ピアノのバイエルとは?終わった後のレベルと次の教本を解説

バイエルの教本を譜面台に置いたピアノと、「ピアノのバイエルとは?終わった後のレベルと次の教本を解説」の文字を配したアイキャッチ画像。 ピアノ
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「ピアノのバイエルって、そもそもどんな教本?」「最後まで終わったら、次は何を練習すればいい?」と気になっている方も多いですよね。

バイエルは、日本で長く使われてきたピアノの入門〜初級向け教本です。名前を聞いたことはあっても、どこまでできれば修了なのか、ブルグミュラーへ進んでよいのかとなると、意外と判断しにくいものです。

結論から言うと、バイエルはピアノの基礎を順番に身につけるための教材ですが、全員が106番まで同じ進み方をする必要はありません。大切なのは番号だけではなく、読譜・リズム・両手奏などがどの程度身についているかを見ることです。

また、バイエルを終えた後に進む教材も、一つに決まっているわけではありません。音楽的な表現を伸ばしたい人、指の動きを補強したい人、クラシックを続けたい人、好きなポップスを弾きたい人では、次に必要になる練習が違います。

この記事では、バイエルの特徴から修了後のレベル、次に選びたい教本まで、初めての方にもわかりやすく整理します。

  • ピアノのバイエルとはどんな教本なのか
  • バイエル修了後にどの程度弾けるようになるのか
  • ブルグミュラーやハノンなど次の教材の選び方
  • 大人や独学でバイエルを使うときの考え方

ピアノのバイエルとは

バイエルは、ピアノを始めたばかりの人が、鍵盤や楽譜の基本から両手で弾くところまで段階的に学ぶための教則本です。

正式には「バイエルピアノ教則本」「バイエル・ピアノ教則本」などと呼ばれ、フェルディナント・バイエルによる「Vorschule Im Klavierspiel Op.101」がもとになっています。全音楽譜出版社の標準バイエル・ピアノ教則本の公式情報でも、作曲者名と原題を確認できます。

検索すると製薬会社などの「Bayer」と混同しそうになりますが、ピアノ教則本のバイエルは作曲者の姓である「Beyer」に由来します。

日本では古くからピアノ教育に使われてきたため、現在でも「バイエル程度」「バイエル修了程度」といった形で、演奏レベルの目安として名前が使われることがあります。

バイエルの特徴は、最初から華やかな曲を完成させることを目指すのではなく、短い練習を積み重ねながら演奏に必要な基本を覚えていくことです。初めて楽譜を見る人でも少しずつ進められるように、比較的単純な課題から始まり、番号が進むにつれて両手奏やリズム、和音、音域などが広がっていきます。

そのため、ピアノを弾いた経験がほとんどない人にとっては、「何から覚えればよいのかわからない」という状態から順番に学べる教材の一つです。基礎練習をどのように進めるか迷っている方は、ピアノ初心者の練習方法と上達の考え方もあわせて確認すると、教本を使った練習の組み立て方がイメージしやすくなります。

一方で、バイエルは19世紀に生まれた教本です。現代の初心者向け教材には、イラストを多く使ったもの、知っている曲を中心にしたもの、コードやポップスに触れるものなどさまざまなタイプがあります。そのため、現在はバイエルだけが唯一の入門方法ではありません。

バイエルは「今でも使われている古典的な入門教材」の一つです。古い教材だから使えない、反対に昔から定番だから全員が使うべき、と単純に決めるのではなく、学ぶ目的や続けやすさを考えて選ぶことが大切です。

バイエルで学べる基礎

バイエルの大きな特徴は、いきなり難しい曲に挑戦するのではなく、短い練習を積み重ねながらピアノ演奏の基礎を身につけていくところにあります。

最初の段階では、鍵盤の位置や指番号、音符の長さなどを確認しながら進みます。そこから片手での演奏を経て、少しずつ両手を使った演奏へ移っていきます。

バイエルで身につけていく主な内容

  • 鍵盤上で音の位置を把握すること
  • 指番号を理解し、運指を意識すること
  • 右手と左手をそれぞれ動かすこと
  • 片手から両手奏へ進むこと
  • ト音記号とヘ音記号を読むこと
  • 音符と休符の長さを理解すること
  • 拍子や基本的なリズムを感じること
  • レガートやスタッカートなどの基本奏法
  • 強弱記号やスラーなどを意識すること
  • 簡単な和音や伴奏型に慣れること

