【30秒でわかる!この記事の要点】
- 初期費用の全体像と、独学・教室それぞれの予算目安がわかります
- 楽器本体の価格相場と、初心者が選ぶべきモデルの基準が理解できます
- リード代やメンテナンス費など、意外と知らない維持費の現実が見えます
- レンタルや中古活用など、賢くコストを抑えて始める選択肢が見つかります
「憧れのサックスを吹いてみたいけれど、お金がかかりそうで不安」 「大人の趣味として始めたいけれど、初期費用や維持費は具体的にいくら必要なの?」
そんなふうに、最初の一歩を踏み出せずにいませんか。
ジャズバーで流れる色気のある音色や、ポップスで主役を張る輝かしいサウンド。サックスという楽器には、聴く人を魅了する特別な力があります。しかし、いざ自分が始めようと楽器店に並ぶサックスの値段を見て驚いたり、消耗品代が毎月どれくらいかかるのか気になったりするのは、これから新しい趣味を始める方にとって当然の悩みですよね。
実は、サックスを趣味にするための費用は、選び方ひとつで大きく変わります。高価な楽器を買わなくても始められる方法や、賢く予算を抑えるコツを知っていれば、無理なく憧れの演奏ライフをスタートさせることができるのです。
この記事では、バンドマンとして長年音楽に携わってきた私が、サックス奏者の友人たちから聞いたリアルな情報を交えながら、初心者が損をしないための費用の真実を徹底解説します。
サックスを趣味で始める費用の初期投資と内訳
サックスを趣味としてスタートさせるために、まず気になるのが初期費用ですよね。「サックスはお金持ちの趣味」というイメージがあるかもしれませんが、実際のところはどうなのでしょうか。
ここでは、楽器本体の価格だけでなく、見落としがちな周辺アイテムの費用も含めた「リアルな初期投資額」について、最新の相場をもとに解説します。
楽器本体の値段と初心者に最適な予算の相場
まず、一番大きな出費となるのが楽器本体です。インターネットで検索すると、2万円台の格安モデルから50万円を超えるプロモデルまで、価格の幅が広すぎて驚かれると思います。
「とりあえず音が出ればいいから、一番安いのでいいんじゃない?」と考える方もいるでしょう。しかし、私の周りのサックス奏者や、懇意にしている楽器店のリペアマンに話を聞くと、初心者が趣味として長く楽しむための予算ラインは非常に明確です。
結論から言うと、「新品で揃えるなら予算20万円」というのが、2026年現在の安全圏といえます。
「えっ、そんなに高いの?」と思われたかもしれません。確かにAmazonや楽天などで検索すれば、3万円〜5万円程度のサックスセットもたくさん出てきます。しかし、これらの格安楽器(いわゆる中国製ノーブランド品など)には、安さなりの深刻な理由があります。
価格帯別の楽器の特徴とリスク
サックスの価格帯は、大きく分けて以下の3つの層に分類されます。それぞれの特徴を知ることで、なぜ「20万円」が必要なのかが見えてきます。
| 価格帯 | 主な特徴 | 初心者への推奨度 |
|---|---|---|
| 2万〜5万円 (格安帯) | 中国製が中心。金属が柔らかく、パーツの精度が低い。個体差が激しく、最初から音が鳴らないことも。 | × 非推奨 修理を断られることが多く、使い捨てになるリスク大。 |
| 15万〜25万円 (入門標準帯) | YAMAHAのエントリーモデルなど。音程が安定しており、耐久性も高い。修理や調整も容易。 | ◎ 推奨 上達を妨げず、売却時の価値も残りやすい。 |
| 30万円以上 (中級〜プロ帯) | 音色、操作性ともに最高レベル。一生モノとして使えるが、初心者にはコントロールが難しい場合も。 | △ 予算次第 本気で取り組むならアリだが、初期投資としては重い。 |
