チェロの有名な曲・名曲|初心者にも聴きやすいクラシックを紹介

「チェロの有名な曲・名曲|初心者にも聴きやすいクラシックを紹介」の文字と、湖と山を望む落ち着いた情景にチェロを大きく描いたアイキャッチ画像。 チェロ
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チェロの有名な曲をまず知ろう

チェロの有名な曲を知りたいと思ったとき、最初に候補へ挙がりやすいのが、J.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲第1番」のプレリュード、サン=サーンス「白鳥」、カタルーニャ民謡「鳥の歌」などです。いずれもチェロの音色や表現力を感じやすく、クラシックに詳しくない人でも比較的入りやすい作品です。

チェロは豊かな中低音を持つ一方、高音域では人の声を思わせるような歌唱的な旋律も奏でられます。さらに、バッハの無伴奏作品ではチェロ1本だけで音楽を組み立て、協奏曲では大規模なオーケストラと渡り合います。有名曲を何曲か聴き比べるだけでも、この楽器が持つ表情の広さが分かってきます。

ただし、曲を探すときには一つ注意があります。「チェロで有名な曲」と「チェロのために作曲された曲」は必ずしも同じではありません。ラフマニノフ「ヴォカリーズ」やピアソラ「リベルタンゴ」のように、原曲は別の編成でありながら、チェロによる演奏でも親しまれている作品があります。

また、一般的に使われる「チェロソロ」という言葉も意味が広いため注意しましょう。伴奏なしでチェロ1本だけを演奏する「無伴奏」のほか、ピアノやオーケストラと共演しながらチェロが独奏を担当する作品まで、広い意味で「ソロ」と呼ばれる場合があります。

曲名だけでなく、原曲がどのような編成なのかまで確認すると、「チェロだけの音を聴きたい」「ピアノと一緒に演奏したい」「オーケストラと共演する協奏曲を聴きたい」といった目的に合う曲を探しやすくなります。

曲名 作曲者・由来 代表的な編成 チェロとの関係
無伴奏チェロ組曲 J.S.バッハ チェロ独奏 チェロのための作品
白鳥 サン=サーンス 独奏チェロ+2台ピアノ(原曲) チェロが独奏を担当
鳥の歌 カタルーニャ民謡/カザルス編 チェロを中心とする各種編成 民謡をもとにした編曲
愛の挨拶 エルガー チェロ+ピアノ版など チェロ版も存在する
ヴォカリーズ ラフマニノフ チェロ+ピアノなど 原曲は声楽曲
リベルタンゴ ピアソラ 多数の編曲 チェロ専用の原曲ではない

まず何を聴くか迷った場合は、バッハの第1番プレリュードと「白鳥」から聴いてみると、チェロの異なる魅力を比較しやすいでしょう。

バッハ無伴奏第1番プレリュード

J.S.バッハの「無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV 1007」は、チェロを代表する作品群の中でも特に知られている一曲です。なかでも組曲の冒頭に置かれた「プレリュード」は著名で、「バッハのチェロの有名な曲」「チェロのプレリュード」と聞いて、この曲を思い浮かべる人もいるでしょう。

最大の特徴は、伴奏楽器を使わず、チェロ1本だけで演奏することです。プレリュードでは分散和音を中心に音が連なっていきます。単純に一本の旋律を歌うだけではなく、次々と移り変わる音から和声の広がりを感じられるところが大きな魅力です。

第1番はプレリュードだけで終わる作品ではありません。プレリュード、アルマンド、クーラント、サラバンド、メヌエットI、メヌエットII、ジーグという7曲で構成されています。

有名なプレリュードから入り、続けて組曲全体を聴いてみると、舞曲によってテンポや雰囲気が変化していくことが分かります。「バッハの無伴奏チェロ組曲」という名前は知っていても、プレリュードしか聴いたことがない場合は、組曲全体まで聴いてみると作品の印象が変わるかもしれません。

また、伴奏がないため、チェロそのものの響きを聴きたい人にも適しています。低音から高音へ移り変わる音域、弓による音のつながり、奏者によるフレージングの違いなども比較しやすい作品です。

一方で、「有名で耳になじみがある」ということと、「初心者が原曲を簡単に弾ける」ということは分けて考える必要があります。音符を追うだけでなく、音程、移弦、弓の配分、和声感、フレージングまで整えて演奏するには相応の技術が必要です。

