サックス運指表の見方|ドレミと基本の指使い・替え指を解説

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サックスを始めたばかりのとき、「運指表を見ても黒丸と白丸の意味が分からない」「ドレミはどの指で押さえるの?」と迷う人は少なくありません。私も最初は、キーの数が多く見えて「これを全部覚えるの?」と感じたものです。

でも、最初からすべてのキーを覚える必要はありません。初心者がまず使うのは、左右3本ずつの指で扱う6つのメインキーと、左親指で操作するオクターブキーが中心です。そこに低音や半音で使う小指キーを少しずつ足していけば、かなり整理して覚えられますよ。

そして、ソプラノ・アルト・テナー・バリトンサックスでは、基本的に同じ記譜音に対して同じ指使いを使います。「アルト用の運指を覚えたらテナーでは全部覚え直し」というわけではありません。

最初に押さえておきたいポイント

  • まず基本運指と1オクターブのドレミをセットで覚える
  • 指を速く動かすより、息を流したまま滑らかにつなぐ
  • 替え指は基本運指が安定してから追加する
  • 同じ音に複数の運指図があっても、全部を同時に押すわけではない

この記事では、サックス運指表の見方から、ドレミファソラシドの基本的なサックス運指、オクターブキー、♯・♭、替え指、アルトとテナーの違い、正しい指使いなのに音が出ないときの確認方法まで順番に解説します。

サックス運指表の見方

サックスの運指表は、「どの音を出すときに、どのキーを押してどのキーを放すのか」を図で表したものです。

キーがたくさん並んでいるので最初は複雑に見えますが、基本的な読み方を知ってしまえば、それほど難しくありません。

一般的なサックス運指表では、次のような意味で記号が使われます。

  • ●・黒丸:そのキーを押す
  • ○・白丸:そのキーを放す
  • 楽譜の音符:その指使いで出す記譜音
  • オクターブキーの印:左親指でオクターブキーを押す
  • 横や斜めに離れたキー:サイドキー、小指キー、パームキーなど
  • 同じ音に図が2つ以上ある:基本運指とは別の替え指がある

ヤマハ公式のサクソフォン運指表でも、通常の運指だけでなく替指が表示される音があり、バリトンサックス特有のLow Aについても説明されています。実際の運指図を確認したい場合は、一次情報としてメーカー公式表も参考になります。(出典:ヤマハ「サクソフォンの運指表」

運指表ごとに表現が少し違うことがあります。

黒丸・白丸の使い方、楽器を正面から見た図なのか演奏者側から見た図なのか、補助キーをどの位置に描くかなどは、運指表によって異なる場合があります。初めて見る運指表では、まず凡例を確認してください。

また、運指表に書かれているC・D・Eなどの音は、原則としてサックスの記譜音として考えます。ピアノで実際に鳴る実音とは別なので、この点は後ほど詳しく説明します。

黒丸・白丸と補助キーの意味

初心者が最初に覚えたいのは、とにかく「黒丸なら押す、白丸なら放す」という考え方です。

たとえば運指図の中央に縦に並んでいる丸は、主に左右の人差し指・中指・薬指で操作するメインキーを表します。この6本が、ドレミを吹くときの中心になります。

その周囲に少し離れて描かれているキーは、左右の小指で操作するキー、手の側面側にあるサイドキー、左手の手のひら付近で操作するパームキーなどです。

ここでよくある勘違いが、「図に描かれているキーは全部覚えなければいけない」というもの。

最初は必要ありません。

まず中央に並ぶ6本のキーとオクターブキーを見分けられるようにして、低いCで右小指、G♯で左小指、B♭でサイドキーやBisキーというように、必要になったものから増やしていけば十分です。

同じ音符の下に運指図が2つ、3つと並んでいる場合もあります。これは「すべてを組み合わせて押す」のではなく、同じ音を出すための別々の選択肢です。

つまり替え指ですね。

たとえばB♭は替え指が多い音で、前後にどんな音が来るかによって使いやすい指使いが変わります。初心者の段階では全部を覚えようとせず、まず教材などで基本として扱われている1種類を安定させるのがおすすめです。