ピアノを始めたばかりの段階では、「指が動くかどうか」に意識が向きがちです。しかし、楽器を弾き続けるには、音を読むこと、拍子を保つこと、正しい指使いを考えることなど、いくつもの力が必要です。

バイエルでは、それらを一度にすべて要求するのではなく、比較的やさしい形から少しずつ経験していきます。

たとえば、最初は片手なら弾けても、両手になると急に難しく感じることがあります。これは珍しいことではありません。右手と左手を同時に動かすには、片手だけで弾くときとは違う処理が必要になるためです。

短い練習曲を使い、片手ずつ確認したあとで両手にするという流れを繰り返すことによって、「両手で弾く」というピアノ独特の感覚を少しずつ身につけていきます。

また、音の高さだけでなく、音符の長さや休符を正しく理解することも重要です。正しい鍵盤を押していても、リズムが崩れていれば曲としては成立しにくくなります。

強弱やスラー、スタッカートなどが出てくると、「正しい音を弾く」段階から「楽譜に書かれた指示を読み取って弾く」段階へ少しずつ進みます。

つまり、バイエルは「この曲を弾けるようになるための曲集」というよりも、今後いろいろな曲を弾くための基本的な読み方と動かし方を覚える教本と考えるとわかりやすいでしょう。

もう一つ大切なのが、練習の進め方を覚えることです。最初から両手で何度も弾いてうまくいかないと、ピアノそのものが難しく感じてしまいます。

そこで、音を読む、片手で確認する、難しい小節だけ取り出す、ゆっくり合わせる、最後に全体を通す、といった練習方法を覚えておくと、バイエルの先へ進んだときにも役立ちます。

バイエルの価値は、106曲を消化することだけではありません。「楽譜を見て、自分で練習して、少しずつ弾けるようにする」という学習の基本を覚えることにも意味があります。

一方で、現代の教材と比べると、曲調を単調に感じる人もいます。そのため、バイエルだけを延々と進めるのではなく、楽しんで弾ける小品や好きな曲の初級アレンジを組み合わせる方法もあります。

とくに趣味でピアノを始めた人にとって、基礎練習だけでは「何のために練習しているのか」が見えにくくなることがあります。基礎を学びながら、弾いてみたい曲にも少しずつ触れるほうが、学習の目的を保ちやすいでしょう。

バイエルの難易度とレベル

バイエル全体のレベルは、基本的には入門から初級です。

前半はピアノを始めたばかりの人でも取り組める内容ですが、番号が進むにつれて、両手の動き、音域、リズム、譜読みなどの負担が少しずつ増えていきます。

そのため、「バイエル」という一冊の中でも、最初と最後では求められる力が大きく違います。

段階 おおまかな位置づけ 学習の中心
前半 入門 鍵盤、指番号、音符、片手奏などに慣れる
中盤 初級前半〜中盤 両手奏、読譜、基本的なリズムを安定させる
後半 初級後半 左右の動き、和音、表現記号などを扱う
終盤 初級修了に近い段階 次の教本へ進むための基礎を整える

後半まで進むと、単に左右の手で音を鳴らすだけではなく、左右をそれぞれ意識しながら弾く力や、楽譜を追いながら演奏する力も必要になってきます。

たとえば右手に旋律があり、左手に伴奏がある場合、それぞれを別々に弾くと簡単でも、両手を合わせると急に難しくなることがあります。また、リズムの形が左右で違うと、さらに混乱しやすくなります。

こうした課題を経験しながら、少しずつ「右手と左手を別々に意識しながら一つの音楽としてまとめる」力を身につけていきます。

バイエルを最後まで終えたからといって、すぐに「中級者になった」と考える必要はありません。位置づけとしては、ピアノの基礎をひと通り学び、次の段階へ進む準備が整ってきた状態と考えるほうが自然です。

どの番号を難しいと感じるかには個人差があります。年齢や練習時間だけでなく、読譜が得意か、左右の手を同時に動かすのが得意かといった違いでも進み方は変わります。

たとえば、音名を読むことは得意でも、一定のテンポで弾き続けるのが苦手な人もいます。反対に、耳で覚えて弾くことは得意でも、初めて見る楽譜を読むと急に時間がかかる人もいます。

