トロンボーンの名曲を探していると、「クラシックの有名曲を聴きたい」「トロンボーンらしいかっこいい演奏を知りたい」「自分でも吹ける曲を見つけたい」など、目的によって候補が大きく変わります。
実は「トロンボーンの名曲」と呼ばれるものには、トロンボーンのために作曲された独奏曲だけでなく、オーケストラの中で印象的なソロが登場する作品や、ジャズ奏者による名演、ポップスや映画音楽をトロンボーン向けに編曲した曲まで含まれます。
その違いを知らずに曲名だけを並べると、「独奏曲だと思って聴いたらオーケストラ曲だった」「初心者向けだと思ったのに原曲はかなり難しかった」ということにもなりかねません。
この記事では、クラシック、独奏曲、ジャズ、現代的な演奏、初心者向けの曲まで整理しながら、トロンボーンの魅力が伝わりやすい代表曲を紹介します。
「聴くための名曲」と「実際に演奏するための曲」を分けて考えることで、初心者でも自分に合う楽しみ方を見つけやすくなります。
- トロンボーンが目立つクラシックの名曲
- 独奏曲やジャズを含む代表的なかっこいい曲
- 初心者でも取り組みやすい有名曲の選び方
- トロンボーンらしい音色や奏法を聴くポイント
- 原曲とトロンボーン用編曲を区別する考え方
トロンボーンの名曲とは
「トロンボーンの名曲」と一言で言っても、実際にはいくつかの種類があります。
トロンボーン専用に作られた作品だけを探すのか、オーケストラの中でトロンボーンが活躍する曲まで含めるのかで、選ばれる曲は大きく変わります。
また、検索する人によっても目的は異なります。プロ奏者の名演を聴きたい人もいれば、吹奏楽部でトロンボーンを始めたばかりで「自分でも吹けそうな有名曲」を探している人もいます。
そのため、最初に曲の種類を整理してから探すことが重要です。
名曲を4つの種類に分けて選ぶ
トロンボーンの名曲は、大きく分けると4つのタイプがあります。
1つ目は、オーケストラの中でトロンボーンが印象的に使われているクラシック作品です。
2つ目は、最初からトロンボーン独奏を中心に書かれた協奏曲や独奏曲です。
3つ目は、ジャズやファンクなどでトロンボーン奏者の個性を楽しめる演奏です。
4つ目は、映画音楽、アニメ、J-POPなどをトロンボーン向けに編曲した曲です。
たとえばラヴェルの「ボレロ」は、非常に有名なトロンボーンのソロが登場しますが、トロンボーン協奏曲ではありません。作品全体はオーケストラのための音楽です。
一方、フェルディナント・ダヴィッドの「トロンボーンのためのコンチェルティーノ 変ホ長調 Op.4」は、トロンボーン独奏そのものを中心に楽しむ作品です。
さらに「ルパン三世のテーマ」やジブリ作品などは、もともとトロンボーン専用に作られた曲ではありません。しかし、トロンボーン用に編曲された楽譜があり、実際に演奏を楽しむことができます。
原曲がトロンボーン用か、編曲曲かを区別するだけでも、「トロンボーンの曲」という言葉の意味がかなり整理しやすくなります。
クラシック作品の中でトロンボーンが目立つ曲を探す場合は、「作品そのものがトロンボーン独奏曲か」ではなく、「どの場面でトロンボーンが前に出るか」という視点で聴くと楽しみやすくなります。
逆に、演奏する曲を探す場合は、曲の知名度だけでなく、独奏用なのかアンサンブル用なのか、伴奏が必要なのか、初心者向けの編曲があるのかまで確認したほうが選びやすくなります。
トロンボーンらしい聴きどころ
トロンボーンの最大の特徴は、ピストンやロータリーではなく、長いスライドを動かして音程を変えるところです。
この構造を生かした代表的な奏法がグリッサンドにつながる滑らかな音程変化です。スライドを動かしながら音程を連続して変えることで、音と音の間を滑らかにつなげられます。
グリッサンドはジャズやポップスで耳にする機会が多く、トロンボーンらしさを感じやすい奏法の一つです。ただし、トロンボーンの魅力はグリッサンドだけではありません。
弱く演奏すれば柔らかく歌うような音になり、強く演奏すれば金管楽器らしい力強い響きになります。複数のトロンボーンが重なると、厚く重厚な和音を作ることもできます。
ジャズでは滑らかなレガート、ミュートによる音色変化、速いアドリブなども聴きどころです。
