サクソフォンとサックスの違いは?60代からの趣味選びで失敗しない呼び方と種類の基礎知識

サックス
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サクソフォンとサックスの違いに悩む60代の方へ。実は同じ楽器ですが、選ぶべき種類やジャンルによる違いは重要です。サクソフォン歴のある筆者が、初心者が知るべき基礎知識と失敗しない選び方を徹底解説します。

定年を迎え、ようやく手に入れた自由な時間。「昔から憧れていたあの金色の楽器を奏でてみたい」と思い立ち、意気揚々と楽器店へ向かった日のことを、私は今でも鮮明に覚えています。しかし、きらびやかなショーケースを前にして、私の足はピタリと止まってしまいました。

値札には「アルト・サクソフォン」という文字。しかし、私がラジオやレコードで親しんできたのは「サックス」という名前でした。「もしかして、サクソフォンとサックスは似て非なるものなのだろうか?」「初心者の私が名前を間違えて注文したら、店員さんに笑われるのではないか…」そんな不安が頭をよぎり、結局その日は店員さんに声をかけることすらできず、パンフレットだけを貰ってすごすごと帰宅してしまったのです。

あなたも今、同じような迷いを抱えてこのページに辿り着かれたのではないでしょうか。新しい趣味を始める時、専門用語の壁は思った以上に高く感じるものです。特に私たちのような60代以上の世代にとって、間違った知識で道具を選んでしまい、後で後悔することだけは避けたいという慎重な気持ちが働くのは当然のことです。

この記事では、かつて同じ疑問に立ち尽くした私が、実際に楽器を手に取り、レッスンに通い、仲間と演奏する中で知った「本当の違い」と「選び方の極意」を、包み隠さずお話しします。専門的な難しい話は抜きにして、同世代の友人にお茶飲み話をするようなつもりで書きました。

  • サクソフォンとサックスという呼び名の明確な違いと使い分け
  • 60代の初心者が最初に手にするべき種類の具体的な選び方
  • ジャズとクラシックで変わる「セッティング」の基礎知識
  • 第二の人生の趣味として長く楽しむための健康的なメリット

サクソフォンとサックスの違いは?60代からの趣味選び

結論から申し上げますと、この二つは全く同じ楽器を指しています。しかし、なぜ二つの呼び名が存在し、場面によって使い分けられているのかを知ることは、音楽の歴史と文化に触れる第一歩です。私が楽器を始めてから気づいた「空気感の違い」を含めて解説します。

正式名称か略称かだけの単純な話

まず、一番の不安を取り除きましょう。「サクソフォン(Saxophone)」が正式な名称であり、「サックス(Sax)」はその愛称・略称です。これは、私たちが普段の生活で「パーソナルコンピュータ」を「パソコン」と呼び、「スマートフォン」を「スマホ」と呼ぶのと全く同じ理屈です。

しかし、私が長年この楽器と付き合ってきた中で感じるのは、単なる言葉の省略以上の「ニュアンスの違い」が現場には確実に存在するということです。例えば、市民吹奏楽団の練習場や、クラシックのコンサートホールに行くと、指揮者や奏者たちは当たり前のように「サクソフォン」あるいは「サクソフォーン」と呼びます。そこには、格式、伝統、そして楽譜に忠実であろうとする真摯な姿勢が含まれているように感じます。燕尾服やロングドレスが似合う響き、と言えば伝わるでしょうか。

一方で、私がよく通うジャズ喫茶や、仲間と集まるスタジオ練習の場では、誰一人として「サクソフォン」とは呼びません。皆、「サックス」と呼びます。「おい、そのサックスいい音するな」「今度、サックス教室の発表会があるんだ」といった具合です。こちらには、紫煙がくゆらせるような夜の雰囲気や、自由で即興的な格好良さが込められています。

初心者のうちは「どちらを使うべきか」と悩むかもしれませんが、楽器店で注文する際や教室を探す際は、どちらの言葉を使っても100%通じます。私が初めて楽器を購入した時、恐る恐る「サックスを見せてください」と言いましたが、店員さんは満面の笑みで「はい、こちらのサクソフォンコーナーへどうぞ」と案内してくれました。恥ずかしがる必要は全くありません。自分が呼びやすい方、あるいは自分が憧れるジャンルの雰囲気に合わせて使い分ければ良いのです。

ここがポイント!
NHKの放送や公的な文書では「サクソフォーン」と長音が入ることが多いですが、これも同じものを指しています。言葉の響きを楽しめるのも、この楽器の懐の深さだと感じてください。