そのため、「何番を弾いているからこのレベル」と機械的に決めるより、読譜、リズム、両手奏、表現などを総合して考えるほうが実際の演奏力を把握しやすくなります。

バイエルを終えた後の到達点

バイエルを終えたあとのレベルを考えるときは、「何番まで進んだか」だけではなく、「実際に何ができるようになったか」を見ることが大切です。

修了したからといって、どんな曲でも自由に演奏できるわけではありません。ただし、これからさまざまな曲に挑戦するための土台はかなり作られています。

この時期には、「初心者を卒業したのだから、次は難しい曲を弾かなければ」と考える必要はありません。むしろ、基礎で身につけたことを実際の曲の中で使えるようにする段階と考えると、次の学習目標を決めやすくなります。

バイエルで覚えた内容が定着していれば、初級向けの小品や、次の段階の練習曲に取り組みやすくなります。曲を楽しみながら次の段階へ進みたい場合は、初心者でも取り組みやすいピアノ曲から、自分のレベルに合う曲を探してみる方法もあります。

修了後にできること

バイエル後半までしっかり取り組んでいれば、簡単な楽譜を読みながら、左右の手を使って初級程度の曲を演奏する力が身についてきます。

たとえば、ト音記号だけではなくヘ音記号にも慣れ、左右の手を使った基本的な伴奏とメロディを合わせることができるようになってきます。

スラー、スタッカート、強弱などの記号についても、単に音を間違えずに弾くだけではなく、「どう弾くか」を少しずつ意識できる段階です。

バイエル修了後のイメージ

  • 簡単な初級曲なら、自分で音を読みながら練習を始められる
  • 右手と左手を使った基本的な両手奏ができる
  • 基本的な拍子やリズムを大きく崩さずに弾ける
  • 指番号を見ながら運指を意識できる
  • スラー、スタッカート、強弱などの記号に目を向けられる
  • 片手練習から両手練習へ段階的に進められる
  • 短い初級曲を最後まで仕上げる練習ができる

ここで重要なのは、「すぐに難しい曲が弾ける」という意味ではないことです。

たとえば、広い音域を素早く移動する曲や、複雑な伴奏が続く曲、ペダルを多く使う曲、速いパッセージが続く曲などは、さらに別の練習が必要になります。

また、短い練習曲を弾くのと、数ページある曲を最後まで集中して仕上げるのとでは必要な力が違います。長い曲では、途中で集中が切れないように練習を組み立てる力も必要です。

それでも、バイエルで基礎を身につけていれば、新しい曲に出会ったときに「まったく何もわからない」という状態から一歩進みます。

言い換えると、バイエル修了はゴールではなく、「弾きたい曲へ向かうための基礎工事がひと区切りついた段階」です。

ここから先は、目的に応じて学習の枝分かれが始まります。クラシックを深める人もいれば、ポップスを弾く人もいます。伴奏を学びたい人もいれば、純粋に好きな曲を一曲ずつ増やしていきたい人もいるでしょう。

バイエル終了後は「次に何をやるべきか」だけでなく、「自分は何を弾けるようになりたいのか」を考える良いタイミングです。大人になってからの進度が気になる方は、大人のピアノは一年でどのくらい上達するのかも、目標を考える参考になります。

バイエル後に不足しやすい力

バイエルにはピアノ学習の基本が多く含まれていますが、これだけですべての技術を身につけられるわけではありません。

たとえば、曲の雰囲気を作る表現力、ペダルの扱い、速い音型、広い音域を使う曲、複雑な伴奏、複数の旋律を同時に意識する演奏などは、次の教材や曲の中で少しずつ身につけていくことになります。

不足しやすい力 次の段階で意識したいこと
表現力 強弱だけでなく、フレーズや曲想を考える
ペダル 音が濁らない踏み替えや響きを覚える
速い動き ゆっくりした練習から正確さを高める
広い音域 鍵盤を見すぎず移動する感覚を身につける
初見力 新しい楽譜を少しずつ読む経験を増やす
長い曲への集中 部分練習と通し練習を使い分ける
コードや伴奏 目的がポップスなら別の知識として補う

また、ポップスを弾きたい人なら、コードを見て伴奏する力は別に学ぶ必要があります。バイエルを終えたからといって、コード伴奏や弾き語りが自然にできるようになるわけではありません。

クラシック中心の基礎と、ポップスでよく使うコード伴奏では、重なる部分もあれば別に覚える部分もあります。そのため、将来的に弾き語りやポップス伴奏をしたいなら、バイエル後にコードの考え方へ進むのも一つの選択です。