運指表を見るときの順番

  1. 音符または音名を確認する
  2. 中央の6本のメインキーを見る
  3. オクターブキーを押すか確認する
  4. 小指キーやサイドキーなど追加キーを確認する
  5. 替え指があれば、基本運指とは別の候補として見る

左手と右手の指の位置

サックスは、左手を楽器の上側、右手を下側に置きます。

メインキーは左右それぞれ人差し指・中指・薬指の3本で操作します。運指を文字で表す場合、この記事では左手をL、右手をRとして説明します。

左手の基本位置は次のとおりです。

  • 左手人差し指(L1):Bの運指で中心になるキー
  • 左手中指(L2):Aを構成するキーで、中央付近のCではこの指だけを使う
  • 左手薬指(L3):Gの運指で加えるキー
  • 左親指:サムレスト付近に置き、必要なときにオクターブキーを操作
  • 左小指:G♯、低いC♯、低いB、低いB♭などで使用

さらに左手人差し指の周辺には、Bis B♭キーやFront Fキーなどがあります。ただし、これらは最初のドレミを覚える時点では優先順位を下げて構いません。

右手は次のように置きます。

  • 右手人差し指(R1):Fを構成するキー
  • 右手中指(R2):Eを構成するキー
  • 右手薬指(R3):Dを構成するキー
  • 右親指:サムフックに置いて楽器を安定させる
  • 右小指:E♭キー、低いCキーなどを操作

右手側にはB♭、C、Eなどで使用するサイドキーもあります。また、楽器のモデルによっては補助F♯キーなどが装備されています。

指を置くときのコツは、キーから大きく離さないことです。

サックスで速く指を動かそうとすると、つい指を高く持ち上げたくなります。でも実際には、キーから指までの距離が大きいほど次の音へ移る時間も長くなります。キーの表面から必要以上に指を離さず、軽く触れるくらいの位置を保つ方がスムーズです。

また、必要以上に力を込めてキーを押し込む必要もありません。

「低い音が鳴らないから、もっと強く押せば閉じるかも」と考えたくなるところですが、正常に調整された楽器なら軽い力でキーは閉じます。強く握り込む癖がつくと指が動きにくくなり、機構にも余計な負担がかかります。

楽器の重さを6本の指で受け止めようとするのも避けたいところ。ストラップ、右親指、口元などを使って楽器を安定させ、指はあくまでキー操作を担当するイメージで構えましょう。

サックスのドレミ基本運指

サックスのドレミを覚える前に、英語音名との対応を確認しておきましょう。

  • C=ド
  • D=レ
  • E=ミ
  • F=ファ
  • G=ソ
  • A=ラ
  • B=シ

運指表や海外の教材では「ド」「レ」ではなくC、Dという表記がよく使われます。C=ド、D=レという対応が分かっていれば、どちらで書かれていても迷いにくくなりますよ。

以下では、Lを左手、Rを右手、Tをオクターブキーとして表します。

たとえば「L123+R12」なら、左手の人差し指・中指・薬指と、右手の人差し指・中指を押すという意味です。

低いドからのドレミファソラシド

まずは、記譜音の低いCから上のCまでのドレミファソラシドを見てみましょう。

音名 運指 動きのイメージ
ド C L123+R123+右小指の低Cキー 6本+右小指
レ D L123+R123 右小指を放す
ミ E L123+R12 右薬指を放す
ファ F L123+R1 右中指を放す
ソ G L123 右手3本を放す
ラ A L12 左薬指を放す
シ B L1 左中指を放す
ド C L2 左中指のみ

この1オクターブでは、基本的にオクターブキーを使いません。

表を見ると分かるように、低いCから上がっていくと、右手側から徐々に指を放していく流れが多くなっています。

低いCでは左右6本のメインキーに加えて右小指の低Cキーを押します。Dになると右小指を放し、Eでは右薬指、Fでは右中指、Gになると右手のメインキーがすべて開きます。

