バイオリンを始めたばかりのとき、「どの曲なら今の自分でも弾けるんだろう?」と迷う人は多いです。
きらきら星やメリーさんの羊のような定番の入門曲から、カノン、G線上のアリア、情熱大陸のような有名曲まで、候補はいくらでもあります。
ただし、ここで最初に知っておきたいのが、有名なバイオリン曲だからといって、原曲が初心者向けとは限らないということです。
特にバイオリンでは、同じ曲名でも「原曲に近い楽譜」と「ファーストポジション中心に簡単にした初心者向け楽譜」では、演奏の難しさがかなり違います。
初心者のうちは、曲名の知名度だけで選ぶよりも、今の技術で無理なく最後まで弾ける編曲を選ぶことが大切です。
「好きな曲を弾きたい」という気持ちはもちろん大事です。そのうえで、ファーストポジション、音域、移弦、テンポ、リズム、重音などを確認すると、「買った楽譜が難しすぎて全然進まない」という失敗を避けやすくなりますよ。
この記事では、バイオリン初心者に向く曲の条件から、最初の1曲、有名なクラシック、映画・アニメ・ポップス、練習曲、初心者向け楽譜や教本まで順番に紹介します。
- バイオリン初心者が弾きやすい曲の条件
- 最初の1曲に向く入門・初級曲
- カノンやG線上のアリアなど有名曲の考え方
- 情熱大陸などを初心者が弾く方法
- 初心者向け楽譜・曲集・練習曲の選び方
- 曲を練習するときにつまずきやすいポイント
これから曲を決める人も、すでに「この曲を弾きたい」と目標が決まっている人も、自分に合う難易度を見つける参考にしてください。
バイオリン初心者の曲選びで大切なこと
バイオリン初心者が曲を選ぶときは、「知っている曲だから簡単そう」「ゆっくりした曲だから弾けそう」といった印象だけで判断しないことが大切です。
バイオリンにはギターのようなフレットがありません。左手の指を置く位置が少し変わるだけでも音程が変化するため、楽譜上の音数が少なくても、正確に弾くには練習が必要です。
さらに、左手だけ動かせばよい楽器ではありません。
左手で正しい位置を押さえながら、右手では弓を安定して動かし、狙った弦だけを鳴らす必要があります。左手と右手を同時に使うところが、バイオリン初心者が難しさを感じやすいポイントです。
初心者向けの曲を見分けるときは、曲名よりも「ファーストポジション」「音域」「リズム」「テンポ」「移弦」「臨時記号」「重音」の有無を確認すると判断しやすくなります。
「初心者向け」「初級」と書かれているだけでは判断しきれない場合もあります。出版社や教材によって、入門・初級と呼ぶ範囲は同じではないからです。
できれば曲名と難易度表記だけでなく、実際の譜面も見てみましょう。
ポジション移動があるか、4の指を頻繁に使うか、16分音符が連続していないか、重音や複雑なスラーが出てこないかを見るだけでも、自分に合うか判断しやすくなります。
ファーストポジションを基準にする
初心者向けのバイオリン曲を探すとき、特にわかりやすい目印になるのが「ファーストポジション」「1stポジション」という表示です。
ファーストポジションは、バイオリン初心者が最初に学ぶ基本的な左手の位置です。
バイオリンには4本の弦があり、低い方からG線・D線・A線・E線と並んでいます。
| 弦 | 開放弦の音 | 位置 |
|---|---|---|
| G線 | ソ | 最も低い弦 |
| D線 | レ | G線の隣 |
| A線 | ラ | D線の隣 |
| E線 | ミ | 最も高い弦 |
左手の指番号は、人差し指が1、中指が2、薬指が3、小指が4です。
ファーストポジションの範囲で弾ける曲なら、左手全体を指板上で大きく移動する「ポジション移動」を避けながら演奏できます。
バイオリンを始めたばかりの時期は、ただ指を置くだけでも簡単ではありません。指板にフレットがないため、「1の指を置いたから正しい音になる」というわけではなく、毎回かなり正確な位置を狙う必要があります。
そこへポジション移動まで加わると、手の位置そのものが変わるので難易度が一段上がります。
そのため、最初はファーストポジションだけで最後まで弾ける曲を中心にすると、音程や弓の動きに集中しやすくなります。