アドルフさんが作ったからサクソフォン

この楽器の名前の由来をご存知でしょうか。実は、発明者の名前に由来しています。1840年代、ベルギーの楽器製作者である「アドルフ・サックス(Adolphe Sax)」氏が考案したことから、「サックス(Sax)の音(Phone)」=「サクソフォン(Saxophone)」と名付けられました。

私たち60代の世代にとって、自分の名前がそのまま世界中で愛される製品名になるというのは、何ともロマンを感じる話ではないでしょうか。しかし、アドルフ・サックス氏がこの楽器を作った動機は、単なる名誉欲ではありませんでした。当時の音楽界にあった切実な「ある課題」を解決しようとしたのです。

それは、オーケストラにおける「木管楽器」と「金管楽器」の橋渡しという難題でした。フルートやクラリネットのような木管楽器は、指が速く動き、繊細で温かみのある表現が得意ですが、音量が小さく、野外や大編成の中では音が埋もれてしまいがちです。一方で、トランペットやトロンボーンのような金管楽器は、ファンファーレのように輝かしく大きな音が出ますが、木管楽器ほどの運動性能や、人の声のような柔らかさを出すのが難しい場合がありました。

そこで彼は、「木管楽器のような運動性を持ちながら、金管楽器のようなダイナミックな音量が出る楽器」を目指しました。金属(真鍮)のボディで作ることで金管楽器のパワーを持たせ、クラリネットと同じ「リード」という植物(葦)の板を振動させて音を出す仕組みを採用することで、木管楽器の繊細さを取り入れたのです。

私が自分の楽器の手入れをしている時、真鍮のひんやりとした硬質な感触と、リードの有機的で素朴な手触りが同時に指先に伝わってきます。その瞬間、「ああ、これは本当に二つの要素が融合してできた楽器なんだな」と、180年前の発明家の情熱を肌で感じることができます。この「いいとこ取り」の構造こそが、サックスがジャンルを超えて愛される最大の理由なのです。

なぜ呼び方が二つに分かれたのか

「サクソフォン」と「サックス」。この二つの呼び方が並存している背景には、日本におけるこの楽器の普及の歴史が深く関係していると私は感じています。戦前・戦後のダンスホールやジャズブームの到来とともに、アメリカから入ってきた「Sax」という略称が、大衆音楽の象徴として一気に広まりました。

私たち団塊の世代前後が若かりし頃、テレビの歌番組やナイトクラブのステージで目にしたのは、ムード歌謡のバックでむせび泣くような音色を奏でる「サックス」でした。石原裕次郎の映画や、海外のジャズレコードのジャケットに踊る「SAX」の文字。それは当時の私たちにとって、大人の色気と憧れの象徴だったのです。そのため、ポピュラー音楽やジャズの文脈では、圧倒的に「サックス」という呼び名が定着しました。

一方で、音楽大学や吹奏楽連盟といったアカデミックな教育機関では、原語に忠実な「サクソフォン」という呼称を正式なものとして採用し続けました。学校のブラスバンド部で孫が吹いているのは「サクソフォン」であり、コンクールのプログラムにもそう記載されています。ここでは、楽器は娯楽の道具というよりも、芸術表現のための厳格なツールとして扱われています。

実際に私が所有している古いレコードのコレクション棚を見てみると、面白いことに気づきます。ジャズの盤には大きく太いフォントで「SAX」と書かれていますが、フランスの奏者が吹くクラシックの協奏曲のライナーノーツには、流麗な筆記体で「Saxophone」と記されています。言葉の違いは、そのまま「どのジャンルの文化に属しているか」を示すIDカードのような役割を果たしてきたのです。

しかし、これから始める私たちにとっては、この境界線はもっと曖昧で自由なものです。演歌を吹いてもいいし、バッハを吹いてもいい。呼び名にこだわるよりも、その響きを楽しむことの方が遥かに重要です。

実は重要!種類による音と大きさの違い

「サクソフォンとサックスの違い」以上に、私たちが直面する現実的な選択は、「アルト」にするか「テナー」にするかという種類の違いです。サクソフォンは、音域によって主に4つの種類(ソプラノ、アルト、テナー、バリトン)に分かれていますが、初心者の大人の趣味として現実的な選択肢は実質2つです。

一つは「アルトサックス」。もう一つは「テナーサックス」です。楽器店に行くと、これらが並んで展示されていますが、遠目にはそっくりに見えるかもしれません。しかし、実際に近づいて見比べ、抱えてみると、その違いは歴然としています。

