George Michaelの「Careless Whisper」と聞くと、まず思い浮かぶのが、あの有名なサックスフレーズですよね。
サックスを始めた人なら、「いつか吹いてみたい」と思う曲のひとつかもしれません。一方で、実際に楽譜を見たり原曲に合わせて吹こうとしたりすると、「思ったより速い」「高音が安定しない」「音は合っているのに、なぜか原曲っぽくならない」と戸惑いやすい曲でもあります。
「Careless Whisperのサックスは初心者でも吹けるのかな」「難易度はどのくらい?」「イントロだけなら挑戦できる?」と気になっている人も多いでしょう。
結論から言うと、有名なフレーズの音を追って形にするところまでなら、初級後半から中級くらいでも十分に挑戦できます。
ただし、原曲のような滑らかな音色、息の流れ、高音の安定感、ビブラート、フレーズの抑揚まで再現しようとすると難易度は一気に上がります。
Careless Whisperは「音符そのものが極端に難しい曲」というより、「原曲らしく聴かせるのが難しい曲」と考えると分かりやすいですよ。
逆に言えば、最初から原曲の完成度を目指さなければ、初心者でも段階を踏んで楽しめます。テンポを落とし、難しい部分だけを分解し、音程とリズムを安定させてから表現を加える。この順序で練習すると、何を直せばよいのかがかなり見えやすくなります。
この記事では、Careless Whisperのサックス難易度を段階別に整理しながら、アルトとテナーの違い、初心者がつまずきやすい場所、練習の順序、楽譜選びまで詳しく解説していきます。
- Careless Whisperのサックス難易度の目安
- アルトとテナーで演奏するときの違い
- 初心者がつまずきやすい部分と練習方法
- 自分に合った楽譜を選ぶときのポイント
Careless Whisperのサックス難易度
Careless Whisperの難易度は、「何をもって吹けたとするか」でかなり変わります。
有名なメロディーを正しい音程で吹ければ十分なのか、原曲テンポで滑らかにつなぎたいのか、それともSteve Gregoryの演奏に近い音色やニュアンスまで目指すのか。この違いによって、必要になる技術は大きく変わります。
そのため、「初心者向け」「中級」といった一つの言葉だけで難易度を決めてしまうと、少し分かりにくいんですね。
| 目標 | 難易度の目安 | 主に必要なこと |
|---|---|---|
| メインフレーズの音を追う | 初級後半〜中級 | 基本運指、オクターブキー、ゆっくりしたテンポでの演奏 |
| 原曲テンポで滑らかに吹く | 中級 | 速い運指、高音の安定、息のコントロール、リズム |
| 原曲らしい表現まで再現する | 中級以上 | 音色、ビブラート、強弱、フレージング、安定したロングトーン |
難易度の目安
メインフレーズの音を追うだけなら初級後半〜中級、原曲テンポで滑らかに吹くなら中級、原曲らしい音色や表現まで再現するなら中級以上が一つの目安です。
まずは「原曲を完全コピーする」のではなく、「有名なフレーズをそれらしく吹ける状態」を最初の目標にすると取り組みやすくなります。
音を追うだけなら初級後半から
Careless Whisperのサックスフレーズは、一度聴けば覚えやすい非常に印象的なメロディーです。
メインとなるフレーズには反復もあるので、基本的な運指がある程度できる人なら、テンポを落として練習することで「Careless Whisperだと分かる演奏」までは比較的目指しやすいでしょう。
市販されている楽譜を見ても、Intermediateや中級とされる編曲が複数あります。一方でEasy to Intermediateのように、取り組みやすく調整されたアレンジもあります。
つまり、上級者でなければ手を出せない曲ではありません。
ただし、「サックスを買ったばかりで、まだどのキーを押せばどの音になるのか迷う」という段階では、有名なイントロだけでも難しく感じる可能性があります。
特に必要になるのは、基本運指に加えて、オクターブキーを使った音域移動、F#やC#などの運指、音を滑らかにつなぐスラーです。
ここで大切なのは、最初から速く吹けることではありません。
たとえば冒頭の上行フレーズで指が止まるなら、最初からフレーズ全体を何度も通すより、2〜3音だけを取り出します。
「この2音なら間違えない」という単位を作り、それを3音、4音へ増やしていくイメージですね。
初心者は速い部分で失敗すると、「もっと指を速く動かさなければ」と考えやすいものです。ただ、実際には速さそのものより、次の音へ移る運指の順序が身体に定着しているかが重要です。
ゆっくりしたテンポでも間違える場所は、速くするとさらに崩れやすくなります。反対に、遅い速度で無意識に近い状態まで正確に動かせるようになれば、少しずつテンポを上げやすくなります。
「初心者でも吹ける」という言葉は、最初から原曲どおり演奏できるという意味ではありません。簡略版やメインリフだけから始めれば、初心者でも段階的に挑戦しやすいという意味で考えるとよいでしょう。
