ピアノを始めようと思って教本を探すと、バイエル、ハノン、バーナム、ブルクミュラー、ツェルニー、ソナチネなど、たくさんの名前が出てきます。
そこで迷いやすいのが、「結局、どの順番で進めればいいの?」という問題ですよね。
検索しているうちに、「バイエルの次はブルクミュラー」「ハノンも必要」「ツェルニーもやった方がいい」といった情報が次々に出てくると、全部そろえなければいけないように感じるかもしれません。
でも、先に結論を言うと、ピアノ教本には、全員が必ず守らなければならない絶対的な順番はありません。
大切なのは、有名な教本を端から順番に消化することではなく、今の読譜力や両手奏の状態、そして弾きたい曲に必要な技術に合わせて選ぶことです。
初心者なら、まず総合教本を1冊だけ学習の軸にし、足りない部分だけ補助教材で補う。この形にすると、教材ばかり増えて練習の目的を見失いにくくなります。
また、大人の初心者と子どもの初心者でも、使いやすい教本は同じとは限りません。
楽譜の説明が多い方が理解しやすい人もいれば、短い曲をどんどん弾いた方が続きやすい人もいます。音源がある方が安心できる人もいるでしょう。
この記事では、ピアノ入門から初級後半、中級入口までを想定して、教本の順番とそれぞれの役割を整理します。
- 初心者から中級入口までのピアノ教本の進め方
- バイエル・ハノン・ブルクミュラーなどの役割と順番
- 大人の独学初心者が教本を選ぶポイント
- 自分に合わない教本を見分けて挫折を防ぐ方法
ピアノ教本の順番に絶対ルールはない
昔からよく知られている教材の流れはありますが、「バイエルを全部終えたら必ずブルクミュラー、その次は必ずツェルニー」という一本道で考える必要はありません。
ピアノの教材は、それぞれ役割が違います。
読譜やリズム、両手奏を総合的に学ぶ本もあれば、指の動きを整える本、曲として音楽表現を学ぶ本もあります。
この役割の違いを知らずに「有名な順番」だけを追いかけると、自分にはまだ必要のない教材まで増えてしまいます。
まずは「何冊目か」よりも、今の自分に何が足りないのかを考えることが重要です。
初心者は総合教本1冊を軸にする
ピアノを始めたばかりなら、最初に選びたいのは総合教本です。
総合教本とは、鍵盤の位置や指番号、音符の読み方、拍子、リズム、右手と左手の使い方などを段階的に学べる教材のことです。
代表的なものとして、バイエル、大人向けの入門教本、ピアノ・アドヴェンチャー、バスティンなどがあります。
大人向けでは、音符や指番号から説明する教材や、知っている曲を交えながら進む教材もあります。
子ども向けでは、ぴあのどりーむやピアノランドなど、導入段階から音やリズムへ親しめる教材もあります。
ここでありがちな失敗が、「上達したいから教材をたくさん買っておこう」と考えてしまうことです。
バイエル、ハノン、バーナム、ツェルニー、好きな曲集を一気に並べても、それぞれをどのように使えばよいのかわからなくなりがちです。
最初は総合教本1冊を中心に進めるのがおすすめです。
その教本を練習していて不足が見えてきた段階で、必要な教材だけを足していけば十分ですよ。
たとえば音符を読むのに時間がかかるなら、さらに難しい曲集へ進むより、今の教本で譜読みを安定させる方が先です。
右手は弾けるのに左手が入ると止まってしまうなら、簡単な両手奏を繰り返す方が役に立ちます。
拍を数えずに指の位置だけで曲を覚えてしまうなら、リズムの基礎に戻った方が、その後の上達はスムーズになるでしょう。
初心者の段階では、教材の冊数よりも「1冊の中で何ができるようになったか」を見た方が、次の教本を選びやすくなります。
たとえば次のような変化です。
以前は音符を一つずつ数えていたけれど、少しずつ鍵盤の位置がわかるようになった。右手だけだった曲が、簡単な左手伴奏と一緒に弾けるようになった。4分音符だけでなく8分音符や休符も読めるようになった。
こうした変化こそが、次の教材へ進む目安になります。
教本の最後のページまで終わったかどうかだけで判断すると、理解が追いついていないまま次へ進むこともあります。
逆に、全部終えていなくても、現在の目的に必要な内容を十分身につけているなら、別の教材を併用することもできます。
教本は「順番どおりに終わらせる本」というより、必要な力を段階的に身につけるための道具と考えると選びやすくなります。
補助教材は苦手に合わせて追加する
総合教本を進めていると、少しずつ苦手が見えてきます。