サン=サーンス「白鳥」

サン=サーンスの「白鳥(Le Cygne)」は、組曲「動物の謝肉祭」の第13曲です。原曲では独奏チェロを2台のピアノが支える編成になっており、現在はチェロとピアノなどでも広く演奏されています。

ゆったりと歌うチェロの旋律と、流れる水面を思わせるような伴奏が印象的です。バッハのプレリュードとは音楽の性格が大きく異なり、チェロの滑らかなレガートや高音域の美しさを味わいやすい作品です。

チェロには低く重厚な楽器という印象を持つ人もいますが、「白鳥」を聴くと、高音域でも柔らかく歌うことのできる楽器だと分かります。チェロの「人の声のように歌う」という魅力を感じたいときにも候補になります。

「動物の謝肉祭」の中でも、「白鳥」はサン=サーンスが生前に単独での公開演奏を認めた曲として知られています。短い小品ながら、チェロの代表曲として現在まで親しまれています。

聴きやすい旋律ですが、実際に原曲を美しく演奏するとなると簡単ではありません。音程を安定させながら旋律を滑らかにつなげることに加え、ポジション移動、弓のコントロール、ヴィブラートなども関係してきます。

初心者が「白鳥を弾いてみたい」と考える場合は、原曲だけに限定せず、学習段階に合わせて簡略化された楽譜も確認するとよいでしょう。

「鳥の歌」とカザルス

「鳥の歌」はチェロの名曲として知られていますが、もともとはカタルーニャ地方の民謡です。20世紀を代表するチェリスト、パブロ・カザルスの演奏や編曲によって、チェロと強く結びついた作品として広く知られるようになりました。

そのため、「カザルスが作曲したチェロのオリジナル曲」と説明するのは正確ではありません。原曲はカタルーニャ民謡であり、それをカザルスがチェロで広めた作品として理解すると整理しやすくなります。

「鳥の歌」は、華やかな技巧を前面に出すタイプの作品ではありません。ゆったりした旋律を通して、チェロの温かく落ち着いた音色や、息の長いフレーズを味わえます。

カザルスはこの曲を平和への思いと結びつけて演奏したことでも知られています。作品の由来とカザルスとの関係を知ってから聴くと、単に「チェロで演奏されるきれいな曲」というだけではない背景にも目を向けられます。

バッハのプレリュード、「白鳥」、「鳥の歌」を続けて聴いてみると、同じチェロでも音楽の作り方が大きく違うことが分かります。チェロ1本で音楽を構築するバッハ、滑らかな旋律を歌う「白鳥」、静かな情感を持つ「鳥の歌」というように、聴き比べるのもおすすめです。

愛の挨拶・ヴォカリーズ

エルガーの「愛の挨拶 Op.12」は、親しみやすい旋律を持つ小品です。1888年、後に妻となるキャロライン・アリス・ロバーツのために作曲され、当初は「Liebesgruss(愛の挨拶)」という題名でした。

ヴァイオリンによる演奏を耳にすることも多い作品ですが、チェロとピアノによる版もエルガー自身の時代から存在します。チェロで演奏すると、柔らかく温かい音色と旋律が自然に結びつきます。

ただし、「もともとチェロだけのために作られた曲」と単純に説明するのは避けたほうがよいでしょう。複数の版が存在する作品として理解しておくと、楽譜を探す際にも混乱しにくくなります。

ラフマニノフの「ヴォカリーズ Op.34 No.14」も、チェロで親しまれている有名曲です。しかし、こちらはもともと歌曲集Op.34の第14曲として作曲された声楽曲で、チェロのために作曲されたオリジナル作品ではありません。

「ヴォカリーズ」は歌詞を使わず、母音で旋律を歌う作品です。そのため、言葉に縛られない息の長い旋律がチェロの歌唱的な音色ともよくなじみ、チェロ編曲でも広く演奏されています。

ロマン派らしい豊かな和声や哀愁のある旋律を聴きたい人にも向いています。「チェロで演奏されるヴォカリーズが好き」という場合でも、原曲は声楽作品であることを知っておくと、別の編成を聴き比べる楽しみも生まれます。

リベルタンゴなど人気の編曲曲

アストル・ピアソラの「リベルタンゴ」は1974年に発表された作品です。タイトルはスペイン語の「Libertad(自由)」と「Tango(タンゴ)」を組み合わせた名称です。