「106番まで終わったのだから、もう基礎は完璧」と考えて急に難しい曲へ進むと、譜読みやリズムの弱点が表面化することがあります。次の教材では、苦手な部分を補いながら進むことが大切です。

反対に、「まだ不足していることが多いから次へ進んではいけない」と考えすぎる必要もありません。次の教材に進んだからこそ見えてくる弱点もあります。

ブルグミュラーへ進んでみて譜読みで苦労したなら、読譜の練習を追加する。指が追いつかないなら基礎練習を補う。このように、次の曲を弾きながら必要な力を戻って補う進め方もできます。自分では原因を判断しにくい場合は、ピアノ専門のオンラインレッスンで講師に確認する方法もあります。

逆に言えば、足りない力があるのは当然です。バイエル後は、自分に不足している部分と、これから弾きたい音楽を結びつけながら教材を選べばよいのです。

バイエルの次に進む教本

「バイエルの次は何?」という疑問への代表的な答えはブルグミュラー25の練習曲です。

ただし、誰もが同じ一冊へ進む必要はありません。譜読みを伸ばしたいのか、指の動きを強くしたいのか、クラシックを深めたいのか、好きな曲を楽しみたいのかによって適した教材は変わります。

バイエルが終わった段階では、教材を一冊だけ選ぶのではなく、「曲を弾く教材」と「弱点を補う教材」を分けて考える方法もあります。

たとえば、ブルグミュラーをメインにしながら指の練習を少し取り入れる、初級名曲集を楽しみながら譜読みの練習を続ける、といった組み合わせです。

教材 主な役割 向いている人 注意点
ブルグミュラー25の練習曲 表現力と技術を曲の中で伸ばす 音楽的な小品に進みたい人 後半が不安定だと曲によって難しく感じる
ハノン 指の独立や基本動作を補強する 指の動きを重点的に練習したい人 曲集ではないため練習が単調になりやすい
やさしいチェルニー・ツェルニー100番など 練習曲で技術を段階的に伸ばす 基礎テクニックを体系的に学びたい人 曲を楽しむ教材と併用すると続けやすい
初級名曲集 曲を楽しみながらレパートリーを増やす 好きな曲を弾く楽しさを重視したい人 体系的な技術練習は別に補う場合がある
ソナチネ 古典派のまとまった作品へ進む 初中級へ進みたい人 バイエル直後では難しく感じる場合がある

教材名を見ると「全部やらなければいけないのでは」と感じるかもしれませんが、目的によって不要なものもあります。

趣味として好きな曲を楽しみたい人が、練習曲を何冊も順番に終わらせなければならないわけではありません。一方、クラシックを体系的に学びたいなら、練習曲と曲集を組み合わせながら進める方法があります。

「昔の一般的な順番」に自分を合わせるより、自分の目標に必要な教材を選ぶほうが学習の意味がはっきりします。

定番はブルグミュラー25

バイエル後の定番として知られているのが「ブルグミュラー25の練習曲」です。

バイエルが基礎的な読譜や指の動かし方を順番に学ぶ性格の強い教材なのに対し、ブルグミュラー25は、一つひとつの曲に音楽的な性格があり、表現と技術を一緒に学びやすいのが特徴です。

曲にはタイトルが付いているため、音を正しく弾くだけではなく、「どんな雰囲気で演奏するのか」を考えやすくなっています。

たとえば、音の並びを正確に弾くだけでなく、メロディをどのように歌わせるか、左手の伴奏をどの程度控えるか、フレーズの終わりをどうまとめるか、といった点にも意識が向きやすくなります。

バイエルまで「間違えずに弾くこと」を中心に練習してきた人にとっては、ブルグミュラーからが、より曲らしい演奏を考え始める段階とも言えるでしょう。

ただし、バイエル後半の譜読みや両手奏がまだ不安定なら、ブルグミュラーの曲によっては急に難しく感じることがあります。

とくに、楽譜を読むこと自体に時間がかかる場合、曲想を考える以前に音を追うだけで精いっぱいになりやすいものです。

その場合は、ブルグミュラーに進んではいけないということではありません。取り組みやすい曲を選びつつ、やさしい曲で譜読みを補う方法があります。

ブルグミュラーへ進むときに意識したいこと

  • 速く弾くより、まず音とリズムを正確にする
  • タイトルから曲の雰囲気を考える
  • 右手のメロディと左手の伴奏のバランスを聞く
  • スラーや強弱を後回しにしない
  • 難しい小節は分けて練習する
  • 一曲を音楽として仕上げる経験を増やす