そこで初めて、ハノンやバーナム、ツェルニーなどの補助教材を検討します。
たとえば、指が思うように動かないなら短いテクニック教材、一定の指の動きを反復したいならハノン、曲の中で必要になる運動的な技術を練習したいならツェルニーというように、目的を分けて考えます。
補助教材は「次に進むための必修科目」ではなく、「困っていることを解決するための道具」と考えるとわかりやすいです。
たとえば、教本の曲で左手の伴奏形だけがうまくいかない場合、難しい教材をもう1冊最初から始める必要はありません。
その動きに近い短い練習を追加し、できるようになったら主教材へ戻ればよいわけです。
読譜が遅いなら読譜や楽典を補う教材、指の動きが課題ならテクニック教材、曲として仕上げる経験が足りないならレパートリー曲集というように、問題を分けると選択肢が整理できます。
| 困っていること | 補いたい力 | 教材の考え方 |
|---|---|---|
| 音符を読むのが遅い | 読譜・リズム | 今の主教材より簡単な読譜課題やワークを使う |
| 指が思うように動かない | 基本的な指の動き | バーナムなど短いテクニック教材を検討する |
| 指の動きをそろえたい | 独立性・均一性 | ハノンを短時間取り入れる |
| 曲の技術的な難所で止まる | 特定の運指や動き | ツェルニーなどを目的に合わせて使う |
| 基礎練習ばかりで飽きる | 音楽表現・達成感 | 今の実力に合う曲集も並行する |
補助教材は、最初から毎日すべてを均等にやる必要もありません。
たとえば主教材で30分練習できる人が、さらにハノン、バーナム、ツェルニーを全部加えれば、肝心の曲を弾く時間がほとんどなくなることがあります。
初心者ほど、何のための練習なのかわからない反復だけが増えると、ピアノそのものがつまらなく感じやすくなります。
補助教材を増やしすぎると、毎日の練習が「基礎練習だけ」で終わってしまうことがあります。
ピアノを弾く楽しさを残すためにも、主教材や弾きたい曲とのバランスを意識してください。
あなたがピアノを始めた理由は、教材を終わらせることではなく、音楽を楽しむことではないでしょうか。
その目的を忘れずに教本を選ぶことが、長く続けるためにはかなり大切です。
基礎練習と弾きたい曲をどう結び付けるかについては、ピアノ初心者が上達する練習法でも詳しく整理しています。
初心者から中級までの教本の順番
絶対的な順番はありませんが、初心者が迷わないための大まかな目安はあります。
基本は、入門用の総合教本→初級の総合教本→初級後半の練習曲や曲集→中級入口の曲集・テクニック教材という流れです。
クラシック系の基礎を学ぶ場合は、バイエルなどの導入教材から、ブルクミュラー、ソナチネへ進む流れが知られています。
一方、大人の趣味として始めるなら、大人向けの入門教本から好きな曲へつなげながら、必要な技術だけ補う進め方もできます。
ここでは、それぞれの段階で何を学ぶのかを整理します。
| 段階 | 主な目的 | 教本の考え方 |
|---|---|---|
| 入門 | 鍵盤・指番号・音符・リズム | 説明のある総合教本を1冊選ぶ |
| 初級前半 | 簡単な両手奏・ヘ音記号・伴奏 | 総合教本を継続する |
| 初級中盤 | 左右の独立・和音・音階 | 必要なら短い補助教材を足す |
| 初級後半 | 表現・フレーズ・多様な奏法 | ブルクミュラーなどを検討する |
| 中級入口 | 長い曲・古典派・高度な運指 | ソナチネやツェルニーなどを併用する |
入門から初級前半の進め方
音符がほとんど読めない状態なら、まずは鍵盤の位置、指番号、拍子、音の高さを理解できる教本を選びます。
大人の初心者の場合は、文章による説明が多い大人向け入門書も使いやすい選択肢です。
一方、バイエルやピアノ・アドヴェンチャーなど、段階的に基礎を学ぶ教材を使って進める方法もあります。
この時期に大切なのは、難しい曲を弾くことではありません。
楽譜を見て鍵盤の位置を判断し、正しい指で、一定の拍を意識しながら弾くことです。
最初は「音符が読めたから弾ける」と思っても、実際にはリズムを同時に読む必要があります。
さらに両手になると、右手と左手で違う動きをしなければなりません。
そのため、右手だけなら弾けるようになっても、左手が加わると急に難しく感じる人は少なくありません。
これは自然なことです。
最初は左手を単音から始め、簡単な和音や伴奏へ少しずつ広げていきます。
ヘ音記号も、最初からすべての音を瞬時に読める必要はありません。