ピアソラ自身はバンドネオン奏者であり、「リベルタンゴ」はチェロ独奏のために書かれたオリジナル作品ではありません。しかし、さまざまな楽器や編成に編曲され、チェロによる演奏でも親しまれています。

鋭いリズム、反復する伴奏型、情熱的な旋律が特徴で、「チェロは低くゆっくり歌う楽器」というイメージとは異なる表情を聴くことができます。

シューベルトの「アルペジオーネ・ソナタ イ短調 D821」も、現在ではチェロの有名レパートリーとして演奏されています。ただし、原曲は「アルペジオーネ」という、フレットを持つ弓奏楽器のために書かれた作品です。

シューマンの「幻想小曲集 Op.73」もチェロで演奏されますが、原曲はクラリネットとピアノのために書かれています。このように、現在チェロで親しまれている曲の中には、別の楽器や声楽のために生まれた作品も少なくありません。

「チェロの有名曲」という言葉だけで探すと、こうした作品が一緒に紹介されることがあります。原曲の編成を知っておけば、「チェロのオリジナル曲だけを聴きたい」「編曲も含めてチェロの名演を探したい」といった目的に応じて選べます。

バッハ無伴奏チェロ組曲の名曲

J.S.バッハの無伴奏チェロ組曲 BWV 1007~1012は、全部で6つの組曲からなります。チェロ独奏レパートリーを代表する作品群で、伴奏楽器を使わず、チェロ1本で旋律、和声、リズムを形作ります。

「チェロだけで演奏する有名曲を聴きたい」「チェロの無伴奏曲を知りたい」という人にとって、まず知っておきたい作品です。

6つの組曲はそれぞれ異なる調性と性格を持っています。最初からすべてを聴く必要はありません。まず有名な第1番のプレリュードを聴き、気に入ったらほかの組曲へ広げると、それぞれの違いを楽しみやすくなります。

全6組曲の特徴と有名な第1番

バッハの無伴奏チェロ組曲は次の6組曲です。

組曲 調 BWV 特徴
第1番 ト長調 BWV 1007 明るく開放的。プレリュードが特に著名
第2番 ニ短調 BWV 1008 暗く内省的な性格
第3番 ハ長調 BWV 1009 明朗でスケールの大きな響き
第4番 変ホ長調 BWV 1010 広い音域と複雑な響き
第5番 ハ短調 BWV 1011 深刻で重厚な性格
第6番 ニ長調 BWV 1012 華やかで技巧的

第1番ト長調 BWV 1007は、一般にも知られている組曲の一つです。特に冒頭のプレリュードは、分散和音が途切れずに流れていくような印象を持ち、チェロ1本でありながら音楽に大きな広がりを感じられます。

第2番ニ短調 BWV 1008は、第1番とは対照的に暗く内省的な性格を感じやすい作品です。プレリュードから緊張感のある響きを持ち、明るい第1番と続けて聴くと違いが分かりやすいでしょう。

第3番ハ長調 BWV 1009は、明朗でスケールの大きな響きを持っています。ブーレI・IIも演奏会などで取り上げられる曲です。

第4番変ホ長調 BWV 1010は、チェロにとって扱いが容易ではない調性で、広い音域と複雑な響きを持っています。第1番などと比較すると、演奏上の要求も高くなります。

第5番ハ短調 BWV 1011は、深刻で重厚な性格を持つ組曲です。バッハ自身によるリュート用編曲 BWV 995との関係も知られています。また、原典では通常のチェロ調弦とは異なるスコルダトゥーラを用います。

そして第6番ニ長調 BWV 1012は、6曲の中でも華やかで技巧的な作品です。第1番から順番に聴くだけでなく、第1番と第2番、第3番と第5番など、性格の異なる組曲を比較してみると、無伴奏チェロだけでも非常に幅広い音楽があることが分かります。

なお、「チェロのプレリュード」と検索すると第1番が注目されがちですが、6つの組曲はすべてプレリュードで始まります。有名な分散和音の曲を探している場合は第1番が有力ですが、「バッハのチェロのプレリュード」が厳密に1曲だけというわけではありません。

第6番は初心者には難しい

「バッハ 無伴奏 チェロ 6番」と探している人が特に注意したいのが、演奏難度です。第6番ニ長調 BWV 1012は華やかで魅力的ですが、初心者向けの作品ではありません。