カノン、G線上のアリア、愛の挨拶、情熱大陸など、一見すると初心者には難しそうな有名曲でも、ファーストポジションを中心にした初心者向け編曲が用意されている場合があります。曲名だけで諦めず、「1stポジション」「初心者」「やさしい」などの表示も確認してみてください。
逆に、同じ曲名でもポジション移動が何度も出てくる楽譜なら、初心者版とは難しさがまったく違います。
「この曲は初心者向けか?」ではなく、「この楽譜のこの編曲は初心者向けか?」と考えると、かなり判断しやすくなりますよ。
音域・リズム・テンポを確認する
ファーストポジション以外にも、曲の難易度を左右するポイントはいくつかあります。
まず確認したいのが音域です。
始めたばかりなら、1~2本程度の弦を中心に使う曲の方が取り組みやすい傾向があります。
4本の弦を頻繁に行き来する曲では、音が変わるたびに右腕と弓の角度を調整しなければなりません。
バイオリンは、狙った弦だけをきれいに鳴らす必要があります。弓の角度がずれると、隣の弦まで一緒に鳴ってしまうことがあります。
次にリズムです。
4分音符、2分音符、8分音符を中心とする規則的な曲は、初心者でもリズムを整理しやすいです。
一方、16分音符が長く連続する曲、複雑な付点リズム、シンコペーションが多い曲になると、譜読みだけでなく左右の動きを合わせる負担も増えます。
テンポも大切です。
速い曲では、正しい場所へ指を置く時間も、弓の向きを修正する時間も短くなります。ゆっくりならできる動きでも、テンポを上げると急に難しく感じるのは珍しくありません。
ただし、「遅い曲=簡単」とも限らない点には注意しましょう。
ゆっくりした曲では1音を長く伸ばす場面が多くなり、音程のずれ、弓の震え、音量のむらなどが目立ちやすくなります。
G線上のアリアのようにテンポだけを見ると速くない曲でも、美しい音で弾こうとすると別の難しさがあります。
臨時記号・移弦・重音もチェックする
楽譜を見られる場合は、♯や♭などの臨時記号も確認しましょう。
臨時記号が増えると、いつもの指の位置から少し高くしたり低くしたりする必要があり、音程の判断が難しくなります。
また、短い間隔でG線からD線、D線からA線などへ何度も移る曲では移弦の練習が必要です。
2本以上の弦を同時に鳴らす重音や和音が多い曲も、完全な入門段階では負担が大きくなります。
ポジション移動、重音、高速のトリル、複雑な装飾音、高速スタッカート、スピッカート、サルタート、リコシェ、高いポジション、人工ハーモニクスなどが頻繁に出てくる楽譜は、最初の1曲としては避けた方が無難です。
反対に、短く、同じフレーズが繰り返され、すでにメロディーを知っている曲は練習しやすいです。
耳で曲を覚えていると、「今の音は少し高いかも」「リズムが違うかも」と気付きやすいという利点もあります。
最初の1曲に向く弾きやすい曲
バイオリンで最初の1曲を選ぶなら、短くて、旋律を知っていて、複雑な技巧が少ない曲が向いています。
代表的なのは、メリーさんの羊、きらきら星、ちょうちょう、むすんでひらいて、ロンドン橋などです。
これらの曲は「子どもの曲だから簡単」ということではありません。
旋律をすでに知っている人が多く、音の動きが比較的わかりやすいため、初心者が左手の音程や基本的なボーイングに集中しやすいのがメリットです。
たとえば、きらきら星なら同じような音型が繰り返されるので、弓の使い方や移弦を落ち着いて確認できます。
メリーさんの羊も、音数が限られた短い旋律なので「まず曲として最後まで弾く」という最初の目標にしやすいです。
| 曲 | 目安 | 初心者に向く理由 | 主な練習ポイント |
|---|---|---|---|
| メリーさんの羊 | 入門 | 音数が少なく旋律を知っている人が多い | 左指、基本ボーイング |
| きらきら星 | 入門 | 繰り返しが多い | 音程、移弦、一定のリズム |
| ちょうちょう | 入門 | 短く覚えやすい | ファーストポジション |
| むすんでひらいて | 入門 | 親しみのある旋律 | 左手と弓の同期 |
| ロンドン橋 | 入門 | 短く規則的 | 基本リズム |
| こぎつね | 入門~初級 | 初級教材でも扱われる | 移弦、指の準備 |
