伸ばします。B♭クラリネットで全体的に高ければバレルを少し抜き、低ければ入れる方向へ調整します。
そして、チューナーは針やメーターを中央にするためだけに使うのではなく、ロングトーンやスケールを通して自分のピッチの傾向を知るためにも活用できます。
表示だけに依存せず、基準音や周囲の演奏にも耳を向けながら使うことが、クラリネットの音程を練習していくうえで大切です。

