日本の有名サックス奏者まとめ|初心者が聴きたい名手を紹介

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「日本人の有名なサックス奏者を知りたい」と思って調べてみると、ジャズ、フュージョン、クラシックなど、かなり幅広いジャンルの名前が出てきます。

渡辺貞夫のように戦後の日本ジャズから長く活躍してきた奏者もいれば、T-SQUAREでフュージョンを広く知らしめた伊東たけし、クラシック・サクソフォンの世界で国際的に活動する須川展也、映画『BLUE GIANT』で注目を集めた馬場智章など、知られ方もそれぞれです。

ここで少し難しいのが、「有名なサックス奏者」と「演奏が最も上手い奏者」は同じ意味ではないことです。

サックス奏者には、公的に認定された日本人総合ランキングがあるわけではありません。知名度は活動期間、代表作品、所属バンド、海外での実績、映画やテレビへの参加、SNSでの発信など、さまざまな要素に左右されます。

なので、初心者が日本人サックス奏者を知るときは、「誰が1位なのか」を探すより、ジャンル・使用するサックス・代表作品の違いを知るほうがずっと分かりやすいですよ。

この記事では、日本を代表するサックス奏者をジャンルや主な楽器とあわせて整理しました。さらに、名前を覚えるだけで終わらないように、初心者が入りやすい作品や聴き比べ方まで紹介します。

アルト、テナー、ソプラノでは音域が違いますし、同じアルトサックスでも奏者によって音色、アタック、ビブラート、フレーズの歌い方はかなり変わります。

「誰が一番上手いか」より、「自分はどんなサックスの音が好きなのか」という視点で聴くと、各奏者の魅力がぐっと見えやすくなります。

  • 有名な日本人サックス奏者と主なジャンル
  • アルト・テナー・ソプラノを代表する奏者の違い
  • ジャズ・フュージョン・クラシックの聴き比べ方
  • 女性の有名サックス奏者
  • 往年の名手と現在活躍する奏者の違い
  • 初心者が最初に聴きやすい代表作品

「名前は聞いたことがあるけれど、何が違うのか分からない」というあなたも大丈夫です。最初から全部を覚える必要はありません。気になる奏者を一人ずつ聴いていけば、少しずつ自分の好きなサックスサウンドが見えてきますよ。

有名な日本人サックス奏者一覧

まずは、日本のサックス界を知るうえで押さえておきたい奏者を一覧で見ていきましょう。

ここでは「有名」を単純な人気順位として扱わず、長期的な活動実績、代表作品、主要バンドでの活動、海外での実績、受賞歴、メディアへの露出などを確認できる奏者を中心に整理しています。

奏者 主なジャンル 主な楽器・役割 入口にしやすい作品・活動
渡辺貞夫 ジャズ、ボサノヴァ、フュージョン アルトサックス中心 『California Shower』『My Dear Life』
須川展也 クラシック ソプラノ、アルト 『バッハ・シークェンス』
上野耕平 クラシック サクソフォン 『アドルフに告ぐII』など
本多俊之 ジャズ、フュージョン、映画音楽 ソプラノ、アルトなど 『Burnin’ Wave』『マルサの女』関連音楽
MALTA ジャズ、フュージョン アルト中心 『MALTA』『SPARKLING』
伊東たけし フュージョン サックス、電子管楽器、フルート T-SQUARE『TRUTH』など
本田雅人 フュージョン サックス、EWI、フルート T-SQUARE在籍期、ソロ作品
勝田一樹 フュージョン アルト中心 DIMENSION、ソロ作品『Then』
矢野沙織 ジャズ、ビバップ アルト 2003年のデビュー作品など
小林香織 ジャズ、フュージョン、ポップス サックス、フルート 『Solar』『INTERSECTION』
寺久保エレナ ジャズ アルト、ソプラノ 『North Bird』『ABSOLUTELY LIVE!』
ユッコ・ミラー ジャズ、フュージョン、ポップス アルト中心 『SAXONIC』『Bloomin’』
馬場智章 モダンジャズ テナー中心 『BLUE GIANT』、『ELECTRIC RIDER』
清水靖晃 ジャズ、現代音楽、実験音楽 テナー中心 『CELLO SUITES』関連作品
土岐英史 ジャズ、フュージョン、ポップス アルト、ソプラノ 『TOKI』『Little Boy’s Eyes』

こうして並べると、「日本人の有名サックス奏者」とひとことで言っても、活動している音楽の世界がかなり違うことが分かります。

たとえば渡辺貞夫と矢野沙織はどちらもジャズを軸にしたアルト奏者ですが、活動してきた時代も音楽的な背景も同じではありません。

一方、伊東たけしや本田雅人はフュージョンを代表する奏者として知られていますが、サックスだけでなく電子管楽器も大きな役割を持っています。

須川展也や上野耕平になると、舞台はクラシックへ移ります。同じ「サックス」という楽器でも、曲の構成、発音、音程、アーティキュレーションなど、ジャズとは違った部分が聴きどころになります。

最初から全員を覚えなくても大丈夫です。まずはジャズ、フュージョン、クラシックから一人ずつ選ぶだけでも、日本人サックス奏者の幅広さをかなり実感できます。

なお、土岐英史は2021年に亡くなっています。そのため、現在活動する奏者としてではなく、日本のジャズ、フュージョン、J-POPの歴史を知るうえで重要な名手として捉えるのが正確です。