アルトサックスは、大人の女性が抱えても無理のないサイズ感で、管の長さも適度です。音色は「人間の女性の声」に近いと言われ、煌びやかで明るい音がします。メロディラインを吹くのに適しており、ポップスや吹奏楽で主役を務めることが多い楽器です。ルパン三世のテーマ曲のような、軽快で高い音をイメージしていただくと分かりやすいでしょう。

一方、テナーサックスは一回り大きく、ネック(吹き口を取り付ける部分)が白鳥の首のように一度ぐにゃりと曲がっているのが特徴です。音色は太く、低く、渋い。「人間の男性の声」に近く、ジャズのバラードで聴けるような、空気の混じった「サブトーン」と呼ばれる色気のある音は、テナーならではの特権です。ただし、その分、管体は長く、重厚感があります。

種類 調子(キー) 音色の特徴 代表的なイメージ
アルトサックス E♭(エス) 明るい、華やか、女性の声に近い ルパン三世のテーマ、吹奏楽の花形
テナーサックス B♭(べー) 太い、渋い、男性の声に近い ジャズバー、ムード歌謡、ロック

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初心者が選ぶべきはアルトかテナーか

これから始める60代の方から最も多く受ける相談がこれです。「どちらが良いですか?」と聞かれた時、私はいつも「一番好きな曲は何ですか?」と聞き返します。結論から言えば、「好きな音色の曲が多い方」を選ぶのが正解ですが、私たちシニア世代にとっては身体的な負担も無視できない要素です。

一般的に、入門用として推奨されるのは「アルトサックス」です。理由は単純で、扱いやすいからです。重量も2.5kg前後と、お米の小袋程度です。テナーに比べて軽く、指の間隔も狭いため、手の小さい方や、指の動きに自信がない方でも無理なくキーを押さえることができます。教則本や楽譜の種類もアルト用が最も豊富で、書店に行けば「アルトサックスで吹く昭和歌謡」といった本が沢山並んでおり、独学でも教材に困ることがありません。

しかし、もしあなたの憧れが、夜霧のむこうでむせび泣くような低い音、あるいはジョン・コルトレーンのような野太いジャズであるならば、迷わずテナーサックスを選ぶべきです。好きでもない音色の楽器を練習することほど、苦痛なことはありません。私もテナーの音に惹かれて始めた一人ですが、最初は正直、重さに苦労しました。楽器単体でも3.5kg前後、頑丈なケースに入れると6〜8kgになります。

これを背負って電車に乗り、教室まで歩くというのは、60代の足腰にはそれなりの運動になります。「これは筋トレだ」と割り切れる方は良いですが、腰痛持ちの方などは、キャスター付きのケースを用意するなどの対策が必要です。また、首にかけるストラップも、通常の首掛け式ではなく、肩と背中で支える「ハーネス型」を使うことで、重さの負担を劇的に減らすことができます。

注意点:ソプラノサックスは避けましょう
ケニー・Gのような真っ直ぐなソプラノサックスは見た目も優雅で素敵ですが、初心者には「音程(ピッチ)を合わせるのが極めて難しい」という難点があります。少し口の締め加減を変えるだけで音が大きく外れてしまうため、まずはアルトかテナーで口の周りの筋肉(アンブシュア)を作ってから挑戦するのが定石です。

ジャンルで変わるマウスピースの選び方

楽器本体は同じでも、口にくわえる「マウスピース」という部品を変えるだけで、サックスは全く別の楽器に変身します。これが、「サクソフォン」と「サックス」の違いを音で表現する最大の秘密であり、私が最も面白いと感じている部分です。

クラシックや吹奏楽では、一般的に「エボナイト」などの硬質ゴムで作られた、黒くて艶のあるマウスピースを使います。内部の空間が狭く設計されており、息を入れると抵抗感が程よくあり、丸くて澄んだ、ノイズの少ない上品な音が生まれます。セルマー社の「S90」や「S80」といったシリーズが世界的な定番です。これをつけた時の吹奏感は、まるで整えられた庭園を歩くような、端正でコントロールされた感覚です。

一方、ジャズやフュージョンでは、内部の空間が広く削られたマウスピースや、真鍮やステンレスで作られた「メタルマウスピース」を使うことが多いです。これらは息が抵抗なく沢山入り、バリバリとした倍音や、ハスキーな成分を含んだ音が出やすくなります。メイヤーやオットーリンクといったブランドが有名です。特にメタルのマウスピースを咥えた時の、あの金属特有の冷たさと、息を吹き込んだ瞬間に楽器全体が「ビリビリ!」と暴れるように振動する感覚は、一度味わうと病みつきになります。

