ピアノのハノンとは?初心者向けの効果的な練習方法を解説

「ピアノのハノンとは?初心者向けの効果的な練習方法を解説」という文字と、ハノンの教本を譜面台に置いたピアノを描いたアイキャッチ画像。 ピアノ
本記事はプロモーションを含みます。画像はイメージを含みます。

ピアノの基礎練習について調べると、よく名前が出てくるのが「ハノン」です。

「初心者でもやった方がいいの?」「指を強くする練習なの?」「何番から始めればいい?」「毎日どれくらい弾けばいい?」と迷う人も多いかなと思います。

結論からいうと、ハノンは最初から速く弾いたり、60の練習をすべて順番にこなしたりする必要はありません。とくに初心者や大人の場合は、目的を1つ決め、短時間・低速・正確に使う方が取り組みやすいです。

「今日は音の粒をそろえる」「左手の遅れを確認する」「薬指と小指がどう動いているかを見る」というように、その日の課題を絞るだけでも練習の意味はかなり変わります。

速さそのものより、指の動き、音の粒、左右のバランス、リズム、そして余計な力が入っていないかを確認する教材と考えると、ハノンの使い方が分かりやすくなります。

  • ハノンとはどのようなピアノ基礎練習なのか
  • 初心者や大人が何番から始めればよいか
  • テンポや練習時間を含めた効果的な使い方
  • 速さや指の独立をどう考えればよいか
  • 痛みや力みを避けるために何へ注意すればよいか
  • 自分に合うハノン教本をどう選べばよいか

ハノンは、使い方が分かると短時間のピアノ基礎練習として取り入れやすい一方、目的を決めずに長時間反復すると「退屈」「疲れる」「ただ指を動かしているだけ」と感じやすい教材でもあります。

この記事では、初心者や大人が無理なく続けるための考え方を中心に、何番から始めるか、1日何分くらい使うか、メトロノームをどう使うか、やってはいけない練習まで順番に整理します。

ピアノのハノンとは?基礎練習の目的

一般に「ハノン」と呼ばれているのは、フランスのピアノ教育者・作曲家であるシャルル=ルイ・ハノンによるピアノ練習曲集です。

原題は「Le Pianiste virtuose, en 60 exercices」、英語では「The Virtuoso Pianist in 60 Exercises」と呼ばれ、60の練習を通してピアノ演奏の基礎的な動きを整えていく教材です。初版は1873年とされ、日本でも長く使われてきました。

日本では「ハノン・ピアノ教本」「全訳ハノンピアノ教本」などの名称で扱われています。出版社や版によって表紙、解説、編集内容などが異なる場合はありますが、「ハノン」といえばこの練習曲集を指すのが一般的です。

内容は大きく分けると、第1部の1〜20番、第2部の21〜43番、第3部の44〜60番で構成されています。

区分 番号 主な内容 初心者・大人の考え方
第1部 1〜20番 5本の指を使う反復パターン、指の独立、均等、左右バランスなどの基礎 最初に取り組みやすい範囲。まず1番から少数だけでよい
第2部 21〜43番 より高度な指の練習、音階、アルペジオ、親指くぐりなどにつながる内容 第1部が安定してから考えればよい。初心者が急いで進む必要はない
第3部 44〜60番 トリル、重音、オクターブ、反復音など、より高度な技巧課題 入門段階では優先度が低い。難しい課題は指導を受けながら扱う方が安心

ハノンというと「指を鍛える教本」「指を強くする教本」と紹介されることがあります。

ただし、ここでいう「強くする」を、鍵盤を強い力で押し込んだり、指だけを高く持ち上げて筋力を鍛えたりすることだと考えると、本来の使い方からずれてしまいます。

大切なのは、5本の指をできるだけ均等に扱い、左右の手をそろえ、一定のリズムの中で必要な指をコントロールできるようにすることです。

さらに、指だけを孤立させて考えるのではなく、手首や腕が必要以上に固まっていないかも確認します。ピアノは指だけで演奏するわけではないからです。

同じ音型を繰り返すハノンは、楽曲ほど音楽的な情報が多くありません。その分、「今どの指が遅れたか」「左右で音量が違わないか」「テンポが揺れていないか」といった基礎的な問題へ意識を向けやすいというメリットがあります。

ハノンで身につく指の独立と均等

ピアノを始めると、5本の指が同じようには動かないことに気づくと思います。

親指や人差し指は比較的動かしやすいのに、薬指では隣の指まで一緒に動く、小指だけ音が弱くなる、左手になると急にリズムが不安定になる、といったことは珍しくありません。

そこで役立つのが、ハノンのような単純な反復パターンです。

曲の中では、音程、リズム、強弱、フレーズ、ペダルなど、同時に意識することがたくさんあります。そのため、指の動きに少し問題があっても、ほかの要素に気を取られて見逃してしまうことがあります。

一方、ハノンでは似た音型を繰り返すため、自分の指の特徴を観察しやすくなります。

ハノンで確認しやすいこと

  • 薬指や小指だけ遅れていないか
  • 特定の指だけ音が強く飛び出していないか
  • 右手と左手でタイミングがずれていないか
  • 得意な部分だけテンポが速くなっていないか
  • 苦手な部分で手首や肩が固くなっていないか
  • 小さい音でも一音ずつ抜けずに鳴らせているか