ジャズで有名な日本人奏者

日本人の有名なジャズサックス奏者を知りたいなら、最初に押さえておきたいのが渡辺貞夫です。

渡辺貞夫は1951年に東京へ出てプロのアルトサックス奏者として活動を開始し、秋吉敏子のコージー・カルテットにも参加しました。

1961年には初リーダーアルバム『Sadao Watanabe』を発表し、1962年にはバークリー音楽大学へ留学。その後、1968年のニューポート・ジャズ・フェスティバル、1970年のモントルー・ジャズ・フェスティバルへ出演するなど、早い時期から海外でも活動しています。

渡辺貞夫を特徴づけるのは、いわゆるジャズだけにとどまらない幅の広さです。ボサノヴァやクロスオーバー、親しみやすいメロディーを持つ作品も多いため、「ジャズは難しそう」と感じている初心者にも入口を作りやすい奏者です。

アルトサックスのジャズを別の角度から聴きたいなら、矢野沙織も押さえておきましょう。

矢野沙織は9歳でブラスバンドに入りアルトサックスを始め、チャーリー・パーカーの演奏に衝撃を受けてジャズへ傾倒しました。2003年、16歳でデビューしており、ビバップを背景に持つ日本人アルト奏者として整理しやすい存在です。

「渡辺貞夫も矢野沙織もアルトだから、似た音なのでは?」と思うかもしれません。でも、実際に聴くとそう単純ではありません。

サックスの音は楽器の種類だけで決まるのではなく、奏者のフレージング、アタック、ビブラート、音の立ち上がり、リズムの取り方などによって大きく変わるからです。

寺久保エレナも、日本のジャズサックスを語るうえで重要です。

1992年札幌生まれで、9歳からサックスを始め、2010年、高校3年時に『North Bird』でメジャーデビュー。その後バークリー音楽大学へ留学し、米国のジャズシーンとの結びつきを深めてきました。

2025年にはミシガン州立大学のジャズ・サクソフォン担当Assistant Professorに就任しており、演奏家だけでなく教育者としても活動しています。

現在のテナーサックスを聴くなら、馬場智章も外せません。

1992年札幌生まれで、バークリー音楽大学へ進学。卒業後はニューヨークを拠点に活動し、国内外の現代ジャズ奏者と共演してきました。

広い層に知られる大きなきっかけになったのが、2023年公開のアニメ映画『BLUE GIANT』です。主人公・宮本大のサックス演奏を担当しました。

ジャズだけでも方向性は一つではありません。渡辺貞夫の幅広いスタイル、矢野沙織のビバップ、寺久保エレナの米国ジャズとのつながり、馬場智章の現代的なテナーと順番に聴くと、日本人ジャズサックスの違いをつかみやすくなります。

さらに歴史をさかのぼるなら、松本英彦と宮沢昭も重要です。

松本英彦は戦後日本ジャズを代表するテナーサックス奏者の一人で、ジョージ川口、小野満、中村八大らと「ビッグ・フォー」で活動しました。1950年代の日本ジャズを知る場合には外しにくい存在です。

宮沢昭も、日本のモダンジャズ黎明期を代表するテナー奏者の一人です。『いわな』『木曽』などの作品を残しており、渡辺貞夫より前後の世代まで含めて日本ジャズの歴史を見る際に重要になります。

つまり、日本のジャズサックスを知るなら「現在有名な人」だけでは足りません。戦後から現在までをゆるく世代で追っていくと、日本のジャズがどう変化してきたのかまで見えてきます。

フュージョンで有名な日本人奏者

日本のフュージョンサックスを知りたい場合は、MALTA、伊東たけし、本田雅人、勝田一樹あたりを軸にすると整理しやすいです。

まずMALTA。名前だけを見ると海外の奏者のように感じるかもしれませんが、1949年に鳥取県倉吉市で生まれた日本人サックス奏者です。

東京藝術大学を卒業後、バークリー音楽院へ留学。ニューヨークで活動し、ライオネル・ハンプトン楽団ではリードアルト兼コンサートマスターを務めました。

1982年に帰国し、1983年に初リーダー作品『MALTA』を発表。『SPARKLING』は1987年に第1回日本ゴールドディスク大賞を受賞しています。

MALTAは、日本人サックス奏者を調べているときにアーティスト名だけでは日本人だと気づきにくいため、覚えておきたい人物です。

そして日本のフュージョンを語るとき、避けて通れないのがT-SQUAREです。

特にサックス奏者として重要なのが伊東たけし本田雅人です。

伊東たけしは1977年にTHE SQUAREへ加入し、1978年のレコードデビュー以降、長くバンドのフロントを担ってきました。

2026年のT-SQUAREでも伊東たけしはSAX、NuRADを担当しており、バンドの象徴的な存在であり続けています。

入口にしやすい作品は、やはり1987年のアルバム『TRUTH』でしょう。タイトル曲「TRUTH」はフジテレビF1グランプリのテーマ曲として広く知られ、日本のフュージョンを代表する楽曲の一つになりました。

T-SQUAREを聴くときは、すべての管楽器音を「生のサックス」と考えないようにしましょう。伊東たけしはサックスだけでなく、リリコン、EWI系電子管楽器、現在のNuRADなども使用します。『TRUTH』録音時にもアルトサックスとリリコンを担当しています。

ここは初心者が意外と混乱しやすいところです。

サックスらしい形や吹き方をする電子管楽器であっても、発音の仕組みや音作りはアコースティックなサックスとは異なります。「T-SQUAREの音を聴いたら、それが全部アルトサックスの音色だ」と覚えてしまわないほうが正確です。