| ロング・ロング・アゴー | 初級 | 初級教本の代表的な曲 | 音程、フレーズ |
| ハッピー・バースデー・トゥ・ユー | 入門~初級 | 旋律を知っている人が多い | 音程、弓の配分 |
大切なのは、「誰にとっても最初の1曲はこれ」と決まっているわけではないことです。
教本や指導方法によって、最初に扱う曲は異なります。
実際、スズキ・メソードの第1巻は「キラキラ星変奏曲」から始まります。一方、葉加瀬アカデミーの入門教本では基礎練習のあとに「メリーさんの羊」が最初の曲として扱われています。
どちらか一方が正解というわけではなく、初心者が基本動作を身につけながら無理なく進められる曲を使うという考え方が共通しています。
レベル別で無理なく曲を選ぶ
「バイオリン初心者」という言葉には、かなり幅があります。
今日初めて楽器を持った人も初心者ですし、ファーストポジションで数曲弾けるようになった人も初心者と呼ばれることがあります。
そのため、「初心者向け曲」という大きなくくりだけで選ばず、今の段階をもう少し細かく分けて考えると失敗しにくいです。
| レベル | 曲の例 | 主な練習内容 |
|---|---|---|
| レベル0 | 開放弦の練習 | 楽器の構え方、弓の持ち方、一定のリズム |
| レベル1 | メリーさんの羊、きらきら星、ちょうちょう、ロンドン橋、むすんでひらいて | 左指、基本ボーイング、簡単な移弦 |
| レベル2 | こぎつね、ロング・ロング・アゴー、歓喜の歌、アメイジング・グレイス、故郷、大きな古時計 | 音程、移弦、フレーズ、弓の配分 |
| レベル3 | メヌエット、ブラームスの子守唄、家路、映画・ポップスの簡単なファーストポジション編曲 | スラー、強弱、少し速い運指、アーティキュレーション |
| レベル4 | 楽しき農夫、ゴセックのガヴォット、G線上のアリア簡易版、カノン簡易版、愛の挨拶簡易版、情熱大陸初心者版 | 音色、フレーズ、弓使い、速さへの対応 |
このレベル分けは絶対的な基準ではありません。編曲やテンポ、本人の経験によって難しさは変わります。
ただ、「きらきら星」と「ゴセックのガヴォットを初心者向けという同じ言葉だけで並べない」という考え方は大切です。
スズキ・メソード第1巻でも、キラキラ星変奏曲、ちょうちょう、こぎつね、むすんでひらいて、ロング・ロング・アゴーなどを経て、アレグロ、無窮動、メヌエット、楽しき農夫、ゴセックのガヴォットへと段階的に進みます。
同じ第1巻の中でも、後半へ行くほど必要になる技術は増えます。
「初心者向けだから全部同じ難易度」と考えず、今できることより少しだけ先の曲を選ぶと練習しやすいですよ。
初心者でも弾ける有名なクラシック曲
バイオリンを始めると、「せっかくなら誰でも知っているクラシックを弾いてみたい」と思いますよね。
クラシックには、初心者用に編曲すると比較的取り組みやすい旋律がたくさんあります。
一方で、「曲として有名」「バイオリンで有名」という理由だけで選ぶと、想像以上に難しい楽譜に当たることもあります。
そこで、有名なクラシックは大きく2種類に分けて考えるとわかりやすいです。
- 旋律そのものが比較的シンプルで初心者用にしやすい曲
- 原曲は難しいが、初心者向けに簡略化した編曲がある曲
歓喜の歌など挑戦しやすい曲
初心者向けクラシックとして候補にしやすいのが、ベートーヴェンの「歓喜の歌」です。
交響曲第9番第4楽章で有名な主題で、旋律が規則的なため、初心者用に簡略化した楽譜でも曲の雰囲気を感じやすいのが特徴です。
もちろん「交響曲第9番そのものを初心者が演奏する」という意味ではありません。
有名な旋律部分を取り出し、初心者向けの音域やリズムに整えた楽譜を演奏すると考えてください。
ほかにも、ブラームスの子守唄、ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」の旋律に由来する「家路」、アメイジング・グレイスなどは、初心者向けアレンジの候補にしやすい曲です。
少し進んだ段階では、メヌエット、シューマンの「楽しき農夫」、ゴセックの「ガヴォット」などもあります。
スズキ・メソード第1巻にもこれらの初級レパートリーが段階的に含まれています。