ブルグミュラーは、バイエルの続きとして番号を消化するだけの教材ではありません。曲を仕上げる楽しさを知る教材として使うと、次の段階へ進んだ実感を得やすくなります。

そんなときは、すべてを順番通りに進めようとせず、取り組みやすい曲から始めたり、初級曲集を並行したりする方法があります。

ハノンやチェルニーの役割

ハノンは、ブルグミュラーのように「次に弾く曲集」というより、指の動きや基礎的なテクニックを補うための練習教材として考えるとわかりやすいでしょう。全音楽譜出版社も、ハノンについてバイエル後半頃から併用する教本として案内しています。

左右の指を均等に動かしたり、一定の形を繰り返したりする練習が中心なので、指の動きに苦手意識がある人の補助教材として使われます。

たとえば、特定の指だけ動きにくい、左右で動かしやすさが違う、同じ形を続けると音の粒がそろわない、といった課題が見えてきたとき、基礎練習を取り入れる考え方があります。

ただし、ハノンを何ページも弾けば自動的に演奏が上達するわけではありません。目的を決めずに繰り返すだけでは、単なる作業になってしまうことがあります。

「指を均等に動かしたい」「一定のテンポを保ちたい」など、その日の目的を一つ決めて練習すると、基礎練習の意味を感じやすくなります。

一方、チェルニーの練習曲は、さまざまな音型を使いながら演奏技術を段階的に伸ばしていく教材です。

ハノンが特定の指の動きや反復型を中心に練習するのに対し、チェルニー系の練習曲は「曲の形」を保ちながら技術課題に取り組みやすいという違いがあります。

とはいえ、チェルニーにも複数の教材があり、すべてがバイエル直後に適しているわけではありません。バイエルを終えたばかりの人には、やさしいものや初級向けの練習曲から始めるほうが自然です。

「バイエルが終わったら必ずハノン、その次にチェルニー」と順番を固定する必要はありません。ブルグミュラーや好きな曲を練習しながら、必要な技術を補う目的で併用する考え方もできます。

テクニック教材だけに偏ると、練習そのものが目的になりやすくなります。「この練習が、弾きたい曲のどこにつながるのか」を意識すると続けやすくなります。

たとえば、ブルグミュラーを弾いていて速い音型がうまくそろわないなら、基礎練習を補う。左手の伴奏が不安定なら、その部分に近い動きを練習する。このように曲で見つかった課題をテクニック練習へ戻すと、目的がはっきりします。

基礎練習が好きな人もいれば、曲の中で技術を身につけるほうが続きやすい人もいます。どちらが正解というより、自分が継続できる形を選ぶことが重要です。

ソナチネへ進むタイミング

ソナチネアルバムは、古典派を中心としたまとまりのある曲を学ぶ教材で、バイエルの次のさらに先を考えるときに登場します。

一般的には、ブルグミュラーなどで初級後半の曲を経験してから進む流れがわかりやすいでしょう。

ソナチネでは、短い練習曲とは違い、曲全体の構成を見ながら演奏する力も求められます。右手の旋律と左手の伴奏を弾くだけでなく、フレーズのまとまりや曲の展開を意識する必要があります。

また、同じような素材が形を変えて出てくる部分や、曲の中で雰囲気が変わる部分などを捉えることも必要になります。

そのため、バイエルを終えた直後に無理に進むより、ブルグミュラーや初級小品などを通して音楽的な演奏に慣れてからのほうが取り組みやすい場合があります。

ソナチネへ進みやすい状態

  • 両手奏で大きく止まらずに弾ける
  • 初級後半の楽譜を自分で読み進められる
  • 強弱やフレーズを意識できる
  • 数ページある曲を分けて練習できる
  • 曲全体を見ながら仕上げる経験がある

クラシックを本格的に続けたいなら、バイエルからブルグミュラー、さらにソナチネへ進む流れは、一つのわかりやすい道筋です。

ただし、この順番を必ず守らなければクラシックが学べないわけではありません。どの教材をどの段階で使うかは、本人の得意不得意や先生の方針によっても変わります。

一方、ポップスや弾き語りを楽しみたい人なら、ソナチネを必須と考える必要はありません。コードや伴奏を学びながら、弾きたい曲の初級アレンジに進む道もあります。

大切なのは、「有名な教本だから次に進む」のではなく、自分の目標に必要な力を考えて選ぶことです。

106番まで終える必要はある?