一方の本田雅人は、国立音楽大学器楽学科サクソフォン科へ進学し、在学中から「原信夫とシャープス&フラッツ」でリードアルトを担当しました。

1991年にT-SQUAREへ加入し、1998年に退団。その後はソロ奏者として活動し、Witness、B.B.Station、Four of a Kind、Voice Of Elementsなど、さまざまな形態で演奏してきました。

本田雅人はSAX、EWI、フルートを演奏します。速いフレーズや高度な技巧を伴うフュージョンサックスを知りたい場合、ぜひ押さえておきたい奏者です。

名前が似ている本多俊之とは別人なので注意してください。

本多俊之は1957年東京生まれで、サックス奏者としてだけでなく、作曲家、編曲家、プロデューサーとしても活動しています。

映画『マルサの女』では第11回日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞するなど、映画・テレビ音楽の世界でも大きな実績があります。

さらに、DIMENSIONで長くフロントを担う勝田一樹も、日本のフュージョンサックスを知るなら外しにくい奏者です。

アルトサックスを中心に、ソプラノ、テナーも使用。1992年にDIMENSIONを結成し、ソロやレコーディング、ブラスアレンジなど幅広く活動しています。2025年にはソロアルバム『Then』を発表しました。

フュージョンを聴くときは、サックスだけを追いかけるより、バンド全体を聴くのがポイントです。

キーボード、ギター、ベース、ドラムとサックスがどのように重なっているのか。サックスがメロディーを担当しているのか、ソロで一気に前へ出てくるのか、電子管楽器へ持ち替えているのか。

このあたりを意識すると、ジャズの小編成とは違ったフュージョンの面白さが分かりやすくなりますよ。

クラシックで有名な日本人奏者

クラシックサックスで日本を代表する奏者を知りたいなら、須川展也上野耕平は特に押さえておきたい二人です。

「サックスはジャズや吹奏楽の楽器」というイメージを持っている人ほど、クラシック奏者を一度聴いてみる価値があります。

同じサックスでも、アドリブを中心とするジャズとは違い、クラシックでは楽譜に書かれた音をどのような音程、アーティキュレーション、ダイナミクスで形にするのかが大きな聴きどころになります。

須川展也は東京藝術大学卒業後、第51回日本音楽コンクール、第1回日本管打楽器コンクールで最高位を獲得。

1989年から2010年までは東京佼成ウインドオーケストラのコンサートマスターを務め、国内外の著名オーケストラと多数共演してきました。

海外30か国以上で公演やマスタークラスを行っていることも、国際的な活動の大きさを示しています。

須川展也を見るときに忘れたくないのが、新しいサクソフォン作品の開拓です。

既存曲を演奏するだけではなく、チック・コリア、ファジル・サイ、坂本龍一、西村朗、本多俊之、吉松隆、長生淳など、国内外の作曲家へ新作を委嘱し、クラシック・サクソフォンのレパートリーを広げてきました。

代表的な録音の一つである『バッハ・シークェンス』は、令和2年度文化庁芸術祭レコード部門優秀賞を受賞しています。

また、演奏だけでなく『サクソフォーンは歌う!』『絶対!うまくなる サクソフォーン100のコツ』『うまくなろう!サクソフォーン』などの書籍もあります。

上野耕平は茨城県東海村出身で、8歳から吹奏楽部でサックスを始め、東京藝術大学器楽科を卒業しました。

第28回日本管打楽器コンクール・サクソフォン部門第1位、同コンクール特別大賞、2014年第6回アドルフ・サックス国際コンクール第2位、第28回出光音楽賞などの実績があります。

活動はソロだけではありません。The Rev Saxophone Quartet、ぱんだウインドオーケストラでの演奏に加え、NHK-FM「×(かける)クラシック」の司会など、メディアを通してクラシックを一般層へ伝える活動も行っています。

クラシックのサックスを初めて聴くときは、「ジャズよりきれいな音かどうか」のように単純化しないのがおすすめです。発音、音程、音量変化、タンギング、ビブラート、フレーズのつなぎ方など、音楽を組み立てる考え方そのものを比べると違いが分かりやすくなります。

ジャズとクラシックの違いを知るなら、渡辺貞夫と須川展也を続けて聴いてみるだけでもかなり面白いです。

同じサックスなのに、「こんなに音楽の表情が変わるのか」と感じるかもしれません。

現代音楽で注目したい奏者

ジャズ、フュージョン、クラシックという分類だけでは収まりきらないサックス表現を知りたいなら、清水靖晃にも注目してみてください。

清水靖晃はサキソフォン奏者、作曲家、音楽プロデューサーとして活動し、ジャズ、実験音楽、現代音楽、クラシックとのクロスオーバーまで幅広く取り組んできました。

1978年にアルバムデビューし、実験的なバンド「マライア」で活動。その後「サキソフォネッツ」プロジェクトなども展開しています。

特に知られている仕事の一つが、J.S.バッハの『無伴奏チェロ組曲』をテナーサキソフォン用に編曲して録音した作品です。

『CELLO SUITES 1.2.3』『CELLO SUITES 4.5.6』などを聴くと、テナーサックスが持つ響きを、通常のジャズとはまったく違う方向から味わえます。

これは初心者にもかなり面白い比較材料です。

サックスというと、ジャズクラブ、ビッグバンド、吹奏楽、フュージョンなどを想像しがちですよね。

ところがバッハをテナーサックスで聴くと、「この楽器はこんな表現にも使えるのか」と印象が変わるかもしれません。

サックスは特定のジャンル専用の楽器ではありません。奏者と作品が変わることで、楽器そのものの見え方まで変わる。この点を分かりやすく感じさせてくれるのが清水靖晃です。

