ドラムを叩いていると、「曲の最初は合っていたのに、最後になると速くなっている」「普通の8ビートは安定するのに、フィルを入れた瞬間だけ走る」と悩むことがあります。
反対に、難しいキックパターンや手足のコンビネーションへ入った途端にテンポが遅くなり、「メトロノームには合わせられるのに、曲になるとドラムがずれる」と感じることもあるでしょう。
こうした問題を改善するときに大切なのは、メトロノームへ無理に合わせ続けることだけではありません。
自分が「どこで」「どちら向きに」ずれているのかを録音で確認し、クリックが少なくなっても自分の中で拍を保てるようにすることが重要です。
毎回クリックに修正してもらう練習から、自分でテンポを作り、クリックを確認材料として使う練習へ段階的に移していくイメージです。
この記事では、ドラムが走る・もたる原因、録音を使った確認方法、クリックを減らす練習、無音区間を使った練習、フィルインや遅いテンポでずれる場合の対策まで順番に解説します。
- ドラムが走る・もたる原因
- 録音からテンポのずれを見つける方法
- クリックなしでも拍を保つための練習方法
- フィルや難しいフレーズでずれる場合の対策
ドラムが走る・もたるとは
ドラムのテンポキープを改善するとき、最初に整理しておきたいのが「テンポが変化すること」と「音のタイミングが前後すること」は同じではないという点です。
ここを混同すると、本来はテンポ自体が安定している演奏まで「走っている」「もたっている」と判断してしまいます。
逆に、個々の音だけを見るとクリック付近へ収まっていても、曲全体では少しずつBPMが上がっている場合もあります。
まずは何がずれているのかを分けて考えましょう。
テンポとタイミングの違い
テンポは、曲全体の拍の速さです。一般的にはBPMで表されます。
同じ速さで始めたはずなのに、演奏を続けるにつれて徐々に速くなっていくなら、曲全体として「走っている」状態を疑います。反対に、演奏を続けるほど遅くなる場合は「もたっている」可能性があります。
一方、タイミングは、その一定のテンポの中で、それぞれの音をどの位置へ置くかという問題です。
たとえば、ハイハットが基準となる位置にあり、スネアだけがわずかに後ろへ聞こえる場合でも、曲全体のBPMが一定なら、それだけで「演奏全体がもたっている」とは言えません。
走る・もたると、前ノリ・後ノリは分けて考えましょう。
意図して拍の少し前や後ろへ音を置いていても、基準となるテンポが一定なら、必ずしもテンポキープの失敗ではありません。問題になるのは、意図しないまま拍そのものが少しずつ前後へ移動し、曲の速さまで変わっていく場合です。
もうひとつ分けて考えたいのが、曲全体のテンポと、手足それぞれの発音位置です。
たとえばハイハットは安定しているのにキックだけ前へ出る、スネアだけ遅れるという場合は、曲全体のテンポキープというより、手足のコーディネーションや個別のタイミングに原因がある可能性があります。
そのため「ドラムがずれる」という悩みがあっても、すべてを同じ練習で直そうとしないことが大切です。
| 起きていること | 確認したいポイント |
|---|---|
| 曲全体が少しずつ速くなる | 内部の拍、興奮、力み、クリックへの依存 |
| 曲全体が少しずつ遅くなる | 技術的な余裕、苦手動作、フォーム |
| フィルだけ速くなる | 拍の細分化、フィル中の時間感覚 |
| 特定の手足だけずれる | コーディネーション、個別の発音位置 |
まず「テンポそのものが変わっているのか」「一部の音だけ前後しているのか」を分けることが、効率よく練習するための第一歩になります。
ドラムのテンポがずれる主な原因
ドラムがずれる原因はひとつではありません。
自分の中の拍が安定していない場合もあれば、細かい音符の分割、技術的な余裕、身体の力み、音量、曲の展開、他のメンバーとの関係などが影響している場合もあります。
そのため、「テンポキープが苦手だから、とにかくメトロノームを鳴らして練習する」と一括りにするより、まず症状を分類した方が練習内容を決めやすくなります。
拍と音符の分割が安定していない
メトロノームを使っているのにドラムのテンポキープが安定しない場合、クリックの音を「追いかける」練習になっている可能性があります。
