クラリネットのチューニングは温めてから
クラリネットのチューニングで最初に覚えておきたいのは、組み立てた直後の冷えた状態で最終的な音程を決めないことです。クラリネットは楽器や管内の温度によってピッチが変化し、演奏を続けて温まるにつれて音程が高くなることがあります。
そのため、チューナーを見て「低いからすぐにバレルを入れよう」と判断する前に、まず楽器が通常の演奏に近い状態まで温まっているかを確認します。冷えた状態に合わせてしまうと、演奏が進んだところで今度は全体的に高くなり、再び調整が必要になることがあります。
チューニングは楽器を十分に温めてから行うことが、安定したピッチを作るための出発点です。
特に冬場や寒い練習室では、ケースから出したばかりのクラリネットと演奏中のクラリネットでは状態が大きく異なります。木製クラリネットの場合は音程だけでなく、急激な温度変化による管体への負担にも注意が必要です。寒い場所から暖かい室内へ移動した直後などは、楽器を環境になじませながら準備しましょう。
また、チューニングのときだけ普段と違う吹き方をしないことも重要です。チューナーの針を中央へ動かそうとして、いつもより強く噛んだり、息の量を極端に変えたりすると、その瞬間だけ音程を合わせられても、実際の演奏では同じ状態を維持できません。
チューニングとは、チューナーの中央へ無理に音を押し込む作業ではありません。普段に近い息、アンブシュア、音量で吹いたときに楽器がどの程度のピッチになるのかを確認し、その状態を基準に楽器側を調整する作業だと考えるとわかりやすくなります。
基本のチューニング手順
B♭クラリネットの基本的なチューニングは、次の流れで進めます。
- クラリネットを組み立て、通常の演奏に近い状態まで温めます。
- 合奏で指定されている基準ピッチを確認します。
- チューナーを使う場合は、基準ピッチの設定を確認します。
- 普段演奏するときと同じような息、アンブシュア、音量で基準音をロングトーンします。
- 音を出した瞬間ではなく、音程が安定した部分でチューナーを確認します。
- 全体的にピッチが高ければバレルを少し抜きます。
- 全体的にピッチが低ければバレルを入れます。
- もう一度、同じ条件で吹いて確認します。
- 一音だけで判断せず、低音・中音・高音など複数の音域を確認します。
- 合奏ではチューナーだけを見るのではなく、周囲の音も聴きながら微調整します。
ポイントは、一度の測定だけで決めないことです。音を出した直後はピッチが安定していない場合がありますし、吹いている途中でアンブシュアや息が変化することもあります。ロングトーンを行い、安定したところを見ながら判断します。
また、チューニングに使用した一音が中央に来たからといって、クラリネットのすべての音が同じように合っているとは限りません。クラリネットには音域や運指によるイントネーションの違いがあるため、基準を合わせた後には複数の音を確認する必要があります。
合奏では、指揮者や指導者から基準音や基準ピッチが指定されることがあります。その場合は個人の普段の設定より、その場の指定を優先します。チューナーのキャリブレーションが合奏側と異なっていないかも確認してください。
チューニングをした後も、その位置が演奏終了まで必ず正しいとは限りません。演奏時間、室温、楽器の温度などが変わればピッチも動くため、必要に応じて途中で確認し直します。
高いときはバレルを抜く
クラリネット全体のピッチが高い場合は、基本的にバレルと上管の接続部分を少し抜きます。
高いときはバレルを抜き、低いときは入れると覚えておくと、調整方向を間違えにくくなります。
バレルを抜くと、クラリネットの実効的な管長が長くなります。管が長くなることで、楽器全体のピッチを低くする方向へ調整できます。
ここで大切なのは、一度に大きく抜かないことです。少し抜いたら同じ音をもう一度吹き、チューナーと耳で変化を確認します。ヤマハのクラリネットのしくみについての公式解説では、樽(バレル)を約2mm抜いた場合の音程変化が紹介されており、音が高いときは樽を抜いて管を長くし、低いときは樽を入れるという基本的な考え方を確認できます。
「高いから、とにかく大きく抜けばよい」と考えるのは避けましょう。必要以上に抜けば、ほかの音域まで低くなります。また、接続部分を大きく開けることを前提にするより、まず温度、奏法、セットアップなどに原因がないか確認するほうが適切です。