たとえば1番を弾く場合でも、単に最後まで間違えずに弾けば終わりではありません。

右手と左手の音量はそろっているか、特定の指だけ強く飛び出していないか、リズムが急いでいないか、手首が固まっていないか、といったことを確認します。

このとき重要なのが「音を聴くこと」です。

ハノンは「指の体操」という印象から、手元だけ見て機械的に動かしてしまいがちです。しかし、音の粒をそろえたいのであれば、実際に鳴っている音を聴かなければ判断できません。

「3の指だけ少し強い」「左手の4と5の指のところでテンポが遅れる」というように、耳で問題を見つけ、それを手の動きと結びつけていきます。

また、「指の独立」という言葉も誤解しやすいところです。

5本の指を完全に別々の部品のように動かすという意味ではなく、必要な指を動かしたときに、不必要な力みや大きな連動を減らしていくと考える方が実用的です。

薬指や小指が動きにくいからといって、必要以上に高く持ち上げたり、鍵盤へ叩きつけたりする必要はありません。むしろ、その方法で肩や前腕まで力んでしまうなら、速度や音量を下げた方がよいでしょう。

同じ音型だからこそ、こうした細かな違いに耳を向けやすい。ここがハノンの大きな特徴です。

ハノンだけでは身につかないこと

ハノンは便利な基礎練習ですが、ハノンだけを続ければピアノ演奏に必要な力がすべて身につくわけではありません。

ハノンが得意なのは、指の独立、均等な動き、左右のバランス、一定のテンポなど、主に演奏技術の土台となる部分です。

一方、実際の曲ではフレーズの流れ、強弱、音色、ペダル、和声、曲全体の構成なども考える必要があります。

また、初見力や読譜力そのものも、ハノンだけでは十分に伸ばせません。ハノンの音型に慣れてしまえば、毎回新しい楽譜を読む練習とは性質が違ってくるからです。

そのため、ハノンは曲の代わりではなく、曲を弾きやすくするための基礎練習として位置づけるのがおすすめです。

教材・練習 主な目的 ハノンとの違い
ハノン 指の独立、均等、反復運動、左右バランス 単純な音型の中で指の動きへ集中しやすい
スケール 調性感、親指くぐり、音階の理解 調と鍵盤配置を結びつけて練習できる
アルペジオ 和音分散、広い音域の移動 指だけでなく手首や腕の移動も重要になる
ツェルニーなどの練習曲 さまざまな技巧を曲に近い形で練習 ハノンより音楽的な要素が増える
ブルグミュラーなどの曲集 表現、フレーズ、曲想と技術の結びつき 技術を実際の音楽として使う練習になる
実際の曲 読譜、表現、ペダル、構成などを総合して演奏 複数の要素を同時に扱う必要がある

つまり、「ハノンを全部終わらせればピアノが上手になる」と考えるのは少し違います。

ハノンで指の動きを整え、その感覚をスケールや曲へ持っていく。曲で弾きにくいところがあれば、また基礎練習へ戻って動きを確認する。この往復が大切です。

自分ではその動きが合っているか判断しにくい場合は、ピアノレッスンで講師に確認してもらう方法もあります。

ハノン5分、スケール数分、そのあとに曲の練習というように、ピアノ基礎練習全体の一部として使うとバランスを取りやすいですよ。

とくに練習時間が限られている大人の場合、ハノンだけで30分使い切ってしまい、弾きたい曲に触れられない状態は避けたいところです。大人向けの練習全体の組み立て方については、ピアノが上達しない大人が劇的に変わる効率的な練習法でも詳しく解説しています。

基礎練習は、曲を楽しむための土台。基礎練習そのものが目的になりすぎないようにしましょう。

初心者や大人もハノンを使える?

ハノンは上級者だけの教材ではありません。

第1部の1〜20番には、5本の指を使う比較的分かりやすい反復パターンが多く、初心者の基礎練習にも使われます。

ただし、楽譜を読むこと自体にまだ慣れていない人が、最初から原典に示される速さや練習量を目指す必要はありません。

ハノンが合うかどうかは、年齢だけでは決まりません。

単純なパターンをコツコツ繰り返すのが苦にならず、「自分の指や音を観察する練習」がしたい人には使いやすいでしょう。

反対に、単調な練習が苦手で、ハノンを始めたことでピアノ自体が嫌になってしまうなら、無理に毎日続ける必要はありません。

ピアノの基礎練習には複数の方法があります。ハノンはその一つです。

大人からピアノを始める人や、長いブランクのあとに再開する人も、今の手の動きに合わせて無理なく使うことが大切です。

初心者は1番から少しずつ始める

初めてハノンを使うなら、基本的には1番から始めれば大丈夫です。

ただし、最初の目標は「1番をできるだけ速く弾くこと」ではありません。

ゆっくり弾いてもリズムが崩れない、左右の音がそろう、同じくらいの音量で弾ける、体が固まらないという状態を目指します。

最初は右手だけ、次に左手だけ。それぞれの指番号と音型が分かってから両手に進む方法でも十分です。

譜読みが不安定な状態で両手を無理に合わせると、音を読むこと、指番号を確認すること、テンポを維持することを同時に処理しなければならず、余計な力が入りやすくなります。