第6番は、通常の4弦チェロとは異なる5弦楽器を想定して作曲されたと考えられています。現代の4弦チェロで演奏すると、高音域、重音、素早いパッセージなど、高度な技術が要求されます。

そのため、バッハの無伴奏チェロ組曲を自分で弾いてみたい場合に、「第6番も有名だから初心者向けだろう」と考えるのは適切ではありません。

もっとも、第1番についても、有名だから原曲が簡単という意味ではありません。特に「音符を一通り弾くこと」と「作品として美しく仕上げること」には違いがあります。

初心者がバッハの音楽に触れたい場合は、原曲をそのまま演奏することだけを目標にせず、学習段階に合わせて簡略化された編曲版を利用する方法もあります。

有名なチェロ・ソナタ

チェロとピアノによる本格的なクラシックを聴きたいなら、チェロ・ソナタにも多くの名曲があります。

無伴奏作品との大きな違いは、ピアノが単純な背景になるとは限らないことです。作品によってはチェロとピアノが対等に旋律や音楽の流れを受け渡しながら、一つの大きな音楽を作ります。

チェロの歌唱的な旋律だけでなく、ピアノとの掛け合いや和声の厚みを楽しみたい人にも向いています。

ベートーヴェンなどの代表曲

ベートーヴェンは、チェロとピアノのためのソナタを5曲残しました。

  • チェロ・ソナタ第1番 ヘ長調 Op.5-1
  • チェロ・ソナタ第2番 ト短調 Op.5-2
  • チェロ・ソナタ第3番 イ長調 Op.69
  • チェロ・ソナタ第4番 ハ長調 Op.102-1
  • チェロ・ソナタ第5番 ニ長調 Op.102-2

作曲時期は1790年代から1810年代まで広がっており、5曲を通してベートーヴェンの作風の変化をたどれることも特徴です。

なかでも第3番イ長調 Op.69は、重要なチェロ・ソナタの一つです。チェロが旋律を弾き、ピアノがその後ろで伴奏するという単純な関係ではありません。両方の楽器が音楽を受け渡しながら進んでいきます。

ブラームスでは「チェロ・ソナタ第1番 ホ短調 Op.38」と「チェロ・ソナタ第2番 ヘ長調 Op.99」があります。

第1番は、チェロの低音域を生かした重厚で落ち着いた響きが特徴です。第2番はさらに力強く、スケールの大きな音楽となり、技術的な要求も高くなります。

ラフマニノフ「チェロ・ソナタ ト短調 Op.19」は、豊かな旋律と濃厚な和声を持つロマン派の作品です。チェロだけが主役というより、ピアノにも大きな役割が与えられています。「ヴォカリーズ」が気に入った人がラフマニノフのチェロ関連レパートリーをさらに聴いてみたい場合にも候補になります。

シューベルト「アルペジオーネ・ソナタ イ短調 D821」も、現在ではチェロで広く演奏されています。ただし、原曲はアルペジオーネという楽器のための作品です。チェロ版では高音域や細かなパッセージも多く、原曲に相当する内容を演奏するには高い技術が求められます。

このように「有名なチェロ・ソナタ」を探す場合にも、最初からチェロのために作曲された作品と、現在チェロで定番になっている編曲作品を区別すると、作品の背景が分かりやすくなります。

有名なチェロ協奏曲

オーケストラとともにチェロの壮大な響きを楽しみたいなら、チェロ協奏曲があります。チェロ1本の無伴奏作品とは対照的に、独奏チェロが大規模なオーケストラと対話しながら音楽を展開します。

協奏曲を聴くと、チェロが静かに歌うだけの楽器ではないこともよく分かります。力強い低音、高音域の旋律、素早いパッセージなど、作品によってさまざまな表情が現れます。

ドヴォルザークなどの代表曲

代表的な作品として挙げられるのが、ドヴォルザーク「チェロ協奏曲 ロ短調 Op.104 B.191」です。1895年に完成した3楽章構成の作品で、チェロ協奏曲を知りたい人にとって重要なレパートリーです。

第1楽章はAllegro、第2楽章はAdagio, ma non troppo、第3楽章はFinale: Allegro moderato。チェロの歌唱性、力強さ、技巧性と大規模なオーケストラが結びつきます。