よく出てくる音を少しずつ覚え、鍵盤との位置関係を身につけていけば大丈夫です。
入門段階では、1曲を速く弾けることよりも、楽譜を見ながら音とリズムを理解できることの方が次の段階につながります。
練習するときは、いきなり曲の最初から最後まで両手で通そうとしない方が進みやすいです。
まず1〜2小節に区切り、右手を確認し、左手を確認し、テンポを落として両手を合わせます。
その小さなまとまりが安定したら、次の部分へ進みます。
初心者のうちは、この「分けて練習する」という考え方だけでも負担がかなり変わります。
弾きたい曲がある場合も、教本と並行してやさしいアレンジを1曲取り入れるのはよい方法です。
ただし、原曲が難しい場合は無理に挑戦せず、自分の今のレベルと同じか少し易しい程度の楽譜を選びましょう。
たとえば主教材では簡単な両手奏を始めたばかりなのに、弾きたい曲では速い音階、広い和音、複雑な左手伴奏が連続しているなら、負担の差が大きすぎます。
曲名を知っているかどうかではなく、楽譜を開いたときに「今まで学んだことの延長で読めるか」を判断してください。
少し難しい程度なら挑戦になりますが、ほとんどの小節で新しい問題が出てくるなら、一段階やさしい編曲から始めた方が完成までたどり着きやすいですよ。
初心者でも取り組みやすい曲の探し方は、ピアノ初心者向けの弾きやすい曲も参考になります。
初級後半はブルクミュラーへ進む
簡単な両手奏ができ、ヘ音記号にも慣れ、8分音符や休符、スラー、スタッカート、強弱記号などをある程度理解できるようになると、初級後半の教材が見えてきます。
その代表的な選択肢が「ブルクミュラー25の練習曲」です。
ブルクミュラーは、一つひとつの曲に特徴があり、指の練習だけではなく、フレーズや強弱、音色といった音楽表現も学びやすい教材です。
バイエル後半または同程度の総合教本を進めている人が次の段階として検討しやすい位置にあります。
ブルクミュラーへ進む目安を、単純に「バイエルを終えたかどうか」だけで決める必要はありません。
両手で短い曲をある程度止まらず弾けるか、ヘ音記号を毎回最初から数えなくても読める音が増えているか、強弱やスラーを意識する余裕があるか、といった実際の状態を見た方がわかりやすいです。
また、ブルクミュラーは「音を間違えずに並べる」だけで終わらないところが大切です。
同じ音でも、滑らかにつなげるのか、短く切るのか、強くするのか、やわらかくするのかによって印象が変わります。
ここから少しずつ、楽譜に書かれた記号を音楽として表現する練習が増えていきます。
ただし、「ブルクミュラーに入ったら1番から25番まで絶対に番号順で弾かなければならない」と考える必要はありません。
曲によって求められる技術が違うので、自分の状態に合わせて進める方が合理的です。
たとえばスタッカートが苦手なら、それを練習できる曲を丁寧に取り組む。
フレーズをきれいにつなげるのが苦手なら、レガートを意識できる曲に時間をかける。
こうして曲の課題と自分の苦手を結び付けると、ただ番号を消化するより上達の意味が見えやすくなります。
ブルクミュラーは初心者向けとして紹介されることもありますが、ピアノを始めたばかりの完全な初学者が最初に使う教材ではありません。
両手奏や基本的な読譜がまだ不安定なら、先に総合教本を進める方が取り組みやすいでしょう。
ブルクミュラーを開いたとき、片手だけでも音を追うのにかなり時間がかかり、リズムまで考える余裕がないなら、少し早い可能性があります。
逆に、ゆっくりなら譜読みができ、両手で数小節ずつ組み立てられるなら、挑戦する段階に入っていると考えやすいでしょう。
教材の名前ではなく、楽譜を見たときの負担で判断するのがポイントです。
ブルクミュラー後半から中級への位置づけを具体的な曲で確認したい場合は、ブルクミュラー「タランテラ」のピアノ難易度も参考になります。
中級入口はソナチネやツェルニーへ
ブルクミュラーの前半から後半の曲をいくつか仕上げられるようになってくると、中級入口が見えてきます。
この段階では、ソナチネやツェルニー30番などが候補になります。
ソナチネでは、短い曲だけでなく、複数の部分で構成された少し長い作品に向き合う機会が増えます。
左手の伴奏、音階的な動き、強弱の変化、曲全体のまとまりなど、初級教材より多くの要素を同時に考える必要があります。
全音楽譜出版社の「ソナチネ アルバム(1)」も、ソナタへ進む準備段階の曲集として位置づけられています。