イントロだけを目標にするのも十分ありです。
Careless Whisperは有名なフレーズだけでも曲として認識されやすいので、短い範囲を完成させるだけでも達成感があります。最初からフルコーラスを仕上げようとして挫折するより、「まずイントロ」「次にメインフレーズ」というように範囲を広げる方が続けやすいですよ。
原曲らしい表現は中級以上
Careless Whisperの難しさが本当にはっきりしてくるのは、正しい音を並べられるようになってからです。
原曲を聴いてみると、単に音程とリズムが合っているだけではありません。
長い音の伸び方、息の流れ、ビブラート、強弱、高音への入り方、音の抜き方など、細かな表現が重なって独特の雰囲気を作っています。
そのため、譜面どおりに吹いているのに「なぜかCareless Whisperっぽくならない」と感じることがあります。
これはかなり自然なことです。
メロディーを正しく吹く技術と、原曲らしく聴かせる技術は別物です。
たとえば、音程が全部合っていても、長い音をすべて同じ音量でまっすぐ伸ばしていると、フレーズが平坦に聞こえやすくなります。
反対に、ビブラートを強くかけすぎたり、すべての音を強いタンギングで区切ったりしても、原曲の滑らかさから離れてしまいます。
特に重要になるのが、安定したロングトーンと息のコントロールです。
長い音が途中で細くなったり、音程が上ずったりすると、その後の音が合っていてもフレーズ全体が落ち着かなく聞こえます。
まずは「きれいに長く伸ばせる音」を作り、その上に強弱やビブラートを足していく方が練習しやすいでしょう。
また、原曲らしさを意識するときに、表現を一度に全部追加しないことも大切です。
おすすめは、音程、リズム、スラーとタンギング、息、強弱、ビブラート、音の立ち上がりと抜き方という順番です。
最初から「運指しながら、息を意識して、ビブラートをかけて、強弱も付けて……」と全部考えると、かなり忙しいですよね。
まず一つを安定させ、次の要素を重ねる。そうすると、自分の演奏のどこが原曲と違うのかも判断しやすくなります。
「吹ける」と「原曲らしく吹ける」は分けて考える
正しい音程と大まかなリズムでメロディーを演奏することは初級後半〜中級でも目指せます。一方、音色、息、ビブラート、細かなアーティキュレーションまで再現しようとすると、必要な技術は大幅に増えます。
原曲のサックスと録音方法
Careless Whisperを原曲らしく吹きたいなら、演奏技術だけでなく、オリジナル録音がどのように作られたのかも知っておくと理解しやすくなります。
「正しい音を吹いているのに、自分のテナーは原曲と全然違って聞こえる」と感じても、すぐに吹き方や楽器を疑う必要はありません。
原曲の特徴的なサックス音には、奏者の技術だけでなく録音方法も関係しているからです。
Steve Gregoryのテナー演奏
Careless Whisperの有名なオリジナル録音でサックスを演奏したのは、英国のセッション・サックス奏者Steve Gregoryです。
そして、使用された楽器の種類はテナーサックスです。
音が明るく感じられることからアルトサックスだと思われることもありますが、オリジナル録音自体はテナーサックスによる演奏です。
George Michaelはこのサックスパートの音色やニュアンスに強くこだわり、複数の奏者が録音を試した末にSteve Gregoryの演奏が採用されたとされています。
採用までに試した奏者の正確な人数については資料によって違いがあるため、「複数の奏者を試した末にSteve Gregoryの演奏が採用された」と理解しておくのが確実です。
なお、Careless WhisperはGeorge Michaelのデビュー・ソロシングルとして1984年7月23日に発売されたことが公式サイトでも案内されています。(出典:George Michael Official「CARELESS WHISPER AT 40」)
原曲のコンサートキーはD minorです。
ここでサックス初心者が混乱しやすいのが、「原曲はD minorなのに、テナー譜を見るとE minor、アルト譜を見るとB minorになっている」という点です。
これは間違いではなく、サックスが移調楽器だからです。
B♭管のテナーサックスで記譜上のCを吹くと、実際に鳴る音はコンサートピッチのB♭になります。E♭管のアルトサックスで記譜上のCを吹くと、実際にはE♭が鳴ります。ヤマハの楽器解説でも、テナーとアルトのこうした移調関係が説明されています。(出典:Yamaha Corporation「The saxophone is a transposing instrument」)
| 楽器 | 原曲伴奏に合わせる一般的な記譜キー |
|---|---|
| コンサートピッチ | D minor |
| B♭テナーサックス | E minor |