初心者がまず聴きたい名手

ここまで多くの奏者を紹介してきましたが、「結局、誰から聴けばいいの?」と迷いますよね。

そこで、最初の入口として分かりやすい4人に絞ってみます。

選ぶ基準は単純な知名度ではなく、ジャンルやサックスの違いを比較しやすいことです。

奏者 注目ポイント 主な楽器 最初の候補
渡辺貞夫 日本ジャズの長い歴史と親しみやすさ アルト 『California Shower』
須川展也 クラシック・サクソフォン ソプラノ、アルト 『バッハ・シークェンス』
伊東たけし 日本のフュージョン サックス、電子管楽器 T-SQUARE『TRUTH』
馬場智章 現代ジャズとテナーの響き テナー 『BLUE GIANT』オリジナル・サウンドトラック

この4人を順番に聴くだけでも、ジャズ、クラシック、フュージョン、現代ジャズというかなり違った世界を一度に比較できます。

さらにアルト、テナー、ソプラノという楽器の違いも出てくるので、サックス初心者にはちょうどいい組み合わせです。

渡辺貞夫|日本ジャズの代表格

日本人サックス奏者を一人ずつ聴いていくなら、渡辺貞夫は非常に分かりやすい入口です。

1950年代からプロとして活動し、日本ジャズの歴史と長く並走してきました。

1962年にはバークリー音楽大学へ留学し、帰国後も国内だけにとどまらず海外へ活動を広げています。

ただ、「長いキャリアを持つ大御所」と聞くと、初心者には少し難しく感じるかもしれません。

渡辺貞夫の入りやすさは、そこだけではないんです。

ジャズを基盤にしながら、ボサノヴァやクロスオーバーの要素も取り入れ、親しみやすいメロディーを持つ作品を数多く残しています。

初心者なら、まず『California Shower』から聴いてみるとよいでしょう。

1978年発表の代表作の一つで、日本で渡辺貞夫の名前が広く知られるうえでも重要な作品です。

この作品では「ジャズだから難しい」と構えすぎず、まずアルトサックスのメロディーそのものを追いかけてみてください。

その次に『My Dear Life』などへ広げていくと、同じ奏者でも作品によって雰囲気が変化することが見えてきます。

2026年5月20日には『BUT BEAUTIFUL』をリリースしており、現在も活動を継続しています。発売情報は渡辺貞夫公式サイトのディスコグラフィーでも確認できます。

長く活動する奏者だからこそ、一時期の作品だけで「こういう音の人」と決めつけず、年代を変えて聴くのも面白いですよ。

渡辺貞夫を聴くときのポイント:まずは難しいアドリブ分析をしなくても大丈夫です。メロディーの歌い方、音の立ち上がり、フレーズの間の取り方に耳を向けると、その奏者らしさを感じやすくなります。

戦後日本ジャズから現在までを一本の線で見たいとき、渡辺貞夫は非常に重要な存在です。

須川展也|クラシックの名手

「サックスはジャズの楽器」というイメージが強い人ほど、須川展也の演奏を聴いてみる価値があります。

ジャズ奏者を何人か聴いたあとにクラシックサックスを流すと、同じ楽器とは思えないほど印象が変わることがあります。

クラシックでは、音程、発音、ダイナミクス、アーティキュレーション、フレーズの方向性などを細かく作り込みます。

ジャズのアドリブとは違い、楽譜に書かれた音をどう解釈し、どのような音色と時間の流れで表現するかが重要になります。

須川展也はソプラノサクソフォンとアルトサクソフォンを演奏し、トルヴェール・クヮルテットではソプラノを担当します。

最初の作品候補は『バッハ・シークェンス』です。

「クラシックのサックスとはどんな音なのか」を知りたい場合、ジャズ奏者のアルバムと続けて聴くと違いを感じやすいでしょう。

ここで注目したいのは、単に音が滑らかかどうかではありません。

  • 一音一音の発音がどのようにつながるか
  • 弱い音から強い音までどう変化するか
  • ビブラートがどの場面で使われるか
  • 長いフレーズをどこへ向かって作っているか
  • 音程が和声の中でどう収まっているか

こうした部分に耳を向けると、クラシックサックスの聴き方が少しずつ分かってきます。

また、須川展也は演奏活動だけでなく、『サクソフォーンは歌う!』『絶対!うまくなる サクソフォーン100のコツ』『うまくなろう!サクソフォーン』などの書籍も出しています。

クラシック奏者を一人知るだけでも、「サックス=ジャズ」というイメージがかなり広がると思いますよ。

伊東たけし|フュージョンの顔

日本のフュージョンを代表するサックスプレイヤーとして、伊東たけしは欠かせません。

1977年にTHE SQUAREへ加入し、1978年のレコードデビュー以降、長期間にわたってバンドのフロントを担ってきました。

T-SQUAREを初めて聴くなら、1987年のアルバム『TRUTH』が分かりやすいでしょう。

タイトル曲「TRUTH」はフジテレビF1グランプリのテーマ曲として広く知られたため、フュージョンを普段聴かない人でもメロディーに聞き覚えがあるかもしれません。

ここで初心者が意識しておきたいのが、伊東たけしの音をすべてサックスの音として聴かないことです。

伊東たけしはサックス、リリコン、NuRADなどを使用します。

電子管楽器では、息や指の操作を使いながら電子的に音色を作ります。アコースティックなサックスとは音の作られ方が異なるため、聴き比べるとかなり面白いですよ。

フュージョンでは、サックスの音色だけでなく、周囲の楽器にも注目してみてください。

キーボードのコード、ギターの音色、ベースの動き、ドラムのリズムと重なったとき、サックスがどんな位置にいるのか。

ジャズの小編成とは違って、バンド全体で一つの大きなサウンドを作っている場合が多いので、「サックスだけを聴く」より「サックスを含むバンドを聴く」と分かりやすくなります。