たとえば、練習開始時にはチューナーの中央だったのに、しばらく演奏すると全体的に高くなってきた場合は、楽器が温まったことが一因として考えられます。この場合は、現在の状態でもう一度測定し、必要な分だけバレルを調整します。
一方で、「Aだけ高い」「中音域だけ高い」といった場合は話が別です。バレルを抜くと楽器全体が低くなるため、一音だけを直すためにバレルを大きく動かすと、それまで合っていた音まで低くなる可能性があります。
まず「クラリネット全体が高いのか」「特定の音だけ高いのか」を区別することが重要です。
低いときはバレルを入れる
クラリネット全体のピッチが低い場合は、抜いているバレルを上管側へ入れます。管の実効的な長さを短くすることで、ピッチを高くする方向へ調整できます。
ただし、低いときに最初からバレルだけを疑わないようにしましょう。組み立てた直後で楽器が冷えている場合は、演奏を続けて温まるだけでもピッチが変化します。
したがって、「低い」という表示が出た場合の確認順序は、楽器が温まっているか、普段どおりの奏法になっているか、チューナーの基準設定が正しいかを確認し、そのうえで必要ならバレルを入れる、という流れが基本です。
バレルがすでに上管側まで入っているのに、十分に温めてもクラリネット全体のピッチが低い場合は、アンブシュアだけで無理に上げ続けるのではなく、別の原因を考えます。
確認したいのは、使用しているマウスピースやリード、バレルの種類、チューナーの基準ピッチ、普段の奏法、楽器の調整状態などです。バレルを交換している場合は、そのバレルが使用楽器に適した設計かどうかも確認対象になります。
通常の演奏状態でも恒常的に低く、標準的なバレル調整範囲では対応しにくい場合には、適合する短めのバレルが選択肢になることもあります。ただし、バレルの長さだけで問題を判断するのではなく、ほかの原因を確認したうえで検討することが大切です。
バレル(樽・タル)の役割と調整
クラリネットの「バレル」は、マウスピースと上管の間にある部品です。日本語では「樽」と呼ばれることがあり、「タル」とカタカナで表記される場合もあります。英語ではbarrelです。
「クラリネット バレル」「クラリネット 樽」「クラリネット タル」と別々の言葉で調べていても、基本的には同じ部位を指しています。
バレルは一見すると短い筒状の部品ですが、単にマウスピースと上管を接続しているだけではありません。楽器の管長に関係するためピッチ調整に利用されるほか、内部形状などによって音色や吹奏感にも関係します。
B♭クラリネットでは、このバレルと上管の接続部分を使って楽器全体の基本的なチューニングを行います。
バレルを抜き差しする位置
初めてクラリネットのチューニングをすると、「どこの接続部分を抜けばよいのだろう」と迷うことがあります。
基本的に調整するのは、マウスピースとバレルの接続部分ではなく、バレルと上管の接続部分です。International Clarinet Associationのチューニングに関する教育資料でも、マウスピースとバレルは安定させるため奥まで接続し、まずバレルと上管の接続部で楽器全体を調整する方法が説明されています。
バレルと上管の間を少し抜くと管が長くなり、ピッチは低くなる方向へ動きます。反対に、抜いていた部分を入れると管が短くなり、ピッチは高くなる方向へ動きます。
| 状態 | 基本的な調整 | ピッチの変化 |
|---|---|---|
| 全体的に高い | バレルを少し抜く | 低くなる方向 |
| 全体的に低い | バレルを入れる | 高くなる方向 |
覚え方としては、「抜く・入れる」より「管を長くする・短くする」で考えると理解しやすくなります。高い音程を下げたいなら管を長くするために抜き、低い音程を上げたいなら管を短くするために入れます。
ジョイントが固い場合は、無理な力でねじったり引っ張ったりしないでください。コルクの状態を確認し、必要であれば使用楽器の取扱説明書に従って適切にコルクグリスを使用します。
なお、バレルと上管以外のジョイントを抜くことで一部の音域に影響を与える方法もあります。しかし、これは「高ければ全部の接続部分を抜けばよい」という意味ではありません。まずはバレルで全体を合わせることを基本に考えます。
バレルの長さとピッチの関係
バレルそのものの長さも、クラリネットのピッチに関係します。
一般論としては、長いバレルほどピッチを低くする方向、短いバレルほどピッチを高くする方向に作用します。そのため、通常のバレル調整では対応しにくい場合に、異なる長さのバレルを検討することがあります。