初心者の場合は、次のような順番で進めると整理しやすいです。

  1. 楽譜を見て、右手の音と指番号を確認する
  2. 右手だけをゆっくり弾く
  3. 左手の音と指番号を確認する
  4. 左手だけをゆっくり弾く
  5. 両手で非常にゆっくり合わせる
  6. 音と動きが安定してからテンポを一定にする

片手練習や超スローテンポでの分割練習は、ハノン以外の曲でも使える基本的な方法です。初心者向けの練習全体については、ピアノ初心者が上達する練習法も参考になります。

この段階では、メトロノームを必ず使わなければならないわけではありません。

まだ音や指番号を確認している途中なのにクリック音へ無理に合わせようとすると、「止まってはいけない」という意識が強くなり、間違った指使いや力みをそのまま通過させてしまうことがあります。

まず音型を理解し、そのあとで一定のテンポを確認する。この順番でも問題ありません。

1番だけでも練習内容は増やせます。

レガート、スタッカート、付点リズム、逆付点リズム、左右の強弱変更などを加えれば、同じ番号でも違う課題として使えます。毎日たくさんの番号を進める必要はありません。

たとえば、1番を普通に弾くと問題がないのに、付点リズムにすると特定の指だけ動きが遅れることがあります。その場合、次の番号へ進むことより、今見つかった動きにくさを丁寧に確認する方が基礎練習として意味があります。

慣れてきたら2番、3番、4番と少しずつ増やせばよく、初心者が第2部や第3部まで急いで進む必要もありません。

「今日は何番まで進んだか」を成績のように考えなくて大丈夫です。

1番だけを丁寧に使う期間があっても構いませんし、1番と2番を交互に使っても構いません。

第3部にはトリル、重音、オクターブなど、より高度な技巧を扱う内容もあります。入門段階では、第1部を丁寧に使うだけでも十分な基礎練習になります。

また、完全初心者で譜読みそのものがまだ大きな負担になっている場合は、標準的なハノンより、説明や予備練習が加えられた初心者・大人向けの版の方が取り組みやすいこともあります。

難しい教本を持つことより、内容を理解して続けられることを優先してください。

大人や再開組は短時間練習でよい

大人になってからピアノを始めた人でも、ハノンを使う意味はあります。

大人は「今日は左手を安定させよう」「今日は薬指と小指の動きを確認しよう」と、練習目的を理解したうえで取り組みやすいのが強みです。

一方で、「せっかく練習するならたくさんやらないと」「子どもの頃から習っている人に追いつきたい」と考えて、必要以上に反復してしまうことには注意したいところです。

仕事や家事のあとで疲れている日なら、1番を1回だけ、右手だけ、数小節だけでも構いません。

「時間がないから今日は基礎練習ゼロ」と考えるのではなく、「今日は3分だけ確認する」という選択肢もあります。

短時間なら、練習前のウォーミングアップとしても使いやすいです。

ブランクがある人も、昔弾けていた速さをすぐに取り戻そうとせず、現在の手の状態を確認するところから始めた方がよいでしょう。再開時の練習量や考え方は、60歳からピアノ再開は遅くない!大人のための成功ガイドでも扱っています。

昔は楽に弾けたテンポでも、長くピアノから離れていれば、指や腕の感覚は変わっている可能性があります。

そこで「昔はもっと速かったから」と一気にテンポを上げると、音は追えても肩や腕に力が入りやすくなります。

まずは現在の自分にとって余裕のある速度で、音の粒と動きを確認する。そのうえで少しずつ戻していけば十分です。

大人のハノンは「量」より「目的」を決める

  • 左手の動きを確認する日
  • 音の粒をそろえる日
  • 力まずに小さな音で弾く日
  • 一定のテンポを保つ日
  • 曲の前に手を動かすだけの日

このように役割を決めると、短時間でも「何を練習したか」が分かりやすくなります。

年齢だけで練習量を決めるのではなく、その日の疲れ、体の柔軟性、集中力、翌日に違和感が残っていないかなどを見ながら調整してください。

大人やシニアの場合、とくに「昨日できたから今日も同じ量をやらなければ」と固定しない方が続けやすいです。

調子のよい日と疲れている日で練習内容が違っても問題ありません。

ハノンの効果的な練習方法

ハノンを効果的に使うために重要なのは、「何回弾いたか」より「何を確認しながら弾いたか」です。

同じ1番でも、目的が違えば練習内容は変わります。

音の粒をそろえたい日、左手を安定させたい日、テンポの揺れを確認したい日など、最初に目的を1つ決めておくと、単調な反復になりにくくなります。

おすすめなのは、練習を始める前に「今日は何を直したいか」を一言で決めることです。

たとえば「今日は左手」「今日は弱い音」「今日はテンポ」と決めます。

目的を一つにすると、弾き終わったあとに「できたか、できなかったか」を判断しやすくなります。

反対に、「指を強くして、速くして、脱力して、左右をそろえて、音色もきれいにする」と全部同時に考えると、何を直しているのか分からなくなりがちです。

また、練習前には姿勢も確認しておきましょう。

  • 椅子は鍵盤の中央へ向ける
  • 足裏を床につけて安定させる
  • 肩を必要以上に持ち上げない
  • 肘の位置を無理のない高さにする
  • 手を不自然に握り込まない
  • 手首を固めたままにしない