『TRUTH』を聴いたあとに渡辺貞夫の作品へ戻ると、同じ日本人サックス奏者でも、楽器が置かれている音楽環境そのものが大きく違うことに気づきやすくなります。

馬場智章|現代ジャズのテナー

現在の日本人ジャズサックス奏者を知るなら、馬場智章はぜひ聴いておきたい存在です。

1992年に札幌で生まれ、バークリー音楽大学へ進学。卒業後はニューヨークを拠点に活動し、現代のジャズシーンとの接点を持ってきました。

ジャズを普段聴かない人にも名前が広まる大きなきっかけになったのが、2023年公開のアニメ映画『BLUE GIANT』です。

主人公・宮本大のサックス演奏を担当する奏者は、国内外の有力プレイヤーを対象にしたオーディションによって選ばれ、馬場智章が担当しました。この経緯は映画『BLUE GIANT』公式サイトでも確認できます。

映画を見たことがあるなら、オリジナル・サウンドトラックから入るのがかなり分かりやすいでしょう。

物語の場面を思い出しながら音を聴けるので、ジャズの形式や理論を知らなくても演奏の熱量を捉えやすいからです。

馬場智章の主な楽器はテナーサックス。

この記事で紹介している奏者にはアルト主体の人物が多いため、アルトとテナーを聴き比べる対象としても使いやすいです。

2024年にはメジャーデビュー作品『ELECTRIC RIDER』を発表しています。

まず『BLUE GIANT』で知って、その後本人名義の作品へ進む。この順番なら、映画からジャズへ興味を持った人でも自然に広げられます。

アルトとテナーを比べたいなら、矢野沙織と馬場智章を続けて聴く方法があります。ただし「アルトだから明るい」「テナーだから太い」と決めつけず、音域、アタック、フレーズ、奏者本人の音色をまとめて比較してみてください。

女性の有名サックス奏者

日本人の女性サックス奏者では、矢野沙織、小林香織、寺久保エレナ、ユッコ・ミラーなどが代表例として整理しやすいです。

ただし、「女性サックス奏者」という独立した音楽ジャンルがあるわけではありません。

ここはかなり大事なところです。

性別だけで演奏スタイルをひとまとめにすると、それぞれの奏者が持っている音楽的背景の違いが見えなくなってしまいます。

奏者 主な方向性 主な楽器 入口にしやすい作品
矢野沙織 ジャズ、ビバップ アルト デビュー期の作品など
小林香織 ジャズ、フュージョン、ポップス アルトを中心に複数種 『Solar』『INTERSECTION』
寺久保エレナ ジャズ アルト、ソプラノ 『North Bird』
ユッコ・ミラー ジャズ、フュージョン、ポップス アルト中心 『SAXONIC』『Bloomin’』

矢野沙織はビバップを背景に持つアルト奏者です。

チャーリー・パーカーの演奏に影響を受け、10代からジャズクラブへ出演交渉を行い、16歳でデビューしました。

フュージョン系の奏者と聴き比べると、ジャズのフレージングやリズム感の違いを感じやすいでしょう。

寺久保エレナは、米国ジャズシーンとの結びつきが強い奏者です。

高校3年時に『North Bird』でメジャーデビューし、バークリー音楽大学へ留学。2025年にはミシガン州立大学でジャズ・サクソフォンを教える立場にもなっています。

小林香織は、ジャズ、フュージョン、ポップスを横断するスタイルが特徴です。

中学1年でフルートを始め、高校2年でアルトサックスを開始。2005年に『Solar』でメジャーデビューしました。

『INTERSECTION』ではアルトだけでなく、テナー、ソプラノ、バリトンも使用しており、同じ奏者が複数種類のサックスを演奏する例としても面白い作品です。

「この奏者はアルト奏者だから、いつもアルトだけを吹く」と考えないほうがよいことが分かります。

ユッコ・ミラーは、高校の吹奏楽部でアルトサックスを始め、2016年にキングレコードからメジャーデビューしました。

テレビ、ラジオ、YouTubeなどへの露出も多いため、ジャズファン以外が日本人サックス奏者を知るきっかけになりやすい人物です。

『SAXONIC』はJAZZ JAPAN AWARD 2018で評価され、2026年2月18日にはメジャーデビュー10周年記念アルバム『Bloomin’』を発売しました。

同じアルトサックスでも、4人を続けて聴くと印象はかなり変わります。

女性奏者を聴き比べるときも、性別よりジャンルと音色に注目してみてください。矢野沙織のビバップ、寺久保エレナのジャズ、小林香織のフュージョン/ポップス的な広がり、ユッコ・ミラーの現代的な活動と、それぞれの方向性はかなり異なります。