一方、ツェルニー30番は、演奏技術を整理していくための練習曲として使われる教材です。
ここでも「ソナチネかツェルニーか」の二択ではありません。
ソナチネで曲全体を組み立てる力を伸ばしながら、必要な技術をツェルニーで補うという考え方もできます。
さらに指の独立や均一性を整えたい場合には、ハノンを短時間取り入れることも考えられます。
中級入口からは、1冊を順番に終わらせるというより、「曲」「技術」「基礎」を目的別に組み合わせる感覚がより重要になります。
たとえば、ソナチネの曲で速い音型が安定しないなら、それに近い技術を補う練習を取り入れる。左右の音量バランスが崩れるなら、曲の一部分を取り出して練習する。
こうした方法なら、補助教材が「やらなければならない宿題」ではなく、弾きたい曲を仕上げるための手段になります。
難しい教材へ進めば進むほど上達するわけではありません。
今使っている教材で音が止まり続ける、リズムが崩れる、手に無理な力が入る場合は、一段階戻る判断も立派な練習です。
中級入口は、入門のように「この音を覚えれば次」という単純な段階ではなくなってきます。
同じ曲を弾いていても、音を読む力は十分なのに指の動きだけ追いつかない人もいれば、指は動くけれど拍やフレーズが崩れる人もいます。
だからこそ、自分の課題を分けて考えることが大切です。
定番教本は役割で使い分ける
教本の順番を考えるときに混乱しやすい理由の一つが、性格の違う教材を全部同じ「教本」として扱ってしまうことです。
バイエル、大人向け入門書、ハノン、バーナム、ブルクミュラー、ツェルニー、ソナチネは、目的がそれぞれ違います。
役割を理解しておけば、「どちらが先か」だけで迷わなくなります。
総合教本は学習全体の道筋を作るもの、テクニック教材は特定の動きを補うもの、練習曲集は曲の中で技術と表現を学ぶもの、レパートリー曲集は実際に弾ける曲を増やすものと考えると整理しやすいでしょう。
ハノンとバーナムを始める時期
ハノンとバーナムは、どちらもテクニックを補う教材として使われますが、特徴は同じではありません。
ハノンは、一定の音型を繰り返しながら、指の独立や動きの均一性などを練習する教材です。
全音楽譜出版社の「全訳ハノンピアノ教本」では、バイエル後半頃から併用する教材として案内されています。
そのため、完全初心者が「最初のピアノ教本」としてハノンだけを使うと、音楽を弾く楽しさを感じにくくなる場合があります。
総合教本で簡単な両手奏に慣れてきた頃から、必要に応じて短時間使う方が現実的です。
一方のバーナムは、短い課題が中心で、動きをイメージしながら取り組みやすい特徴があります。
入門に近い段階から使える教材ですが、こちらも総合教本の代わりというより、主教材を補う使い方が向いています。
| 教材 | 主な役割 | 使い始める考え方 |
|---|---|---|
| ハノン | 指の独立・均一な動き・基礎運動 | 両手奏に慣れてから短時間追加 |
| バーナム | 短い課題で基本動作を補う | 入門期から総合教本と併用可能 |
ハノンを使うときは、速く弾くことを目標にしすぎない方がよいでしょう。
テンポよりも、指使い、リズム、音のそろい方、手や腕に余計な力が入っていないかを優先します。
初心者なら、最初から長時間続けるより、ウォームアップや苦手克服として短い時間に区切る方が取り組みやすいです。
初心者は全曲を順番に消化することだけを目的にせず、基礎的な範囲をゆっくり使う方が現実的です。
ただし、どこまで使うかは現在の力や目的によって変わります。
バーナムも同じで、最初から最後まで一度も戻らず進む必要はありません。
主教材の曲で苦手な動きが出てきたとき、それに近い課題へ戻るという使い方もできます。
ハノンもバーナムも「やっているだけで自動的に上達する教材」ではありません。
何の動きを整えたいのかを意識して使うことが大切です。
手首や腕に痛みが出る場合は練習を続けず、フォームを見直してください。
特に独学では、力んでいることに自分で気づきにくい場合があります。
速さを優先して無理に弾くより、ゆっくりでも無理のない動きで弾けることを優先しましょう。
ブルクミュラーとツェルニーの違い
「ブルクミュラーとツェルニーはどちらを先にやればいいですか?」という疑問もよく出てきます。
これは、順番だけで考えるより、役割の違いを見ると理解しやすくなります。
ブルクミュラー25の練習曲は、曲として楽しみながら、スタッカート、レガート、強弱、フレーズなどを学びやすい教材です。