| E♭アルトサックス | B minor |
そのため、原曲音源や原曲キーのカラオケに合わせて吹くなら、自分の楽器用に正しく移調された譜面を選ぶ必要があります。
一方、一人で練習するだけなら、必ず原曲キーで吹かなければならないわけではありません。初心者向けにキーやオクターブを変更したアレンジを利用する方法もあります。
市販の楽譜は、初心者向けにキーやオクターブが変更されている場合があります。「Careless Whisperの楽譜」と書かれているだけで判断せず、自分の楽器用か、原曲キーの伴奏に対応しているかを確認してください。
テープ処理が音色に与えた影響
Careless Whisperの原曲サックスを語るうえで重要なのが、録音時のテープ速度の処理です。
Steve Gregoryが使用していた古いテナーサックスには、演奏上必要になる高いF#を通常のキー操作で出すためのhigh F#キーが付いていませんでした。
現在でも、high F#キーの有無はサックスの仕様によって異なります。そのため「テナーサックスなら必ずhigh F#キーがある」と考えない方がよいでしょう。
high F#キーがない場合でも、サックスそのものが高いF#を出せなくなるわけではなく、代替運指などを利用する方法があります。
ただ、Careless Whisperの録音では、求められていた滑らかな音のつながりを実現するため、別の方法が採られました。
伴奏を半音下げた状態でサックスを録音し、その後に通常の高さへ戻す方法です。
この処理では、単純に音程だけが変わるわけではありません。テープの再生速度を変えることで、音色の印象も変わります。
そのため、現在のテナーサックスで原曲と同じ高さの音を正確に演奏しても、「何か原曲より暗い」「原曲ほど独特の明るさがない」と感じる可能性があります。
これは必ずしも演奏技術の問題ではありません。
原曲の音は、Steve Gregory本人のフレージング、使用楽器、息やアンブシュア、録音環境、そしてテープ速度の処理まで含めて成立しているからです。
ここは、Careless Whisperを練習するときに知っておくとかなり気が楽になるポイントです。
原曲と音色が違うたびに「リードが悪いのかな」「マウスピースを替えれば同じ音になるかな」と考えてしまうと、機材選びばかりに意識が向いてしまいます。
今回確認できる情報だけでは、Steve Gregoryが録音時に使用した正確なマウスピースやリードのメーカー・型番までは特定できません。
したがって、「このマウスピースを使えばCareless Whisperの音になる」「このリードなら原曲と同じになる」と断定することはできません。
初心者の段階では機材変更より、息、アンブシュア、ロングトーン、ビブラートを安定させる方が優先度は高いでしょう。
原曲完全コピーを目指す場合でも、「生のテナーサックスで出せる音」と「録音処理まで含めた原曲の音」を分けて考えることが大切です。まずは自分の楽器で、安定した音色と自然なフレージングを作ることを目標にすると練習しやすくなります。
アルトとテナーはどちらが吹きやすい?
「Careless Whisperを吹くなら、アルトとテナーのどちらが簡単?」という疑問もよく出てきます。
結論としては、どちらが簡単かを一概に決めることはできません。
原曲と同じ楽器はテナーですが、アルト向けの初心者教材や楽譜も多くあります。すでにどちらかを持っているなら、Careless Whisperを吹くためだけに買い替える必要はありません。
むしろ重要なのは、今使っているサックスに合った楽譜を選び、その楽器の音域や運指で無理のない編曲から始めることです。
| 比較 | アルトサックス | テナーサックス |
|---|---|---|
| 原曲と同じ楽器か | いいえ | はい |
| 原曲キー伴奏用の一般的な記譜キー | B minor | E minor |
| 教材 | 初心者向けを含め多数 | 初心者向けを含め多数 |
| 注意点 | アルト用譜面を選ぶ | 高いF#が難所になる場合がある |
アルトサックスで吹く場合
アルトサックスでもCareless Whisperは問題なく演奏できます。
原曲キーの伴奏に合わせる一般的なアルトサックス譜では、B minorで記譜されます。
F#やC#を使う調なので、これらの運指を迷わず押さえられるようにしておくと練習が進めやすくなります。
有名なフレーズでは高音域まで上がるアレンジもあり、冒頭の上行部分はアルトでも初心者がつまずきやすい場所です。
ただ、「アルトだからCareless Whisperを原曲らしく吹けない」ということではありません。
オリジナル録音と同じ楽器ではありませんが、メロディー、リズム、フレージング、ビブラートといった曲の特徴は十分に練習できます。
アルト用の教材や楽譜には、初心者向け教材として音域やリズムを調整したものもあります。原曲に近い難しい編曲しか選択肢がないわけではないので、自分のレベルに合わせやすいのも利点です。