「正しい形を作って固定する」というより、必要に応じて自然に動ける状態を保つイメージです。

ピアノでは同じ姿勢のまま全く動かないわけではありません。だからこそ、手首や腕を固めて形だけ守ろうとしないことが大切です。

片手からゆっくり正確に確認する

まずは右手だけ、左手だけと片手ずつ弾きます。

片手練習では、指番号を守れているか、薬指や小指だけ遅れていないか、音量が極端にばらついていないかを確認します。

特に左手が右手より不安定に感じる場合、両手で何度も通すよりも、左手だけへ分けた方が問題を見つけやすいです。

両手で弾いていると、右手につられて左手が何となく動いているように感じることがあります。ところが左手だけにすると、特定の指で止まる、音が小さくなる、テンポが崩れる、といった弱点が分かりやすくなります。

両手を合わせたときに左手がつられる問題そのものを詳しく確認したい場合は、ピアノの左手がつられる悩みを解消する練習法も参考にしてください。

そのとき、いきなり何十回も反復する必要はありません。

まずは遅いテンポで、どの指からどの指へ移るときに崩れるのかを確認します。

たとえば3の指から4の指へ移るところだけ不安定なら、その動きを意識しながら数回ゆっくり弾きます。

「苦手だから速く何度も通す」より、「苦手だから遅く観察する」という考え方です。

片手で安定したら、ゆっくり両手で合わせます。

この段階でも、速さを追わないことが大切です。

両手で確認したい4項目

  • 音を間違えていないか
  • 左右のタイミングが合っているか
  • 音量が極端にばらついていないか
  • 肩・腕・手首に余計な力が入っていないか

両手で弾いた瞬間に崩れるなら、片手ではできていても、両手を同時に処理する余裕がまだ足りないということです。

その場合はテンポを下げます。

「遅くするのは後退」と感じるかもしれませんが、基礎練習では逆です。遅くすることで問題点を確認できるなら、その方が練習として前に進んでいます。

また、ゆっくり弾くときほど指を一音ずつ大きく持ち上げすぎないよう注意してください。

テンポが遅いからといって、毎回鍵盤から指を大きく離す必要はありません。必要以上に大きな動きを作ると、速くしたときにその動きが負担になることがあります。

小さく自然な動きでも、一音ずつはっきり鳴っているかを聴いてみましょう。

メトロノームでテンポを安定させる

ハノンと相性がよい道具の一つがメトロノームです。

ただし、メトロノームは「速く弾けるように自分を追い込む道具」ではありません。

自分では一定に弾いているつもりでも、得意な部分で速くなり、苦手な部分で遅くなっていないかを確認する道具と考えてください。

最初はメトロノーム60前後を一つの目安にできますが、この数字に合わせなければならないわけではありません。

60でも音が崩れるなら、50や40など、余裕を持ってコントロールできる速さまで下げて構いません。

大切なのは、「設定した数字」ではなく、そのテンポの中で音、指、姿勢をコントロールできるかどうかです。

たとえば60では間違えないものの肩が上がる、50なら自然に弾ける、という場合は50から始める方がよいでしょう。

反対に、ゆっくり弾くことでかえって指を持ち上げすぎたり、鍵盤を一音ずつ強く押し込んだりする場合もあります。

数字だけを見るのではなく、自分が自然に動けるテンポを探してください。

第1部については、原典系の指示でメトロノーム60から始め、徐々に108へ上げる考え方が示されています。

ただし、初心者が108を必須目標にする必要はありません。

「108まで行かなければハノンをやった意味がない」と考える必要もありません。

1回偶然弾けたからテンポを上げるのではなく、何度か続けても音やフォームが崩れない状態になってから、少しだけ速くする方が安定します。

テンポを上げる判断基準

間違えないことだけでなく、音の粒、左右のタイミング、肩や手首の状態まで安定しているか確認してください。速くした途端にどれかが崩れるなら、ひとつ前のテンポへ戻します。

テンポを上げた途端に肩が上がる、手首が固まる、鍵盤を強く叩くようになるなら、そこが現在の限界に近いサインです。

また、メトロノームを使う前に、手拍子でリズムを確認する方法もあります。

手がまだ音型に慣れていない場合、「クリックを聴く」「音を読む」「指を動かす」を全部同時に行うのは難しいことがあります。

まずリズムだけ理解し、そのあと片手、そのあと両手、と段階を分けると混乱しにくいです。

メトロノームは専用機でなくても、電子ピアノに内蔵された機能やスマートフォンのアプリでも構いません。

スマートフォンを使う場合は、通知などで集中が切れるようなら、練習中だけ通知を抑えるなどの工夫もできます。

「高価な道具を買えば練習効果が上がる」というものではなく、一定のテンポを確認でき、自分が使いやすければ十分です。

リズム変奏で指と音の粒を整える

毎日同じ音型を同じように弾いていると、どうしても飽きやすくなります。

そんなときに使いやすいのがリズム変奏です。

たとえば均等な音符をそのまま弾くだけでなく、「長い・短い」「短い・長い」という付点系のリズムに変えてみます。

すると、通常のテンポでは勢いで通過していた指の動きを、一音ずつ意識しやすくなります。

付点リズムと逆付点リズムの両方を使うと、長く保つ音とすぐ動く音の位置が入れ替わるため、苦手な指が見つけやすくなります。

レガート、スタッカート、アクセント位置の変更、右手を少し強くして左手を弱くする練習、逆に左手を強くする練習なども利用できます。

変奏方法 確認しやすいこと
レガート 音と音を滑らかにつなぎながら指を動かせるか
スタッカート 短い音でも左右のタイミングをそろえられるか
付点リズム 苦手な指の切り替えや動きの遅れ
逆付点リズム 付点とは反対側の指の動きや切り替え
アクセント変更 特定の拍や指だけでなく、位置を変えてコントロールできるか
右手を強く・左手を弱く 左右を別々の音量でコントロールできるか
左手を強く・右手を弱く 左手を意識しながら右手を抑えられるか
小さな音 弱い音量でも音抜けせず、粒をそろえられるか