対してツェルニーは、特定の運指や動きを反復し、演奏技術を段階的に整える性格が強い教材です。
つまり、ブルクミュラーは音楽表現を含めた曲の学習、ツェルニーは技術面を補う練習と捉えると整理しやすいです。
ツェルニー100番は初級から初級後半の技術補助として使われることがあり、ツェルニー30番はもう少し先の中級入口で候補になります。
そのため、「ブルクミュラーを全部終えてから初めてツェルニーを始める」という形だけが正解ではありません。
ブルクミュラーで曲を弾きながら、必要に応じてツェルニー100番などを併用する方法も考えられます。
反対に、ツェルニーばかり進めて曲をほとんど弾かない状態も、趣味としてピアノを続けたい人には合わない場合があります。
技術練習は必要ですが、その技術を何の曲で使うのかが見えた方が、練習の意味を理解しやすいからです。
| 教材 | 学びやすいこと | 向いている使い方 |
|---|---|---|
| ブルクミュラー25 | フレーズ・強弱・奏法・音楽表現 | 初級後半のレパートリー兼練習曲 |
| ツェルニー100番 | 初級段階の技術的な課題 | 総合教本や曲集の補助 |
| ツェルニー30番 | 中級入口の技術整理 | ソナチネなどと目的別に併用 |
教材同士を競わせて「どちらが上か」を決めるより、今弾いている曲に必要な力をどちらが補ってくれるかで選ぶ方が実践的です。
たとえば、楽譜は読めるのに同じ音型で指がもつれるなら技術練習を増やす。
逆に指は動くのに、曲が一本調子になってしまうなら、強弱やフレーズを意識できる曲へ時間を使う。
このように課題を分けると、「次はどの教本?」という迷いがかなり減ります。
ソナチネへ進むタイミング
ソナチネは、ピアノを始めてすぐに使う入門教材ではありません。
ブルクミュラーの前半から後半の曲をある程度弾けるようになり、両手奏や読譜が安定してきた頃が一つの目安になります。
具体的には、左手の分散和音に対応できる、ある程度長い曲でも途中で構造を見失わずに練習できる、強弱やフレーズを意識できる、といった状態です。
ソナチネでは、古典派の作品を通して、拍子感、フレーズ、形式、左右のバランスなどを学んでいきます。
「指が動くようになったから次へ行く」というより、曲全体を組み立てる力が少しずつ必要になる段階です。
特に長めの曲では、最初の数小節だけ弾けても完成とは言えません。
途中で調子が変わる部分、左右の役割が変わる部分、同じような形が少し違って戻ってくる部分などを整理しながら練習する必要があります。
こうした力は、ブルクミュラーなどの短い曲を丁寧に仕上げる経験からも育てられます。
もしソナチネを開いてみて、片手練習の段階でも音を追うだけで精一杯になったり、両手にするとほとんど進めなくなったりするなら、まだ急がなくても大丈夫です。
ブルクミュラーや同程度の曲に戻り、読譜や伴奏形を安定させてから再挑戦できます。
ピアノでは「戻ること=後退」ではありません。
難しすぎる教材に長く止まり続けるより、少し易しい曲を何曲か仕上げてから戻る方が、結果として進みやすいこともあります。
ソナチネに進めるか判断するときも、「何年習ったか」より、今の楽譜をどう読めるかを見ましょう。
学習期間は同じでも、練習頻度やこれまで弾いてきた曲によって得意不得意は変わります。
自分の状態に合わせて進めることが大切です。
大人初心者が教本を選ぶポイント
大人がピアノを始める場合、子ども向け教材をそのまま使えばよいとは限りません。
子ども向けの教本にも優れたものはありますが、大人は「説明を読んで理解したい」「知っている曲を弾きたい」「独学で進めたい」といった条件が加わることがあります。
一方で、子ども向け教材でも進み方が自分に合えば問題ありません。
「大人だから大人向けしか使えない」「子ども向けだから簡単」と決めつけるのではなく、自分の学び方に合っているかで判断しましょう。
独学なら説明や音源の有無も確認する
先生と一緒に使うことを前提とした教材は、楽譜そのものはわかりやすくても、説明が少ない場合があります。
独学では、弾き方を尋ねられる相手がいないため、音符の読み方、リズム、指番号、姿勢などの説明が充実している方が進めやすいでしょう。教本だけでは判断しにくい部分を講師に確認したい場合は、オンラインで個別にピアノを習う方法も選択肢になります。
音源付きの教材なら、「このリズムで合っているのかな?」と迷ったときに完成形を確認できます。
音源や動画などに対応した教材も、使い方が自分に合えば助けになります。