そのあとA、Bへ上がるにつれて左手側も少しずつ開いていきます。

この規則性が分かると、8音をバラバラの暗号として暗記するよりずっと覚えやすいかなと思います。

ただし、最後のCだけは少し独特です。

Bは左手人差し指だけですが、Cでは左手中指だけを押します。そのため、B→Cでは「人差し指を放して中指を押す」という入れ替えが必要です。

最初は、このB-Cで指が同時に動かず、間に別の音が入ることがあります。速くしようとせず、B-C-Bをゆっくり往復してみてください。

低いCは初心者には鳴らしにくいことがあります。

低いCは多くの音孔を閉じる必要があるため、指のずれ、息、アンブシュア、楽器のわずかな空気漏れなどの影響を受けやすい音です。「低いドから始められない=運指を覚えられない」ということではないので、鳴りにくければ中央付近のCから練習しても大丈夫です。

練習するときは、最初からドレミファソラシドを一気に吹こうとしなくても構いません。

まずDを1音、次にEを1音というように、それぞれの音が安定して鳴るか確認します。その後D-E、E-F、F-Gのように2音ずつ往復してください。

この方法なら「どの切り替えで問題が起きているか」が分かりやすくなります。

そして上行だけでなく、C-B-A-G-F-E-D-Cという下行も練習しましょう。音を上げるときは指を放す方向が多いですが、下げるときは逆に複数のキーを閉じる必要があります。上行はできても下行になると余分な音が入る、というのは珍しくありません。

中央のドからの1オクターブ

低音がまだ鳴らしにくい初心者には、中央付近のCから上のCまでを練習する方法もあります。

こちらでは途中からオクターブキーを使用します。

音名 運指 オクターブキー
ド C L2 使わない
レ D T+L123+R123 使う
ミ E T+L123+R12 使う
ファ F T+L123+R1 使う
ソ G T+L123 使う
ラ A T+L12 使う
シ B T+L1 使う
高いド C T+L2 使う

ここで重要なのは、最初のCからDへ上がるところです。

Cでは左手中指だけを使っています。それがDになると、左右6本のメインキーを閉じ、さらに左親指でオクターブキーを押します。

つまり、1音上がるだけなのに指の状態が大きく変わります。

ここが初心者にとって難しいポイント。

D以降はE、F、Gと上がるにつれて、低い音域と似た流れでキーを順番に開いていけるので、C→Dほど極端な切り替えではありません。

また、「中音域なら全部オクターブキーを追加するだけ」と覚えたくなるのですが、これは完全には正しくありません。

CやC♯付近は音域の境目にあたり、単純に下の音と同じ指へオクターブキーを足せばよいとは限りません。さらに高い音域になると、手のひら付近にあるパームキーを使います。

初心者の段階ではこう覚えると整理しやすいです。

まず中央付近のCはL2。その上のDからはオクターブキーを使う。さらに高いパームキー音域は、1オクターブのドレミが安定したあとに別項目として覚えましょう。

CからDを滑らかにつなぐコツ

中央付近のCからDへの切り替えは、サックス初心者がつまずきやすい代表的な場所です。

CではL2だけ。それに対してDでは、L123、R123、オクターブキーをほぼ同時に操作します。

この切り替えで指が少しずつバラバラに動くと、次のような症状が出ます。

  • CとDの間にC♯のような余分な音が入る
  • 一瞬だけ音が切れる
  • 高い倍音にひっくり返る
  • Dに入った瞬間だけ音色が大きく変わる

対策として一番大切なのは、速く吹くことではありません。

息を流したままC-D-Cだけをゆっくり反復することです。

まずタンギングを付けず、息を一本につないだ状態で指だけ切り替えてみてください。

「CーーDーーCーーDーー」と、音と音の境目でも息を止めない感覚です。

もしDに変わる瞬間に音が一度消えるなら、息を止めているのか、6本の指が同時に閉じていないのかを分けて確認します。

指の動きは目で見て確認しても構いません。特に左右の薬指はほかの指に比べて独立して動かしにくく、少し遅れることがあります。

また、左親指のオクターブキーだけを先に押してしまうのも避けたいところです。

Cを吹いている間に先にオクターブキーを押し、そのあと6本を閉じると、切り替え途中で意図しない音が出ることがあります。最初は「全部ほぼ一緒」を目標にして、ゆっくり同期を作りましょう。

運指を一人で確認していて、「指が遅れているのか、息やアンブシュアに原因があるのか判断しにくい」と感じることもあります。そういう場合は、実際のフォームや音をその場で見てもらうのも一つの方法です。サックスを含むレッスン選びについては、EYS音楽教室についてまとめたページも参考にしてください。