雄大なオーケストラの中で、独奏チェロが埋もれずに存在感を示すところも聴きどころです。力強い低音から叙情的な高音まで、協奏楽器としてのチェロの幅広い表現を楽しめます。

エルガー「チェロ協奏曲 ホ短調 Op.85」は1919年に作曲された4楽章の作品です。内省的で哀愁を感じさせる性格と、チェロの深い音色が結びついています。ジャクリーヌ・デュ・プレの演奏・録音によって広く知られるようになったことでも有名です。

サン=サーンス「チェロ協奏曲第1番 イ短調 Op.33」は1872年に作曲されました。切れ目の少ない独特の構成で、チェロの広い音域を生かしながら、歌唱性と技巧性の両方を楽しめます。

「白鳥」でサン=サーンスを知った人が協奏曲を聴くと、同じ作曲家でもかなり異なるチェロの表情に出会えます。

シューマン「チェロ協奏曲 イ短調 Op.129」は、ロマン派を代表するチェロ協奏曲の一つです。3つの楽章が連続的につながり、派手な技巧だけではなく、抒情性や内面的な表現も重要になります。

古典派では、ハイドンのチェロ協奏曲第1番ハ長調 Hob.VIIb:1と第2番ニ長調 Hob.VIIb:2があります。

第1番は明快で生き生きとした音楽が特徴です。第2番は高音域を多く使い、優雅さと技巧性を持っています。どちらも古典派のチェロ協奏曲を知るうえで重要な作品です。

20世紀の作品では、ショスタコーヴィチ「チェロ協奏曲第1番 変ホ長調 Op.107」があります。1959年にムスティスラフ・ロストロポーヴィチのために書かれ、同年10月4日にレニングラードで初演されました。

強烈なリズム、反復されるモチーフ、長大なカデンツァなどが特徴です。「チェロは穏やかで歌う楽器」というイメージとは違う、鋭さや緊張感、高度な技巧を聴くことができます。

これらの協奏曲はいずれも本格的に演奏するには高い技術が必要です。聴きやすさと演奏しやすさは別だと考えて曲を選びましょう。

聴く曲・弾く曲の選び方

チェロの名曲を探すときは、「何が一番有名なのか」だけでなく、自分が何を求めているかで選ぶと曲を見つけやすくなります。

特に、「聴くための曲」と「自分で弾くための曲」では選び方が異なります。聴く場合は演奏難度を気にする必要がありませんが、自分で演奏する場合には、原曲の難度や編曲の内容まで確認する必要があります。

楽しみたい特徴 候補になる曲
チェロらしい音色 白鳥、バッハ第1番プレリュード、エレジー、鳥の歌
明るく親しみやすい響き バッハ第1番プレリュード、愛の挨拶、ハイドン第1番
哀愁や深み エルガー協奏曲、エレジー、ヴォカリーズ、鳥の歌、コル・ニドライ
情熱的なリズム リベルタンゴ、サン=サーンス協奏曲第1番、タランテラ
大規模なクラシック ドヴォルザーク、エルガー、シューマン、ショスタコーヴィチの協奏曲
チェロ1本の響き バッハ無伴奏チェロ組曲

チェロらしい歌う音色を最初に味わいたいなら、サン=サーンス「白鳥」が分かりやすい候補です。チェロ1本の響きを聴きたいなら、バッハの無伴奏チェロ組曲第1番プレリュードから始めるとよいでしょう。

さらに深く落ち着いた曲を聴きたいなら、フォーレ「エレジー Op.24」もあります。この作品は当初チェロ・ソナタの緩徐楽章として構想されましたが、ソナタの計画が放棄され、独立した作品として出版されました。悲歌的な旋律から劇的に高揚する中間部まで、チェロの表現の幅を楽しめます。

ブルッフ「コル・ニドライ Op.47」では、チェロの中低音による深く荘重な響きを味わえます。華やかな協奏曲とは異なる、落ち着いた重厚さを求める場合の候補です。

反対に、速く華やかなチェロを聴いてみたいなら、ポッパー「ハンガリアン・ラプソディ Op.68」や「タランテラ Op.33」があります。速いパッセージや高音域などを通して、チェロの技巧的な一面を楽しめます。