ただし、音源をまねるだけになってしまうと、楽譜を読む力が伸びにくくなる場合があります。
最初は音源を聞いても、練習するときには楽譜を見て、音符と鍵盤を結び付ける意識を持ってください。
独学用の教本を選ぶときは、表紙に「初心者向け」と書いてあるかどうかだけでは判断しにくいです。
実際に中身を確認できるなら、最初の数ページで何を説明しているかを見てみましょう。
鍵盤の位置、指番号、音符の長さ、拍子、ヘ音記号、両手奏への進み方などが、自分に理解できる言葉で説明されているかがポイントです。
独学用の1冊目では、「収録曲が有名か」だけでなく、説明の量、譜面の見やすさ、ヘ音記号の扱い、指番号、音源の有無も確認すると失敗を減らせます。
また、1曲の長さも意外に重要です。
始めたばかりなのに長い曲ばかりだと、1曲を完成させるまで時間がかかり、達成感を得にくいことがあります。
反対に短い課題だけでは「曲を弾いている感じがしない」と思う人もいます。
あなたが、短い課題を積み重ねる方が好きなのか、知っている曲を少しずつ完成させる方が好きなのかも選択材料になります。
大人の初心者が一年間でどのように教材を使えるか知りたい場合は、大人のピアノは一年でどのくらい上達するかも参考にしてください。
教本を買う前に確認したい項目
購入前には、対象レベルが入門・初級・初中級・中級のどこに当たるかを確認してください。
さらに、ドレミのふりがなの有無、ヘ音記号の説明、指番号、手の形や姿勢、リズムの説明なども見ておくと安心です。
独学なら、先生から説明を受ける前提の教材なのか、自分で読み進めやすい教材なのかも重要になります。
同じタイトルの教材でも、出版社や校訂者、改訂版の違いなどによって、指使い、解説、表記、収録内容などが異なる場合があります。
また、付属音源の有無や価格、在庫状況などは販売時期によって変わる可能性があります。
教材名だけを見て購入せず、版や付属物まで確認してください。
価格、在庫、商品仕様など変動する情報については、購入時に出版社や販売元などの正確な情報をご確認ください。
難易度表記も、すべての出版社で完全に統一されているわけではありません。
「初級」と書いてあれば、自分に必ず合うとは限らないため、可能なら楽譜のサンプルや収録内容も見て判断するとよいでしょう。
弾きたい曲と教本を並行して進める
基礎教本だけを何か月も続けていると、「いつになったら好きな曲が弾けるんだろう」と感じることがあります。
これは大人の初心者にとって、とても大きな問題になりやすいところです。
そもそもピアノを始めたきっかけが、「この曲を弾いてみたい」だった人も多いでしょう。
そのため、主教材とは別に、今のレベルで弾ける好きな曲を1曲持っておく方法はおすすめです。
ポイントは、難易度を欲張らないこと。
原曲が難しい場合は、入門用や初級用に編曲された楽譜から始めます。
好きな曲を練習すると、教本で覚えたリズムや指使いが「実際の音楽でどう使われるのか」が見えてきます。
逆に、好きな曲で難しい部分が見つかったら、それが補助教材を選ぶヒントになります。
たとえば同じ指を素早く動かす部分が苦手なら、その動きに近い基礎練習を取り入れる。
左手の伴奏で止まるなら、同じ種類の伴奏が出てくる簡単な曲へ一度戻る。
こうすると、教本と好きな曲が別々の練習になりません。
「教本で基礎を作り、好きな曲で使い、足りない技術だけ補う」という循環ができると、何のために練習しているかがわかりやすくなります。
好きな曲を選ぶときは、「最後まで弾けそうか」を見ることも大切です。
最初の8小節は簡単でも、途中から急に難しくなるアレンジもあります。
楽譜全体を見て、速い部分、左手の広い移動、細かいリズム、和音の多さなどを確認しましょう。
「少し難しいけれど、練習すれば届きそう」という程度なら挑戦しやすいです。
しかし、ほぼすべてのページで知らないリズムや運指が出てくるなら、もっとやさしい版を選んだ方が完成しやすくなります。
好きな曲の「原曲を弾くこと」と「今その曲を楽しむこと」は別に考えて構いません。
まずやさしい編曲で1曲完成させ、力がついてから難しい版へ挑戦する方法もあります。
あなたが弾きたいと思っている曲も、今すぐ原曲を完成させる必要はありません。
少しずつ近づいていく過程そのものを楽しんでみてください。
教本選びで挫折しやすいパターン
教本選びで挫折する原因は、「向いていないから」だけではありません。