毎拍クリックが鳴っていると、その瞬間ごとに早い・遅いを修正できます。しかし、クリックが消えた途端にテンポがずれるなら、自分の中だけで拍と拍の間隔を維持する力がまだ十分でないのかもしれません。
たとえば、クリックが鳴ったのを確認してから次の音を置こうとすると、演奏のたびに外側の基準へ反応する形になります。
テンポキープでは、クリックを聞いてから叩くのではなく、次の拍を自分で予測して演奏した結果、クリックと自分の音が重なる状態を目指した方が、自分の中に一定の拍を作りやすくなります。
メトロノームそのものの基本的な考え方や、クリックを使って演奏を観察する方法については、メトロノームの使い方を解説した記事でも整理しています。楽器は異なりますが、一定の拍を確認するという基本的な役割は共通しています。
もうひとつ確認したいのが、拍の中を細かく分けて感じられているかです。
4分音符だけを意識していても、その間にある8分音符、16分音符、3連符の位置が曖昧なら、音符の間隔は不均一になりやすくなります。
特に、普通の8ビートでは問題がないのに16分音符のフィルへ入った瞬間に速くなる場合は、手を速く動かすことより、1拍を4つへ均等に分けられているかを確認する価値があります。
「1・2・3・4」という大きな拍だけでなく、「1 & 2 & 3 & 4 &」のように拍の途中も感じられると、クリックとクリックの間を自分で組み立てやすくなります。
16分音符なら1拍を4等分、3連符なら1拍を3等分します。
大切なのは、音符の数が増えても元の4分音符の位置を動かさないことです。
4分音符から8分音符、3連符、16分音符へ切り替えたときに、音の密度につられて基準となる拍まで速くなるなら、サブディビジョンの練習を優先した方がよいでしょう。
フィルや難しいフレーズで崩れる
普段のビートは安定しているのに、フィルや手足の複雑な組み合わせへ入るとドラムがずれることがあります。
これは、テンポを感じ続けることよりも「次は右手、次は左手、次はタム」と演奏内容を処理することへ意識が集中しやすいためです。
特にフィルでは、それまで一定の音符を刻んでいたハイハットやライドが一時的になくなることがあります。
普段そこをテンポの目印にしている場合、フィルへ入った瞬間に時間感覚が弱くなり、無意識に音を詰めたり、逆に動作が間に合わず遅れたりすることがあります。
この場合、フィルそのものの速さだけを見るのではなく、フィルが終わった直後の1拍目を確認するのがポイントです。
次の小節の1拍目が毎回クリックより早ければ、フィルの途中で時間を縮めている可能性があります。反対に遅ければ、手順や移動が演奏テンポへ追いついていない可能性を確認します。
たとえば、1小節の16分音符フィルを演奏するとき、最後の数打を急いで次のクラッシュへ入っているなら、フィル後の1拍目が早くなることがあります。
反対に、タム間の移動が大きすぎたり、苦手な手順で動作が止まりかけたりすると、1拍目へ戻るのが遅れる場合があります。
難しいフレーズだけでもたる場合は、テンポキープ能力だけの問題とは限りません。現在の技術で余裕を持って演奏できる速度を超えていることも考えられます。
崩れているテンポを何度も繰り返すより、正確に演奏できるところまでBPMを下げてから戻していく方が、音符の間隔と動作を確認しやすくなります。
フレーズを簡略化する方法も有効です。
16分音符が崩れるなら8分音符へ減らし、手順が難しいなら音数を減らして、まず「その1小節を正しい長さで演奏する」ことを優先します。
音数を増やすのは、その時間感覚が安定してからで構いません。
録音やテンポを落とした練習を続けても原因を判断しにくい場合は、実際の演奏を見てもらう方法もあります。フィルの手順や手足のコーディネーションを含めてレッスンを検討する場合は、EYS音楽教室の特徴やレッスンについてまとめたページも参考にできます。
力みや音量でテンポが変わる
サビへ入ったときだけ速くなる、ライブになると普段より走るという場合は、身体の力みや気持ちの高まりも確認したいポイントです。
音量を大きくしようとすると、無意識に「強く叩くこと」と「速く動くこと」が結び付くことがあります。
必要以上にスティックを強く握ったり、腕を大きく振ったりすると、ストロークの間隔も安定しにくくなります。
反対に、技術的に余裕のないフレーズでは、次の音を出す準備が遅れてもたることもあります。