「トロンボーンは低くて大きな音を出す楽器」という印象だけで聴いていると、名手の演奏で見せる繊細な弱音や、高音域、高速パッセージに驚くかもしれません。
特にレガートの演奏では、スライドを大きく動かしているとは思えないほど滑らかにつながることがあります。これはジャズでもクラシックでも重要な聴きどころです。
一方で、オーケストラや吹奏楽では、テナー・トロンボーンだけでなくバス・トロンボーンが加わることで、金管セクションの低音がさらに厚くなります。
同じ「トロンボーンが活躍する曲」でも、旋律を担当する場面と、和音や低音を支える場面では聴こえ方がまったく違います。
曲を聴くときは、音の高さだけでなく、スライドならではの音のつながり、柔らかいレガート、強奏時の迫力、複数本で作る厚い和音にも注目してみてください。
最初からすべてのトロンボーンの音を聞き分ける必要はありません。「この場面の金管がかっこいい」「この独奏の音色が好き」と感じたところから意識して聴けば十分です。
クラシックの有名な名曲
クラシックには、トロンボーンがオーケストラの中で非常に印象的な役割を担う作品があります。
曲によっては最初から最後まで演奏し続けるのではなく、長い休みのあとに重要な場面で登場することもあります。
そのため、トロンボーンが入った瞬間に音楽の色や重さが変わるところも、クラシックでの大きな魅力です。
初めてトロンボーンの音を意識して聴くなら、まずはソロが分かりやすい作品から入ると楽しみやすいでしょう。
ボレロとトゥーバ・ミルム
最初に聴いてほしい代表曲の一つが、モーリス・ラヴェルの「ボレロ」です。
「ボレロ」は1928年に作曲された管弦楽作品で、同じリズムが続く中、さまざまな楽器が旋律を受け渡していきます。
その途中でトロンボーンによる印象的な独奏が登場します。ほかの楽器の音色と順番に比較できるため、「これがトロンボーンの音か」と確認しながら聴きやすい作品です。
トロンボーンの音だけを単独で覚えるより、フルートやクラリネットなど別の楽器のあとに聴くことで、音色の違いが分かりやすくなります。
その意味でも「ボレロ」は、初めてオーケストラの中でトロンボーンを探してみたい人に向いています。
ただし、「ボレロ」はトロンボーンの独奏曲ではありません。作品全体では多数の楽器が活躍し、その一部としてトロンボーンに重要なソロがあります。
もう一つ重要なのが、モーツァルトの「レクイエム K.626」に含まれる「トゥーバ・ミルム」です。
この曲は冒頭からトロンボーン独奏が現れ、その後にバス独唱へとつながります。
ここで聴けるのは、派手に鳴り響く金管のイメージとは少し違う、荘厳で歌うようなトロンボーンです。
トロンボーンは音量の大きさだけが魅力ではなく、人の声に寄り添うような柔らかい表現も得意だということが分かります。
ちなみに「トゥーバ・ミルム」の「Tuba」は、ここでは現代の金管楽器であるチューバという意味で曲名が付いているわけではありません。ラテン語の文脈でラッパを表す言葉です。
独奏を明確に聴くなら「トゥーバ・ミルム」、オーケストラのほかの楽器と音色を比べながら聴きたいなら「ボレロ」から始めると分かりやすいです。
クラシックに詳しくない場合でも、最初から作品全体の構成を理解しようとする必要はありません。まずはトロンボーンの登場する部分を意識し、気に入ったら曲全体を聴くという順番でも十分楽しめます。
マーラーとブルックナーの名曲
もっと壮大で力強いトロンボーンを聴きたいなら、マーラーの「交響曲第3番」に注目です。
第1楽章には、長く存在感のあるトロンボーンの旋律が登場します。
単なる伴奏ではなく、トロンボーンそのものが旋律楽器として前面に出てくるため、力強さだけでなく歌うような表現も味わえます。
「オーケストラの中でトロンボーンがこんなに存在感を出せるのか」と感じやすい作品です。
トロンボーンは金管セクションの一員として和音を作る役割も重要ですが、マーラーの作品では一人の奏者による旋律の存在感を味わえる場面があります。
一方、複数のトロンボーンが加わったときの厚い響きを楽しみたいなら、アントン・ブルックナーの交響曲も外せません。