ゴセックのガヴォットまで来ると、単に正しい指を押さえるだけでなく、素早い運指や明確な音の切り分けなども必要になります。
そのため、「初心者用教材に載っている=楽器を始めた初日から弾ける」と受け取らないようにしましょう。
有名なクラシックに挑戦するときは、「初心者向け」「入門」「初級」「ファーストポジション」などの表示を確認し、原曲と初心者用編曲を区別することが重要です。
カノンやG線上のアリアは編曲で選ぶ
初心者から特に人気が高いのが、パッヘルベルの「カノン」と「G線上のアリア」です。
どちらもバイオリンで弾いてみたくなる有名曲ですが、原曲そのものが完全な初心者向け作品というわけではありません。
パッヘルベルのカノン
パッヘルベルのカノンは、もともと3本のヴァイオリンと通奏低音のための作品です。
初心者が1人で弾く場合は、主な旋律を取り出した独奏用の編曲を使うことになります。
ここで気を付けたいのが、「カノン」というタイトルが同じでも楽譜によって難しさが大きく違うことです。
メロディーを中心にした簡単なファーストポジション版なら挑戦しやすくても、原曲に近づくほど音符が細かくなり、運指や弓の処理も増えます。
カノンを弾きたい初心者は、まず「初心者」「やさしい」「1stポジション」などが明記された楽譜から探すとよいでしょう。
G線上のアリア
「G線上のアリア」は、J.S.バッハの管弦楽組曲第3番BWV1068の「Air」をもとに、後世のヴァイオリニストであるアウグスト・ウィルヘルミの編曲によって広く知られるようになった名称です。
初心者向けのファーストポジション編曲もあります。
ただし、音符を追えることと、G線上のアリアらしく美しく弾けることは別です。
ゆっくりした旋律では、ロングトーンを安定させる弓、正確な音程、音と音をなめらかにつなぐレガートなどが必要になります。
そのため、楽器を持って最初の数日で弾く1曲目というより、基本的な音程とボーイングを身につけたあとに挑戦する方が取り組みやすいでしょう。
「四季」より春や愛の挨拶も同じ考え方
ヴィヴァルディの「四季」より「春」も、冒頭の有名な主題を初心者向けに簡単にした楽譜があります。
ただし、原曲のヴァイオリン独奏部分には速い音型などがあり、作品全体をそのまま初心者向けと考えるのは正確ではありません。
エルガーの「愛の挨拶」も初心者用編曲なら挑戦できますが、原曲らしいなめらかなフレーズや表情まで求めると難度が高くなります。
「カノンは初心者向け」「G線上のアリアは簡単」と曲名だけで断定しないことが大切です。正確には「初心者向けの編曲なら挑戦できる」と考えましょう。
映画・アニメ・ポップスの初心者向け曲
バイオリン初心者だからといって、童謡やクラシックだけを練習し続けなければならないわけではありません。
現在は、映画、アニメ、ポップスなどの有名曲をファーストポジション中心で弾けるようにした初心者向け楽譜もあります。
好きな曲があるなら、初心者用の編曲を探してみる価値があります。
たとえば、初心者向けアレンジが見つかる曲として、次のような曲があります。
- 星に願いを
- 君をのせて
- いつも何度でも
- テルーの唄
- 世界の約束
- やさしさに包まれたなら
- 見上げてごらん夜の星を
- 上を向いて歩こう
- 翼をください
- 明日があるさ
- 少年時代
すでにメロディーを知っている曲なら、練習中に音程やリズムの違和感にも気付きやすいです。
また、「この曲を弾きたい」という具体的な目標があると、単調に感じやすい基礎練習にも意味を感じやすくなります。
ただし、ここでも大切なのは編曲です。
同じ「君をのせて」でも、初心者用に音域や調、リズムを調整した楽譜と、原曲に近い演奏を目指した楽譜では難易度が違います。
ポップスや映画曲を選ぶ場合も、まずはファーストポジションで完結するかを確認しましょう。
情熱大陸は初心者版なら挑戦できる
葉加瀬太郎さんの「情熱大陸」は、バイオリンを始めた人が弾いてみたいと考えやすい代表的な有名曲です。
原曲らしい速さや勢い、細かなニュアンスまで再現しようとすると、初心者にとって簡単な曲ではありません。