私が初心者の頃、ジャズをやりたいのに、楽器に最初から付属していたクラシック用のマウスピースで必死に練習していました。「どうしてあのCDのような渋い音がでないんだろう」と悩み続け、ある日先生に勧められてジャズ用のマウスピースに変えた瞬間、目から鱗が落ちました。「自分の出したかった音はこれだ!」と衝撃を受けたのです。本体を買い替えなくても、数万円のマウスピースを変えるだけで世界が変わる。このカスタマイズの楽しさも、大人の趣味としての醍醐味です。

楽譜の表記はどっちで書かれている?

楽譜を買う際も、タイトルの表記に迷うかもしれません。基本的には、出版社やアレンジャーの意向によりますが、クラシック系の教則本や曲集では「アルト・サクソフォーンのための〜」といったタイトルが多く、ポピュラー系では「アルト・サックスで吹く〜」といったタイトルが目立ちます。中身の楽譜自体に違いはありません。ドはドであり、レはレです。

ただ、ここで一つ、初心者が必ずつまずく「移調楽器」という概念について、私の失敗談を交えてお話しさせてください。サックスは、楽譜上の「ド」を吹いても、ピアノの「ド」の音は出ないのです。

アルトサックスの楽譜で「ド」を吹くと、実際にはピアノの「ミのフラット(E♭)」の音が鳴ります。テナーサックスで「ド」を吹くと、ピアノの「シのフラット(B♭)」が鳴ります。これを「移調楽器」と呼びます。頭が混乱するかもしれませんが、要するに「サックスにはサックス専用の楽譜が必要」ということです。

私はサックスを始めたばかりの頃、家にあった古い歌謡曲の歌本(ピアノ・ギター用)を引っ張り出し、「メロディなら吹けるだろう」と思ってそのまま吹いてみました。そして、カセットテープの原曲に合わせてみたところ、とんでもない不協和音が響き渡り、「楽器が壊れているのか!?それとも私の耳がおかしいのか!?」とパニックになった恥ずかしい経験があります。ピアノ伴奏の楽譜や、カラオケ音源を使って練習する場合、必ず「アルトサックス用」または「テナーサックス用」と明記された楽譜を用意してください。そうすれば、面倒な計算なしに、気持ちよくアンサンブルを楽しむことができます。

60代から始めるなら知っておくべき真実

楽器を始めるのに年齢は関係ない、とはよく言われますが、やはり若い頃とは身体機能も時間の使い方も異なります。私も60の手習いで始めましたが、若者の真似をして挫折しそうになったことが何度もあります。60代からスタートする私たちが、無理なく長く楽しむための現実的な「真実」をお伝えします。

独学と教室通いはどちらが正解か

今の時代、YouTubeを開けば素晴らしいレッスン動画が溢れています。指の運び方から音の出し方まで、独学でも情報は十分に手に入ります。しかし、私たち60代の初心者にこそ、私は「最初の半年だけでも教室に通うこと」を強くおすすめします。

理由は「変な癖がつくと、修正するのに倍の時間がかかるから」です。特にサックスは、口の形(アンブシュア)と息の入れ方が音色を決定づけます。自己流で無理に音を出そうとすると、高音を出そうとして下唇を過剰に噛み締めすぎてしまい、唇の裏から血が出たり、変な力みが入って腱鞘炎になったりするリスクがあります。私は独学で始めた最初の3ヶ月、音が詰まる原因がわからず、ただマウスピースを強く噛むことで解決しようとしていました。その結果、音は貧弱になり、歯茎まで痛めてしまいました。

実際に教室に通ってみると、先生は「音を出すこと」よりも「リラックスすること」を教えてくれます。「肩が上がっていますよ」「指の力を抜いて」…こうした客観的な指摘は、自分一人では絶対に気づけません。また、定年退職後は人と話す機会が減りがちですが、毎週決まった時間に「通う場所」があること自体が、生活リズムにメリハリを生み出します。教室の発表会で、同じように震える手で楽器を持つ同世代の仲間と出会い、「お互い頑張りましょう」と励まし合う時間は、何物にも代えがたい喜びです。

最近ではオンラインレッスンも普及していますが、微妙な息遣いや姿勢のチェック、そして「先生と生音を合わせる」という体験は、対面でないと伝わりにくい部分があります。まずは近所の楽器店が主催する「大人の音楽教室」の体験レッスンに行ってみるのが一番の近道です。