ただし、ここで注意したいのが「長さだけを見ればよい」と考えないことです。
バレルは長さだけでピッチが決まるわけではありません。内径や内部形状、テーパーなども音程や吹奏感に関係します。
66mmはクラリネット用バレルで見られる長さの一つですが、「クラリネットのバレルはすべて66mm」と考えるのは適切ではありません。メーカーやモデル、楽器の調性によって用意されている長さは異なります。
さらに、同じ66mmという表示であっても、異なるメーカーやモデルのバレルなら内部設計まで同じとは限りません。物理的に装着できたとしても、その楽器との組み合わせで最適なイントネーションや吹奏感が得られるとは限らないため、互換性は長さだけで判断しないようにします。
「1mm長くすれば必ず何セント下がる」という全クラリネット共通の固定値で考えることもできません。実際の変化は楽器、バレルの設計、マウスピース、温度、奏者などによって変わります。
バレルの長さを変更したときは、一音だけを測って判断するのではなく、低音から高音まで複数の音域を確認します。全体の基準が合っていても、一部の音域のバランスが変わる可能性があるためです。
バレル交換を検討するケース
バレル交換は、チューニングで困ったときに必ず行うものではありません。まず通常のバレルの抜き差しで調整できるかを確認します。
交換を検討する一つの目安は、通常の温度、通常の奏法で吹いているにもかかわらず、全体的なピッチが恒常的に高く、標準バレルをかなり抜かなければ合わせにくい場合です。このようなケースでは、使用楽器に適合する長めのバレルが候補になることがあります。
反対に、十分に楽器を温めても全体的に低く、バレルを完全に入れても合わせにくい状態が続くなら、適合する短めのバレルが候補になることがあります。
ただし、交換を決める前に次のような要素を確認します。
- 楽器が十分に温まっているか
- チューナーの基準ピッチ設定が正しいか
- 普段と同じ息やアンブシュアで吹いているか
- マウスピースやリードを変更していないか
- 現在のバレルが使用楽器に適合しているか
- 楽器に調整不良がないか
バレルを交換すると、変わる可能性があるのはピッチだけではありません。内部形状、内径、材質などの違いによって、音色、抵抗感、響き、吹奏感などにも変化が生じることがあります。
そのため、「ピッチが高いから、とにかく長いバレルにする」と単純に決めるのではなく、使用しているクラリネットとの適合を確認したうえで、交換後の全音域をチェックすることが大切です。
特定の音だけピッチが合わない原因
クラリネットのチューニングで混乱しやすいのが、「楽器全体のピッチ」と「特定の音のイントネーション」を同じ問題として考えてしまうことです。
バレルを抜き差しする方法は、主として楽器全体の基準ピッチを移動させるためのものです。
たとえば、低音から高音まで広い範囲でほぼ同じ程度高いのであれば、バレルを抜いて全体を下げる考え方が有効です。しかし、「ほかの音は合っているのにAだけ高い」という場合に同じ調整をすると、A以外の音まで低くなってしまいます。
一音だけのずれと楽器全体のずれは分けて考えることが、クラリネットの音程問題を解決する重要なポイントです。
特定音だけ高い・低い場合は、運指、息、アンブシュア、ボイシング、リードやマウスピース、楽器固有のイントネーション傾向、楽器の調整状態などを順番に確認します。こうした奏法上の原因を自分だけで切り分けにくい場合は、クラリネットをレッスンで学べるEYS音楽教室で実際の演奏を見てもらいながら確認する方法もあります。
運指と音域ごとの音程を確認
クラリネットは、すべての音がまったく同じピッチ傾向になる楽器ではありません。音域や使用する運指によって、音程や音色の特徴があります。
特にスロートトーンと呼ばれる中音域のG、G♯、A、B♭付近では、ピッチや音色を整える目的でレゾナンスフィンガリングが利用されることがあります。International Clarinet Associationのスロートトーンについての教育資料でも、これらの音は高めのイントネーションになりやすく、右手の指などを加えるレゾナンスフィンガリングによって音色やピッチを改善できる場合があると説明されています。
ただし、追加する指や得られる効果は楽器によって異なることがあります。「この運指なら必ず何セント下がる」と固定的に考えるのではなく、自分のクラリネットで実際に確認することが大切です。