「せっかくCareless Whisperを吹くならテナーを買った方がいいのかな」と考える人もいるかもしれません。
ただ、すでにアルトを練習しているなら、まずはその楽器で始めて大丈夫ですよ。
楽器を替えると、息の感覚や音域、楽器そのものの取り回しにも慣れる必要があります。曲を一つ吹くためだけに新しい楽器へ替えるより、慣れているアルトで運指、息、フレージングを整える方が練習へ集中しやすいでしょう。
原曲音源と一緒に吹く場合だけは、アルト用に正しく移調された譜面かどうかを必ず確認してください。
もし楽譜を見ながら吹いたときに「自分の音だけ伴奏から大きく外れて聞こえる」という場合は、演奏ミスだけでなく、楽譜の移調やキーが合っているかも確認する必要があります。
テナーサックスで吹く場合
オリジナル録音と同じ楽器の種類で吹きたいならテナーサックスです。
原曲キーの伴奏に合わせる一般的なテナー譜ではE minorになります。
原曲と同じ種類の楽器を使えるという魅力はありますが、「テナーなら自動的に原曲と同じ音になる」というわけではありません。
前述したように原曲には録音処理があり、さらに奏者による音色やフレージングの違いもあります。
テナーの場合に特に注意したいのが高いF#です。
high F#キーを備えたモデルなら、そのキーを利用できる場合があります。ただし、すべてのテナーサックスに付いているわけではありません。
high F#キーがない場合でも演奏方法はあります。
- 代替運指を使う
- 1オクターブ下げた初心者向けアレンジを使う
- 最高音を変更した編曲を選ぶ
特に初心者の場合は、「原曲と完全に同じ音域で吹くこと」より「音が途切れず、フレーズとして完成すること」を優先した方がよい場合があります。
高い音を無理に出そうとしてアンブシュアを強く締めると、その音だけ出ても前後がつながらなかったり、音程が上ずったりしやすいからです。
まず低いオクターブのアレンジで曲の流れを覚え、余裕が出てから原曲に近い音域へ移る方法も十分現実的です。
原曲のSteve Gregory自身もhigh F#キーを備えていないテナーを使用していましたが、録音では伴奏を半音下げる方法が採られました。
ですから、「high F#キーがないからCareless Whisperは演奏できない」と決めつける必要はありません。
アルトかテナーかで迷うなら、まず今持っている楽器で挑戦して問題ありません。原曲と合わせたい場合は、自分の楽器用に移調された楽譜を選ぶことの方が重要です。
初心者がつまずきやすいポイント
Careless Whisperは、メインのリフを覚えるだけなら比較的取り組みやすい一方、初心者が引っかかりやすい場所がはっきりしています。
特に重要なのが、冒頭の速い上行フレーズ、高音、息、ビブラートとフレージングです。
ここでありがちなのが、曲を最初から最後まで繰り返し吹き続ける練習です。
もちろん通して演奏する練習も必要ですが、同じ場所で毎回つまずくなら、そこだけを取り出した方が効率よく改善できます。
全部を一度に直そうとせず、「今日は速い運指」「次は高音」「最後に表現」というように課題を切り分けてみてください。
冒頭の速い上行フレーズ
最初につまずきやすいのが、メインフレーズへ入る前に音が素早く上へ駆け上がる部分です。
ここでは複数の音を短時間で切り替えながら、高音へ向かって滑らかにつなぐ必要があります。
原曲を聴いていると軽々と演奏しているように感じますが、初心者がいきなり同じ速度で吹こうとすると、指と息のタイミングがずれやすくなります。
速い部分ほど、まず遅くしてください。
上行部分だけを曲から切り離し、一定の遅いテンポで音を均等に並べます。
ここで重要なのは、「テンポを落としたのだから適当に吹いてよい」という意味ではないことです。
遅いテンポだからこそ、一音ごとに指が同時に切り替わっているか、音と音の間に不要な隙間がないかを確認できます。
途中で音が抜けるなら、その前後2〜3音だけを取り出して往復します。
たとえば3音の並びで毎回2音目から3音目へ移るときに崩れるなら、フレーズ全体ではなく、その2音だけを何度も往復します。
安定したら1音前を追加し、その次に1音後ろを追加します。
大切なのは「何度も最初から最後まで吹くこと」ではなく、失敗する場所を小さく切り出して正しく反復することです。
指が安定したら、少しずつテンポを上げていきます。
速くした瞬間に崩れるなら、その速度はまだ早すぎます。
一段階戻して、正確に吹ける速度からやり直しましょう。
メトロノームを使う場合も、一気に何十BPMも上げるより、小さな幅で上げる方が「どの速度から崩れるのか」を把握しやすくなります。
また、指だけを動かす練習も役立ちます。
息や音色を同時に考えると混乱する場合は、一度楽器を構えた状態で運指だけをゆっくり確認します。その後、実際に音を出して指と息を合わせます。
高音へ向かうときに口を強く締めすぎるのもよくある失敗です。