オクターブキーの使い方

オクターブキーは、左親指で操作するキーです。

サックスでは、中高音域を吹くときにオクターブキーを使うことで管の発音状態を切り替え、約1オクターブ上の音を出しやすくします。

初心者のうちは「高い音を出すボタン」とイメージしてしまいがちですが、実際には何でも1オクターブ上げるために押しっぱなしにするキーではありません。

基本的には、中音域のDから上で、下の音域と似たメインキー配置にオクターブキーを追加する形が多くなります。

たとえば、下のDはL123+R123です。

その上のDはT+L123+R123。

Eなら、下ではL123+R12、上ではT+L123+R12というように、指の形に規則性があります。

この関係を理解すると、上の音域をすべて新しい運指として丸暗記しなくて済みます。

ただし、先ほども触れたように音域の境目にあるCやC♯では単純な対応にならず、さらに上の最高音域ではパームキーなどを使います。

さらに高い記譜Dでは左手パームDキー、高いE♭ではパームDとパームE♭といったように、手のひら側のキー操作が増えていきます。高いF付近ではパームキーを組み合わせる代表運指のほか、Front Fを利用する替え指もあります。

ただ、このあたりをドレミを覚える段階で一気に暗記する必要はありません。

まずは通常の1オクターブを安定させ、オクターブキーを「必要なところで押す」「低い音へ戻るときには放す」という操作を身につける方が優先です。

オクターブキーを押したまま低音へ戻らないように注意。

低い音の運指に戻したつもりでも、左親指だけオクターブキーに残っていると、意図しない高音が出たり、音がひっくり返ったりすることがあります。低音へ下がる練習では、左親指もほかの指とセットで確認しましょう。

特に初心者はメインキーばかりを見てしまい、左親指への意識が抜けやすいです。

ドレミを下行するときに音が突然高くなるなら、一度オクターブキーを触り続けていないか確認してみてください。

♯・♭と替え指の基本

自然音のドレミが分かってきたら、次は♯・♭を含む音を覚えていきます。

基本的に、♯はその音を半音上げ、♭は半音下げる記号です。

たとえば、C♯はCより半音高い音、D♭はDより半音低い音です。

平均律では、次のような音は同じ高さになります。

  • C♯とD♭
  • D♯とE♭
  • F♯とG♭
  • G♯とA♭
  • A♯とB♭

基本的な運指も同じです。

ただし、「同じ指だからどちらの音名で呼んでもよい」という意味ではありません。楽譜上では、その音が和音や音階の中でどんな役割を持っているかによってC♯とD♭のように名称が使い分けられます。

初心者の段階では、まず「運指は同じ場合があるけれど、楽譜上の名前は別」と理解しておけば大丈夫です。

そして、サックスの運指を少し調べると必ず出てくるのが替え指です。

替え指とは、同じ記譜音を出すために使える、基本運指とは別の指使いです。

替え指が存在する理由はいくつかあります。

  • 前後の音との指の移動を少なくする
  • 速いフレーズを滑らかにする
  • トリルを演奏しやすくする
  • 特定の音域の音程を調整する
  • 音色や響きを変える
  • 楽器ごとの反応の違いに対応する

ここで大事なのは、替え指を「基本運指の上位互換」と考えないことです。

基本運指より常に優れた指使いではありません。あるフレーズでは便利でも、別の音とのつながりでは逆に動かしにくくなることがあります。

替え指は「どれが正しいか」ではなく「どれが今のフレーズに合うか」で選びます。

初心者は、まず基本運指を反射的に押さえられる状態にしてから替え指を追加すると混乱しにくいですよ。

B♭・F♯・Cの代表的な替え指

B♭は、サックスの中でも特に替え指が多い音です。

代表的な方法として、Side B♭とBis B♭があります。

Side B♭は、左手でAの形を基本にして、右手側のB♭サイドキーを加える方法です。

Bナチュラルとの行き来など、前後の音によってはこの運指が使いやすくなります。

Bis B♭は、左手人差し指で通常のBキーと、そのすぐ近くにあるBis B♭キーを同時に押さえる方法です。

一度この形を作ると、B♭を維持したままほかの指を動かしやすい場面があります。そのため、Bナチュラルが頻繁に出てこない♭系の音階やフレーズでは便利になることがあります。