一方で、ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングスからは「1stポジションで情熱大陸が弾ける 葉加瀬アカデミー バイオリン・メソッド 入門編」が発売されています。
ヤマハの公式商品情報では、入門者向けのファーストポジション・レッスンとして、楽器の扱い方、構え方、弓の動かし方、開放弦、左手、ピッチカートなどを学び、その後「メリーさんの羊」、ひまわり、エトピリカ、Another Sky、情熱大陸へ進む構成が確認できます。
(出典:ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス「1stポジションで情熱大陸が弾ける 葉加瀬アカデミー バイオリン・メソッド 入門編」)
つまり、「バイオリン初心者でも情熱大陸は弾ける?」という疑問には、ファーストポジション向けに編曲された初心者版なら挑戦できると答えられます。
ただし、初心者用教材で弾けることと、葉加瀬太郎さんの演奏と同じ技巧や速さ、表現をすぐに再現できることは別です。
最初は簡単な編曲で曲の流れを覚え、正しい音程や弓の動きを優先する。そのあと演奏レベルが上がってきたら、より原曲に近い楽譜へ進む方法があります。
「童謡を何十曲も弾いてからでないと好きな曲を弾いてはいけない」ということではありません。
今の技術に合う編曲が見つかるなら、好きな曲を目標にするのも選択肢です。
バイオリン練習曲と教本の選び方
「バイオリン 練習曲」と検索するときは、言葉の意味を2つに分けて考えるとわかりやすいです。
1つ目は、初心者が練習に使う普通の曲です。
きらきら星、歓喜の歌、アメイジング・グレイスなど、曲として楽しみながら音程や弓を練習するタイプですね。
2つ目は、特定の演奏技術を身につけるために作られたエチュードです。
スズキの「習作」、セヴシック、カイザーなどがこちらに当たります。
この2種類は目的が違います。
| 種類 | 主な目的 | 例 |
|---|---|---|
| 普通の曲を使った練習 | 曲を楽しみながら基礎を身につける | きらきら星、歓喜の歌、アメイジング・グレイス |
| エチュード・技術教材 | 運指、音程、弓など特定技術を反復して鍛える | スズキ「習作」、セヴシック、カイザー |
「まず何か1曲弾きたい」という段階なら、普通の曲を使って基礎を学ぶ方が取り組みやすいことがあります。
一方、「1の指から4の指までの形を安定させたい」「音程を集中的に練習したい」という段階では、技術練習用の教材も役立ちます。
楽しむ曲と基礎練習をどちらか一方に絞る必要はありません。
教本で基礎を練習しながら、並行して好きな初心者向け曲を弾くという方法もあります。
初心者向け楽譜・曲集の具体例
初心者向け楽譜を選ぶときは、表紙や商品説明にある次の表示を確認してみてください。
- 入門
- 初心者
- 初級
- ファーストポジション
- 1stポジション
- やさしい
- かんたん
- 運指番号付き
- 弓順付き
- 伴奏音源付き
- ピアノ伴奏付き
ただし、「初級」と書かれていれば必ず同じレベルというわけではありません。
出版社や教材によって想定している学習段階が違うため、可能なら実際の譜面も確認しましょう。
特に、ポジション移動、4の指、重音、16分音符、臨時記号、頻繁な移弦などがどの程度あるかを見ると判断しやすいです。
| 教材・曲集 | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| ファーストポジションで弾ける かんたん バイオリン・レパートリー | 童謡、唱歌、映画、アニメ、ポップス、クラシックを幅広く収録 | 好きな有名曲を初心者向けアレンジで楽しみたい人 |
| 1stポジションで情熱大陸が弾ける 葉加瀬アカデミー バイオリン・メソッド 入門編 | 楽器の持ち方など基礎から始め、葉加瀬太郎の曲へ進む | 情熱大陸やエトピリカを目標にしたい人 |
| 鈴木鎮一ヴァイオリン指導曲集 1[新版] | キラキラ星変奏曲からゴセックのガヴォットまで段階的に進む | 曲を通して基礎を積み重ねたい人 |
| 篠崎ヴァイオリン教本 第1巻 | 童謡、唱歌、民謡、クラシックを通して初級技術を学ぶ | 段階的な教本で基礎を進めたい人 |