高い音だからといってリードを強く噛むと、音が細くなったり、音程が高くなったりします。
顎だけで無理に調整するのではなく、息を安定して送りながら運指をそろえることを意識してください。
速いフレーズは「速く吹く練習」より先に「遅くても一度も間違えない練習」を作ることが大切です。正確さを維持したままテンポを上げる方が、結果的に原曲へ近づきやすくなります。
高音と息を安定させるコツ
Careless Whisperでは、高音の響きがフレーズ全体の印象を大きく左右します。
初心者の場合、高音になると「音が出ない」「裏返る」「音が細い」「キンキンする」「音程が高くなる」といった問題が起きやすくなります。
曲の中で何度も失敗する高音があるなら、その音だけを切り離してロングトーンしてみてください。
最初から長時間伸ばす必要はありません。
まずは安定した息でまっすぐ鳴らし、音の立ち上がりから終わりまで音色が急に変わらないよう意識します。
チューナーを使えるなら、音程が大きく上がったり下がったりしていないかも確認します。
ここでチューナーの針を完全に中央へ固定しようとして、口だけで細かく音程を動かし続けるのはおすすめできません。
まず息を一定に流し、安定した状態を作ったうえで音程の傾向を見る方が分かりやすいですよ。
次に、直前の音からスラーで高音へ移動します。
単音ならきれいに出せても、前の音からつなぐと裏返ることは珍しくありません。
曲では単独の高音を鳴らす能力より、前後の音から自然につなげる能力の方が重要になります。
そのため、2音、3音という小さな単位で練習しましょう。
高音が出にくいときに、強く噛んで無理やり音を押し出そうとすると、音程が高くなったり音色が細くなったりしやすくなります。
アンブシュアは必要ですが、顎でリードを押さえ込むことだけに頼らず、安定した息を送り続けることがポイントです。
息についても同じです。
原曲のフレーズは滑らかにつながって聞こえるため、細かく息を止めてしまうと雰囲気が失われます。
ただし、初心者が最初から長いフレーズを一息で吹く必要はありません。
無理に息を我慢すると、後半で息が足りなくなり、音量が落ち、音程も音色も崩れやすくなります。
まずは自分が安定して息を吸える位置を決めてください。
「ここでブレスすると原曲と違う」と気になるかもしれませんが、最初は完成度より安定した演奏を優先して大丈夫です。
フレーズが安定してきたら、少しずつブレス位置を減らして原曲の流れへ近づけていけばよいでしょう。
ロングトーンでは、同じ音量で伸ばす練習だけでなく、音を伸ばしながら少し大きくし、そこから小さくする練習も有効です。
このとき音量を変えても音程が大きく変わらなければ、Careless Whisperで必要になる長い音のコントロールにもつながります。
高音や息の使い方は、自分では「口を締めすぎているのか」「息の流れが足りないのか」を切り分けにくいこともあります。独学で原因を判断しにくい場合は、サックスをマンツーマンで学べるEYS音楽教室のように、実際の演奏を見てもらいながら確認する方法もあります。
ロングトーンは「何秒伸ばせたか」を競う練習ではありません。音程、音色、息の流れを安定させることを優先し、短い時間でも質のよい音を作ることから始めましょう。
ビブラートとフレージング
正しい音程とリズムで吹けるようになったら、次に意識したいのがビブラートとフレージングです。
Careless Whisperでは長く伸ばす音が多く、完全にまっすぐ伸ばすだけでは原曲の印象から離れやすくなります。
一方で、最初から大きくビブラートをかければよいわけでもありません。
ビブラートが大きすぎたり速さが一定でなかったりすると、かえって不自然に聞こえます。
まずビブラートなしの状態で、音程と息を安定させましょう。
その後、一定の周期で小さく揺らす練習を行います。
長い音に入った瞬間から最大のビブラートをかけるのではなく、最初は比較的まっすぐ音を出し、後半から自然に揺らす方法もあります。
原曲を聴きながら、どの音にどの程度の揺れが付いているか比べると分かりやすくなります。
大切なのは、「ビブラートをかけたかどうか」ではなく、そのフレーズの流れの中で自然に聞こえるかです。
フレージングでは、すべての音を同じ強さで吹かないことも重要です。
滑らかにつなぐ場所、少し輪郭を出す場所、音量を膨らませる場所、静かに抜く場所を分けていきます。
たとえば長く伸ばす音でも、最初から最後まで完全に同じ音量にすると平坦になりやすいですよね。
少し膨らませてから収めるだけでも、フレーズに方向が生まれます。
タンギングについても同様です。
すべての音を明確に「タ、タ、タ」と区切ると、Careless Whisperの滑らかさから離れやすくなります。
反対に、何でもスラーでつなげればよいわけでもありません。
まず楽譜に指定されたアーティキュレーションを確認し、そのうえで原曲を聴きながら音の輪郭を比べていくとよいでしょう。
表現を付けるおすすめの順番は、次の通りです。
- 正しい音程
- 正しいリズム