ブルックナーの作品では、トロンボーンを含む金管群が大きなハーモニーを作る場面が多くあります。
一人の奏者による技巧的なソロというより、金管セクション全体が重なったときの荘厳さやスケールの大きさを味わうタイプです。
トランペット、ホルン、トロンボーン、低音金管がそれぞれの役割を持ちながら重なることで、単独のトロンボーンとは違う巨大な響きが生まれます。
ベートーヴェンの「交響曲第6番 田園」も興味深い作品です。トロンボーンは終盤で使われ、第4楽章「雷雨、嵐」では劇的な響きに加わり、第5楽章では雰囲気の変化に関わります。
モーツァルトのオペラ「ドン・ジョヴァンニ」では、超自然的で緊張感のある場面にトロンボーンが効果的に使われます。
こうした作品を聴き比べると、トロンボーンが単に音量を増やすためだけではなく、荘厳さ、恐怖、英雄的な雰囲気など、場面の性格そのものを作るために使われてきたことが見えてきます。
「クラシックのトロンボーンを聴く」という目的でも、ソロを楽しみたい場合と、セクション全体の響きを楽しみたい場合では選ぶ曲が変わります。
最初は「ボレロ」や「トゥーバ・ミルム」で音色を把握し、その後マーラーやブルックナーへ進むと、トロンボーンの役割の広さを感じやすいでしょう。
トロンボーン独奏の代表曲
オーケストラ作品の次は、トロンボーンそのものを主役として聴ける独奏レパートリーです。
独奏曲では、伴奏の上でトロンボーンが旋律を担当し続けるため、音色、息の使い方、タンギング、スライド操作などをより集中して聴けます。
本格的な作品になると初心者がすぐ演奏できる難易度ではありませんが、「トロンボーンという楽器でどこまで表現できるのか」を知るにはぴったりです。
ダヴィッドとリムスキー=コルサコフ
クラシックのトロンボーン独奏曲を知るなら、フェルディナント・ダヴィッドの「トロンボーンのためのコンチェルティーノ 変ホ長調 Op.4」は代表的な作品の一つです。
歌うような旋律と技巧的な部分の両方が含まれ、トロンボーンの本格的な独奏レパートリーとして知られています。
美しい旋律をどう歌うか、細かな動きをどう処理するかなど、トロンボーン奏者に必要な要素が幅広く現れます。
単に速いフレーズを吹けばよい曲ではなく、長い旋律の中で音色やフレージングを保つことも求められます。
そのため、トロンボーン独奏の魅力を知るために聴く曲としても、演奏技術を高めたあとに目標にする曲としても位置付けやすい作品です。
ただし、これから楽器を始める人が最初の一曲として吹くような作品ではありません。「いつか挑戦したい本格的な曲」と考えるほうが自然です。
もう一つの代表作が、ニコライ・リムスキー=コルサコフの「トロンボーンと吹奏楽のための協奏曲」です。
独奏トロンボーンと吹奏楽という組み合わせで、美しい旋律と技巧的な部分を楽しめます。
オーケストラ作品で知られる作曲家がトロンボーンを独奏楽器として扱った作品で、吹奏楽との組み合わせという点でも特徴があります。
吹奏楽に親しんでいる人にとっては、オーケストラ伴奏の協奏曲とはまた違う響きを楽しめるでしょう。
代表曲だから初心者向けとは限りません。ダヴィッドやリムスキー=コルサコフの作品は重要なレパートリーですが、演奏する場合は現在の技量に合うかを楽譜の内容から確認することが大切です。
初心者がこうした作品に興味を持った場合は、まずプロ奏者の演奏を聴き、音色やフレージングを楽しむだけでも十分です。
そのうえで、基礎練習や易しい曲を積み重ねながら「いつかこの曲を演奏したい」という目標にすると、練習を続ける動機にもなります。
プライアーの超絶技巧曲
「とにかくかっこいい技巧を聴きたい」という人に紹介したいのが、アーサー・プライアーの「スコットランドの釣鐘草(Blue Bells of Scotland)」です。
スコットランド民謡を素材にした主題と変奏の形式で、曲が進むにつれて難しい技巧が次々に登場します。
高速パッセージ、広い音域、素早いスライド操作など、トロンボーンの能力を華やかに見せる作品です。
最初に旋律を聴いたあと、変奏が進むにつれて同じ素材がどのように変化していくかに注目すると、技巧のすごさが分かりやすくなります。