「女性だから柔らかい音」「男性だから力強い音」といった分け方も避けたほうがよいでしょう。

サックスの音色は、奏者の奏法、セッティング、音楽ジャンル、録音、アレンジなど多くの要素によって変わります。

世代で見る日本のサックス名手

日本のサックス奏者は、世代ごとに見ていくと流れを理解しやすくなります。

現在活躍している奏者だけを並べると、それぞれの音楽がどこからつながってきたのかが分かりにくいからです。

戦後日本ジャズの歴史をたどるなら、松本英彦、宮沢昭、渡辺貞夫などが重要です。

松本英彦はジョージ川口、小野満、中村八大らと「ビッグ・フォー」で活動し、1950年代にジャズの枠を越えて人気を得ました。

宮沢昭は日本のモダンジャズ黎明期を代表するテナー奏者の一人で、『いわな』『木曽』などの作品を残しています。

渡辺貞夫は1950年代から活動を始め、その後海外へ活動範囲を広げました。現在まで長い活動歴を持つため、複数の時代をまたぐ存在として見ることができます。

1970年代から1990年代へ進むと、ジャズだけでなくフュージョンの存在感が大きくなります。

この時期には渡辺貞夫、本多俊之、MALTA、伊東たけし、土岐英史など、ジャズとフュージョンの双方で重要な奏者が目立ってきます。

特にT-SQUAREのようなバンドでは、サックスと電子管楽器が同じ奏者によって使い分けられるため、サックスプレイヤーの役割そのものも広がっていきます。

さらにT-SQUARE・DIMENSION以降のフュージョンを見るなら、本田雅人と勝田一樹も重要です。

本田雅人は1991年から1998年までT-SQUAREに在籍し、その後ソロへ。勝田一樹はDIMENSIONのフロントとして長く活動してきました。

2000年代以降に広く知られた奏者には、矢野沙織、小林香織、上野耕平、寺久保エレナ、ユッコ・ミラーなどがいます。

この世代になると、従来のCD、テレビ、ラジオだけでなく、インターネットや動画を通じて奏者を知るケースも増えています。

そして現在の若手~中堅ジャズを見るなら、馬場智章のように海外で学び、ニューヨークなど海外のジャズシーンとつながりながら日本でも活動する奏者が重要になります。

大まかな流れ 代表例 聴くときのポイント
戦後ジャズ 松本英彦、宮沢昭、渡辺貞夫 日本ジャズの形成と発展
1970~1990年代 渡辺貞夫、本多俊之、MALTA、伊東たけし、土岐英史 ジャズとフュージョンの広がり
T-SQUARE・DIMENSION以降 本田雅人、勝田一樹 技巧的なフュージョンと電子楽器
2000年代以降 矢野沙織、小林香織、上野耕平、寺久保エレナ、ユッコ・ミラー ジャンルと発信方法の多様化
現在の若手~中堅 馬場智章など 海外シーンとの接点、現代ジャズ

こうして見ると、日本のサックス史を単純な演奏技術のランキングで比べるのはあまり意味がありません。

時代によって、録音技術、流行した音楽、海外との交流、電子楽器の発展、メディア環境などが違うからです。

1950年代のジャズ奏者と、2020年代に活動する奏者では、そもそも置かれている音楽環境が大きく違います。

「昔の奏者より現在の奏者のほうが上手い」「有名だから最も優れている」と単純に考えないようにしましょう。公的な総合ランキングはなく、演奏技術も一つの尺度だけでは測れません。

演奏力のランキングではなく、「それぞれの時代にどんなサックスが求められ、どんな音楽が生まれたのか」を見ると、日本のサックス史がずっと面白くなります。

サックスの種類で聴き比べる

奏者の違いをもっと分かりやすく感じたいなら、ジャンルだけでなくサックスの種類にも注目してみましょう。

今回紹介している奏者で特に比較しやすいのは、アルトサックス、テナーサックス、ソプラノサックスです。

種類 調性 代表的な奏者例 聴き比べのポイント
アルトサックス E♭管 渡辺貞夫、MALTA、矢野沙織、ユッコ・ミラーなど ジャズ、フュージョン、クラシックまで幅広く比較しやすい
テナーサックス B♭管 馬場智章、清水靖晃、松本英彦、宮沢昭など アルトより低い音域を持ち、ジャズでの違いを比較しやすい
ソプラノサックス B♭管 須川展也、本多俊之、寺久保エレナ、土岐英史など 高い音域と発音、フレーズの違いに注目

アルトサックスはE♭管で、今回紹介している有名奏者にもアルトを中心に演奏する人物が多くいます。

渡辺貞夫、MALTA、勝田一樹、矢野沙織、寺久保エレナ、ユッコ・ミラーなどです。

アルトはジャズ、フュージョン、クラシック、吹奏楽など幅広い分野で使われるため、同じ楽器でジャンルの違いを比較しやすいのが面白いところです。

たとえば渡辺貞夫と矢野沙織を比べれば、どちらもアルトが中心でも、音楽の背景やフレージングが違います。

さらに須川展也のアルト演奏まで加えれば、ジャズとクラシックで同じ種類のサックスがどう変わるかまで比較できます。

テナーサックスはB♭管で、アルトより低い音域を持ちます。

今回紹介した中では馬場智章、清水靖晃、歴史的な奏者では松本英彦、宮沢昭などが代表例です。

アルトとテナーを比較するとき、「高い・低い」だけを聴くのではなく、フレーズがバンド全体の中でどう聞こえるかにも注目してみてください。

同じジャズでも、テナーが中心になると曲全体の印象が変わることがあります。

ソプラノサックスもB♭管で、アルトやテナーより高い音域を担当します。

須川展也、本多俊之、寺久保エレナ、土岐英史などが使用しています。

須川展也はトルヴェール・クヮルテットでソプラノを担当しているため、クラシックでソプラノサックスを聴きたい場合にも分かりやすい存在です。

「アルトは必ず明るい」「テナーは必ず太い」「ソプラノは必ず鋭い」と断定するのは避けましょう。実際の音色は奏者、マウスピース、リード、奏法、録音環境、アレンジなどによって大きく変化します。