標準的なバイエルは106番まであり、教本としてはそこまで進めば一区切りです。

では、106番を完璧に弾けるまで次へ進んではいけないのでしょうか。答えは必ずしもそうではありません

ピアノ学習では、教材の番号そのものよりも、そこで身につけるべき力が定着しているかが重要です。

たとえば、105番や106番まで進んでいても、毎回音名を書き込まなければ読めない、両手になるとすぐ止まる、リズムが曖昧なまま弾いているという状態なら、次の教材でさらに苦労する可能性があります。

反対に、106番まで完全に終えていなくても、読譜や両手奏が安定し、次の教材に十分取り組める力がついている場合もあります。

一つの練習曲に長く留まり続け、ピアノそのものが嫌になってしまうなら、必要な内容を確認したうえで別の曲や教材へ進む方法もあります。

反対に、番号だけを急いで進めて、実際には楽譜をほとんど読めていない状態なら、次の教材で苦労しやすくなります。

教材を「全部終えること」と、内容を「身につけること」は同じではありません。最後の番号まで進むことより、次の曲を自分で練習できる基礎があるかを見ることが大切です。

また、バイエルの途中からブルグミュラーや初級曲集を併用する方法もあります。教材を一冊終えてから次の一冊へ進むだけが学び方ではありません。

むしろ、複数の教材を役割ごとに使うことで、バイエルだけでは不足しやすい「曲を楽しむ経験」や「表現を考える経験」を補える場合があります。

次へ進んでよい目安

次の教材へ進むか迷ったときは、「106番まで終わったか」だけでなく、いくつかの基本動作を確認してみましょう。

次へ進む目安

  • ト音記号とヘ音記号をある程度読める
  • 左右の手を同時に使っても大きく崩れない
  • 基本的な拍子を保って弾ける
  • 音符と休符の長さを理解している
  • 指番号を意識して練習できる
  • 片手ずつ確認してから両手に合わせられる
  • 強弱やスラー、スタッカートに目を向けられる
  • 初級の短い曲を最後まで仕上げる経験がある

これらがすべて完璧である必要はありません。次の段階へ進んだあとに補うこともできます。

ただし、いくつもの項目で大きくつまずいているなら、少し立ち止まって基礎を確認したほうが、結果としてその後の学習が楽になることがあります。

逆に、音名を読むたびに長く止まる、左手の楽譜がほとんど読めない、両手になると毎回止まる、テンポが大きく崩れるという場合は、少し補強してから進むほうが楽になることがあります。

特に注意したいのは、耳で覚えた音を再現できていても、楽譜を自分で読めていないケースです。バイエル後の教材では譜面が複雑になるため、読譜の弱点があると負担が急に大きくなります。

先生の演奏を聞いて覚えた曲を上手に再現できる人でも、新しい楽譜を一人で読むと急に進まなくなることがあります。それは演奏能力がないという意味ではなく、「耳で覚える力に比べて読譜力が追いついていない」という状態です。

この場合は、やさしい初級曲を使って初見に近い形で読む練習を増やすと、次の教材にも取り組みやすくなります。

また、両手奏が難しい場合は、いきなり最初から最後まで合わせるのではなく、2小節や4小節など短い単位で合わせる方法があります。

次の教材へ進む判断で迷う場合、「全部できるか」ではなく「自分で練習を組み立てられるか」に注目すると判断しやすくなります。間違えたときに片手へ戻る、ゆっくり弾く、難しい部分だけ練習するといった対応ができれば、次の教材でも学び続けやすくなります。

次の教材へ進む基準は、「何番までやったか」より「何ができるようになったか」です。

大人や独学でも使える?

バイエルは子どものピアノ教室で使うもの、というイメージを持っている方もいるかもしれません。

しかし、内容そのものはピアノ演奏の基本を順番に学ぶものなので、大人やシニアがピアノを始めるときにも利用できます。実際、音楽之友社のバイエル ピアノ教則本 New Editionの公式案内でも、大人の初心者や独習者が基本を学べるよう工夫された版が紹介されています。

昔ピアノを習っていて再開する人にとっても、読譜や指の動かし方を思い出す教材として使える場合があります。再開を考えている方は、60歳からピアノを再開するときの考え方も参考になります。

ただし、大人の場合は必ずバイエルだけを使う必要はありません。好きな曲を弾くことが大きな目的なら、大人向けの教本や初級アレンジ曲集と組み合わせるほうが、楽しみながら続けやすいこともあります。