値段の差はどこに出る?楽器の寿命

いざ楽器を買おうとすると、値段の幅広さに驚くはずです。ネット通販を見れば3万円台のきらびやかな新品がありますが、プロが使うものは50万円、100万円を超えます。見た目は同じ金色なのに、なぜこれほど違うのでしょうか。

その答えは「金属の質」と「組み上げの精度」にあります。サックスは数百個のパーツが連動して動く精密機械です。安い楽器は、金属が柔らかすぎてすぐに歪んだり、キーを塞ぐパッド(タンポ)の隙間調整が甘かったりします。初心者が吹くと、「自分が下手だから音が出ないのか、楽器が悪くて音が出ないのか」が判断できません。これは上達を妨げる最大の要因です。私も一度、友人がネットで買った3万円のサックスを吹かせてもらったことがありますが、キーを押すたびにカチャカチャと雑音がし、低い音がどうしても裏返ってしまいました。

私たち大人の趣味として選ぶなら、最低でも国内メーカー(ヤマハなど)のエントリーモデル(定価で15万〜20万円前後)を目安にすることをお勧めします。これらは耐久性が高く、リペアマンによる調整も受けやすいため、メンテナンスさえすれば一生使い続けることができます。もし途中で辞めてしまった場合でも、有名メーカーの楽器であればリセールバリュー(中古買取価格)がつきますが、激安楽器はほとんど値段がつきません。

知っておきたい事実
サックスは「育てる楽器」と言われます。新品の時は金属が硬く、音も硬いですが、長年振動を与え続けることで金属の分子構造が安定し、驚くほど良く鳴るようになります。60代から始めて、70代、80代になった時、あなたの吐息とともに熟成された楽器は、最高のヴィンテージサウンドを奏でているはずです。これは、新品の高級車を買うのとはまた違った、時間をかける贅沢です。

腹式呼吸がもたらす意外な健康効果

音楽を楽しむことが主目的ですが、サックスには私たちシニアにとって嬉しい「副産物」があります。それは健康効果です。管楽器を吹くには、日常の浅い呼吸とは違う「深い腹式呼吸」が必要不可欠です。

息をたっぷり吸ってお腹を膨らませ、腹筋で一定の圧力をかけながら細く長く息を吐き出す。この動作は、加齢とともに衰えがちなインナーマッスル(横隔膜や腹横筋)を自然と鍛えてくれます。私はサックスを始めてから、駅の階段を上っても息切れしにくくなりましたし、何より大きな呼吸をすることで自律神経が整い、夜の寝付きが驚くほど良くなったと感じています。楽器を吹いた後の、適度な疲労感と爽快感は、ジョギングをした後のそれに似ています。

また、両手の指をバラバラに動かす動作は、脳への素晴らしい刺激になります。楽譜を目で追い、脳で瞬時に指令を出し、指を複雑に動かし、耳で出た音を確認して修正する。この高度なマルチタスクを楽しみながら行うのですから、これ以上の「脳トレ」はないでしょう。「指先は第二の脳」と言われますが、早いパッセージ(旋律)を練習している時の指先の感覚は、脳がフル回転していることを実感させてくれます。

さらに、サックスは顔の筋肉も使います。マウスピースを咥えて支える口輪筋の運動は、口元のたるみ防止や表情筋のトレーニングにもなると、密かに女性の生徒さんたちの間で話題になっています。

まとめ:呼び方を気にせず始めよう

サクソフォンとサックス。呼び方は違えど、その本質は「吹く人の息を歌に変える」世界で最も表現力豊かな楽器の一つです。正式名称にこだわって身構える必要はありませんし、略称だからといって軽んじられるものでもありません。

あなたがジャズの巨匠たちに憧れて「サックス」を手に取るのも、クラシックの美しい旋律に惹かれて「サクソフォン」を奏でるのも、どちらも素晴らしい正解です。大切なのは、呼び名の違いではなく、その楽器を通じて、60代からの毎日が少しだけ色鮮やかになることです。

まずは勇気を出して楽器店に行き、店員さんに「サックスを触ってみたいのですが」と声をかけてみてください。そのずっしりとした重み、金属のひんやりとした冷たさ、そして初めて音が出た時の身体全体がビリビリと震えるような感動を体験してください。「ブォー」という不恰好な音かもしれません。でも、それは紛れもなく、あなたの身体から生まれた音です。呼び名の違いなど、その感動の前では些細なことに思えるはずです。あなたの新しい音楽人生が、素晴らしい音色と共に始まることを心から応援しています。


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