| サスマンスハウス はじめてのヴァイオリン教本 Vol.1 | シンプルな曲から譜読みや左手の基本を学ぶ | 基礎をゆっくり確認しながら進めたい人 |
ファーストポジションで弾ける かんたん バイオリン・レパートリー
「ファーストポジションで弾ける かんたん バイオリン・レパートリー」は、2026年3月25日に発売された初心者向け曲集です。
ヤマハの公式商品ページでは、レッスンを始めて間もない人でも取り組めるファーストポジション向けのレパートリー集として案内されています。
64ページで、童謡・唱歌・世界の民謡から映画、アニメ、ポップス、クラシックまで幅広く収録されています。
きらきら星、ロンドン橋、ハッピー・バースデー・トゥ・ユー、故郷、聖者の行進、アメイジング・グレイス、グリーンスリーブス、大きな古時計、星に願いを、君をのせて、いつも何度でも、やさしさに包まれたなら、上を向いて歩こう、翼をください、G線上のアリア、歓喜の歌、愛の挨拶、木星など、ジャンルをまたいで選べるのが特徴です。
初心者向けの基礎練習や指板表、デュオアレンジも収載されています。
(出典:ヤマハ Sheet Music Store「ファーストポジションで弾ける かんたん バイオリン・レパートリー」)
「童謡だけではなく、知っている映画曲やクラシックも弾きたい」という人には候補にしやすい曲集です。
幅広い初心者向け曲を探している方は、各通販サイトで現在の取扱状況を確認してみてください。
鈴木鎮一ヴァイオリン指導曲集 1[新版]
スズキ・メソードの第1巻では、キラキラ星変奏曲から始まり、ちょうちょう、こぎつね、むすんでひらいて、ロング・ロング・アゴー、アレグロ、無窮動、メヌエット、楽しき農夫、ゴセックのガヴォットなどへ段階的に進みます。
(出典:全音楽譜出版社「鈴木鎮一ヴァイオリン指導曲集 1[新版](CD付)」)
初心者用教材の中でも、最初から最後まで同じレベルではないことがよくわかる構成です。
最初は短く親しみやすい曲から入り、徐々に音楽的なフレーズや細かな運指を含む曲へ進むため、「段階的にレパートリーを広げたい」という考え方と相性がよい教材です。
篠崎ヴァイオリン教本 第1巻
篠崎ヴァイオリン教本は、日本で長く使われてきた代表的な初級教本のひとつです。
きらきら星、さくらさくら、子守歌など、親しみやすい旋律を使いながら基礎技術を進められます。
単に有名曲だけを集めた曲集ではなく、練習の進度を考えながら使う教本として考えるとわかりやすいでしょう。
サスマンスハウス はじめてのヴァイオリン教本 Vol.1
サスマンスハウスのVol.1は、シンプルな曲から始めながら、メロディー、譜読み、音符、臨時記号、左手の基本を段階的に学ぶ初級教材です。
いきなり難しい有名曲へ進むのではなく、楽譜の読み方や指の使い方も含めて少しずつ覚えたい人に向いています。
セヴシックとカイザーは目的が少し違う
セヴシックのヴァイオリン教本Op.1 Part1は、ファーストポジション、左手の運指、イントネーション、跳躍、アルペジオなど、技術を細かく練習するための教材です。
有名曲を次々弾くための曲集とは性格が違います。
カイザーの36の初歩的・漸進的練習曲Op.20も、バイオリンの基礎テクニックを身につける代表的なエチュードです。
ただ、楽器を持った初日にメリーさんの羊やきらきら星の代わりとして始める教材というより、ファーストポジションなどの基礎をある程度学んだあとに技術を固めるものと考える方が自然です。
「楽しい曲を弾く曲集」と「技術を鍛える教本・エチュード」は役割が違います。初心者だからどれか1冊だけが正解ということではなく、自分が何を練習したいかで選びましょう。
なお、教材の価格、在庫、仕様、収録内容などは変更される場合があります。購入するときは出版社や販売元の最新情報を確認してください。
曲を練習するときに難しくなるポイント
自分に合ったバイオリン曲を選んでも、実際に練習を始めると別の悩みが出てきます。
「指は合っているはずなのに音が違う」「隣の弦まで鳴る」「ゆっくりならできるのにテンポを上げると崩れる」といったことですね。
初心者が特につまずきやすいポイントを整理しておきましょう。
音程