- スラー/タンギング
- 安定した息
- 強弱
- ビブラート
- 音の立ち上がり・抜き方
- 原曲を参考に細かなニュアンスを調整
表現は最後に足すものと考えると、練習がかなり整理しやすくなります。
「音は全部合っているのに雰囲気が出ない」と感じたら、楽器やマウスピースを疑う前に、息が途中で止まっていないか、タンギングが強すぎないか、長い音が平坦になっていないかを確認してみてください。
自分の演奏を録音して聞くのも効果的です。
吹いている最中は指や息へ意識が向くので、自分では強弱やビブラートの違いに気づきにくいことがあります。
録音なら、原曲と自分の演奏を交互に聞きながら、「この音は入り方が強い」「ここで息が切れている」「ビブラートが早く始まりすぎている」と具体的に比較できます。
録音で違いを見つけても、ビブラートの深さやフレーズの抑揚をどう直せばよいか分かりにくい場合があります。そうした表現面まで具体的に見てもらいたいときは、EYS音楽教室のマンツーマンレッスンのように、自分の演奏に合わせて確認できる方法もあります。
初心者が練習する場合の順序
Careless Whisperを効率よく練習するなら、最初から一曲を通して吹き続けるより、課題を順番に分けるのがおすすめです。
難しい曲ほど、「何となく何回も吹く」より「今日直すことを一つ決める」方が進みやすくなります。
最初に確認したいのは、自分の楽器に合った楽譜かどうかです。
アルトならアルト用、テナーならテナー用を選び、原曲の伴奏と合わせる場合は原曲キー対応か確認してください。
次に、有名なメインフレーズの音と運指だけを覚えます。
この段階ではビブラートや細かな強弱まで気にしなくて構いません。
まずは「次の音は何だろう」と考えなくても指が動く状態を目指します。
その後、冒頭の速い上行部分だけを取り出して練習します。
2〜3音ずつ確認し、ゆっくりしたテンポで均等に吹ける状態を作ります。
部分練習ができたら、原曲より遅いテンポでフレーズ全体をつなぎます。
メトロノームを使えるなら、最初は無理なく正確に吹けるテンポを設定してください。
Careless Whisperには、市販楽譜によって約76、78、88、100、104 BPMなど複数のテンポ表記が見られます。
これは編曲や拍の捉え方、演奏例などが同一ではないためです。
そのため、「Careless Whisperは絶対に○○BPM」と一つの数字だけで考えない方が正確です。
自分が使っている楽譜や伴奏音源のテンポを基準にしてください。
たとえば使用する伴奏が速くてまったく指が追いつかないなら、そのテンポを基準に練習開始する必要はありません。
正確に吹けるところまで下げて、そこから少しずつ近づけます。
高音が不安定なら、この段階で曲から切り離してロングトーンを行います。
息も同様で、長いフレーズの途中で苦しくなるなら、最初はブレス位置を増やして構いません。
音程、運指、高音、息がある程度安定したら、原曲テンポ付近まで少しずつ速度を上げていきます。
最後にビブラート、強弱、音の入り方や終わり方を加えます。
仕上げとして、自分の演奏を録音して原曲や模範演奏と聴き比べると、吹いている最中には気づきにくい違いも見つけやすくなります。
初心者向けの練習順序
- アルト用・テナー用など自分の楽器に合った楽譜を選ぶ
- 原曲と合わせるなら原曲キー対応か確認する
- メインフレーズの音と運指を覚える
- 冒頭の速い部分だけを分解して練習する
- 遅いテンポで全体をつなぐ
- 高音をロングトーンで安定させる
- 息を一定に流す
- テンポを少しずつ上げる
- 強弱やビブラートなどの表現を加える
- 原曲や模範演奏と録音を聴き比べる
テンポを落とす練習は、単に「初心者だからゆっくり吹く」という意味ではありません。
間違った運指を速いまま何度も繰り返して癖にするのを防ぎ、音と音のつながりや息の量、高音の音程まで確認するための練習です。
正確に吹ける速度を作ってから少しずつ上げた方が、結果的には原曲テンポへ近づきやすくなります。
練習中に「昨日は吹けたのに今日はうまくいかない」という日があっても珍しくありません。
そういう日は無理にテンポを上げず、もう一度ゆっくりした速度へ戻ります。
速く吹けた回数より、正確に吹ける回数を増やす方が大切です。
また、同じフレーズを長時間繰り返して集中力が落ちると、間違った動きを反復しやすくなります。
冒頭の運指、高音のロングトーン、フレーズ全体というように練習内容を分けると、気分も切り替えやすいですよ。
「今日は原曲テンポまで上げる」ではなく、「今日は冒頭3音を安定させる」「今日は高音を裏返らずにつなぐ」のように目標を小さくすると、進歩を確認しやすくなります。
Careless Whisperの楽譜選び
Careless Whisperは非常に有名な曲なので、アルト用、テナー用、初心者向け、イントロのみ、フルソロなど、さまざまな楽譜があります。