初心者が聴き比べるなら、まず矢野沙織と馬場智章を続けて聴く方法があります。

アルト主体のビバップ系ジャズと、テナー主体の現代ジャズを比較できるので、「楽器の種類」と「ジャズの方向性」を同時に感じやすい組み合わせです。

ジャズとフュージョンの違いなら、渡辺貞夫と伊東たけし/本田雅人

ジャズを基盤にした渡辺貞夫と、バンドサウンドや電子楽器を積極的に使うT-SQUARE系を比べると、サックスを取り巻く音楽そのものが違うことが分かります。

ジャズとクラシックなら、渡辺貞夫と須川展也が分かりやすい組み合わせです。

発音、フレージング、ビブラート、曲の構成、アドリブの有無などを意識すると、同じサックスという楽器の違った表情が聞こえてきます。

さらに一般的なジャズ奏者と清水靖晃のバッハ作品を比べれば、サックスが特定のジャンル専用ではないことも実感できます。

演奏を聴くときには、次のようなポイントにも耳を向けてみてください。

  • 音の太さ
  • 明るさ、暗さ
  • 息の成分がどの程度聞こえるか
  • 音の立ち上がり方
  • アタックの強さ
  • ビブラート
  • 音量の変化
  • ロングトーンの安定感
  • 速いフレーズの音の粒
  • タンギング
  • フレーズの「歌い方」
  • 高音域の使い方
  • 低音域の響き
  • ジャズでのアドリブ
  • クラシックでの音程、ダイナミクス、アーティキュレーション
  • バンド全体の中でサックスがどこに配置されているか

最初から全部を聞き分けようとしなくても大丈夫です。

まずは「この人は音の入り方が好き」「このテナーは存在感がある」「このアルトはメロディーが頭に残る」という程度で十分。

何人か続けて聴いていると、自分が反応しやすい音の特徴が少しずつ見えてきます。

良い音は一種類ではありません。楽器の種類だけで判断せず、奏者の音色、フレージング、ジャンル、バンドとの関係まで含めて聴き比べると、自分が好きなサックスサウンドを具体化しやすくなります。

初心者向けの代表作品

奏者のプロフィールを読むだけでは、サックスの本当の違いはなかなか分かりません。

名前や経歴をある程度つかんだら、次にやることはシンプルです。

実際に演奏を聴いてみましょう。

初心者が最初に聴きやすい作品として、まず挙げたいのが渡辺貞夫の『California Shower』です。

親しみやすいメロディーを持ち、日本のジャズやクロスオーバーへ入る作品として使いやすい一枚です。

「ジャズを聴かなければ」と身構えるより、まずアルトサックスのメロディーを追ってみてください。

フュージョンならT-SQUAREの『TRUTH』

日本のフュージョンを知る代表的な入口です。

ただし、サックス以外に電子管楽器も使用されているため、「この音はサックスかな?電子管楽器かな?」と意識しながら聴くとさらに面白くなります。

現代ジャズのテナーなら、馬場智章が演奏を担当した映画『BLUE GIANT』オリジナル・サウンドトラックが分かりやすいでしょう。

映画を見た人なら物語の場面と音を結びつけられるため、ジャズを普段聴かない人にも接点があります。

「ジャズのアルバムをいきなり一枚聴くのはハードルが高い」と感じる人でも、映画音楽なら入りやすいかもしれません。

クラシックなら須川展也の『バッハ・シークェンス』

ジャズとは違うサクソフォンの発音やフレーズの作り方を知る入口になります。

その直後に渡辺貞夫や矢野沙織を聴けば、「同じサックスでもここまで違うんだな」と比較しやすくなります。

少し変わったサックス表現に興味が出てきたら、清水靖晃によるJ.S.バッハ『無伴奏チェロ組曲』関連の録音へ進むのも面白いでしょう。

こちらはテナーサックスの一般的なジャズとは違う使い方を知ることができます。

女性奏者では、ユッコ・ミラーの『SAXONIC』『Bloomin’』、寺久保エレナの『North Bird』、小林香織の『Solar』『INTERSECTION』などがあります。

作品名が多いので、全部を一度に聴こうとすると疲れてしまいます。

まずはジャンルごとに一つずつで十分です。

聴きたい方向 最初の作品候補 注目したい点
親しみやすいジャズ 渡辺貞夫『California Shower』 アルトのメロディー、フレーズ
日本のフュージョン T-SQUARE『TRUTH』 サックスと電子管楽器、バンドサウンド
現代ジャズ 『BLUE GIANT』オリジナル・サウンドトラック 馬場智章のテナー、トリオでの役割
クラシック 須川展也『バッハ・シークェンス』 発音、音程、フレージング
実験的・越境的な表現 清水靖晃『CELLO SUITES』関連 テナーで演奏するバッハ

おすすめの進め方は、「奏者名を知る→代表作品を聴く→別ジャンルの奏者と比較する」という順番です。

たとえば渡辺貞夫の『California Shower』を聴いたあと、T-SQUARE『TRUTH』へ進む。

次に馬場智章の『BLUE GIANT』オリジナル・サウンドトラックを聴き、最後に須川展也『バッハ・シークェンス』を聴く。

これだけでも、ジャズ、フュージョン、現代ジャズ、クラシックの違いをかなり広く体験できます。

さらに気に入った奏者がいたら、その人の別作品へ進みます。

渡辺貞夫なら『My Dear Life』『BUT BEAUTIFUL』、ユッコ・ミラーなら『Kind of Pink』『Bloomin’』、馬場智章なら『ELECTRIC RIDER』というように広げていけばよいでしょう。

作品を聴く目的は「おすすめだから買う」ことではなく、この記事で読んだ音色やジャンルの違いを実際の演奏で確かめることです。まず一作品聴き、自分の耳に残った奏者から掘り下げていくと無理なく楽しめます。

CD、LP、配信などの取り扱い状況は販売店や時期によって変化します。価格や在庫も固定ではないため、購入や視聴の際はその時点の販売状況を確認してください。

日本人サックス奏者に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 日本で最も有名なサックス奏者は誰ですか?