【格安サックスの「修理不可」リスクについて】 私が聞いた話で最も恐ろしいのは、格安サックスを買って調子が悪くなり、楽器店に持ち込んだ時の話です。「この楽器は部品の規格が特殊で、当店では合うパーツがありません」「金属が柔らかすぎて、調整してもすぐに曲がってしまうので修理をお受けできません」と断られてしまうケースが後を絶たないそうです。つまり、数万円で買った楽器が、故障した瞬間にただの金属ゴミになってしまう可能性があるのです。
趣味として始める以上、「音が鳴らないストレス」で挫折してしまうのは一番もったいないことですよね。私の知人のサックス講師も、「最初に安物を買うと、結局すぐに買い替えることになり、トータルの出費が増えてしまう。安物買いの銭失いになりやすい楽器No.1がサックスだ」と嘆いていました。
一方で、30万円〜40万円を超えるモデルは、確かに音色も操作性も素晴らしいですが、初心者の段階ではその違いを十分に引き出せないこともあります。まずは「楽器として正常に機能し、上達を妨げない品質」を確保するための予算として、20万円前後を目安にすることをおすすめします。
ヤマハのYAS-280が最初の1本に選ばれる理由
では、具体的にどのモデルを選べば失敗がないのでしょうか。サックス業界で「初心者の最初の1本」として、長年にわたり圧倒的な支持を得ているのが、YAMAHA(ヤマハ)のアルトサックス「YAS-280」です。
私自身はベーシストですが、バンドメンバーのサックス担当や、吹奏楽経験のある友人に「初心者は何を買えばいい?」と聞くと、必ずと言っていいほどこの名前が挙がります。なぜ、これほどまでに「YAS-280」が選ばれ続けるのでしょうか。
失敗しないための3つの理由
YAS-280が初心者にとって「最適解」とされる理由は、単に有名メーカーだからではありません。そこには、初心者が挫折しないための具体的な設計思想が詰め込まれています。
- 圧倒的な品質の安定感と音程の良さ サックスは構造上、音程を取るのが難しい楽器です。しかし、ヤマハの製品は個体差が極めて少なく、初心者でも無理なく正しい音程が出せるように設計されています。特にYAS-280は、軽量で持ちやすく、息を入れた時の反応(レスポンス)が素早いため、「吹いていて楽しい」と感じやすいのが特徴です。
- リセールバリュー(資産価値)の高さ もし万が一、サックスを辞めてしまったり、より上位の機種に買い替えたくなったりした時でも、ヤマハ製品は中古市場で非常に高く売れます。状態にもよりますが、YAS-280であれば購入価格の半額〜6割程度で買い取ってもらえることも珍しくありません。これは、無名ブランドの格安サックスにはない大きなメリットです。
- 修理・調整のしやすさ ヤマハは国内メーカーであり、パーツの供給が安定しています。全国どこの楽器店でも修理を受け付けてもらえるため、転勤や引越しがあっても安心して使い続けることができます。
2026年最新の価格事情
ただし、一点だけ購入前に知っておくべき事実があります。ここ数年の急激な円安や原材料費(真鍮など)の高騰により、楽器の価格は上昇傾向にあります。
かつては10万円台前半で購入できたYAS-280も、2025年10月に行われた価格改定を経て、現在は実売価格で約19万円〜20万円程度(税込)へと上昇しています。
「少し高いな」と感じるかもしれませんが、これは単なる消費ではなく「資産価値」のある買い物です。3万円で買ってゴミになってしまうリスクを負うより、20万円で買って、いざとなれば10万円以上で売れる楽器を持つほうが、結果的に賢い選択だと私は考えます。
独学に必要な教則本や譜面台などの周辺機材費
楽器本体を手に入れただけで安心してはいけません。サックスを演奏するためには、本体以外にも揃えなければならない「必須アイテム」がいくつかあります。これらを予算に入れておかないと、「楽器は届いたけれど、練習が始められない」という事態になりかねません。
ここでは、独学で始める場合を想定して、最低限揃えておくべき周辺機材とその費用目安を詳細に解説します。