高音域にも複数の代替運指があります。同じ記譜音を出せる運指でも、ピッチ、音色、発音のしやすさが異なることがあります。そのため、フレーズや演奏条件によって運指を使い分ける考え方があります。
自分のクラリネットの傾向を知るには、楽器を十分に温めて全体のチューニングを行った後、各音を同じ条件で測定してみる方法があります。
音階をゆっくり吹き、それぞれの音が高いのか低いのかを記録しておけば、「今日は調子が悪い」という感覚ではなく、特定音に繰り返し現れる傾向なのかを確認しやすくなります。
低音、中音、高音で大きく傾向が違う場合には、バレルだけで全体を動かすより、音域ごとのイントネーションを把握することが重要になります。
息・アンブシュア・ボイシングを確認
クラリネットのピッチは、管の長さだけで決まるわけではありません。奏者側の息、アンブシュア、ボイシングも音程に影響します。
そのため、チューナーの表示を見ながら口だけで無理に合わせようとすると、正しい原因を見失うことがあります。
アンブシュアでは、リードを必要以上に強く圧迫するような噛み方に注意します。強く噛むことだけで音程を補正しようとすると、リードの自由な振動を妨げ、音色や発音、イントネーションのコントロールが難しくなる場合があります。
反対に、高い音を下げようとしてアンブシュアを極端に緩めれば、音程だけでなく音色やレスポンスまで不安定になる可能性があります。
そこで、まず普段の演奏で再現できる安定したアンブシュアを保ち、その状態を基準として楽器側を調整することが大切です。
ボイシングとは、演奏中の舌の位置などによって口腔内の状態を調整する技術です。International Clarinet Associationの教育資料でも、ボイシングとイントネーションの関係が扱われています。
特に高音域では、運指だけ合っていてもボイシングが安定していないと、ピッチやレスポンスが不安定になることがあります。
ロングトーンやピッチベンドの練習を利用して、「口の中を変えるとピッチがどのように動くか」を観察すると、バレルで調整すべき問題と奏法で微調整すべき問題を区別しやすくなります。
息についても同様です。チューニング時だけ息を弱くしたり強くしたりするのではなく、実際の演奏に近い状態で確認してください。
音量が変化すればイントネーションも動く可能性があるため、極端に弱い音だけで合わせてから通常の音量へ戻す、といった方法では実際の演奏時のピッチを正確に判断できません。
チューナーで正しく音程を確認する方法
クラリネットのチューニングには、クロマチックチューナー、クリップ式チューナー、チューナーアプリなどを利用できます。
どの道具を使う場合でも、最初に確認したいのが基準ピッチの設定です。合奏で指定されている基準と自分のチューナーのキャリブレーションが異なっていれば、表示上は中央でも周囲とは合わない可能性があります。
合奏では、その場で指定されている基準を確認してからチューニングします。
測定するときは、短く音を出して針が一瞬どこへ動いたかを見るのではなく、ロングトーンを行い、音が安定した部分を観察します。
ただし、チューナーの針を中央へ固定することだけに集中しないようにしましょう。表示を見すぎると、無意識に口や息を変えて針を中央へ動かしてしまうことがあります。
チューナーは「今の吹き方でどの程度のピッチになっているのかを知る道具」として使い、測定結果に合わせて原因を考えます。
一音だけではなく、複数の音域を測ることも大切です。全体が同じ方向へずれているならバレル調整を考え、一部の音だけ違うなら運指や奏法などを確認する、という判断につなげられます。
さらに、チューナーだけでなく耳による確認も行います。合奏では周囲の音との関係が重要であり、自分のチューナーだけを見て演奏することはできません。
持続する基準音であるドローンにロングトーンを重ねる練習もあります。チューナーで数値や表示を確認する練習と、耳で響きやうなりを確認する練習を組み合わせることで、実際の演奏に必要なイントネーション感覚を養いやすくなります。
自分の音程傾向を調べたい場合は、毎回なるべく同じ条件で楽器を温め、全体のチューニングを行ってから音階や各音を測定します。記録を残しておくと、いつも高くなりやすい音、低くなりやすい音を把握しやすくなります。
B♭クラリネットの音名に注意
B♭クラリネットでチューナーを使い始めたときに、「吹いている音とチューナーに表示される音名が違う」と戸惑うことがあります。
B♭クラリネットは移調楽器です。記譜上のCを吹くと、実際に鳴る音はB♭です。この関係はヤマハのAクラリネットとB♭クラリネットの違いについての公式資料でも確認できます。