A. 客観的な公式ランキングはありません。ただし、渡辺貞夫は1950年代から長く活動し、海外公演や多数の代表作を持つため、日本を代表するサックス奏者として最優先で名前が挙がる人物の一人です。クラシックでは須川展也、フュージョンでは伊東たけし、本田雅人、MALTAなど、ジャンルによって代表的人物は変わります。

Q2. 日本人の女性サックス奏者で有名なのは誰ですか?

A. 矢野沙織、小林香織、寺久保エレナ、ユッコ・ミラーなどが代表例です。矢野沙織はビバップ、寺久保エレナは米国ジャズとの結びつき、小林香織はジャズ・フュージョン・ポップス、ユッコ・ミラーは幅広いメディア活動と、それぞれ方向性が異なります。「女性奏者」という一つの演奏スタイルがあるわけではないため、各奏者のジャンルと音色を比較すると分かりやすいです。

Q3. クラシックで有名な日本人サックス奏者は誰ですか?

A. 須川展也と上野耕平が代表的です。須川展也は国内外での演奏活動に加え、新しいサクソフォン作品の委嘱によるレパートリー開拓でも重要な奏者です。上野耕平は国際コンクールでの実績、ソロ活動、アンサンブル、ラジオなどを通じた発信でも知られています。

Q4. 『BLUE GIANT』で主人公のサックスを演奏しているのは誰ですか?

A. 2023年公開のアニメ映画『BLUE GIANT』で主人公・宮本大のサックス演奏を担当したのは馬場智章です。主にテナーサックス奏者として活動しており、現代ジャズのテナーを聴きたい初心者にも分かりやすい存在です。

Q5. 初心者はどの日本人サックス奏者から聴けばよいですか?

A. 親しみやすいジャズなら渡辺貞夫、フュージョンならT-SQUAREの伊東たけし、クラシックなら須川展也、現代ジャズのテナーなら馬場智章から聴くと違いを比較しやすいでしょう。最終的には複数の奏者を実際に聴き、自分が好きな音色を探していくのがおすすめです。

Q6. T-SQUAREの有名なサックス奏者は誰ですか?

A. 特に重要なのは伊東たけしと本田雅人です。伊東たけしは1977年にTHE SQUAREへ加入し、長くバンドのフロントを担ってきました。本田雅人は1991年から1998年までT-SQUAREに在籍しています。どちらもサックスだけでなく電子管楽器なども使用するため、T-SQUAREの管楽器音をすべて生サックスと考えないことがポイントです。

Q7. MALTAは日本人サックス奏者ですか?

A. はい。MALTAは1949年に鳥取県倉吉市で生まれた日本人サックス奏者です。MALTAはアーティスト名で、東京藝術大学卒業後にバークリー音楽院へ留学し、米国でも活動しました。ジャズ、フュージョンを知るうえで重要なアルト奏者の一人です。

まとめ|好きなサウンドを探そう

日本の有名なサックス奏者は、一つのジャンルだけでは語れません。

ジャズなら渡辺貞夫、矢野沙織、寺久保エレナ、馬場智章など。

フュージョンならMALTA、伊東たけし、本田雅人、勝田一樹など。

クラシックなら須川展也、上野耕平。

そして独自の実験的、越境的な表現では清水靖晃と、それぞれまったく違った魅力があります。

歴史をさらに知りたいなら、土岐英史、松本英彦、宮沢昭などの名手まで広げていくと、日本のジャズやサックスがどのように変化してきたのかも見えてきます。

初心者が意識したいのは、「有名な人を全部覚えること」でも「誰が一番上手いかを決めること」でもありません。

アルトとテナーではどう聞こえ方が変わるのか。

ジャズとクラシックでは発音やフレーズの作り方がどう違うのか。

フュージョンのバンドの中では、サックスや電子管楽器がどんな役割を持つのか。

同じアルトサックスでも、渡辺貞夫、矢野沙織、ユッコ・ミラーでは何が違って聞こえるのか。

そうした違いを一つずつ聴いていくと、「この人の音は好きだな」「このテナーの響きは印象に残るな」と感じる瞬間が出てくるはずです。

最初の4作品として迷ったら、渡辺貞夫『California Shower』、T-SQUARE『TRUTH』、映画『BLUE GIANT』オリジナル・サウンドトラック、須川展也『バッハ・シークェンス』を聴き比べてみてください。ジャズ、フュージョン、現代ジャズ、クラシックを一度に比較しやすい組み合わせです。

良いサックスの音は一種類ではありません。

渡辺貞夫のアルトと馬場智章のテナーが違うのはもちろん、同じ種類のサックスを使う奏者同士でも音楽は大きく変わります。

だからこそ、プロフィールだけを眺めて終わるのではなく、実際の作品を聴いてみることが大切です。

まずはこの記事で気になった奏者を一人選んで、その代表作品を一つ聴いてみてください。

気に入ったら別の作品へ。次は違うジャンルへ。さらにアルトとテナーを比較してみる。

そんなふうに少しずつ広げれば、日本人サックス奏者の世界を無理なく楽しめます。

名前ではなく音からお気に入りを見つけること。

それが、サックス奏者を知る一番自然で面白い入口ですよ。