ほかにも、左手人差し指と右手人差し指を使う1+1系のB♭や、左手人差し指と右手中指を使う1+2系のB♭があります。

たとえば1+1系はFとのつながり、1+2系はF♯とのつながりなどで使いやすくなる場面があります。

ただし、「B♭なら必ずBis」「B♭なら必ずSide」という唯一の答えがあるわけではありません。

教材や指導方法によって、最初に基本として教えるB♭の運指が異なる場合もあります。最初は自分が使っている教材などで指定された1種類をしっかり安定させ、そのあと必要になったものを増やしましょう。

F♯/G♭の基本運指はL123+R2です。

一部のサックスには補助F♯キーがあり、L123+R1の形から右手側の補助キーを加えるような替え指を使える場合があります。

FからF♯へ半音で動くような場面では、指の移動を減らせることがあります。

ただし、この補助F♯キーはすべてのサックスに同じ形で装備されているわけではありません。自分の楽器にどのキーが付いているかを確認してください。

Cにも替え指があります。

中央付近のCの基本運指はL2ですが、L1と右手側のSide Cを組み合わせる方法があります。

これはBとCを速く往復するときや、トリルなどで利用されます。

また、高いFにはパームキーを使う基本的な運指のほか、Front Fキーを利用する方法もあります。

ただしFront Fは高音域やさらに上の音域にも関係してくるため、初心者が最初に覚える優先度は高くありません。

替え指を試すときには、指が楽になるかだけでなく、音程や音色にも耳を向けてください。

同じ替え指でも、ソプラノ・アルト・テナー・バリトンの違い、楽器のモデルや個体差、マウスピースなどによって反応が変わることがあります。

替え指を覚える順番

替え指は一気に暗記するより、必要になる順番に追加する方が整理しやすいです。

初心者なら、次の順番を目安にするとよいでしょう。

  1. 自然音C・D・E・F・G・A・Bの基本運指
  2. 1オクターブの上行・下行
  3. F♯、B♭など頻出する半音
  4. オクターブキーを使った中音域
  5. B♭の代表的な替え指
  6. F♯やCなどの実用的な替え指
  7. 高音域、トリル、音程補正などで使う特殊運指

最初の目標は、「譜面にGと書かれていたら考え込まずL123が出る」というように、自然音の基本運指が反射的に出てくる状態です。

そこまで安定していないうちに、1つの音に3種類も4種類も指使いを覚えると、「結局どれを押せばいいんだっけ?」となりやすいです。

基本運指を基準に持っているからこそ、替え指を追加したときにも整理できます。

そして替え指は、実際の曲の中で必要になったときに覚えると定着しやすいです。

たとえばB♭が出てきて、前後のBやAとの動きがどうしてもぎこちない。その段階でSide B♭やBis B♭を比較してみる。

こうした覚え方なら、ただ一覧表を暗記するより「なぜこの指を使うのか」が分かります。

サックスの種類と運指の違い

「アルトサックスとテナーサックスでは運指が違うの?」という疑問は、初心者によくあります。

結論からいうと、ソプラノ、アルト、テナー、バリトンサックスでは、基本的な記譜音の指使いは共通です。

つまり、アルトサックスで楽譜上のCを吹く指使いと、テナーサックスで楽譜上のCを吹く指使いは基本的に同じです。

サックスの種類 管の調子 記譜Cを吹いたときの実音
ソプラノサックス B♭管 B♭
アルトサックス E♭管 E♭
テナーサックス B♭管 B♭
バリトンサックス E♭管 E♭

ただし、実際に鳴る音の高さは楽器によって違います。

そして、最低音・最高音付近では楽器の仕様による例外があります。

代表的なのがバリトンサックスのLow Aです。

一般的なサックスの最低音は記譜B♭ですが、Low Aキーを持つバリトンサックスでは、さらに下の記譜Aまで出せます。

これはバリトンサックス特有の代表的な拡張です。

最高音側でも、High F♯キーの有無、一部ソプラノサックスのHigh Gキーなど、モデルによってキー構成が違います。

そのため、一般的なサックス運指表は基本音域では広く共用できますが、最低音や最高音まで確認するときは、自分の楽器のモデルと運指表が対応しているかを見る必要があります。