選択肢が多いのはうれしい一方で、「Careless Whisperの楽譜ならどれでも同じ」と考えると失敗しやすいので注意してください。
同じ曲名でも、楽器、移調、音域、オクターブ、収録範囲、難易度が違うからです。
まず確認したいのが、アルト用かテナー用かです。
原曲キーの伴奏に合わせるなら、一般的にはアルトがB minor、テナーがE minorになります。
ただし、初心者向けアレンジではキーやオクターブが変更されていることがあります。
そのため、楽譜の商品ページで「Alto Saxophone」「Tenor Saxophone」といった対象楽器だけでなく、原曲キー対応かどうかも確認してください。
次に、どこまで収録されているかを確認します。
Careless Whisperの楽譜には、有名なイントロだけを収録したものもあります。
「あのサックスリフだけ吹きたい」という人ならイントロ譜でも問題ありません。
一方、フルコーラスを吹きたい人がイントロ1ページだけの商品を選んでしまうと、目的に合いません。
タイトルだけでは判断できない場合もあるので、ページ数や商品説明、プレビューがあれば確認しましょう。
難易度表示もチェックしておきたいところです。
確認できる楽譜にはIntermediate、中級、Easy to Intermediateなど複数のレベルがあります。
同じ曲でも、編曲者によって音域、オクターブ、装飾音、リズムの細かさが変わるため、難易度表示はあくまで目安です。
| 確認する項目 | チェックする理由 |
|---|---|
| アルト用/テナー用 | 移調が異なるため |
| 原曲キー対応 | 原曲音源や伴奏と合わせるため |
| イントロのみ/フルコーラス | 収録範囲の購入ミスを防ぐため |
| 難易度 | 自分の演奏レベルに合わせるため |
| 音域・オクターブ | 高音が無理なく演奏できるか確認するため |
| 伴奏音源 | 曲として練習しやすくするため |
| テンポ変更機能 | 遅いテンポから段階的に練習するため |
| 音名・運指表示 | 譜読みに慣れていない初心者を補助するため |
楽器や難易度などの条件から候補を探す方法を確認したい場合は、ヤマハ「ぷりんと楽譜」の探し方・使い方も参考になります。実際に選ぶときは、目的の曲・楽器・編曲が販売されているかを商品ページで確認してください。
Hal LeonardにはCareless Whisperを収録したサックス曲集「Popular Sax Solos」や、「The Complete Saxophone Player – Book 2」があります。
Musicnotesにはアルトサックス用のイントロ譜があり、イントロのみの商品も確認されています。
Sheet Music Plusではアルト、テナーともIntermediateに分類された編曲があり、TomplayにはEasy to IntermediateやIntermediateなど複数レベルの編曲があります。
Piascoreにもアルト、テナー向けの中級表記の編曲があります。
ここで注意したいのは、「Intermediateと書いてあるから全部同じ難しさ」というわけではないことです。
最高音が違ったり、装飾が省略されていたり、リズムが簡略化されていたりするため、同じ難易度表記でも演奏感は変わります。
初心者なら、難易度表示だけでなく実際の譜面サンプルも確認できると安心です。
「冒頭の高音がまだ出せない」という人なら、オクターブを下げたアレンジを選ぶ方法もあります。
「楽譜を読むのに時間がかかる」という人なら、音名表示や画面上の運指を確認できる教材を利用する方法もあります。
「原曲のテンポでは速すぎる」という人なら、伴奏速度を変えられる教材の方が練習しやすいでしょう。
大切なのは、「一番原曲に忠実な譜面」を選ぶことではなく、今の自分が練習を続けられる譜面を選ぶことです。
原曲に忠実でも、難しすぎて最初の数小節から進めなければ、練習そのものがつらくなってしまいます。
まず簡略版で曲を完成させ、あとから難しいアレンジへ移るのも立派な練習方法ですよ。
楽譜の販売状況、価格、収録内容、対応地域などは変更される可能性があります。購入前には販売元の最新情報を確認してください。また、同じ曲名でもイントロだけの商品や初心者向けにキー・オクターブを変更した編曲があります。
また、初心者だからといって必ず原曲キーにこだわる必要はありません。
一人で楽しむなら、吹きやすいキーやオクターブへ変更された編曲を使う方法もあります。
原曲音源や原曲キーの伴奏と合わせたい段階になったら、そこで正しい移調譜へ挑戦しても遅くありません。
まず吹ける音域で曲を完成させ、その後で原曲キーへ挑戦する方が続けやすい人もいるでしょう。
有名なイントロだけでも一曲を吹いたような達成感を得やすいのは、Careless Whisperの大きな魅力です。
Careless Whisperのサックスに関するよくある質問(FAQ)
Q1. Careless Whisperはサックス初心者でも吹けますか?