テンポがずれる部分を録音したときは、同時に「その部分だけ音量が大きくなっていないか」「普段より強く握っていないか」「呼吸を止めていないか」も振り返ってみると原因を絞りやすくなります。
特にサビや曲の終盤などは、演奏の高揚感とテンポの上昇が結び付くことがあります。
この場合は、同じBPMのまま弱く叩く、普通に叩く、強く叩くという練習を行い、音量だけを変えてテンポは変えないことを確認します。
「強く叩く=速くする」ではありません。
ダイナミクスを変えても、基準となるBPMは維持できます。音量とテンポを別々にコントロールする意識を持ちましょう。
また、身体の動きが大きすぎる場合は、テンポが上がったときに次の打点へ間に合わなくなることがあります。
速いフレーズほど力を増やすのではなく、必要以上に動作を大きくしていないかも確認してみてください。
遅い曲やバンド演奏でずれる
速い曲では問題がないのに、遅い曲になると急にドラムがずれることがあります。
遅いテンポでは、拍と拍の間隔が長くなります。その分、次のクリックまでの時間を自分で維持しなければなりません。
速いテンポではクリック同士の間隔が短いため小さなずれが目立ちにくくても、遅くすると内部のテンポ感が不安定な部分が見えやすくなります。
低速で早く入ってしまう場合、「次の拍が来るまで待ち切れない」状態になっていることがあります。
反対に、拍と拍の距離を長く感じすぎて、少しずつ後ろへずれていくこともあります。
遅いテンポの練習では、最初から4分音符のクリックだけで難しく感じるなら、8分音符相当に細かく基準を鳴らし、拍の内部を確認しても構いません。
そこで安定したら、4分音符、2拍に1回というようにクリックを減らしていきます。
また、自宅では安定しているのにバンドで演奏すると走ることもあります。
バンドではドラマーだけでなく、ベース、ギター、ボーカルなど複数の演奏者のタイミングが影響し合います。
特にベースとドラムは曲のリズムを支える場面が多いため、リズム隊としてどこで音が重なっているかを確認することも役立ちます。ベース側からリズムを安定させる考え方は、エレキベースの基礎練習を解説した記事でも紹介しています。
誰かひとりだけを原因と決めつけず、バンド全体を録音して確認することが大切です。
たとえばサビへ入る瞬間に全員が少しずつ前へ出れば、結果として曲全体が加速することも考えられます。
逆に、難しいセクションで複数のメンバーが慎重になれば、バンド全体が遅くなることもあります。
「自分だけで叩くと安定するのに、合奏すると走る」という場合は、個人練習とバンド練習を分けて録音すると原因を見つけやすくなります。
バンド練習でクリックを使えるなら、クリックを基準として「どのセクションから全体がずれ始めるか」を確認すると、ドラマーだけの問題なのか、バンド全体の相互作用なのかを切り分けやすくなります。
まず録音でずれる場所を特定する
テンポキープを改善するうえで、最初に行いたいのが録音です。
演奏している最中は、手順、音量、クリック、次の展開など複数のことへ意識を使っています。そのため、自分では「合っていた」と感じても、後から聞くと少しずつ加速していることがあります。
反対に、「かなり走った」と感じていた場所が、実際にはテンポそのものではなく、スネアだけ少し前へ出ていたということも考えられます。
感覚だけで直そうとせず、録音を使って症状を具体化しましょう。
走る・もたるを録音で見分ける
最初から複雑な分析をする必要はありません。スマートフォンなど、手軽に録音できるものから始められます。
まず、同じ条件で一定時間演奏してみましょう。
たとえば、簡単な8ビートだけを録音したものと、「3小節ビート+1小節フィル」を録音したものを比べます。
ほかにも、遅いテンポ、普段よく演奏するテンポ、苦手なフレーズを含むパターンなどを別々に録音すると、条件ごとの差が分かりやすくなります。
| 録音する条件 | 確認したいこと |
|---|---|
| 一定の8ビート | 何も変化がなくても徐々に走る・もたるか |
| 3小節ビート+1小節フィル | フィル後の1拍目が早い・遅いか |
| 遅いテンポ | 拍と拍の間を自力で維持できるか |
| 音量を変えた演奏 | 強く叩いたときだけ速くならないか |
| 苦手なフレーズ | 特定の手順や手足だけ遅れないか |
確認したいのは、曲の最初と最後だけではありません。