最初に難しく感じやすいのが音程です。
バイオリンにはフレットがありません。
そのため、同じ1の指を使っていても、置く場所が少し高ければ音も高く、低ければ音も低くなります。
楽譜上では正しい指番号で弾いているのに、「なぜか旋律が違って聞こえる」ということが起こるのはこのためです。
初心者は、自分の耳だけで細かな音程のずれを判断するのが難しいこともあります。
練習するときは、開放弦との響きを確認したり、必要に応じてクロマチックチューナーなどで音程を確認したりする方法があります。
ただし、チューナーの表示だけを見続けるのではなく、「正しい音を耳でも覚えていく」という意識も大切です。
移弦
次に移弦です。
バイオリンの4本の弦は同じ平面上に並んでいるわけではないため、鳴らす弦によって弓の角度を変えます。
たとえばD線からA線へ移るとき、右腕と弓の角度が適切でないと、両方の弦が同時に鳴ったり、狙っていない弦へ弓が触れたりします。
曲のテンポが速くなると、移弦のたびに考える時間も減ります。
最初は曲全体を通すことより、移弦がある2~4音程度を抜き出してゆっくり繰り返す方が整理しやすいこともあります。
弓の配分
弓をどれくらい使うかも、曲を弾くうえで重要です。
長い音で最初に弓を使いすぎると、音が終わる前に弓先まで到達してしまいます。
反対に、短い音で必要以上に大きく弓を使うと、次の音への切り替えが忙しくなります。
「この1小節で弓をどれくらい使うか」を考えるだけでも、フレーズが安定しやすくなります。
左右の同期
左手の指を置くタイミングと、右手の弓で音を出すタイミングがずれると、音の輪郭がぼやけます。
ゆっくり練習するとできるのに、テンポを上げた瞬間に音が不明瞭になる場合は、左右の同期が崩れている可能性があります。
この場合も、最初から曲全体を高速で繰り返すより、短い部分をテンポを落として合わせる方が確認しやすいです。
4の指
4の指、つまり小指も初心者にとって難しいポイントです。
人差し指や中指より扱いにくく、正しい形を保ちながら狙った位置へ置くのが難しいことがあります。
4の指が出てくるたびに手首や手の形が大きく崩れる場合は、無理に速く弾かず、左手の形を確認しながら練習した方がよいでしょう。
スラー
スラーでは複数の音を一弓で弾きます。
左手で音を変えながら、右手は弓を止めずに動かし続けるため、左右それぞれ別の仕事を同時に行わなければなりません。
さらに、一弓の中で最後まで弓が足りるように、速さと使用量も考える必要があります。
速いテンポ
単純な旋律でも、テンポを上げるだけで難度はかなり変わります。
左指を置く時間、移弦する時間、弓を返す時間のすべてが短くなるからです。
最初から原曲と同じテンポで弾こうとする必要はありません。
音程と左右の動きを確認できる速さまで落とし、安定したら少しずつテンポを上げていきましょう。
一定のテンポを保つ練習では、メトロノームを利用する方法があります。
たとえば、原曲テンポで崩れてしまうなら、まず十分に余裕のある速さで練習し、一定の速さで弾けるようになったら少しずつ設定を上げていきます。
重要なのは「速く弾くこと」より、速くしたときにも音程や弓の動きが崩れないことです。
また、弓の角度、姿勢、音程、左手の形などは、自分だけでは正しいか判断しづらい場合があります。
文章や教本で基本を確認しても迷いが続く場合は、バイオリンの先生など専門家に実際の演奏を見てもらう方法もあります。
独学そのものが悪いということではありませんが、本人から見えにくい角度やフォームは、第三者に確認してもらうことで気付きやすくなることがあります。
バイオリン初心者のよくある質問
ここからは、バイオリン初心者が曲を探すときによく疑問になりやすいポイントをまとめます。
Q1. バイオリン初心者が最初に弾く曲は何ですか?
A. メリーさんの羊、きらきら星、ちょうちょう、むすんでひらいて、ロンドン橋などが代表的です。
短く、メロディーを知っていて、複雑な技巧が少ない曲は、左手の音程や基本的な弓の動きに集中しやすいです。
ただし、教本や指導法によって最初の曲は異なります。「全員が必ずこの曲から始める」という決まりはありません。
Q2. G線上のアリアは初心者でも弾けますか?