とくに、小さい音でも全部の音を鳴らす練習は使いやすいです。

大きな音で弾くと勢いで鳴らせても、音量を落とすと特定の指だけ鳴りにくくなることがあります。

そこで、小さい音量のまま全部の音がそろっているかを確認します。

ただし、変奏の種類をたくさん詰め込む必要はありません。

今日は付点リズムだけ、明日はスタッカートだけ、と1つに絞る方が「何のために変えたのか」が分かりやすくなります。

退屈さ対策としても有効ですが、「変化をつけること」そのものが目的にならないようにしましょう。

変奏した結果、何が弾きにくかったのかを確認し、最後に通常のリズムへ戻して変化があるか確かめるところまで行うと、練習の意味がつながります。

ハノンは1日何分練習すればよい?

ハノンの練習時間に、すべての人に共通する正解はありません。

初心者なら3〜5分程度から始め、慣れてきても5〜10分ほどを目安にする方法があります。

大人の再開組なら5〜15分程度、中級者以上でもハノンだけに長時間を使うのではなく、ほかの基礎練習や曲との配分を考えたいところです。

レベル・状況 練習時間の一般的な目安 内容
完全初心者 3〜5分 1番を片手で確認し、余裕があればゆっくり両手
初級者 5〜10分 1〜3曲程度を目的別に練習
大人の再開組 5〜15分 ウォームアップ、音の粒、左右差の確認
中級者以上 10〜20分程度 複数番号、リズム変奏、スケールなどと組み合わせる
疲れや痛みが出る場合 時間より中止を優先 練習量を減らし、フォームや体の状態を見直す

これらはあくまで一般的な目安です。

「初心者は必ず5分」「大人は必ず15分」と固定する必要はありません。

同じ人でも、練習内容によって負担は変わります。

ゆっくり1番だけを確認する5分と、複数の番号を速いテンポで繰り返す5分では、手や集中力への負担は同じではありません。

そのため、時計だけでなく、自分の音と体の状態も見てください。

「10分と決めたから痛くても10分続ける」という使い方では意味がありません。

3分でも集中して弾ければ立派な基礎練習ですし、時間がない日は数小節だけでも構いません。

大切なのは、短い時間でも「今日の目的」を持つことです。

たとえば5分しかない場合、次のような練習もできます。

5分だけハノンを使う例

  1. 最初の1分:片手で音型と力みを確認
  2. 次の2分:両手をゆっくり一定のテンポで弾く
  3. 次の1分:付点リズムなど一つだけ変奏する
  4. 最後の1分:通常のリズムへ戻して変化を確認する