そのため、チューナーを実音(Concert Pitch)表示にしている場合、楽譜に書かれている音名とチューナーに表示される音名は一致しません。
これはクラリネットの音程が大きく狂っているという意味ではありません。楽器の移調とチューナーの表示方法の違いです。
B♭移調表示に対応しているチューナーでは、B♭クラリネット向けの設定にすることで、記譜音に対応した音名として確認できるものもあります。
音名が違うときは移調設定を確認することを覚えておくと、初心者が陥りやすい混乱を避けられます。
また、音名の表示方法と基準ピッチの設定は別の問題です。移調設定が正しくても基準ピッチが合奏側と異なっていれば、音程は一致しません。両方を確認する習慣をつけましょう。
ピッチが合わないときの確認ポイント
クラリネットのピッチが合わない原因は一つとは限りません。そこで、症状を「全体」「特定音」「時間による変化」「表示上の問題」に分けて考えると整理しやすくなります。
| 症状 | 確認・対処 |
|---|---|
| 全体的に高い | 楽器を温めた状態で確認し、バレルを少し抜く |
| 全体的に低い | 十分温まっているか確認し、バレルを入れる |
| 演奏を続けると高くなる | 温度上昇の影響を確認し、必要に応じて再調整する |
| 一音だけ高い | 運指、レゾナンスフィンガリング、ボイシング、アンブシュアなどを確認する |
| 一音だけ低い | 代替運指、ボイシング、息、楽器固有の傾向を確認する |
| 低音と高音で大きく違う | 全体調整だけでなく音域ごとのイントネーションを確認する |
| バレルを完全に入れても低い | 温度、奏法、セットアップを確認し、必要なら適合するバレルについて専門家へ相談する |
| バレルをかなり抜いても高い | 奏法やセットアップを確認し、必要なら適合するバレルについて専門家へ相談する |
| チューナーの音名が違う | B♭クラリネットの移調とチューナーの表示設定を確認する |
| 急に音程や鳴り方が変わった | リード、マウスピース、タンポ、キイなど楽器の状態も確認する |
まず全体的に高い・低い場合は、楽器の温度とバレルを確認します。それに対して一音だけずれている場合は、バレルを大きく動かす前に運指や奏法を確認します。
「練習開始時は合っていたのに、途中から高くなった」という場合には温度変化を考えます。クラリネットは演奏しているうちに状態が変わるため、一度合わせたら終わりではありません。
「昨日までは問題なかったのに、突然ある音だけ鳴りにくくなった」「特定音のピッチが急に大きく変わった」といった場合は、楽器側の状態も確認対象になります。
リードやマウスピースの状態だけでなく、タンポの密閉やキイの連絡などに問題があると、鳴り方や音程に影響する可能性があります。息漏れを感じる、以前より音が出にくい、特定の音が極端に不安定といった症状がある場合は、奏者側だけを原因と決めつけないことが大切です。
通常のバレル調整や奏法の確認をしても大幅に改善しない場合は、無理にキイなどを自己調整せず、クラリネットを扱う専門のリペア技術者などによる点検を検討します。
また、上管と下管の接続部や下管とベルの接続部を利用して、一部の音域へ影響を与える調整方法もあります。
ただし、初心者が「全体的に高いからすべてのジョイントを抜く」と考えるものではありません。バレルと上管の接続部は楽器全体への影響が大きいため、まずここで基準を整えます。そのうえで音域間に大きな差が残る場合に、必要な追加調整を検討します。
下管とベルの接続部は主に一部の低音などへ影響するため、通常の全体チューニングで最初に調整する場所ではありません。
アルトクラリネットやバスクラリネットについても注意が必要です。すべてのクラリネットがB♭クラリネットと同じ方法でチューニングするわけではありません。
B♭、A、E♭クラリネットでは基本的にバレル部分を利用して調整しますが、アルトクラリネットやバスクラリネットでは吹込管を抜き差しして調整する機種があります。バスクラリネットでは固定ネジを緩めて吹込管を調整し、調整後に固定する構造の機種もあります。
したがって、この記事の「バレルを抜く・入れる」という基本手順は、主としてB♭クラリネットを想定したものです。ほかの種類のクラリネットでは使用機種の取扱説明書を確認してください。
クラリネットのよくある質問
クラリネットのピッチが高いときはバレルを抜くのですか?