「スライドを動かす楽器なのに、こんなに速く吹けるのか」と驚く人も多いタイプの曲でしょう。
トロンボーンでは、スライドを短時間で正確な位置へ動かす必要があります。速いフレーズでは、スライド操作だけでなくタンギングや息の流れもそろえなければなりません。
そのため、超絶技巧の演奏を聴くときは、単純な速さだけでなく、一音一音がどれだけ明瞭につながっているかにも注目すると楽しめます。
プライアーには「Thoughts of Love」という作品もあります。
こちらは「スコットランドの釣鐘草」のような技巧だけを前面に出す曲とは違い、トロンボーンの美しい歌い方も楽しめます。
技巧的な作品だけを聴くと、トロンボーンは速い音を吹くための楽器のように感じるかもしれません。しかし、旋律を長く歌わせる作品と聴き比べることで、表現の幅がより分かりやすくなります。
さらに20世紀以降には、ウジェーヌ・ボザ、アンリ・トマジ、ラウニー・グレンダールなどによる重要な作品も作られています。
グレンダールの「トロンボーン協奏曲」なども、専門的なレパートリーとして知られる作品です。
こうした作品は初心者向けというより、中上級者や専門的に学ぶ奏者が目標にするレパートリーとして考えるとよいでしょう。
「有名な曲を今すぐ吹く」ことだけが楽しみ方ではありません。難しい独奏曲はまず聴いて楽しみ、将来の目標曲として覚えておくという付き合い方もできます。
ジャズのかっこいい名曲
トロンボーンの魅力はクラシックだけではありません。
ジャズでは、滑らかな歌い方から高速アドリブ、ミュートを使った個性的な音色まで、クラシックとは違う表情を聴くことができます。
同じトロンボーンでも、奏者によって音の立ち上がり、ビブラート、フレーズの歌わせ方が大きく変わります。
「トロンボーンのかっこいい曲」を探しているなら、曲名だけでなく奏者の名前から探すと選択肢が一気に広がります。
トミー・ドーシーとJ.J.ジョンソン
美しく滑らかなジャズ・トロンボーンを聴きたいなら、Tommy Dorseyの「I’m Getting Sentimental Over You」が代表的です。
1930年代のビッグバンド時代を象徴する演奏の一つで、派手な速さよりも柔らかな音色と長いフレーズが魅力です。
スライド式の楽器でありながら、音と音の間がとても滑らかにつながります。
トロンボーンが「人の声のように歌う楽器」であることを感じたい人に向いています。
速い音や高い音だけが「かっこいい」のではなく、長いフレーズを自然につないで旋律を歌わせる演奏にもトロンボーンならではの魅力があります。
対照的に、速く切れのある演奏を聴きたいならJ.J. Johnsonです。
Dizzy Gillespie作曲の「A Night in Tunisia」などの演奏では、ビバップらしい速いフレーズと明確なアーティキュレーションをトロンボーンで表現しています。
スライドを動かして音程を取るトロンボーンでも、高速のジャズフレーズを演奏できることがよく分かります。
「トロンボーンは速い曲には向かないのでは?」と思っているなら、こうした演奏を聴くと印象が大きく変わるかもしれません。
Tommy DorseyとJ.J. Johnsonは、同じトロンボーンでも魅力の方向がかなり違います。
前者では柔らかな音色と長いレガート、後者では速いアドリブと明瞭なアーティキュレーションに注目すると、トロンボーンという楽器の表現範囲が見えてきます。
また、ミュートによる音色の変化を楽しみたいなら、Al Greyのような奏者の演奏も参考になります。
ベルにミュートを付けることで、同じトロンボーンでも通常とは異なる音色に変化します。ジャズでは、スライドの動きとミュートを組み合わせて会話するような効果を作ることもあります。
曲そのものがトロンボーン専用に作られていなくても、奏者の音色やアドリブによって「トロンボーンの名演」として楽しめるのがジャズのおもしろさです。
現代的なトロンボーン奏者
もっと現代的な音楽から入りたいなら、Trombone Shortyは知っておきたい奏者です。