毎回この通りにする必要はありませんが、「とりあえず何となく10分弾く」より内容が分かりやすくなります。

また、ハノンの時間を増やした結果、曲の練習時間がほとんどなくなるなら、配分を見直しましょう。

ハノンで整えた動きを実際の曲へつなげるところまでが大切だからです。

練習中の曲で左手が崩れるなら、ハノンで左手を確認したあと、その曲の該当部分を弾いてみます。

ハノンと曲が別々の練習にならず、「基礎で確認したことを曲で使う」という流れを作ると目的が明確になります。

速さより脱力と正確さを優先する

ハノンではテンポの数字が分かりやすいため、つい「昨日より速く弾けた」と成果を測りたくなります。

もちろん速さも演奏技術の一部ですが、速くしたことでフォームが崩れるなら、その速さはまだ自分のものになっていません。

練習中は、肩が上がっていないか、前腕が固まっていないか、手首を固定していないか、指を必要以上に高く持ち上げていないかを確認します。

速くても力んでいる演奏より、遅くても音がそろい、余裕を持って動ける演奏の方が基礎練習として意味があります。

テンポを上げるときも、数字を大きく飛ばすのではなく、小さな幅で調整してください。

たとえば、あるテンポでは自然に弾けているのに、少し上げた瞬間に薬指が強くなる、肩が上がる、左手が遅れる、といった変化が出ることがあります。

その変化を「まだ速さが足りない」と考えてさらに上げるのではなく、「この速度から動き方が変わった」と観察します。

そのあと、いったん余裕のあるテンポへ戻します。

戻したテンポで、さっき崩れた部分を意識しながら弾き直し、安定してから再度少し速くします。

速く弾けるようになるためには、最初から速く弾き続ける必要はありません。

むしろ、遅い速度で動きを整理し、それを少しずつ速いテンポへ移していく方が、どこで崩れたかを把握しやすくなります。

そして、ハノンのあとに練習する曲でも同じ動きが使えているかを確認します。

ハノンだけ速く弾けても、実際の曲で手が固まってしまえば目的から外れてしまいます。

「ハノンの速度」は記録のための数字ではなく、自分のコントロールを確認する一つの材料として扱いましょう。

ハノンでやってはいけない練習

ハノンは反復が多い教材だからこそ、間違ったフォームのまま続けると、その動きを何度も繰り返してしまいます。

特に注意したいのは、最初から速く弾くこと、全曲を毎日こなそうとすること、手首を固めること、指を必要以上に高く上げること、鍵盤を強く叩きつけることです。

避けたい練習方法

  • 最初から速いテンポで弾く
  • 全曲を毎日こなそうとする
  • 痛みを我慢して続ける
  • 肩を上げたまま弾く
  • 手首を固める
  • 指を必要以上に高く上げて力む
  • 鍵盤を叩きつける
  • 音の粒を聴かず、指だけを動かす
  • メトロノームの数字だけを追う
  • 苦手な箇所を雑に通過する
  • 疲れているのに反復を続ける
  • フォームが崩れているのに練習量で解決しようとする

とくに初心者がやりやすいのが、「ハノンは指を鍛えるものだから、できるだけ指を高く上げて強く弾こう」という練習です。

指の動きを確認するために少し意識することはあっても、肩や前腕まで固くなるほど大げさに持ち上げる必要はありません。

大きな動きでなければ音が出せない状態より、小さな動きでも音をコントロールできる状態を目指します。

もう一つ避けたいのが、メトロノームの数字だけを成果にすることです。

昨日80だったから今日は84、明日は88というように数字だけを上げていくと、音のばらつきや力みを見逃しやすくなります。

テンポを上げた結果、音がそろわなくなったら、そこで一度止める判断も練習の一部です。

また、「1〜20番を毎日全部やる」など、量を固定する必要もありません。

自分が今必要としている番号だけ選ぶ方法もあります。

曲の中で特定の指が動きにくいなら、その日に近い課題を持つハノンを数分使う。そうした使い方でも構いません。

指番号についても、理由なく毎回違う指使いにしてしまうと、同じ動きを比較しにくくなります。

まずは教本の運指を基準にし、特別な事情がある場合は指導者に相談しながら調整する方がよいでしょう。

そして何より、「疲れているけれど決めた回数が終わっていないから続ける」という練習は避けてください。

ハノンは回数を消化するための教材ではありません。

音や体の状態を確認できなくなった時点で、その日の基礎練習としての質は下がっています。

手や腕が痛いときは練習を中止する

ハノンを弾いて手首、前腕、肘、肩、指などに痛みが出た場合、「鍛えられている証拠」と考えて続けないでください。

痛みは練習を増やす合図ではなく、いったん止めて原因を確認する合図です。

原因としては、急に練習時間を増やしたこと、同じ動作の過度な反復、肩や腕の力み、手首の固定、姿勢、休憩不足など、複数の可能性があります。

とくにハノンは同じような動きを反復するため、「あと1回だけ」と続けているうちに回数が増えやすいところがあります。

痛みや違和感が出たら、その日は止めることを優先してください。

再開する場合は、テンポ、音量、反復回数、練習時間を減らし、どの条件で違和感が出るのかを確認します。

たとえば、速いテンポだけで違和感が出るなら速度を下げる、大きな音で弾いたときだけ力むなら音量を落とす、長く続けると疲れるなら時間を短くする、といった調整が考えられます。

ただし、自分で原因を断定しないことも大切です。

しびれ、鋭い痛み、熱感、長引く違和感がある場合は、ピアノの練習だけで解決しようとしないでください。

痛みがあるときの優先順位

  1. その場で練習を中止する
  2. 練習量やフォームを見直す
  3. 再開する場合はテンポ・音量・回数を減らす
  4. 違和感が続く場合は専門家へ相談する

痛みが続く場合や原因が分からない場合は、ピアノ講師だけでなく、必要に応じて医療機関や手・腕を専門的に診られる専門家へ相談してください。

ピアノ講師には演奏フォームを見てもらい、医療的な問題については医療機関で判断してもらうなど、役割を分けて考えるとよいでしょう。

大人やシニアの場合、若い頃の感覚で急に長時間練習へ戻さないことも大切です。

ブランクがあるなら、最初の数日は数分から始め、翌日に違和感がないかも含めて様子を見ながら増やしていきます。

健康に関する感じ方や原因には個人差があります。自己判断で無理に練習を再開せず、必要な場合は専門家へ相談してください。

自分に合うハノン教本の選び方

ハノンを始めるときは、必ずしも全員が同じ教本を選ぶ必要はありません。

長く使える標準的な版を選ぶ方法もあれば、大人初心者向けに解説や予備練習が追加された版を選ぶ方法もあります。

標準的なハノン教本は、第1部からその先まで幅広く収録されているため、長期間使いやすいのが利点です。国内では、全音楽譜出版社の「全訳ハノンピアノ教本」公式ページで、収録教本名、判型、ページ数などの現行情報を確認できます。購入先を探す場合は、Amazonで「全訳ハノンピアノ教本」を確認できます。