はい。B♭クラリネット全体のピッチが高い場合は、基本的にバレルと上管の接続部分を少し抜きます。管の実効的な長さが長くなるため、ピッチを低くする方向へ調整できます。
ただし、一音だけが高い場合はバレルを抜くことが最適とは限りません。バレルを抜けばほかの音も低くなるため、特定音の場合は運指、ボイシング、アンブシュアなども確認します。
ピッチが低いときはどうすればよいですか?
抜いているバレルを上管側へ入れます。管長を短くすることでピッチを高くする方向へ調整できます。
ただし、クラリネットが冷えている場合も低くなりやすいため、最初に十分温まっているか確認します。組み立てた直後の低い状態に合わせてしまうと、演奏を続けて温まったときに高くなる可能性があります。
樽とバレルは違う部品ですか?
基本的には同じ部品を指します。マウスピースと上管の間にある部品で、日本語では「樽」、英語では「barrel」と呼ばれます。「タル」というカタカナ表記で調べられる場合もあります。
この部品と上管の接続部分を抜き差しすることで、B♭クラリネット全体の基本的なピッチを調整します。
バレルは何mmがよいですか?
すべてのクラリネットや奏者に共通する最適な長さはありません。メーカー、モデル、マウスピース、演奏環境、基準ピッチなどによって適した長さは変わります。
また、同じ長さでも内径や内部形状、テーパーなどが異なれば、ピッチや吹奏感が同じになるとは限りません。「現在より1mm短くすれば必ず一定量高くなる」というような固定値では判断せず、実際の楽器で確認する必要があります。
一音だけ高い場合もバレルを抜けばよいですか?
一音だけ高い場合は、バレルだけで調整しないほうがよいことがあります。バレルを抜くと楽器全体のピッチが下がるため、ほかの音まで低くなる可能性があるからです。
特定音については、運指、レゾナンスフィンガリング、ボイシング、アンブシュア、息、楽器固有のイントネーション傾向などを確認します。
チューナーの針が中央なら正しい音程ですか?
チューナーの中央は重要な目安ですが、それだけで合奏中のイントネーションがすべて解決するわけではありません。
まずチューナーの基準ピッチが合奏側と一致している必要があります。また、実際の合奏では周囲の音との響きを聴きながら微調整する必要があります。
チューナーを「正解を表示する機械」として見るだけでなく、自分の音程傾向を客観的に確認するための道具として利用するとよいでしょう。
バレルを抜いてもピッチが合わないのはなぜですか?
全体のピッチが高い場合はバレルを抜く方法が基本ですが、それでも合わない場合は原因を分けて考えます。
楽器が十分に温まっているか、チューナーの設定が正しいか、普段どおりのアンブシュアや息で吹いているか、マウスピースやリードを変更していないかなどを確認します。
一部の音だけ合わないのであれば、バレルではなく運指やボイシングなどが関係している可能性があります。以前と比べて急に鳴り方まで変化した場合には、楽器の調整状態も確認します。
バレルを全部入れてもピッチが低い場合はどうしますか?