これだけは外せない!初期セットリスト
| アイテム名 | 費用目安 | 重要度・役割 |
|---|---|---|
| お手入れセット | 4,000円〜5,000円 | ★必須 スワブ(管内の水分を拭き取る布)、クロス、クリーニングペーパー等。これを怠ると楽器が錆びます。 |
| チューナー・メトロノーム | 3,000円〜5,000円 | ★必須 正しい音程とリズムを確認するために不可欠。最近はスマホアプリ(無料〜数百円)でも高性能なものがあり代用可能。 |
| 譜面台 | 2,000円〜3,500円 | ★必須 机に楽譜を置くと姿勢が悪くなり、呼吸が浅くなります。正しい姿勢で吹くために必ず用意しましょう。 |
| 教則本 | 2,500円〜3,500円 | ◎推奨 独学ならDVDやQRコードで動画が見られるタイプがおすすめ。「見て真似る」のが上達の近道です。 |
| サックススタンド | 3,000円〜5,000円 | ○あると便利 練習の合間に楽器を安全に置くための台。椅子や床に置くと落下の危険があります。 |
これらを合計すると、だいたい1万5,000円〜2万円程度になります。特に初心者が軽視しがちなのが「お手入れセット」と「譜面台」です。
サックスは、演奏すると管体の内部に大量の水分(呼気に含まれる水蒸気や唾液)が溜まります。これを練習後に毎回「スワブ」という布を通して拭き取らないと、タンポ(音孔を塞ぐ皮のパーツ)が水分を吸って腐敗し、カビが生えたり、息漏れの原因になったりします。修理代が高くつく原因の多くは、この水分ケア不足にあると言われています。
また、譜面台を使わずに、机やソファに楽譜を置いて練習するのもNGです。サックスは「呼吸」がすべての基本となる楽器です。猫背になったり首が曲がったりした状態では、十分な息を楽器に吹き込むことができず、いつまで経っても良い音が出ません。2,000円程度の安い折りたたみ式で構いませんので、必ず譜面台を用意して、目線の高さに楽譜をセットする習慣をつけましょう。
毎月かかるリード代やメンテナンス維持費の真実
サックスはお金がかかるイメージがあるのは、おそらく初期費用だけでなく「ランニングコスト(維持費)」の存在が大きいでしょう。ギターやベースなら弦交換は数ヶ月に一度、数百円〜千円程度で済みますが、サックスには「リード」という独特の消耗品が必要です。
リードは葦(あし)という植物で作られた薄い板で、これをマウスピースに取り付けて振動させることで音を出します。Webマーケターとして数字には敏感な私が、2026年最新の市場価格を調べてみて驚愕したのが、このリードの価格高騰です。
リード代は「月額サブスク」と割り切る
世界的な定番ブランドである「バンドーレン(Vandoren)」のリードは、原材料不足や輸送費の高騰により、度重なる値上げが行われています。2025年11月にも価格改定が行われ、現在アルトサックス用のリードは、1箱(10枚入り)で約4,800円〜5,500円ほどになっています。一昔前は3,000円台で購入できたことを考えると、かなり痛い出費ですよね。
【リード1箱でどれくらい持つの?】 「1箱買えば1年は持つでしょ?」と思うかもしれませんが、残念ながらそうではありません。リードは天然素材なので、「当たり外れ」があります。1箱10枚のうち、気持ちよく吹ける「当たり」は3〜4枚あれば良い方だと言われています。 また、使用しているうちに唾液でふやけたり、先端が欠けたりして寿命が来ます。練習量にもよりますが、趣味で週末に吹く程度であれば、1箱で2〜3ヶ月は持つことが多いようです。ならして考えると、月々1,500円〜2,500円程度をリード代として予算計上しておくのが現実的です。
定期的なメンテナンス費用も忘れずに
さらに、サックスは数ある楽器の中でも特に「精密機械」に近い構造をしています。数百個のパーツが複雑に連動しているため、普通に使っていても徐々にネジが緩んだり、キイのバランスが崩れたりします。