4〜8小節ほど演奏したときに少しずつ前へ進んでいないか、フィル後だけ早くなっていないか、サビを想定して音量を上げたときだけ加速していないかなどを聞いてみます。
ハイハット、スネア、キックの関係にも注目してください。
曲全体のテンポは大きく変わっていないのに、キックだけ常に早いなら、足のタイミングを個別に練習した方がよい可能性があります。
テンポのずれは症状ごとに分けて考えると練習しやすくなります。
曲全体が走るのか、フィルだけ走るのか、難しいキックパターンだけ遅れるのか、クリックが消えたときだけずれるのかを確認しましょう。
録音を聞いたら、次のように分類してみてください。
- 曲全体が徐々に速くなる
- 曲全体が徐々に遅くなる
- フィルだけ走る
- フィルだけもたる
- 特定の手足だけずれる
- 難しいフレーズだけずれる
- 遅い曲だけ安定しない
- クリックがなくなるとずれる
- バンド演奏時だけずれる
ここまで分類できると、「テンポキープが苦手」という曖昧な悩みを、具体的な練習課題へ変えられます。
さらに細かく確認できる環境なら、録音した波形とクリックを比較する方法もあります。
ただし、最初から細かな数値を見る必要はありません。
まずは「フィルのあとに早くなる」「後半だけ速くなる」「キックだけ前へ出る」といった、自分の癖をひとつ見つけることが重要です。
録音したら、問題箇所を低いBPMで練習し、同じ条件でもう一度録音します。
録音→原因を特定→部分練習→再録音という流れを作ると、「今日も何となくメトロノームを使った」という練習から抜け出しやすくなります。
同じ条件で再録音することも大切です。
最初の録音と異なるテンポや異なるパターンで比較すると、改善したのか条件が変わっただけなのか判断しにくくなります。
基準となるBPMやフレーズを決め、同条件で比較すると変化を追いやすくなります。
テンポキープを改善する練習法
ずれる場所を確認できたら、次は自分の中で拍を維持する練習へ進みます。
通常のメトロノーム練習が悪いわけではありません。まず基準となる拍をつかむためには有効です。
ただし、毎拍クリックを鳴らす練習だけで終わらず、安定してきたら少しずつクリックの助けを減らすことがポイントになります。
同時に、音符の分割、フィル前後のつながり、遅いテンポ、音量変化など、自分の症状に合わせて練習内容を組み替えていきます。
クリックを減らして拍を保つ
最初は、自分が余裕を持って演奏できるテンポで基本的なビートを叩きます。
クリックを聞いてから反応して叩くのではなく、自分で次の拍を予測し、結果としてクリックと自分の音が重なる状態を目指します。
ここで重要なのは、速さを優先しないことです。
音符の間隔、音量、フォームが崩れるなら、現在のBPMが高すぎる可能性があります。
無理なくコントロールできる速度まで下げ、安定してから少しずつ上げていきましょう。
通常の4分音符クリックで安定してきたら、クリックの数を減らしていきます。
たとえば、120BPMで演奏したいなら、60BPMのクリックを2拍に1回の基準として感じる方法があります。
4/4拍子なら、クリックが1拍目と3拍目にあるような感覚で演奏します。
クリック同士の間隔が広がるため、その間を自分で維持しなければなりません。
さらに、クリックを2拍目・4拍目のバックビートとして捉える練習もあります。
この方法では1拍目をクリックに教えてもらわず、自分の中で小節頭を維持する必要があります。
さらに慣れてきたら、1小節に1回程度まで基準を減らす方法もあります。
クリックから次のクリックまでの時間が長くなるため、ごく小さな加速や減速も表面化しやすくなります。
上級的な段階では数小節に1回までクリックを減らす方法もありますが、最初からそこまで減らす必要はありません。
| 段階 | クリックの使い方 | 目的 |
|---|---|---|
| 1 | 細かくクリックを鳴らす | 基準の拍と音符の位置を確認する |
| 2 | 通常の4分音符 | 一定したビートを作る |
| 3 | 2拍に1回 | クリック間を自分で維持する |
| 4 | 1小節に1回 | 小節全体の時間を自分で保つ |
| 5 | 無音区間を作る | クリックなしのテンポ維持力を確認する |
「少ないクリックで叩けるほど上級」という競争ではありません。正確さを保てない状態でクリックだけ減らしても、何が原因でずれたのか判断しにくくなります。