ニューオーリンズを背景に、ブラスバンド、ファンク、ソウル、R&B、ロックなどを混ぜたエネルギッシュな音楽を聴かせてくれます。
「トロンボーンはクラシックや吹奏楽で使う楽器」という印象を持っている人ほど、その違いを感じやすいでしょう。
アルバムには「Backatown」「For True」「Say That to Say This」「Parking Lot Symphony」「Lifted」などがあります。
現代的なリズムやバンドサウンドの中でも、トロンボーンの太い音や金管楽器らしい存在感はよく映えます。
そのため、クラシックや昔のジャズにはまだ馴染みがなくても、ファンクやロック寄りの音楽が好きなら入口になりやすいでしょう。
ジャズをさらに掘り下げたいなら、Steve TurreやWycliffe Gordonなどの奏者も候補です。
Steve Turreはジャズだけでなくラテン音楽などにも関わり、トロンボーン以外に貝殻を楽器として演奏することでも知られています。
Wycliffe Gordonも伝統的なジャズから幅広いスタイルまで演奏する奏者です。
好きな音楽のジャンルからトロンボーンへ入って構いません。クラシック、ジャズ、ファンク、アニメ曲など、どこから聴き始めてもトロンボーンの魅力へつながります。
また、リムスキー=コルサコフ作曲の「熊蜂の飛行」のように、もともとトロンボーン用ではない曲をトロンボーンで演奏する例もあります。
高速で連続する音型をトロンボーンで演奏することで、「スライド式の楽器でもこれほど速く動ける」という技巧そのものを楽しめます。
このような演奏を聴くときも、「原曲がトロンボーンの曲なのか」「トロンボーン向けに編曲された演奏なのか」を分けて考えると理解しやすくなります。
初心者でも吹きやすい有名曲
名演を聴いて「自分でも吹いてみたい」と思ったら、次に大切なのは難易度です。
トロンボーンを代表する独奏曲の中には高度な作品が多いため、有名だからという理由だけで選ぶと難しすぎる場合があります。
特に、プロ奏者が華やかに演奏している曲は、音域、テンポ、スライド移動、タンギングなど複数の技術を同時に求められることがあります。
初心者は、知っている旋律を易しく編曲した楽譜から始める方法が現実的です。
ジブリやディズニーの編曲曲
初心者向けの曲として分かりやすいのは、「聖者の行進」「歓喜の歌」「きらきら星」「グリーンスリーブス」「ムーン・リバー」などです。
これらは初心者向けトロンボーン教材にも実際に採用されている曲で、旋律を知っているものも多いため、自分が正しい音を吹けているか確認しやすいというメリットがあります。
「歓喜の歌」や「きらきら星」は比較的覚えやすい旋律なので、音程とスライドポジションを結び付ける練習にも使いやすいでしょう。
知っている曲であれば、吹いた音が旋律から外れたときにも気付きやすくなります。
「グリーンスリーブス」や「ムーン・リバー」は、速さを競うというより、ゆったりした旋律を滑らかに吹く練習につながります。
速いスライド移動がまだ難しい段階でも、落ち着いたテンポの曲なら息の流れや音のつながりを意識しやすくなります。
知っている曲を吹きたいなら、ジブリ作品も選択肢が豊富です。
「君をのせて」「海の見える街」「人生のメリーゴーランド」「となりのトトロ」「風のとおり道」「いつも何度でも」「あの日の川」「もののけ姫」「ひこうき雲」などは、トロンボーン用に編曲された楽譜が流通しています。
曲ごとにテンポや音域は異なりますが、初級者から楽しめるように編曲された楽譜を選べば、よく知っている旋律を使ってトロンボーンの練習を進められます。
ディズニー作品でも、「星に願いを」「ミッキーマウス・マーチ」「いつか王子様が」「ホール・ニュー・ワールド」「美女と野獣」「小さな世界」「愛を感じて」「レット・イット・ゴー~ありのままで~」「彼こそが海賊」など、トロンボーンで演奏できる曲があります。
ここで大切なのは、これらの多くがトロンボーン用の原曲ではなく、演奏用に編曲された曲だという点です。
同じ考え方で、「ルパン三世のテーマ」「名探偵コナン メイン・テーマ」「情熱大陸」「紅蓮華」なども、トロンボーン用の編曲譜を選べば演奏できます。