大人の学習では、「基礎をすべて終えてから好きな曲へ進む」と考えるより、基礎と好きな曲を並行する方法もあります。

たとえば、基礎練習に使う時間と、自分の好きな曲を弾く時間を分けておけば、「練習だけで終わってしまう」という感覚を減らしやすくなります。

大人がバイエルを使うときの考え方

  • 最初から全部を完璧にこなそうとしない
  • 目的に必要な基礎を身につける意識を持つ
  • 好きな曲や初級曲集を併用する
  • 短時間でも継続できる練習方法を作る
  • 難しい部分は速度を落として練習する
  • 教材を終えることより演奏を楽しむことを優先する

独学では、楽譜に書かれている内容は確認できても、姿勢、手首、指の形、余計な力が入っていないかといった部分は自分で判断しにくいものです。

また、リズムが少しずれていても、自分では正しく弾いているつもりになっている場合があります。そこで役立つのが、ゆっくり弾くこと、一定の拍を確認すること、自分の演奏を録音して聞き直すことです。

独学で進める場合は、速く弾くことよりも、ゆっくり正確に確認することを優先しましょう。片手ずつ練習してから両手を合わせたり、自分の演奏を録音して聞き直したりすると、リズムや音の乱れに気づきやすくなります。

メトロノームを使う場合も、最初から速いテンポに合わせる必要はありません。自分が余裕を持って弾ける速さから始めて、音やリズムが安定してから少しずつ上げるほうが、崩れた演奏を繰り返しにくくなります。

片手で弾けるのに両手になると止まる場合も、よくあることです。左右それぞれを十分に確認してから、1〜2小節の短い範囲で合わせてみましょう。

必要に応じて先生や演奏経験のある人に節目で確認してもらう方法もあります。自宅で確認を受けたい場合は、PiaDOORのオンラインピアノレッスンの特徴を確認して選択肢を比較する方法もあります。レッスンを利用する場合は、内容や料金などの条件がそれぞれ異なるため、正確な情報は各公式案内を確認したうえで、自分の目的や予算に合う方法を判断してください。

とくに独学では、自分で気づきにくい癖を長く続ける前に、節目だけでも第三者から確認してもらうと修正しやすい場合があります。

何より大切なのは、「昔習っていないから」「今からでは遅いから」と考えすぎないことです。バイエルを最初から全部やる方法もあれば、大人向け教材を使う方法もあります。今の自分に合ったところから始めれば大丈夫です。

セカンドライフでピアノを始めるなら、進度の速さを他人と比べる必要もありません。何曲進んだかより、「前より楽譜が読めるようになった」「両手で一曲弾けた」といった変化を積み重ねるほうが、長く続けやすくなります。

赤バイエルと黄バイエルの違い

バイエルについて調べていると、「赤バイエル」「黄バイエル」という呼び方を見かけることがあります。

一般的には、子ども向けに分冊されたバイエルについて、上巻を「赤バイエル」、下巻を「黄バイエル」と呼ぶことがあります。

代表的な子ども向け分冊版では、上巻が43番まで、下巻が44番以降という構成があります。

そのため、「赤バイエルが終わった」「黄バイエルまで進んだ」といった言い方が、進度を表すために使われることがあります。

ただし、「赤」「黄」はバイエル全体に共通する正式な分類ではありません。出版社や版によって、表紙のデザイン、分冊方法、応用曲、説明内容などが異なります。

バイエルには、1冊にまとまった標準的な版、子ども向けの分冊版、説明を加えた版などがあります。教室で指定されている場合は、出版社名、書名、上巻・下巻、ISBNなどを確認してから用意すると間違いを防ぎやすくなります。

見た目が似ていても、収録内容やページ構成が同じとは限りません。とくにレッスンで先生と同じページを使う場合は、指定された版を確認しておくことが大切です。

独学の大人が選ぶなら、「赤か黄か」だけで決めるより、説明が十分にあるか、楽譜が読みやすいか、自分が続けやすい構成かという視点で選ぶほうが実用的です。

説明が少ない楽譜を見ても理解できる人と、音符の読み方から詳しく説明してほしい人では、向いている版が違います。

また、子ども向けのイラストや選曲が気にならないなら分冊版を使っても問題ありませんし、大人向けの雰囲気を重視したいなら標準バイエル・ピアノ教則本や説明の多い版を検討する方法もあります。

「バイエルならどれも同じ」と考えるより、自分の使い方に合うかを確認して選ぶことが大切です。

バイエルについてよくある疑問

Q1. バイエルは何番までありますか?