そのため、半年に1回〜1年に1回程度、専門の楽器店での「全体調整」が必要です。この費用が、状態にもよりますが1回あたり1万円〜2万円ほどかかります。
「音が裏返りやすくなったな」「低い音が出にくいな」と感じたら、自分の腕前ではなく楽器の調整不足が原因であることが多々あります。これらを合計すると、年間で3万円〜5万円程度の維持費がかかる計算になります。このランニングコストを許容できるかどうかが、サックスを続けられるかどうかの分かれ道になるかもしれません。
集合住宅での練習に必須となる防音対策のコスト
サックスを始める上で、費用以上に最大の壁となるのが「音量」の問題です。サックスの音は、ピアノよりも大きく、人の話し声の数倍のエネルギーがあります。その音量は90デシベル〜100デシベルにも達し、これは「電車が通過するガード下」や「犬の鳴き声」と同じレベルの騒音です。
マンションやアパートでそのまま吹けば、隣近所から苦情が来ることはほぼ確実です。だからといって、自宅に本格的な防音室(100万円〜)を導入するのは、初心者にはハードルが高すぎます。そこで、多くのサックス愛好家が利用している、現実的な2つの「防音対策」とその費用をご紹介します。
1. 消音器(e-Saxなど)を使う:初期投資型
最もポピュラーなのが、楽器全体をケースのようなもので覆い、手だけを入れて演奏するタイプの消音器です。代表的な製品にベストブラス社の「e-Sax」があります。
これを使用すると、外部に漏れる音量を普段の話し声程度(-25デシベル程度)まで下げることができます。ヘッドフォンをして自分の音を聞きながら練習できるため、夜間でも自宅で練習が可能になります。
実売価格は約5万6,000円〜6万円と決して安くはありません(こちらも以前の4万円台から値上がりしています)。しかし、毎回スタジオに通う手間と費用を考えれば、1年ほどで元が取れる計算になります。「家でいつでも吹きたい」という方には必須の投資と言えるでしょう。
2. カラオケやスタジオを利用する:都度払い型
自宅での練習を潔く諦め、週に1〜2回、カラオケボックスや音楽スタジオに通うという方法もあります。
音楽スタジオの個人練習(1名利用)なら、1時間500円〜800円程度で利用できるところが多いです。カラオケボックスも平日昼間なら安く利用できますが、店舗によっては楽器演奏不可の場合もあるので確認が必要です。
- 週1回(2時間)練習する場合:月額 約4,000円〜6,000円
この方法は、初期費用がかからない代わりに、毎月のランニングコストが増えます。また、「雨の日は行くのが面倒くさくなって練習しない」というモチベーション低下のリスクもあるため、自分の性格に合わせて選ぶことが大切です。
安い中国製のリスクと中古楽器選びの注意点
「20万円も出せないけれど、どうしてもサックスを始めたい」という方が次に考えるのが、中古市場や格安の中国製サックスです。中古であれば、新品のYAS-280と同じグレードの楽器が、10万円〜13万円程度で見つかることもあります。
しかし、サックスの中古選びは、私のようなバンド経験者でも非常に慎重になります。なぜなら、サックスは外見がピカピカでも、中身がボロボロということがよくあるからです。
フリマアプリの「調整済み」は信じてはいけない
メルカリやヤフオクなどの個人売買サイトを見ると、「調整済み」「音出し確認済み」と書かれた中古サックスがたくさん出品されています。しかし、初心者はここには手を出さない方が賢明です。
結論として、フリマアプリやネットオークションでの個人売買は、初心者には絶対におすすめしません。