一方、初めてハノンに触れる人には「どう練習すればいいのか説明が少ない」と感じることがあります。

その場合、大人向け版や解説付きの版が候補になります。

大人向け版では、第1部の内容を中心にしたり、予備練習、練習ポイント、リズム練習などを追加したりした教本があります。

また、従来のハノンから内容を抜粋し、脱力や無理のない奏法について説明を加えたタイプもあります。

「標準版と大人向け版のどちらが上か」という問題ではなく、あなたが何を必要としているかで選びます。

選び方 向いている人 確認したい点
標準的なハノン教本 基礎から長く使いたい人、将来的に第2部以降も取り組みたい人 収録範囲、解説量、版による違い
大人向け版 初めてハノンに取り組む大人、久しぶりにピアノを再開する人 収録されている番号、予備練習、解説の量
解説付き・動画対応版 独学で練習方法も確認したい人 説明内容、動画で確認できる範囲、運指

「長く使いたいから」という理由なら標準版を選びやすいでしょう。

反対に、「まず第1部だけ無理なく始めたい」「文章で練習ポイントを確認したい」という人は、大人向け・解説付きの版が取り組みやすい可能性があります。

譜読みがまだ不安なら、ページを開いたときに情報量が多すぎないことも判断材料になります。

楽譜自体を読むことに慣れていないのに、説明の少ないページを見て「何をすればいいのか分からない」となると、基礎練習以前のところで止まりやすいからです。

逆に、すでに譜読みや基礎練習に慣れていて、長期間使える一冊を探しているなら、収録範囲の広い標準版が使いやすいでしょう。

教本を選ぶときは、次の点を確認すると比較しやすいです。

  • 何番まで収録されているか
  • 練習方法の説明があるか
  • リズム変奏などの例が掲載されているか
  • 初心者向けの予備練習があるか
  • 自分が長く使いたいのか、導入だけ使いたいのか

「標準版だから必ず優れている」「大人向けだから簡単すぎる」とは限りません。

譜読みの経験、現在のレベル、どこまで長く使いたいかで選ぶ方が失敗しにくいです。

また、メトロノームについても、専用機を必ず買わなければならないわけではありません。

電子ピアノに内蔵されている機能やスマートフォンのアプリでも、一定のテンポを確認する目的は果たせます。

専用のメトロノームを選ぶなら、数字が見やすいこと、音が聞き取りやすいこと、操作が面倒でないことなど、毎日使いやすいかを基準にするとよいでしょう。

「高機能なら良い」というより、練習を始めたいときにすぐ使えるものの方が、基礎練習では役立つことがあります。

スマートフォンアプリなら追加の機器を用意せず使いやすい一方、通知などで集中が切れる人もいるでしょう。

電子ピアノにメトロノーム機能があるなら、それを使えば十分な場合もあります。

購入前には、自分がすでに持っている機能も確認してみてください。

教本の価格、仕様、収録内容、在庫状況などは改訂や販売時期によって変わる可能性があります。購入するときは出版社や販売元などで最新の内容を確認してください。

中古や古い版を選ぶ場合も、現在販売されている版とは表紙、価格、ページ数、解説内容などが異なる可能性があります。

「ハノンならどれでも完全に同じ」と考えず、必要な解説や収録範囲を確認して選ぶと安心です。

独学でハノンを使う場合は、鏡やスマートフォンの録画を利用して、自分の動きを確認する方法もあります。

録画するときは手元だけではなく、可能なら手首、肘、肩まで見える角度にします。

指だけを映すと「音は弾けている」ことは分かっても、肩が上がっている、肘が固まっているといったことは確認しにくいからです。

録画を見返すときは、見た目の美しさよりも、次のような点を確認します。

  • 肩が片方だけ上がっていないか
  • 手首をずっと固定していないか
  • 特定の指を大きく持ち上げすぎていないか
  • 左右で動きの大きさが極端に違わないか
  • 速くなるほど全身が固まっていないか

録音も使えます。

演奏している最中は指を動かすことに集中していて、音のばらつきを聞き逃している場合があります。

あとで聴き直すと、「ここだけ左手が強い」「この部分で少し急いでいる」といったことに気づきやすくなります。

ただし、自分では判断しにくい力みやフォームもあります。

痛みが出る場合や、同じ箇所で何度も弾きにくさを感じる場合は、一度ピアノ講師などに動きを確認してもらう方法もあります。

オンラインレッスンを利用する場合も、ハノンのような短い反復パターンは、指番号、左右差、テンポの乱れ、手首や肩の状態などを確認してもらう題材として使えます。独学で判断しにくい部分を見てもらいたい場合は、自宅から受けられるピアノレッスンを利用する方法もあります。

その場合も、鍵盤だけではなく手首や肘まで映るようにカメラを置くと、フォームを確認してもらいやすくなります。

ハノンは「どの本を買うか」以上に、「どのように使うか」で練習内容が大きく変わります。

自分に合った版を選び、短時間でも目的を持って続けられる形を作ることが大切です。

ピアノのハノンに関するよくある質問(FAQ)

Q1. ハノンはピアノ初心者にも必要ですか?

A. 必須ではありません。ただし、指の独立、左右のバランス、音の粒をそろえる練習には使いやすい教材です。完全初心者なら、楽譜の読み方や姿勢、簡単な曲の練習と並行しながら、1番を数分だけ使う程度から始めると取り組みやすいでしょう。ハノンをやらないと上達できないわけではないので、自分に合うかどうかも含めて判断してください。

Q2. 大人からハノンを始めても遅くありませんか?