また、同じ曲でも奏者によって印象が変わります。テンポ、ヴィブラート、ボウイング、フレージングなどが異なるため、一度聴いて好みに合わなかったとしても、別の演奏では印象が変わることがあります。

特にバッハの無伴奏組曲は、演奏の考え方によって音楽の印象が変化しやすい作品です。「白鳥」「鳥の歌」「ヴォカリーズ」のような歌唱的な作品でも、ヴィブラートやフレーズの作り方を比較できます。

協奏曲では独奏チェロだけでなく、オーケストラとのバランスやテンポにも注目すると、聴き比べの楽しみが広がります。特定の演奏だけを唯一の正解と考えず、複数の奏者を聴いてみると、作品とチェロの表現幅を理解しやすくなります。

なお、「CMで聴いたチェロの有名な曲」を探している場合は、曲名を一つに決めつけないようにしましょう。CMは企業、商品、放送時期、地域などによって使用曲が異なります。既存のクラシック曲そのものではなく、CM用の編曲やオリジナル曲の場合もあります。

バッハ「無伴奏チェロ組曲第1番プレリュード」やサン=サーンス「白鳥」など著名な作品を候補として確認することはできますが、「チェロのCM曲なら必ずこの曲」とは断定できません。企業名、商品名、放送時期、映像の内容などが分かれば、候補を絞りやすくなります。

初心者は編曲版も確認する

自分で弾く曲を探している場合に最も注意したいのが、曲の知名度と演奏難度を混同しないことです。

「白鳥」やバッハ第1番プレリュードは耳になじみやすい有名曲ですが、原曲を音楽的に仕上げるには初心者以上の技術が必要です。ドヴォルザーク、エルガー、ショスタコーヴィチなどの協奏曲は、本格的な上級レパートリーです。

ベートーヴェンのチェロ・ソナタ第3番 Op.69やラフマニノフのチェロ・ソナタ Op.19なども、初心者向けの原曲ではありません。

そこで、有名曲を自分で弾いてみたい初心者は、原曲だけでなく初心者向け編曲の有無を確認することが大切です。

簡易編曲では、高いポジションを避ける、難しいリズムを簡略化する、重音を単音にする、演奏しやすい調へ移調するといった変更が行われる場合があります。自分の段階で弾ける曲をまとめて探したい場合は、初心者向けのチェロ名曲集・楽譜も確認してみると選択肢を比較しやすくなります。

そのため、同じ「白鳥」や「愛の挨拶」という曲名でも、使用する楽譜によって演奏難度は大きく変わる可能性があります。ほかの弦楽器でも、曲名の知名度だけではなく、音域や移弦、テンポ、リズム、重音などを確認して楽譜を選ぶことが重要です。楽譜選びの考え方をもう少し具体的に知りたい場合は、バイオリン初心者向けの曲と楽譜の選び方も参考になります。

「初心者向け」と書かれている楽譜でも、出版社や編曲者によって想定しているレベルが同じとは限りません。購入するときは、可能であれば使用ポジション、音域、調、重音の有無などを確認しましょう。

自分に合う編曲や練習の進め方を一人で判断しにくい場合は、実際にチェロを見てもらいながら講師へ相談する方法もあります。教室で習うことも検討しているなら、チェロにも対応しているEYS音楽教室の特徴やレッスン条件も比較材料として確認してみてください。

ピアノ伴奏のある作品を演奏したい場合は、楽譜の内容にも注意が必要です。チェロパートだけなのか、ピアノ伴奏譜も含まれている楽譜なのかを確認しておくと、購入後の行き違いを防ぎやすくなります。

原典版、教育用の編曲、初心者向け曲集は、それぞれ目的が異なります。原曲そのものを研究したい場合と、現在の演奏技術で有名曲を楽しみたい場合では、適した楽譜も変わります。

初心者だから有名曲を避けなければならないわけではありません。原曲が難しい場合でも、自分の学習段階に合った編曲を選ぶことで、曲の旋律や雰囲気に触れる方法があります。

一方、聴く場合には難度を気にする必要はありません。最初は「白鳥」、バッハ第1番プレリュード、「愛の挨拶」、「鳥の歌」など親しみやすい作品から入り、好きな音色や作曲家が見つかったら、ソナタや協奏曲へ広げていくとよいでしょう。

最後に、よくある疑問も整理しておきます。

チェロで一番有名な曲は?