出品者が言う「調整済み」の基準は非常に曖昧です。「とりあえず音が鳴る」レベルなのか、「全音域でバランス良く鳴る」レベルなのか、プロが見れば一目瞭然の違いがあります。実際、ネットで5万円で買った中古サックスを楽器店に持ち込んだら、「タンポが全部ダメになっています。全交換で修理代8万円です」と言われた……なんていう悲劇は、決して珍しい話ではありません。
中古を選ぶなら「保証付き」一択
もし中古を選ぶのであれば、必ず「管楽器の修理部門を持っている楽器店」が整備して販売しているもの(いわゆる認定中古品)を選びましょう。
楽器店の中古サックスは、プロのリペアマンが分解・洗浄・調整を行い、消耗したパーツを交換した状態で販売されています。価格は個人売買より高くなりますが、「購入後1年間の調整保証」などが付いていることが多く、トータルのコストパフォーマンスと安心感は段違いです。
「安物買いの銭失い」にならないよう、サックスに関しては「信頼をお金で買う」という意識を持つことが、結果的に一番の節約になります。
費用を抑えてサックスを趣味で始める賢い方法
ここまで、サックスを始めるにはそれなりの費用がかかるという現実をお伝えしてきました。「やっぱりお金がかかるし、自分には無理かな……」と意気消沈してしまった方もいるかもしれません。
でも、諦めるのはまだ早いです!必ずしも最初から20万円を現金一括で用意する必要はありません。今の時代には、リスクを最小限に抑えつつ、賢くお得にサックスライフをスタートさせるための画期的なサービスや方法が存在します。
ここからは、Webマーケターとしての視点も交えながら、最も経済的かつ合理的にサックスを始めるための具体的な戦略をご紹介します。
楽器レンタルやサブスクを活用して初期費用を削減
今、サックス初心者の間で最も利用者が増えているのが、「楽器のサブスク(定額制レンタルサービス)」です。
車や動画配信だけでなく、楽器も「所有」から「利用」へとシフトしています。特にヤマハが提供している「音レント」などのサービスは、サックス初心者にとって非常に合理的で、私自身も友人に相談されたら真っ先にこれを勧めています。
月々数千円でYAMAHA製が手に入る
この仕組みを使えば、20万円する新品のYAMAHA製サックス(YAS-280など)を、月額5,000円〜8,000円程度で借りることができます。数万円の登録料や初回手数料はかかりますが、それでも初期費用を劇的に抑えることが可能です。
【レンタル利用の3つのメリット】

- 初期費用が1/10以下: 20万円を用意する必要がなく、お小遣いの範囲で憧れのサックスが手元に届きます。
- 挫折してもダメージが少ない: これが最大のリスクヘッジです。もし3ヶ月やってみて「やっぱり自分には合わないな」「練習時間が取れないな」と思ったら、返却して解約すれば良いだけ。数万円の出費で済み、高額な楽器が部屋のオブジェになる悲劇を避けられます。
- そのまま購入も可能(ここが重要!): 多くのサービスでは、支払ったレンタル料を充当して、借りている楽器をそのまま買い取ることができます。「気に入ったら自分のものにする」という選択ができるため、掛け捨てにならず無駄がありません。
まずは半年間レンタルで試してみて、「これなら一生続けられる!」と確信してから購入へ切り替える。これが、経済的なリスクをゼロに近づける最も賢い戦略です。
初心者セットはお得か別々に揃えるべきかの判断
ネットショップで「サックス」と検索すると、必ずと言っていいほど目にするのが「サックス初心者入門10点セット」のような商品です。楽器本体に加えて、教則本、スタンド、譜面台、予備リード、ストラップ、お手入れ用品などが全て入って、価格は4万円〜6万円程度。一見すると、「これさえ買えばすぐに始められるし、別々に買うより断然お得!」と感じるかもしれません。
しかし、私の考えとしては、「予算が許すなら別々に揃える、もしくは大手楽器店が監修した信頼できるセットを選ぶ」ことを強く推奨します。なぜなら、格安の初心者セットには「安物買いの銭失い」になりかねない落とし穴が潜んでいることが多いからです。