クリックを減らした途端に大きくずれるなら、ひとつ前の段階へ戻って構いません。
クリックが多い状態で基準を作り、安定したら少なくする。この段階を踏むことで、外から与えられる拍ではなく、自分の中の拍を使う時間を増やせます。
練習中にずれたときも、1拍ごとに慌ててクリックへ戻ろうとしないことが大切です。
毎回「早い、遅い」と大きな修正を繰り返すと、平均では合っていても一打一打の間隔が不安定になることがあります。
まず自分の拍を一定に保ち、その一定した流れをクリックへ近づけていく意識を持ちましょう。
無音区間でテンポ感を鍛える
クリックを減らす練習をさらに進めたものが、途中に無音区間を作る方法です。
たとえば「4小節クリックあり→4小節クリックなし」を繰り返します。
クリックが消えている間も同じテンポで演奏を続け、クリックが再開した瞬間に自分の演奏とどの程度一致しているか確認します。
再開したクリックより自分が前にいるなら、無音区間で走った可能性があります。反対に後ろへずれていれば、その間にもたった可能性があります。
この方法の利点は、クリックへ常に合わせ直すことができない点です。
無音区間では自分の中の拍だけを頼りに演奏する必要があるため、普段はクリックによって隠れていた加速や減速が見つかりやすくなります。
実際に、Rolandの一部電子ドラムには、数小節クリックを鳴らしたあとに数小節クリックを止めてテンポ維持を練習する「QUIET COUNT」が用意されています。仕組みを確認したい場合は、Roland公式マニュアルのQUIET COUNT解説を参照できます。
最初から4小節の無音が難しければ、「3小節クリックあり→1小節無音」など短い空白から始めても構いません。
安定してきたら、クリックが鳴る小節を減らしたり、無音区間を長くしたりします。
大切なのは、クリックが消えた瞬間に不安になって速度を探し直すのではなく、直前まで感じていた拍をそのまま継続することです。
クリックが戻ったときにずれること自体は、練習の失敗ではありません。そのずれによって、自分が無音区間で走りやすいのか、もたりやすいのかを確認できます。
毎回少し前へ出るなら走る傾向、毎回後ろへ残るならもたる傾向が見えてきます。
たとえば4小節無音にすると大きくずれるものの、1小節無音ならほぼ一致するのであれば、短い時間なら維持できていると考えられます。
そこから2小節、3小節と少しずつ自分で維持する時間を延ばしていけば、練習の難度を調整できます。
無音区間では、手足だけでなく身体の中で4分音符を感じ続けることも意識してみてください。
フィルへ入ったときも同様で、叩く音数が変化しても土台の4分音符まで消さないことが重要です。
サブディビジョンとフィルを練習
フィルで走る場合は、フィルだけを何度も練習するより、ビートとの行き来を含めて練習した方が実際の演奏へつながります。
取り組みやすいのは、3小節ビート+1小節フィルを繰り返す方法です。
このとき、フィルの最後の音を成功させることだけに意識を向けず、次の小節の1拍目へ正しい位置で戻れるかを確認してください。
フィル前、フィル中、フィル後をひとつの流れとして録音すると、どこからずれ始めているかが分かりやすくなります。
16分音符のフィルで走るなら、いったん8分音符など少ない音数へ簡略化する方法もあります。
音数が少ない状態で「1小節という時間の長さ」を保ち、安定してから音を増やします。
たとえば、最初は各拍に2打ずつの8分音符で1小節を演奏し、次に16分音符へ増やします。
このとき、音符が倍に増えても1小節の長さそのものは変わりません。
手順だけを暗記するのではなく、各音が拍のどこへ入るのかを確認しましょう。
また、拍の細分化を意識する練習も有効です。
4分音符、8分音符、3連符、16分音符のように音符の密度を変えても、土台となる4分音符の位置は動かさないようにします。
たとえば次のように切り替えます。
- 4分音符
- 8分音符
- 3連符
- 16分音符
- 再び4分音符
最初の4分音符と最後の4分音符でテンポが変わっていないかを確認すると、音符の密度にテンポが引っ張られていないか分かりやすくなります。
16分音符なら「1 e & a」のように1拍を4つへ分け、3連符なら1拍を3つへ均等に分けて感じます。