A. 年齢だけを理由に遅いと考える必要はありません。大人は練習の目的を理解しながら取り組みやすいため、「左手を安定させる」「音の粒をそろえる」など目的を決めて短時間使う方法があります。ただし、早く上達したい気持ちから反復量を増やしすぎないようにし、疲労や力みに合わせて練習量を調整してください。

Q3. ハノンは何番まで練習すればよいですか?

A. 初心者なら、第1部の1〜20番を中心に考えれば十分です。最初は1番だけでも構いません。「何番まで終わったか」より、現在取り組んでいる番号を余計な力を入れず安定して弾けることを優先してください。第2部、第3部へ急ぐ必要はありません。

Q4. ハノンは毎日やった方がよいですか?

A. 無理なく短時間続けられるなら、毎日のウォーミングアップとして使えます。ただし、毎日必ず行わなければ意味がないわけではありません。疲れや違和感がある日は休み、曲の練習時間を圧迫しすぎない範囲で取り入れてください。短時間でも集中して使うことの方が重要です。

Q5. ハノンは1日何分くらい練習すればよいですか?

A. 初心者なら3〜10分程度から始める方法があります。完全初心者なら3〜5分でも構いません。大人の再開組でも5〜15分程度を一つの目安にできます。ただし、すべての人に共通する最適時間があるわけではありません。疲れや痛みがあれば時間に関係なく中止してください。

Q6. ハノンのテンポはどれくらいから始めればよいですか?

A. メトロノーム60前後を一つの目安にできますが、60で力む、間違える、音の粒が崩れるならさらに遅くして構いません。50や40でも、自分でコントロールできる速さから始める方が大切です。初心者が108などの速いテンポを必須目標にする必要はありません。

Q7. ハノンは指を強くする練習ですか?

A. 「指を強くする」と表現されることはありますが、力任せに鍵盤を叩く筋力トレーニングと考えない方がよいでしょう。指の独立、均等、左右のバランス、リズム、音量などをコントロールする基礎練習として考えると分かりやすいです。必要以上に指を高く上げて力む練習は避けてください。

Q8. ハノンだけでピアノは上達しますか?

A. ハノンだけでは十分ではありません。指の基礎練習には使えますが、フレーズ、表現、ペダル、和声感、読譜力などは別に練習する必要があります。スケール、アルペジオ、実際の曲などと組み合わせ、ハノンで確認した動きを曲へつなげることが大切です。

Q9. 手が痛くなるのは普通ですか?

A. 痛みを「普通の練習反応」と考えてそのまま続けないでください。痛みが出たらいったん中止し、姿勢、力み、手首の状態、練習量などを見直します。しびれ、鋭い痛み、長引く違和感などがある場合は、練習だけで解決しようとせず、必要に応じて医療機関などへ相談してください。

Q10. 標準版と大人向け版はどちらがよいですか?

A. 長く使いたい人や第2部以降も取り組みたい人は標準的な版を選びやすいでしょう。一方、初めてハノンを使う大人や、説明が欲しい人は、大人向け版や解説付き版が取り組みやすい場合があります。収録範囲だけでなく、解説量や予備練習の有無も確認して選んでください。

Q11. ハノンが退屈で続かないときはどうすればよいですか?

A. 無理に長時間やらず、曲の前に3〜5分だけ使う方法があります。レガート、スタッカート、付点リズム、左右の強弱変更などを加えると、同じ番号でも違う課題として使えます。それでも苦痛が強い場合は、ハノンにこだわらず別の基礎教材を検討して構いません。ピアノ自体を嫌いになるほど続ける必要はありません。

まとめ

ハノンは、ピアノの指を力任せに鍛えるための教本ではありません。

指の独立、音の粒、左右のバランス、リズム、脱力などを確認しながら、演奏の土台を整えるためのピアノ基礎練習として使うのがポイントです。

初心者なら1番から始め、片手で音型を確認してから、ゆっくり両手へ進めば十分です。

最初から1〜20番を全部やる必要もありませんし、第2部、第3部まで急いで進む必要もありません。

1番だけでも、通常のリズム、付点リズム、スタッカート、左右の強弱変更などを使えば、さまざまな目的の練習ができます。

練習時間も長いほどよいわけではありません。

完全初心者なら3〜5分、大人でも5〜15分程度など、自分が集中して正確に弾ける範囲から始めてください。

時間がない日は1番だけ、片手だけ、数小節だけでも構いません。

大切なのは「今日は音の粒」「今日は左手」「今日はテンポ」というように、目的を持って弾くことです。

メトロノームも、速さを競うためではなく、テンポの揺れを確認するために使います。

60前後を一つの目安にできますが、難しければ50や40へ下げても問題ありません。数字を上げることで肩や手首が固まるなら、迷わず遅いテンポへ戻しましょう。

速く弾けるようになりたい場合でも、速さだけを追わないことが大切です。

遅い速度で音、指、左右のタイミングを整理し、安定してから少しずつ速くしていきます。

そして何より、痛みを我慢して続けないでください。

手首、前腕、肘、肩、指などに痛みが出たら、その日は止めて、練習量やフォームを見直します。違和感が続く場合は、練習だけで解決しようとせず、必要に応じて専門家へ相談してください。

ハノンだけですべてのピアノ技術が身につくわけでもありません。

曲、スケール、アルペジオ、読譜、音楽表現などと組み合わせることで、ハノンで整えた基礎が実際の演奏につながっていきます。