「数合わせ」の付属品に注意
激安セットに含まれている小物類は、残念ながらコストダウンのために品質が犠牲になっているケースが多々あります。実際に購入した知人の話を聞くと、以下のようなトラブルがあったそうです。
- 付属のリードが粗悪: 10枚入りのリードがついてきたが、繊維がバラバラで、プロが吹いてもまともな音が出ないレベルだった。結局、すぐにバンドーレン製のリード(約5,000円)を買い直すことになった。
- ストラップが危険: 首にかけるストラップのフック部分がプラスチック製で強度が弱く、練習中に突然外れて楽器が落下しそうになった。大切な楽器を守る命綱なので、信頼できるメーカー品(2,000円〜3,000円)に買い替えた。
- メンテナンス用品が使いにくい: スワブ(掃除用の布)の吸水性が悪く、管内の水分が取れない。しかも布の端がほつれて楽器の中に詰まりそうになった。
このように、セット品はお得に見えても、結局は使い物にならずに後から良いものを買い直すことになるケースが非常に多いのです。それなら、最初から「自分が信頼できるもの」を単品で選んで揃えたほうが、結果的には無駄な出費を抑えられます。
「信頼できるセット」ならアリ
ただし、全てのセット商品が悪いわけではありません。例えば、島村楽器などの大手楽器店が独自に組んでいる「YAMAHAサックス YAS-280 + お手入れセット」のようなパッケージであれば話は別です。
こうしたセットに含まれている小物は、ヤマハ純正品や楽器店が推奨する定番メーカー品であることがほとんどです。価格も、単品で合計するより数千円安くなっている場合が多いので、これなら安心して購入できます。
判断の基準は、「セットに含まれている楽器本体が信頼できるメーカー(ヤマハなど)かどうか」です。本体が聞いたこともない無名メーカーで、オマケが大量についてくるようなセットは、警戒したほうが無難でしょう。
音楽教室の入会金や月謝の相場とコスパの考え方
独学でやるか、教室に通うかも費用に大きく関わります。「YouTubeを見れば無料で学べる時代に、わざわざ高い月謝を払って教室に通う必要があるの?」と考える方も多いでしょう。
しかし、サックスという楽器の特性を考えると、初期投資として「レッスン代」をかけることは、非常にコストパフォーマンスの高い選択だと言えます。ここでは、教室に通う場合の具体的な費用相場と、そこにお金をかける価値について解説します。
音楽教室のリアルな費用相場(2026年版)
大手音楽教室(ヤマハ音楽教室や島村楽器など)と、個人の先生が運営する教室では、料金体系が少し異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。
| 費目 | 相場目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 入会金 | 5,000円〜11,000円 | 春や秋のキャンペーン時期に入会すると無料や半額になることが多いです。 |
| 月謝(個人) | 10,000円〜16,000円 | 月2回〜3回、1回30分〜45分程度のマンツーマンレッスンの場合。 |
| 月謝(グループ) | 8,000円〜10,000円 | 複数人で受けるレッスン。費用は安いが、自分が吹ける時間は短くなります。 |
| 教材費・施設費 | 月1,000円〜2,000円 | 教室の冷暖房費や管理費として別途徴収される場合があります。 |
これらを合計すると、初月で約2万〜3万円、その後は毎月1万5,000円前後の出費になります。年間で見ると15万円〜20万円。「高い」と感じるのも無理はありません。
なぜ「時間を買う」ことになるのか
それでも私が教室をおすすめするのは、サックスが「独学だと変な癖がつきやすい楽器」だからです。