客観的に「一番」を決める統一された基準はありません。代表的な候補として、バッハ「無伴奏チェロ組曲第1番プレリュード」やサン=サーンス「白鳥」があります。協奏曲ではドヴォルザーク「チェロ協奏曲 ロ短調 Op.104」が代表的な作品です。

バッハのチェロで有名な曲は?

無伴奏チェロ組曲 BWV 1007~1012が代表的です。全部で6つの組曲があり、特に第1番ト長調 BWV 1007のプレリュードが広く知られています。

「白鳥」は何の曲?

サン=サーンス作曲「動物の謝肉祭」の第13曲です。原曲では独奏チェロを2台のピアノが伴奏します。無伴奏チェロ曲ではありません。

「鳥の歌」は誰の作曲?

原曲はカタルーニャ民謡です。パブロ・カザルスの演奏や編曲によってチェロと強く結びついた作品として知られるようになりました。

「ヴォカリーズ」はチェロ曲?

ラフマニノフの作品ですが、原曲は声楽曲です。歌詞を使わず母音で歌う旋律がチェロにもよく合うため、チェロ編曲で広く演奏されています。

「リベルタンゴ」はチェロ曲?

ピアソラの作品ですが、チェロ独奏用のオリジナル曲ではありません。さまざまな編成への編曲があり、チェロでも演奏されています。

無伴奏とチェロソロは同じ?

必ずしも同じではありません。無伴奏はチェロだけで演奏します。一方、「ソロ」はチェロが独奏を担当し、ピアノやオーケストラが一緒に演奏する場合にも使われます。

初心者が有名曲を弾くなら?

原曲の難度だけで選ばず、初心者向け編曲版の有無を確認しましょう。「白鳥」「愛の挨拶」、バッハ第1番プレリュードなども、簡略化された編曲なら学習段階に合わせやすくなる場合があります。

チェロの有名なソナタは?

ベートーヴェンの5つのチェロ・ソナタ、とくに第3番 Op.69、ブラームス第1番 Op.38・第2番 Op.99、ラフマニノフ Op.19などがあります。チェロ版で定番となっているシューベルト「アルペジオーネ・ソナタ」もよく知られています。

チェロの有名な協奏曲は?

ドヴォルザーク「チェロ協奏曲 ロ短調 Op.104」、エルガー「チェロ協奏曲 ホ短調 Op.85」、サン=サーンス「チェロ協奏曲第1番 イ短調 Op.33」、シューマン「チェロ協奏曲 イ短調 Op.129」、ハイドンの第1番・第2番、ショスタコーヴィチ「チェロ協奏曲第1番 Op.107」などがあります。

まとめ

チェロの有名な曲には、J.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲第1番プレリュード」、サン=サーンス「白鳥」、カタルーニャ民謡「鳥の歌」、エルガー「愛の挨拶」、ラフマニノフ「ヴォカリーズ」、ピアソラ「リベルタンゴ」などがあります。

チェロ1本の響きを楽しみたいなら、バッハの無伴奏チェロ組曲が代表的です。特に第1番プレリュードは広く知られていますが、全6組曲を聴き比べると、明るさ、内省性、重厚さ、華やかさといった異なる表情を楽しめます。

チェロとピアノによる音楽なら、ベートーヴェン、ブラームス、ラフマニノフなどのチェロ・ソナタがあります。オーケストラと共演する壮大な作品を聴きたいなら、ドヴォルザーク、エルガー、サン=サーンス、シューマン、ハイドン、ショスタコーヴィチなどのチェロ協奏曲へ広げてみましょう。

また、チェロで親しまれている作品のすべてが、もともとチェロのために作曲されたわけではありません。「鳥の歌」「ヴォカリーズ」「リベルタンゴ」「アルペジオーネ・ソナタ」などは、原曲や作品の成り立ちを知っておくと理解しやすくなります。

そして、自分で演奏したい場合には、有名な曲だから簡単とは限らないことを覚えておきましょう。原曲が難しい場合は、自分の学習段階に合った編曲版を確認する方法があります。

まずは気になる曲を実際に聴き、チェロの低く深い響き、歌うような旋律、無伴奏の緻密さ、協奏曲の力強さなどを比べてみてください。好きな一曲が見つかれば、そこから同じ作曲家や同じ編成の作品へ広げることで、チェロの名曲をさらに楽しめます。