音符が増えたときに手の速さだけで処理すると、無意識に間隔を詰めてしまうことがあります。
「何回叩くか」だけでなく、「拍のどの位置へ置くか」を意識することが大切です。
フィル中も可能であれば4分音符の基準を身体の中で感じ続けます。
フィルへ入った瞬間に拍そのものを見失うのではなく、その拍の上に細かい音符を配置するイメージです。
遅いテンポが苦手なら、自分が確実にコントロールできる速度から始めてください。
特定のBPMでなければ効果がないわけではありません。重要なのは、正しいフォームと音符の間隔を維持できる速度を選ぶことです。
低速では拍と拍の距離が長いため、難しく感じる場合があります。
その場合は、最初に8分音符相当の細かいクリックを使って拍の内部を確認し、安定したら4分音符へ減らします。
さらに安定したら2拍に1回、1小節に1回と減らし、自分で維持する時間を増やしていきます。
テンポを上げたい場合も、一定BPMで安定してから少しずつ上げます。
上げた途端に音符の間隔やフォームが崩れたら、その速度を無理に反復せず、いったん少し戻して正確さを取り戻しましょう。
テンポアップより、正確な間隔を維持することを優先しましょう。
速く演奏できることと、一定のテンポを維持できることは別です。テンポキープの練習では、最高BPMより「同じBPMを安定して続けられるか」を確認します。
手足それぞれのタイミングが異なる場合は、全体のビートだけでなく個別にも確認します。
キックだけ前へ出るなら、足だけでクリックへ合わせる練習を行い、その後ハイハットやスネアを加えます。
手足を同時に鳴らす場所で打点がばらけるなら、テンポキープだけではなくコーディネーションも確認した方がよいでしょう。
さらに、音量を変える練習も加えると実際の曲へ応用しやすくなります。
同じBPMで弱く演奏する、通常の音量で演奏する、強く演奏するという順番で録音し、強くしたときだけ速くなっていないかを確認します。
練習機器や電子ドラムには、打点が基準より早いか遅いかを確認する機能、一定時間クリックを休止する機能、演奏に合わせてテンポを変化させる練習機能などを備えたものがあります。
たとえばYamaha DTX400シリーズの取扱説明書では、叩いたタイミングの早い・遅いを確認する「グルーブチェック」、クリックに休止区間を作る「メジャーブレーク」、テンポを変化させる「テンポアップ/ダウン」、音価を切り替える「チェンジアップ」などのトレーニング機能が案内されています。機種ごとの搭載内容や操作方法は、Yamaha公式のDTX400K・DTX430K・DTX450K取扱説明書など、使用機種の公式情報で確認してください。
高価な機材がなければテンポキープを練習できないわけではありません。
曲全体の加速や減速、フィル後の変化などを確認するだけなら、手元の録音環境から始めることもできます。
フォームに痛みや身体的な違和感がある場合は、無理に演奏を続けないでください。身体の使い方について個別の判断が必要な場合は、実際の演奏を確認してもらえるレッスン環境も選択肢のひとつです。
よくある質問
最後に、ドラムのテンポキープやリズムキープを練習するときに出やすい疑問をまとめます。
「クリックに合わせているのに上達しない」「フィルだけ速くなる」「遅いテンポだけ安定しない」といった症状は、原因を細かく分けることで対策しやすくなります。
ドラムのテンポキープFAQ
Q1. メトロノームに合わせているのにテンポキープが上達しないのはなぜですか?
A. 毎拍クリックが鳴る練習だけでは、拍と拍の間を自分で維持する時間が少なくなる場合があります。クリックを聞いてから修正するだけではなく、自分で次の拍を予測することが大切です。
通常のクリックで安定したら、2拍に1回、1小節に1回とクリックを減らしたり、途中に無音区間を作ったりして、自分の中だけで拍を保てるか確認してみましょう。
Q2. 走る癖はメトロノームだけで直せますか?
A. メトロノームは基準を確認するために役立ちますが、どこで走っているのか分からないまま反復するより、録音と組み合わせて原因を絞る方が練習内容を決めやすくなります。
曲全体が走るのか、フィル後だけ走るのか、音量を上げた部分だけ走るのかを分けて確認し、それぞれの原因に合わせて練習してください。
Q3. フィルインだけ速くなる場合はどう練習すればよいですか?