ピアノであれば、鍵盤を押せば誰でも正しい音程が出ます。しかしサックスは、口の形(アンブシュア)、息の圧力、喉の開き方など、目に見えない体の中の使い方が音色に直結します。独学で間違った吹き方を覚えてしまうと、「高音が出ない」「すぐに疲れる」「音程が悪い」という壁にぶつかり、それを修正するのに何ヶ月も費やすことになります。
私の周りの上手なプレイヤーも、「最初の半年だけでもプロに習ったほうが、結局は上達が早くて安上がりだ」と口を揃えて言います。プロに習えば、独学なら1年かかるレベルに3ヶ月で到達することも可能です。
費用を抑えたい場合は、最初から長期契約するのではなく、「最初の3ヶ月だけ」と期間を決めて通うのも賢い方法です。基礎さえ身につけば、あとは独学でも十分に伸ばしていけます。
50代や60代から始めても遅くない大人の投資価値
「費用についてはわかったけれど、そもそもこの歳から始めて、元が取れるほど上達するだろうか?」 そんな不安を感じている方もいるかもしれません。特に50代、60代から新しいことを始めるのは勇気がいりますよね。
しかし、断言させてください。サックスは「大人が始める趣味として、最もコストパフォーマンスが高い楽器の一つ」です。
他の楽器と比べたサックスの利点
例えばバイオリンやピアノは、幼少期からの訓練がないとなかなか思うように弾けないと言われます。しかしサックスは、大人になってから始める人が圧倒的に多い楽器です。その理由は以下の2点にあります。
- 指使いが簡単: サックスの運指(指の動かし方)は、小学校で習った「リコーダー」とほぼ同じです。「ドレミファソラシド」がすぐに押さえられるので、楽譜さえ読めれば、早い段階で曲の演奏に入ることができます。
- 音が出やすい: トランペットなどの金管楽器は音を出すだけでも一苦労ですが、サックスは構造上、比較的簡単に音が出ます。初日から「音が出た!」という喜びを味わえるため、モチベーションが続きやすいのです。
定年後の趣味としてサックスを始め、地域のジャズバンドに入ったり、市民吹奏楽団で活動したりしている方はたくさんいます。あるいは、家族の誕生日や結婚記念日に、サプライズでお気に入りの曲を一曲演奏する。そんなシーンを想像してみてください。
その豊かな時間や、音楽仲間との出会い、そして「楽器が吹ける自分」という自信。これらは、数十万円の初期投資以上の「プライスレスな価値」をあなたの人生にもたらしてくれます。飲み会やゴルフにかかる費用と比べれば、一生モノのスキルと感動が手に入るサックスは、決して悪い投資ではないはずです。
サックスを趣味で始める費用の総括と未来の価値
長くなりましたが、最後にこの記事の要点をまとめます。
サックスを趣味にするために必要な費用は、決して「激安」ではありませんが、工夫次第で十分にコントロール可能です。
【費用のまとめと推奨プラン】
- 【プランA:堅実派】まずはレンタルから 初期費用:約2万円(登録料+初月レンタル) 月額費用:約5,000円〜8,000円 →「続くかわからない」という不安がある方はこれ一択。半年続けて自信がついたら、レンタル品を買い取るか、新品を購入する。
- 【プランB:本気派】YAMAHA YAS-280を購入 初期費用:約22万円(楽器本体+必須アイテム) 維持費用:月2,000円〜(リード代など) →「形から入って自分を追い込みたい」という方はこちら。資産価値が高いため、万が一の際もリセール可能。
「お金がかかるから」と諦めてしまうのは簡単ですが、それでは「サックスを吹きたい」という長年の夢は永遠に叶いません。
まずは近くの楽器店に足を運び、本物のサックスを手に取ってみてください。あるいは、月5,000円のレンタルから小さく始めてみてください。その一歩が、あなたの日常に新しいリズムと彩りを与え、人生をより豊かに変えてくれるはずです。
サックスという最高の相棒と共に過ごす未来が、あなたにとって素晴らしいものになることを心から応援しています。