教材の選び方や進め方が、今のレベルに合っていないケースもあります。
特に避けたいのは、最初から難しい教材を複数同時に始めることです。
たとえば、音符を読む段階なのに、ハノン、ブルクミュラー、ツェルニー、ソナチネまで全部そろえてしまうと、それぞれの目的がわからなくなります。
さらに、「有名な教本だから、最後まで全部やらなければならない」と考えることも負担になります。
ピアノ教本は学校の学年のように、必ず全員が同じ順番で通過するものではありません。
目的がクラシックなのか、ポップスなのか、伴奏なのかによって必要な技術も変わります。
保育や弾き歌いを目的にする人なら、音符やリズムに加えて、コードや簡単な伴奏形を優先した方が実用的な場合があります。
クラシック作品を段階的に学びたいなら、ブルクミュラーやソナチネなどへ進む意味が大きくなります。
この違いを無視して「有名だから」という理由だけで教材を選ぶと、目的と練習内容がずれてしまいます。
次のような状態が続く場合は、教材が今の自分に難しすぎないか確認しましょう。
- 片手練習でも音符を読むだけで非常に時間がかかる
- 両手にすると毎小節のように止まってしまう
- リズムがわからないまま指の位置だけで覚えている
- 何週間練習しても同じ部分から進めない
- 手首や腕に無理な力が入り、痛みが出る
難しい教材を使うこと自体が悪いわけではありません。
問題は、今の自分にとって「少し頑張れば届く難しさ」なのか、「基礎が何段階も抜けている難しさ」なのかを区別することです。
行き詰まったときは、新しいピアノ本を買う前に原因を分けて考えてみましょう。
音符が読めないのか、リズムが取れないのか、指が動かないのか、左右を合わせられないのか、そもそも曲が難しすぎるのか。
原因が一つわかるだけで、次に必要な練習がかなり明確になります。
新しい教本を買う前に原因を分ける
たとえば「両手で弾けない」という一つの悩みにも、いくつか原因があります。
右手も左手も片手では問題なく弾けるのに、合わせた瞬間に止まるなら、左右を同時に処理することが課題かもしれません。
一方、左手だけでも音が読めないなら、両手奏以前にヘ音記号の読譜が負担になっています。
リズムが毎回変わってしまうなら、指の問題ではなく拍の理解を整理した方がよいでしょう。
原因が違えば、必要な練習も違います。
ここを考えずに新しい教材を追加すると、本棚だけが充実して練習内容は変わらないということも起こります。
教本を変える前に、「今どこで止まっているのか」を一度言葉にしてみてください。
それだけでも、次に何をすればよいか整理しやすくなります。
また、番号順に進むことだけを目標にしてしまうのも注意したいところです。
「今日は何番まで進んだか」より、「昨日より何ができるようになったか」を見た方が、ピアノの上達を実感できます。
テンポについても同じです。
速く弾けることだけが上達ではありません。
ゆっくりでも拍が安定し、正しい指使いで、余計な力を入れずに弾けることの方が重要な場面は多くあります。
特にハノンやツェルニーのような技術練習では、速さばかりを追いかけると、音の粒やリズムが崩れていることに気づきにくくなります。
まずは無理のないテンポで弾き、音や動きが安定してから少しずつ速くしていく方が安全です。
独学で長く停滞し、自分では原因がわからない場合には、ピアノ講師に演奏や練習方法を確認してもらうという考え方もあります。
とくに姿勢、脱力、ペダル、手の使い方などは、文章や動画だけでは自分の癖に気づきにくい部分です。
同じところで長く止まり続ける場合も、教本を買い足す前に、現在の練習方法や難易度が適切かを見直す価値があります。
手や腕に痛みがある場合は無理に練習を続けず、必要に応じて適切な専門家へ相談してください。
痛みを我慢して練習を続けることを上達の条件にしてはいけません。
ピアノ教本の順番に関するよくある質問(FAQ)
Q1. ピアノ教本はバイエルから始めないとだめですか?
A. バイエルから始める必要はありません。バイエルはよく知られた入門教則本ですが、大人向けの入門教本や、ピアノ・アドヴェンチャー、バスティン、ピアノランド、ぴあのどりーむなど、導入教材には複数の選択肢があります。独学なのかレッスンなのか、クラシックを基礎から学びたいのか、好きな曲を中心に弾きたいのかによって選び分けて大丈夫です。重要なのは教材名ではなく、今の自分が音符、リズム、指番号、両手奏を無理なく学べるかどうかです。
Q2. バイエルの次は必ずブルクミュラーですか?