A. 簡略化された楽譜やメインリフだけであれば、初心者でも挑戦できます。ただし、冒頭の速い上行フレーズや高音があるため、完全な初心者ならゆっくりしたテンポで分解して練習する必要があります。原曲らしい音色やビブラートまで再現する場合は、中級以上の技術が必要になると考えてください。
最初からフルコーラスを原曲テンポで完成させる必要はありません。イントロだけ、メインフレーズだけというように範囲を区切り、正確に吹ける速度から始めると取り組みやすくなります。
Q2. Careless Whisperの原曲はアルトサックスですか?
A. いいえ。オリジナル録音でSteve Gregoryが演奏したのはテナーサックスです。明るい音色のためアルトのように感じることがありますが、録音時のテープ速度変更も独特の響きに影響しています。
ただし、アルトサックスで演奏してはいけないという意味ではありません。アルト用の楽譜や初心者向け教材も多く、自分の楽器に合った移調譜を使えば演奏できます。
Q3. high F#キーがないテナーサックスでは吹けませんか?
A. high F#キーがなくても演奏方法はあります。代替運指を使ったり、1オクターブ下げた初心者向けアレンジや最高音を変更した楽譜を選んだりできます。
初心者の場合は、高音を無理に出して演奏全体が崩れるより、吹きやすいアレンジでフレーズを滑らかにつなぐことを優先してもよいでしょう。
Q4. 音は合っているのにCareless Whisperらしく聞こえないのはなぜですか?
A. ビブラート、息の流れ、強弱、タンギング、音の入り方や抜き方が影響している可能性があります。まず音程とリズムを安定させ、その後に強弱やビブラートを一つずつ加えてください。
また、原曲には録音時のテープ処理による音色変化もあるため、生演奏だけで完全に同じ音色へ合わせるのは難しい部分があります。「原曲と音色が違う=自分の演奏が間違っている」と考えすぎないことも大切です。
Q5. アルトとテナーではどちらが初心者向きですか?
A. Careless Whisperだけを基準に、どちらが必ず簡単とは言えません。アルトは初心者向け教材が豊富で、テナーは原曲と同じ種類のサックスです。
すでにどちらかを持っているなら、その楽器で練習して問題ありません。原曲伴奏と合わせる場合は、自分の楽器用に正しく移調された楽譜を選んでください。
Careless Whisperのサックス難易度は、メロディーの音を追うだけなら初級後半から中級程度が目安です。
一方で、原曲のような滑らかさ、高音の安定、息の流れ、ビブラート、細かなフレージングまで含めると、中級以上の技術が求められます。
つまり、「初心者には無理な曲」でもなければ、「音さえ覚えれば簡単な曲」でもありません。
音を追う段階と、表現を整える段階を分けることがポイントです。
まずは自分の楽器に合った楽譜を選び、ゆっくりしたテンポで音と指をそろえましょう。
冒頭の速い上行フレーズでつまずいたら、2〜3音へ分解します。
高音が裏返るなら、その音を単独でロングトーンし、前後の音からスラーでつなぎます。
息が続かないなら、最初はブレスを増やして構いません。
正確な音程とリズムが安定してから、強弱、ビブラート、音の入り方と抜き方を加えていきます。
この順番なら、「何ができていないのか分からない」という状態になりにくいですよ。
そして、原曲とまったく同じ音色にならなくても必要以上に気にする必要はありません。
Careless Whisperのオリジナル録音にはSteve Gregoryの演奏だけでなく、テープ速度を変更した録音方法も関係しています。
まず目指したいのは、原曲の機材や録音処理を完全にコピーすることではなく、自分のサックスでメロディーを滑らかにつなぎ、聴いた人が「あのCareless Whisperだ」と感じられる演奏にすることです。
有名なイントロだけでも十分に楽しめます。
最初から完璧を目指さず、吹ける速度、吹ける音域から一つずつ形にしてみてください。
あの印象的なフレーズが自分のサックスから聞こえてきたとき、練習を続ける楽しさもきっと大きくなるはずです。