特に「ルパン三世のテーマ」のようにジャズ色の強い曲は、トロンボーンの力強い音やリズム感と相性がよく、「かっこいい有名曲を吹きたい」という人にも候補になります。
一方、同じポップスでも編曲によっては高音が続いたり、細かなリズムが増えたりするため、曲名だけで難しさを決めないことが重要です。
また、ソロ楽譜だけでなく、デュエットやトロンボーン・アンサンブル用に編曲されたジブリやディズニー作品もあります。
一人で旋律を吹くのとは違い、複数人で演奏するとハーモニーや伴奏の役割も楽しめます。
難易度を見極めるポイント
初心者が曲を選ぶときに注意したいのは、「曲名だけでは難易度を判断できない」ということです。
同じ「君をのせて」でも、初心者向けに音域を狭くした楽譜と、演奏会向けに技巧的に編曲した楽譜では難しさが変わります。
楽譜を選ぶときは、次のような点を確認すると判断しやすくなります。
- 最高音と最低音が現在出せる音域に収まっているか
- テンポが速すぎないか
- 16分音符など細かな音符が連続していないか
- 6ポジション、7ポジションを頻繁に使うか
- 離れたポジションへの移動が多くないか
- 音の跳躍が多くないか
- 長いフレーズを一息で吹く必要があるか
- リップスラーが頻繁に出てくるか
- 高い音が長く続かないか
- 模範演奏など練習を補助する材料があるか
速いスライド移動が多い曲、高い音が長く続く曲、16分音符が連続する曲などは、同じ演奏時間でも負担が大きくなることがあります。
逆に、テンポがゆっくりでも長いフレーズが続く曲は、息を一定に流す力が必要です。
つまり、速い曲だけが難しいわけではありません。自分が今どの技術を練習している段階なのかによって、難しく感じるポイントは変わります。
市販楽譜で「初級」「初中級」「グレード3」などの難易度表示がある場合は、それも一つの目安になります。
難易度表示は出版社や編曲によって基準が異なるため、絶対的なものではありません。自分に合うか迷う場合は、楽譜の音域や内容を確認してください。価格や販売状況など変動する情報については、購入時点の公式情報で確認することが大切です。
初心者なら、まず「聖者の行進」「歓喜の歌」「きらきら星」などから始め、少し慣れたらジブリやディズニーの初級・初中級向け編曲へ進む方法があります。
その段階では、完璧にかっこよく吹くことよりも、正しいポジション、安定した息、一定のテンポで旋律を吹けることを優先すると次へつながりやすくなります。
自宅で練習する場合は、曲選びだけでなく自宅練習の音量対策も含めて、継続して吹ける環境を整えておくと練習しやすくなります。
さらに演奏経験を積んでから、ダヴィッドの「コンチェルティーノ」やリムスキー=コルサコフの協奏曲、プライアーの作品といった本格的なレパートリーを目標にすると、段階を作りやすいでしょう。
難しい名曲は、まず聴いて目標にするだけでも十分です。原曲が難しければ易しい編曲を探し、好きな曲へ少しずつ近づいていく方法もあります。
「初心者でも有名曲を吹きたい」という場合に最も重要なのは、有名かどうかよりも、自分の今の技術に合った編曲を選ぶことです。
同じ曲を初級版から始め、慣れたらより難しい編曲に挑戦することもできます。
トロンボーンの名曲に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 一番有名なトロンボーンのクラシック曲は何ですか?
A. 客観的に一曲だけを「一番」と断定することはできません。トロンボーンが目立つ作品ではラヴェル「ボレロ」、モーツァルト「レクイエム」の「トゥーバ・ミルム」、マーラー「交響曲第3番」などが代表例です。独奏曲ならダヴィッドの「コンチェルティーノ」などが知られています。
Q2. トロンボーンで一番かっこいい曲は何ですか?
A. 好みによって変わります。クラシックの迫力ならマーラー、技巧を楽しむならプライアー、速いジャズならJ.J. Johnson、現代的なファンク寄りの演奏ならTrombone Shorty、日本でよく知られた曲を演奏したいなら「ルパン三世のテーマ」など、好きなジャンルから選ぶと見つけやすいです。
Q3. 初心者でも有名曲を吹けますか?