「アルト用」「テナー用」と書かれた運指表を見つけても、基本運指が別物という意味ではありません。

大きな違いは、同じ記譜音を吹いたときの実音です。モデル固有のLow AやHigh F♯などは別途確認しましょう。

記譜音と実音の違い

サックスを吹き始めた人が混乱しやすいのが、記譜音と実音の違いです。

サックスは移調楽器です。

そのため、サックスの楽譜に「C」と書かれている音を吹いても、ピアノのCと同じ高さが鳴るとは限りません。

たとえばテナーサックスとソプラノサックスはB♭管、アルトサックスとバリトンサックスはE♭管です。

テナーサックスで記譜Cを吹くと実音はB♭、アルトサックスで記譜Cを吹くと実音はE♭になります。

ヤマハも、サックスは基本的にどの種類でも指使いが同じ一方、アルトはE♭管、ソプラノはB♭管など管の調子が異なるため、同じ楽譜を吹くと実際には違う音が鳴ると説明しています。(出典:ヤマハ「サクソフォンは移調楽器」

これを知らないと、「運指表どおりにドを吹いているのに、ピアノのドと合わない。指が間違っているのかな?」と不安になります。

でも、それは必ずしも間違いではありません。

サックス用の通常のパート譜は、その楽器で吹きやすいようにあらかじめ移調して書かれています。そのため、初心者がサックス用の楽譜を演奏するときは、基本的に譜面に書かれた音をそのままサックスの運指で吹けば大丈夫です。

一方、ピアノやギターと「同じ実音」を鳴らしたい場合は、移調を考える必要があります。

この違いは、音を確認するときにも重要です。

「楽譜のC」と「実際に鳴っているコンサートピッチのC」を混同すると、正しい運指なのに音が違うように感じてしまいます。

運指表の音名は基本的に記譜音として読みましょう。

「サックスでドを吹いたのにピアノのドと違う」という場合は、まずアルト・テナーなど楽器の調子を確認してください。運指の間違いや故障とは限りません。

なお、テナーとソプラノ、アルトとバリトンでは、実音のオクターブ関係にも違いがあります。

初心者が最初から細かな移調計算をすべて覚える必要はありませんが、「同じ運指でも実音は楽器によって違う」という原則だけは押さえておくと混乱しにくいですよ。

運指が合っても音が出ないとき

「運指表と何度見比べても指は合っているのに、音が出ない

これはサックス初心者なら一度は経験する悩みかもしれません。

サックスでは、正しいキーを押しているだけで必ず狙った音が鳴るわけではありません。

運指以外にも、リード、アンブシュア、息、指の同期、楽器の調整など、いくつもの要素が関係します。

まず、吹く前の状態から確認してみましょう。

  • リードが正しくマウスピースに取り付けられているか
  • リード先端がマウスピース先端から大きくずれていないか
  • リードに割れ、欠け、大きな変形がないか
  • リガチャーが適切に固定されているか
  • ネック、マウスピース、本体が正しく組み立てられているか
  • ストラップの長さが合っているか
  • 右親指だけで楽器全体を持ち上げようとしていないか

次に、実際に音を出す状態を確認します。

  • 下唇を下の歯にかぶせる基本的なアンブシュアが作れているか
  • 歯や口で必要以上に強く噛み込んでいないか
  • 喉を極端に締めていないか
  • 息が途中で止まっていないか
  • 使うキーが最後まで閉じているか
  • オクターブキーを誤って触っていないか