最初に楽器が十分に温まっているか確認します。そのうえでチューナーの基準設定、奏法、マウスピース、リード、現在使用しているバレルの適合などを確認します。
通常の条件でも全体的に低い状態が続き、標準的な調整範囲では対応できない場合には、使用楽器に適合する短めのバレルについて専門家へ相談する方法があります。
ただし、ピッチだけを理由にすぐ交換するのではなく、楽器そのものの調整不良がないかも含めて確認することが重要です。
バスクラリネットもバレルでチューニングしますか?
すべてのクラリネットが同じ方法ではありません。B♭、A、E♭クラリネットでは基本的にバレルの抜き差しで調整しますが、アルトクラリネットやバスクラリネットでは吹込管を抜き差しして調整する機種があります。
バスクラリネットには固定ネジを使用する構造の機種もあるため、B♭クラリネットと同じ感覚で部品を動かさず、使用している機種の取扱説明書に従ってください。
クラリネットのチューニング練習は何をすればよいですか?
まずロングトーンをチューナーで確認し、音の開始から終了までピッチがどのように動くか観察します。
次に、楽器を十分に温めて全体のチューニングを行った状態で、音階をゆっくり吹きます。それぞれの音が高めなのか低めなのかを記録すると、自分の楽器のイントネーション傾向を把握しやすくなります。
特定音に複数の運指がある場合は、それぞれのピッチを比較する練習もできます。どの運指が常に正解ということではなく、使用楽器や演奏するフレーズに応じて判断する材料になります。
さらに、チューナーだけではなくドローン音へロングトーンを合わせる練習も有効です。表示を見る練習と耳で響きを確認する練習を組み合わせます。
音量を変えながらロングトーンを行い、ピッチがどのように変化するか観察する方法もあります。これによって、実際の演奏でクレッシェンドやデクレッシェンドをしたときのイントネーション変化を意識しやすくなります。
また、冷えた状態と十分に温まった状態でピッチを比較すると、自分のクラリネットが演奏開始後にどの程度変化するのかを把握する材料になります。
こうした練習で重要なのは、チューナーの中央から外れたことを失敗と考えるのではなく、「どの条件でどの方向へ動いたか」を観察することです。
自分の楽器の傾向がわかってくれば、合奏中にピッチがずれたときも、バレルを動かすべきなのか、特定音の運指やボイシングを調整すべきなのかを判断しやすくなります。練習しても判断が難しい場合は、EYS音楽教室のクラリネットレッスンで、実際の音を確認してもらいながら改善点を整理する方法もあります。
まとめ
クラリネットのチューニングでは、最初に楽器を十分に温めることが重要です。冷えた状態で最終的な調整をすると、演奏中に楽器が温まったときにピッチが高くなる可能性があります。
B♭クラリネット全体のピッチが高い場合は、基本的にバレルと上管の接続部分を少し抜きます。反対に全体が低い場合は、抜いているバレルを入れます。
調整方向に迷ったときは、「管を長くすれば低くなり、短くすれば高くなる」と考えると整理しやすくなります。一度に大きく動かすのではなく、少しずつ調整して、そのたびに同じ条件で確認してください。
一方で、特定の音だけ高い・低い場合は、バレルだけで解決しようとしないことが大切です。運指、息、アンブシュア、ボイシング、リードやマウスピース、楽器固有のイントネーション傾向なども確認します。
バレルを完全に入れても低い、かなり抜かなければ高い状態を解消できないといった場合は、温度や奏法、セットアップ、楽器の状態を確認したうえで、適合する別のバレルを検討する方法があります。バレルは長さだけでなく内部設計も関係するため、長さだけで互換性を判断しないようにしましょう。
チューナーは便利ですが、中央表示だけを追いかけるのではなく、複数の音域を測定して自分のクラリネットの傾向を把握することが重要です。合奏では周囲の音も聴き、必要に応じて演奏途中にも調整します。
まず楽器を温め、基準設定を確認し、通常の奏法で測定する。そのうえで全体が高ければバレルを抜き、低ければ入れる。そして特定音だけがずれる場合は、運指や奏法などを個別に確認する。この順序で考えると、クラリネットのピッチが合わない原因を整理しやすくなります。