A. 初心者向けのファーストポジション編曲なら挑戦できます。
ただし、G線上のアリアは音符だけ追えば終わりという曲ではありません。長い音を安定して保つ弓、正確な音程、レガートなどが必要です。
完全な初日の1曲というより、基本的な音程とボーイングを覚えてから進む方が取り組みやすいでしょう。
Q3. パッヘルベルのカノンは初心者には難しいですか?
A. 原曲は3本のヴァイオリンと通奏低音のための作品なので、そのまま初心者用の独奏曲というわけではありません。
ただし、主旋律を簡略化した初心者向け独奏版なら挑戦できます。
同じカノンでも、メロディーだけの簡易版、ファーストポジション版、原曲に近い編曲では難易度がかなり違います。曲名だけで判断せず、楽譜の中身を確認しましょう。
Q4. 情熱大陸はバイオリン初心者でも弾けますか?
A. 原曲らしい速さや技巧をそのまま再現するのは簡単ではありませんが、ファーストポジションで弾ける公式の初心者向け教材があります。
まず初心者用アレンジで曲全体を経験し、音程やリズムを安定させてから、演奏レベルに合わせてより難しい編曲へ進む方法があります。
Q5. 好きな曲からバイオリンを始めてもよいですか?
A. 初心者向けに適切に編曲されているなら選択肢になります。
好きな曲を目標にすることは、練習を続ける動機にもなります。
ただし、曲名だけで選ばず、ファーストポジション、音域、テンポ、リズム、移弦、重音の有無などを確認してください。
Q6. 何ヶ月練習すれば有名曲を弾けますか?
A. 一律に「何ヶ月で弾ける」とは決められません。
練習頻度、過去の楽器経験、レッスンの有無、選ぶ曲、編曲の難易度などによって大きく変わります。
同じカノンでも初心者向け簡易版と原曲に近い版では必要な技術が違うため、期間より「現在どの技術まで安定してできるか」で判断する方が現実的です。
Q7. 童謡ばかり練習しなければいけませんか?
A. その必要はありません。
現在はクラシック、映画、アニメ、ポップスなどをファーストポジションで弾けるように簡略化した初心者向け楽譜があります。
基礎練習用の曲と、好きな曲を並行して練習する方法もあります。
Q8. カイザーは完全初心者向けの練習曲ですか?
A. 基本テクニックを身につける重要な練習曲集ですが、楽器を持った最初の日に弾く童謡型の入門曲とは性格が違います。
ファーストポジションなどの基礎を学んだあと、さらに技術を固める教材として考えるとわかりやすいです。
まとめ
バイオリン初心者が曲を選ぶときは、「有名だから簡単そう」ではなく、今の技術で無理なく最後まで弾ける編曲かどうかを基準にすることが大切です。
- 最初はファーストポジション中心の曲を選ぶ
- 音域・リズム・テンポ・移弦・臨時記号を確認する
- メリーさんの羊やきらきら星など、短く知っている曲は入門に向く
- カノンやG線上のアリアは初心者向け編曲を選ぶ
- 情熱大陸などの有名曲にもファーストポジション向け教材がある
- 「初心者向け」という表示だけでなく実際の譜面も確認する
- 普通の曲とエチュードでは練習の目的が違う
- 速く弾く前に、正しい音程と左右の動きをゆっくり確認する
初心者のうちは、「この曲を完璧に弾かなければ次へ進めない」と考えすぎる必要はありません。
まずは今の自分に合う短い曲を1曲選び、最後まで弾くことを目標にしてみましょう。
1曲を通して弾けるようになると、次は移弦が少し多い曲、スラーが入る曲、少しテンポが速い曲というように、練習する内容を少しずつ増やせます。
有名なクラシックやポップスも、初心者用の編曲なら早い段階から挑戦できるものがあります。
大切なのは、原曲と同じ難易度で弾くことではなく、今の技術に合った形で好きな曲を楽しみながら、少しずつ演奏できる範囲を広げていくことです。
楽譜や教材の価格、在庫、仕様、収録内容は変わる可能性があるため、購入するときは出版社や販売元の最新情報も確認してください。
最初の1曲を無理なく完成させ、その経験を次の1曲につなげていけば、バイオリンで弾ける曲は少しずつ増えていきますよ。