特に低いCのような低音は、管の多くの音孔を閉じる必要があります。

そのため、わずかな指のずれや空気漏れでも影響が出やすいです。

低いCが出ないときは、まず左右6本のメインキーがすべて確実に閉じているか、右小指で低Cキーを正しく操作できているかを確認してください。

このとき、力いっぱい握るのではなく「6本が同じタイミングで閉じているか」を見ます。

たとえば右薬指だけわずかに遅れていると、DやEに近い状態が一瞬できてしまい、低いCへきれいに移れない場合があります。

オクターブキーも確認ポイントです。

低い音を吹くときに左親指が少しオクターブキーへ触れていると、上の倍音へひっくり返りやすくなります。

口を締めすぎることでも低音は出にくくなります。

音が出ないと、「もっと強く吹く」「もっと強く噛む」「もっと強くキーを押す」と全部に力を入れたくなりますが、これで改善するとは限りません。

むしろリードの振動を妨げたり、指が動きにくくなったりすることがあります。

低音が出にくいときは、力より順番に原因を切り分けましょう。

  1. 運指を確認する
  2. オクターブキーを確認する
  3. リードと組み立てを確認する
  4. 息を止めていないか確認する
  5. 口を締めすぎていないか確認する
  6. 楽器側の空気漏れを疑う

正しい運指を何度確認しても、特定の低音だけ極端に鳴らない場合は、楽器側の問題も考えられます。

サックスではタンポが音孔を密閉することで管の長さを変えています。タンポと音孔の間に隙間があると、閉じているつもりでも空気が漏れ、低音が鳴りにくくなることがあります。

特に「昨日までは普通に出ていた」「ほかの音は出るのに特定の低音だけ急に難しくなった」「経験者が吹いても同じ音が鳴りにくい」といった場合は、吹き方だけに原因を求めない方がよいでしょう。

楽器店などでタンポやキーの状態を確認してもらうのが適切です。

音がひっくり返る場合にも、原因は1つではありません。

  • オクターブキーを誤って押している
  • 複数の指の動くタイミングがずれている
  • どこかのキーを完全に閉じられていない
  • アンブシュアが強すぎる
  • リードの状態や取り付けに問題がある
  • タンポなどから空気が漏れている

特定の1音だけ何度吹いても同じ問題が起こるなら、「自分が下手だから」と決めつけず、楽器側も確認してください。

また、運指が合っていれば音程も自動的に正しくなるわけではありません。

サックスの音程には、次のような要素も影響します。

  • アンブシュア
  • 息の速度と支え
  • 口の中の形
  • リード
  • マウスピース
  • 楽器の調整状態
  • 楽器そのものが持つ音程特性

つまり、運指表が教えてくれるのは「どのキーを操作するか」です。

正しい音色や音程まで自動的に保証する表ではありません。

ここを分けて考えると、「指は合っているのになぜ鳴らない?」というときにも原因を探しやすくなります。

初心者が混乱しない運指の覚え方

サックスの運指表を開くと、自然音、♯・♭、低音、高音、替え指まで一度に載っていることがあります。

それを見ると全部覚えなければいけないように感じますが、初心者は順番を決めるのがおすすめです。

まず目標にしたいのは、左右の人差し指・中指・薬指で扱う6本のメインキーを迷わず触れる状態です。

楽器を構えたら、いちいち手元を探さなくてもL1、L2、L3、R1、R2、R3に指が置けるようにします。

次に、自然音のドレミを覚えます。

低いCが安定するなら、低いCから上のCまで。

低音がまだ難しいなら、中央付近のCから高いCまででも構いません。

まず1音ずつ吹きます。

たとえばGを吹き、音が安定したらAへ。

Aが安定したらBへ。

この段階では速くする必要はありません。

1音ずつ確実に鳴らせるようになったら、2音の往復に進みます。

  • G-A-G-A
  • A-B-A-B
  • B-C-B-C
  • C-D-C-D

この練習の良いところは、どこで指がずれるのか分かりやすいことです。

8音を一気に吹いてしまうと、途中で変な音が出ても「どの指が原因だったのか」が分からないことがあります。

2音なら原因を絞れます。

そして、最初はタンギングを付けずにスラーでつなぐ方法も有効です。

息を止めずに伸ばし続け、指だけを切り替えます。

これによって、息の切れ目でごまかさず「指だけで音がきれいに変わっているか」を確認できます。

指を切り替える瞬間に余分な音が聞こえたら、どれか1本が早いか遅い可能性があります。

特にC-Dのように複数の指が一度に変わる場所は、単独で何度も往復してください。

練習で優先する順番

  1. 1音を安定して鳴らす
  2. 隣り合う2音をゆっくり往復する
  3. 息を止めずに指だけ切り替える
  4. 1オクターブを上行する
  5. 同じ音階を下行する
  6. 余分な音が入らなくなってから少しずつ速くする