A. フィル単体だけでなく、「ビート→フィル→ビート」の流れで練習してみてください。特に確認したいのは、フィル後の1拍目です。
毎回そこが早ければ、フィルの途中で時間を縮めている可能性があります。難しければ音数を減らし、遅いテンポから正しい長さを作り直しましょう。16分音符で走るなら、8分音符へ減らして1小節の長さを保つ方法もあります。
Q4. 遅いテンポほどドラムがずれるのはおかしいですか?
A. おかしくありません。遅いテンポは拍と拍の間隔が長くなるため、自分で維持しなければならない時間も増えます。
難しい場合はクリックを8分音符相当に細かく鳴らして基準を作り、安定してから4分音符、2拍に1回というように徐々にクリック数を減らす方法があります。
Q5. スマートフォンの録音でも走る・もたるを確認できますか?
A. 曲全体が徐々に速くなっているか、フィル後だけ速くなっているか、特定のセクションでテンポが変わっているかといった大きな変化を確認する用途なら活用できます。
より細かな打点位置まで調べたい場合は、録音した波形とクリックを比較できる環境や、タイミング判定機能を備えた機器なども選択肢になります。
Q6. クリックより少し前や後ろに音があると間違いですか?
A. 必ずしも間違いではありません。一定のテンポを保ったまま意図的に音を前後へ置くことと、無意識に曲全体の速さが変化することは別です。
まずは基準となるテンポを維持できる状態を作り、そのうえでタイミングのニュアンスを考えると整理しやすくなります。
Q7. 練習するBPMはいくつがよいですか?
A. 全員に共通する固定のBPMがあるわけではありません。正しいフォームと音符の間隔を維持できる速度を選ぶことが重要です。
現在の速度で崩れるならBPMを下げ、安定してから少しずつ上げてください。速さそのものより、一定した間隔を維持できることを優先しましょう。
Q8. バンド演奏のときだけテンポが走る場合はどうすればよいですか?
A. 個人練習だけでなく、バンド全体を録音して確認してください。ドラマーだけではなく、他のパートとの相互作用や、曲の盛り上がり、セクションチェンジなどが影響している可能性もあります。
曲の開始付近と終了付近、サビ、フィル、展開の切り替わりなどを比較し、どこから全体のテンポが変化しているかを確認すると原因を絞りやすくなります。
まとめ
ドラムのテンポキープを改善するときは、ただメトロノームへ合わせ続けるのではなく、自分がどこで走り、どこでもたるのかを特定することが出発点です。
まず演奏を録音し、曲全体、フィル、難しいフレーズ、サビ、特定の手足など、ずれが起きる場所を細かく分けてみてください。
曲全体が徐々に速くなる場合と、フィルだけ速くなる場合では、確認すべき原因も練習方法も異なります。
通常のビートでは安定するのにフィルだけ走るなら、フィル前後を含めて録音し、終了後の1拍目を確認します。
難しいフレーズだけもたるなら、テンポキープだけではなく、そのフレーズを余裕を持って演奏できる速度かどうかも確認しましょう。
基本のクリックで安定したら、2拍に1回、1小節に1回とクリックを減らし、さらに無音区間を作ることで、自分の中だけで拍を維持できるか確認できます。
クリックが再開したときに自分が前へ出ていれば無音区間で走っている可能性があり、後ろへ残っていればもたっている可能性があります。
フィルで走るなら、フィル単体だけではなく「ビート→フィル→ビート」で練習し、次の1拍目へ正しい位置で戻れるかを見ることが重要です。
16分音符や3連符でずれる場合は、音符の数だけを意識せず、1拍を均等に分割するサブディビジョンも確認してください。
遅いテンポが苦手なら、最初は細かいクリックで拍の内部を確認し、安定してからクリックを減らしていく方法があります。
音量を上げると走る場合は、同じBPMのまま強弱だけを変える練習を行い、音量とテンポを別々にコントロールできるか確認しましょう。
録音→原因を見つける→問題箇所を練習する→もう一度録音する。
この流れを繰り返しながら、少しずつクリックに頼る時間を減らしていくことが、安定したドラムのリズムキープにつながります。
速く叩けることと、一定のテンポを保てることは別の力です。
最高速度だけを追いかけず、「同じ速さを自分で保てているか」「音符の密度や音量が変わっても基準となる拍が動いていないか」を確認しながら練習していきましょう。