A. 必ずではありません。ブルクミュラー25は、バイエル後半から修了程度の段階で検討しやすい代表的な練習曲集ですが、読譜や両手奏がまだ不安なら総合教本を続けても構いません。また、技術面を補うためにバーナムやツェルニー100番などを併用する考え方もあります。「バイエルを終えたから自動的にブルクミュラー」ではなく、両手奏、ヘ音記号、リズム、強弱などへ対応できるかを見ながら判断するとよいでしょう。
Q3. ハノンは初心者が最初に買うべきですか?
A. 最初の1冊として必須ではありません。ハノンは、音符やリズム、両手奏を総合的に学ぶ入門書ではなく、指の独立や動きの均一性などを補うための教材です。初心者はまず総合教本を軸にし、簡単な曲を弾く中で「指の動きを整えたい」と感じた段階で短時間取り入れる方が使いやすいでしょう。最初から速く弾いたり、長時間続けたりすることを目的にしない方が安心です。
Q4. ブルクミュラーとツェルニーはどちらが先ですか?
A. 役割が違うため、一律に順番を決める必要はありません。ブルクミュラーは曲を通してフレーズ、強弱、スタッカート、レガートなどを学びやすく、ツェルニーは技術練習の比重が高い教材です。ブルクミュラーを弾きながら、必要な技術をツェルニーで補う使い方もできます。ツェルニー100番と30番でも想定する段階は違うため、「ツェルニー」という名前だけでまとめず、自分の現在の力に合うものを選んでください。
Q5. ピアノ教本は何冊同時に使えばよいですか?
A. 初心者なら、まず主教材1冊から始めるのがわかりやすいです。必要になったら補助教材を1冊足し、さらに弾きたい曲の楽譜を加える程度でも十分です。たとえば「総合教本」「テクニック教材」「好きな曲」の3系統までに整理すると、それぞれの役割を見失いにくくなります。冊数を増やすことより、「この教材で何を身につけたいのか」を説明できる状態にする方が大切です。
まとめ
ピアノ教本の順番に、全員共通の絶対ルールはありません。
昔から知られている流れとして、導入・初級の総合教本から始め、初級後半でブルクミュラー、中級入口でソナチネやツェルニー30番へ進む考え方はあります。
ただし、有名な教材をすべて順番に終えることが目的ではありません。
初心者が挫折しにくくするなら、まず総合教本を1冊だけ学習の軸にしましょう。
そのうえで、指の動きが課題ならバーナムやハノン、技術面を補いたいならツェルニー、音楽表現を深めたい段階ではブルクミュラーというように、必要な教材を追加していきます。
大人の独学なら、教材の難易度だけでなく、説明のわかりやすさ、音源の有無、知っている曲が収録されているかも大切な判断材料です。
子ども向けの教材でも自分に合えば使えますし、大人向けだから必ず簡単というわけでもありません。
「自分が理解しやすく、次のページへ無理なく進めるか」を見て選んでください。
弾きたい曲があるなら、教本が終わるまで我慢する必要もありません。
今の実力で取り組めるアレンジを選び、基礎教本と並行して進めれば、練習の目的も見えやすくなります。
基本の考え方は、「総合教本を1冊選ぶ→苦手に合わせて補助教材を足す→弾きたい曲や練習曲へ広げる」です。
もし今の教本でなかなか進めなくても、「自分にはピアノが向いていない」と決める必要はありません。
音符が読めないのか、リズムが難しいのか、両手を合わせることが難しいのか、曲そのものが今のレベルより難しいのかを分けて考えてみてください。
教材の難しさが合っていないだけなら、一段階戻したり別の教本へ変えたりすることで進みやすくなることがあります。
そして、速く先へ進むことだけを上達の基準にしないことも大切です。
ゆっくりでも拍を保って弾けた、以前よりヘ音記号を読めるようになった、両手で止まらず弾ける小節が増えた。そうした小さな変化も、きちんとした上達です。
正確な商品仕様、価格、付属音源、改訂状況、在庫などは変更される可能性があるため、購入前に出版社や販売元などの正確な情報をご確認ください。
また、フォームや脱力、ペダル、痛みなど、自分だけでは判断しにくい問題が続く場合は、無理をせず適切な専門家へ相談してください。
ピアノは、教本を早く終わらせた人が勝つものではありません。
あなたが「この曲を弾けるようになりたい」と感じた気持ちを大切にしながら、自分に合った順番で一歩ずつ進めていきましょう。