A. 標準的なバイエルは106番まであります。ただし、使用する版によって補足曲や説明の構成が異なることがあります。番号だけで進度を判断するのではなく、読譜や両手奏などが身についているかも確認しましょう。

Q2. バイエルを終わったらブルグミュラーでよいですか?

A. ブルグミュラー25の練習曲は代表的な選択肢です。バイエルで身につけた読譜や両手奏を使いながら、より音楽的な表現へ進みやすくなります。ただし、譜読みや両手奏が不安定なら初級曲集を補ったり、指の基礎を伸ばしたいならハノンなどを併用したりする方法もあります。

Q3. 106番まで終えないと次へ進めませんか?

A. 必ずしも106番まで完璧に終える必要はありません。読譜、リズム、両手奏などが身についているかを確認し、学習状況や目標に応じて次の教材へ進む考え方があります。反対に、最後まで進んでも基礎が不安定なら、必要な内容を補ってから次へ進むと取り組みやすくなります。

Q4. 大人の初心者でもバイエルを使えますか?

A. 使えます。基礎を順番に学びたい人には選択肢になります。ただし、大人向け教本や好きな曲の初級アレンジを併用したほうが、目的によっては楽しく続けやすいでしょう。バイエルを最後まで終えてから好きな曲を始める必要はありません。

Q5. バイエルは古い教材なので使わないほうがよいですか?

A. バイエルは歴史のある教材ですが、古いことだけを理由に価値がなくなるわけではありません。基礎を段階的に学べる一方、楽しさや現代的な学習内容を補いたい場合は、ほかの曲集や教材と組み合わせる方法があります。自分の目標に合っているかで判断することが大切です。

Q6. バイエル修了は中級レベルですか?

A. バイエル修了だけで中級者と断定するより、初級の基礎をひと通り学び、次の段階へ進む準備ができた状態と考えるほうがわかりやすいでしょう。その後、ブルグミュラーなどを通して表現や技術を広げていきます。

Q7. 独学でバイエルを進めても大丈夫ですか?

A. 独学でも進められますが、姿勢、手の形、脱力、リズムの崩れなどは自分だけでは判断しにくいことがあります。ゆっくり練習する、録音する、メトロノームを活用するなどの方法で確認し、必要に応じて第三者に見てもらうと安心です。

まとめ

ピアノのバイエルは、鍵盤、指番号、読譜、リズム、両手奏など、初心者が必要とする基礎を段階的に学べる教則本です。

標準的なバイエルは106番までありますが、106番まで終えること自体が目的ではありません。大切なのは、そこで学ぶ基礎が身についているかどうかです。

ト音記号とヘ音記号がある程度読める、両手で基本的な演奏ができる、拍子やリズムを意識できる、指番号や強弱などにも目を向けられるようになれば、次の段階へ進む土台ができてきたと考えられます。

修了後の代表的な進路はブルグミュラー25の練習曲ですが、指の基礎を補いたいならハノン、技術的な練習を増やしたいならチェルニー系の教材、クラシックをさらに進めたいならその先にソナチネという選択肢があります。

一方で、ポップスや弾き語りを楽しみたい人なら、コードや好きな曲の初級アレンジへ進む方法もあります。

「バイエルの次はこれ」と一つに決めるのではなく、自分の弱点と、これから弾きたい音楽の両方を見て選ぶことが大切です。

大人やシニアから始める場合も同じです。昔から使われている順番にすべて合わせる必要はありません。バイエルを基礎教材として使いながら好きな曲を併用する方法もあれば、大人向け教材を中心にして必要なところだけ基礎を補う方法もあります。

ピアノを続けるうえで大切なのは、教本を何冊終えたかだけではありません。以前は読めなかった楽譜が読めるようになること、両手で弾けなかった曲が弾けるようになること、そして「次はこの曲を弾きたい」と思えることも大切な前進です。

教材の版や内容、レッスンなどの条件は変更される場合があるため、購入や利用を決める際は正確な情報を出版社や提供元の公式案内で確認してください。判断に迷う場合は、ピアノ講師など専門家に相談しながら、自分に合った進み方を選ぶと安心です。

バイエルはゴールではなく、これから音楽を楽しむための入口です。基礎を大切にしながら、自分が本当に弾いてみたい曲へ少しずつつなげていきましょう。