A. 吹けます。「歓喜の歌」「聖者の行進」「きらきら星」「ムーン・リバー」などは初心者向け教材にも使われています。ジブリやディズニーにも初級・初中級向けの編曲があります。ただし、同じ曲でも編曲によって難易度が違うため、楽譜の表示や音域を確認してください。
Q4. トロンボーンで速い曲を演奏できますか?
A. できます。J.J. Johnsonのビバップ演奏やArthur Pryorの技巧的な作品、Christian Lindbergによる「熊蜂の飛行」のような演奏例を見ると、スライド式のトロンボーンでも高速フレーズを演奏できることが分かります。ただし、実際に演奏するには正確なタンギングと素早いスライド操作が必要です。
Q5. トロンボーンらしい音を分かりやすく聴ける曲はどれですか?
A. クラシックで独奏を明確に聴くならモーツァルト「トゥーバ・ミルム」、オーケストラの中でほかの楽器と音色を比較するならラヴェル「ボレロ」が分かりやすいです。ジャズの滑らかな音色を知りたいならTommy Dorsey「I’m Getting Sentimental Over You」も候補になります。
Q6. 「ボレロ」はトロンボーンのために作られた曲ですか?
A. いいえ。「ボレロ」はオーケストラ全体のための作品で、その中に有名なトロンボーン独奏があります。トロンボーン協奏曲やトロンボーン独奏曲とは区別して考える必要があります。
Q7. トロンボーンでジブリやディズニーの曲は演奏できますか?
A. 演奏できます。「君をのせて」「海の見える街」「星に願いを」「ホール・ニュー・ワールド」など、トロンボーン用に編曲された楽譜があります。原曲がトロンボーン専用曲という意味ではなく、トロンボーン用編曲として演奏する形です。
Q8. 独奏曲を吹くのはいつ頃からがおすすめですか?
A. 曲によって難易度が大きく異なるため、一律には決められません。ダヴィッド、リムスキー=コルサコフ、プライアーなどの代表的な本格レパートリーは、初心者が最初から原曲通り演奏する曲というより、基礎を身に付けたあとに目標とする曲として考えやすいです。
まとめ
トロンボーンの名曲は、クラシックのオーケストラ作品、独奏曲、ジャズ、現代的なファンク、初心者向けの編曲曲まで幅広くあります。
- クラシックのトロンボーンを聴くなら「トゥーバ・ミルム」「ボレロ」「マーラー交響曲第3番」が分かりやすい
- 金管セクション全体の厚い響きならブルックナーの交響曲も聴きどころが多い
- 本格的な独奏曲ならダヴィッドやリムスキー=コルサコフ、技巧を聴くならプライアーが代表的
- ジャズならTommy Dorseyの滑らかな音色とJ.J. Johnsonの高速な演奏を聴き比べると違いが分かる
- 現代的なファンクやロック寄りの音楽から入るならTrombone Shortyのような奏者も候補になる
- 初心者は「歓喜の歌」「聖者の行進」などや、ジブリ・ディズニーの易しい編曲から始めやすい
- 同じ曲でも編曲によって難易度が変わるため、曲名だけで初心者向けかどうかを判断しない
まず聴く一曲を選ぶなら、壮大な音を求めるのか、歌うような音色を聴きたいのか、超絶技巧を楽しみたいのかを考えてみてください。
クラシックの独奏を分かりやすく聴くなら「トゥーバ・ミルム」、オーケストラの中でトロンボーンを探したいなら「ボレロ」、迫力ならマーラー、技巧ならプライアー、ジャズならTommy DorseyやJ.J. Johnsonというように、目的を決めると選びやすくなります。
そして気に入った曲が見つかったら、今度は自分のレベルに合う編曲があるかを確認してみましょう。
原曲が難しくても、初心者向けに編曲された楽譜が見つかることがあります。逆に、簡単そうに聞こえる有名曲でも、編曲によっては高音や細かな音符が多く難しくなることがあります。
「聴いて楽しむ曲」と「今の自分が吹く曲」を分けて考えれば、難しい名曲も遠ざける必要はありません。
好きな演奏を見つけ、易しい曲で基礎を身に付けながら、少しずつ憧れのレパートリーへ近づいていくことが、トロンボーンの名曲を長く楽しむ方法の一つです。