上行だけでなく、下行も必ず練習してください。

ドレミファソラシドが吹けたら、今度はドシラソファミレドです。

下行では、音を下げるにつれて複数の指を同時に閉じる場面が増えます。

特にGからFへ下がるとき、右手人差し指を加える。FからEなら右手中指も加える。EからDなら右薬指も加える、といったように、上行とは反対の動きを正確に作る必要があります。

「上りはできるのに下りになると引っかかる」という場合も珍しくありません。

オクターブキーを使う音域に進んだら、左親指も同じ方法で練習します。

高い音へ移るときに押し、低い音へ戻るときに放す。メインキーだけでなく親指まで含めた1つの運指として覚えるのがポイントです。

自然音が安定してから、F♯やB♭など頻繁に出てくる半音を追加します。

B♭に替え指が複数あっても、最初から全部を同時に覚える必要はありません。

まず1種類。

その1種類で音階や簡単な曲を吹けるようになってから、「このフレーズは別のB♭の方が動きやすい」と感じたところで替え指を追加します。

この順番なら、基本運指と替え指が頭の中で混ざりにくいです。

また、「ド」という言葉だけで覚えないことも意外と重要です。

サックスには低いC、中央付近のC、高いCがあります。

教材を見たときに単に「ド」とだけ考えると、どの高さのCを意味しているのか分からなくなることがあります。

できれば運指を覚えるときから、「低いC」「中央付近のC」「高いC」のように音域も意識してください。

同じように、「高い音=全部オクターブキー」と決めつけないこと。

D以降の中音域では下の音にオクターブキーを加える形が多いですが、C・C♯付近の境目や、パームキーを使うさらに高い音域では考え方が変わります。

運指を練習していると、最初のうちはどうしても指そのものに意識が集中します。

ただ、サックスでは指だけが正しくても、息が止まれば滑らかなフレーズになりません。

音を変えるたびに「フッ、フッ、フッ」と息まで切ってしまうのではなく、息は一本につないで、指だけで管の長さを切り替える感覚を身につけると演奏が安定しやすくなります。

速さはそのあとで十分です。

ゆっくりした状態で余分な音が入っているのに速度だけ上げると、そのずれまで速く繰り返すことになります。

「ゆっくりなら完璧」を作ってから少しずつ速度を上げていきましょう。

独学でも運指そのものは運指表を使って覚えられます。ただ、指の同期、口の締め方、息の流し方、楽器側の調整などが重なると、自分だけでは原因を切り分けにくいこともあります。

何度確認しても同じところで詰まり、「運指なのか吹き方なのか分からない」という場合は、経験者や講師に実際の状態を見てもらうのも方法の一つです。レッスンを選択肢に入れる場合は、EYS音楽教室の特徴をまとめた記事も確認してみてください。

初心者が最初に目指したい状態をまとめると、次のようになります。

  • 運指表を見て黒丸と白丸の意味が理解できる
  • 左右3本ずつのメインキーへ迷わず指を置ける
  • 低いCから上のC、または中央付近のCから高いCまで1オクターブ吹ける
  • ドレミファソラシドだけでなく、ドシラソファミレドも吹ける
  • 指を切り替えるときに息を止めない
  • C-Dなど大きく運指が変わるところで余分な音を挟まない
  • オクターブキーを必要な音だけで操作できる
  • B♭などには替え指があることを理解している

ここまでできれば、サックス運指表の基本的な見方はかなり身についています。

あとは曲の中で必要になる♯・♭や替え指を少しずつ追加していけば大丈夫です。

サックスのキーは数が多く見えますが、最初からすべてを使うわけではありません。まず6本のメインキー、1オクターブのドレミ、オクターブキーという順番で整理すると、思っているよりシンプルに覚えられますよ。

そして、運指を覚えるときに一番大切なのは「指を速くすること」ではなく、正しい指使いで、息を流したまま音と音をきれいにつなげることです。

基本運指が自然に動くようになってから替え指を追加していけば、曲の中でも迷いにくくなります。焦らず、まずは1音、次に2音、そして1オクターブという順番で練習してみてください。