フルートの音といえば、透明感のある澄んだ単音を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、フルートは息の速度や方向、アンブシュア、舌、喉、声、運指、キイそのものの打撃音まで使うことで、通常奏法とは大きく異なる音色を作ることができます。
こうした奏法は一般に「特殊奏法」「現代奏法」「extended techniques」などと呼ばれます。
代表的なものだけでも、フラッタータンギング、ハーモニクス、ホイッスルトーン、マルチフォニクス、循環呼吸、グリッサンド、微分音、キークリック、ジェットホイッスル、タンラム、声を出しながら吹く奏法、エオリアンサウンドなどがあります。
ただし、「特殊奏法は全部で何種類」と決まっているわけではありません。通常奏法との境界も完全に固定されているわけではなく、作品や奏者、作曲者によって使われる技法や名称が異なることがあります。
また、特殊奏法という名前から「かなり上級者向けなのでは」と感じるかもしれませんが、実際にはキークリックのように比較的仕組みを理解しやすいものもあれば、循環呼吸や精密なマルチフォニクスのように時間をかけて練習したいものもあります。
この記事では、代表的なフルートの特殊奏法について、どんな音がするのか、どのような原理で鳴るのか、どう練習すればよいのかを整理します。
- フルートで使われる代表的な特殊奏法
- フラッタータンギングと巻き舌の違い
- ホイッスルトーンの出し方
- 循環呼吸の仕組みと練習方法
- グリッサンドのやり方と音程を下げる方法
- リングキイとカバードキイの違い
- 初心者が取り組みやすい特殊奏法
現代作品で特殊奏法の指定を見つけたときだけでなく、フルートの息やアンブシュアについて理解を深めたい場合にも役立つ内容です。
フルートの特殊奏法とは
フルートの特殊奏法とは、一般的な単音の発音、通常のタンギング、一般的なヴィブラートなどから表現の範囲を広げ、息、音程、倍音、舌、声、キイの動きなどを積極的に音楽表現へ取り入れる奏法です。
「特殊奏法」「現代奏法」「extended techniques」という言葉は似た意味で使われることがありますが、完全に統一された分類ではありません。
そのため、特殊奏法を明確な数に分けて「フルートの特殊奏法は全部で○種類」と示すのは難しいです。
代表例として挙げられるのは次のような奏法です。
- フラッタータンギング
- ハーモニクス
- ホイッスルトーン
- マルチフォニクス
- 循環呼吸
- グリッサンド/ピッチベンド
- 微分音/四分音
- キークリック
- ジェットホイッスル
- タンラム/タンストップ
- Sing & Play
- エオリアンサウンド/ウインドトーン
これらはすべて同じ原理で鳴らすわけではありません。
フラッタータンギングでは舌や喉の振動、ハーモニクスでは倍音、ホイッスルトーンでは非常に弱い息、グリッサンドではアンブシュアやキイの操作というように、利用する身体の動きや楽器の特性が異なります。
特殊奏法を理解するときは、名前だけを覚えるよりも「フルートのどの性質を利用している奏法なのか」を理解した方が整理しやすくなります。
特殊奏法を難しく考えすぎないことがポイントです。
通常奏法とまったく別の世界ではなく、普段から使っている息、アンブシュア、舌、口腔内、運指のコントロール範囲を意図的に広げたものと考えると理解しやすくなります。
現代奏法で音色が変わる仕組み
フルートは、歌口から出した息をアンブシュアホールの反対側のエッジへ当て、管内の空気柱を振動させて発音します。フルートがリードを使わずに音を作る仕組みについては、サックスが木管楽器に分類される理由を解説した記事でも、サックスや金管楽器との違いと合わせて紹介しています。
そのため、同じ運指をしていても、息の速さや方向、アンブシュア、口の中の形などを変えることで、音高や音色、倍音の出方を変えることができます。ヤマハのフルート解説でも、息の速度によって音の高さが変化する基本原理が紹介されています。詳しい発音の基本はヤマハ「How to Play the Flute」で確認できます。
これは特殊奏法だけの性質ではありません。
通常の演奏でも、高い音と低い音では息の速度や方向を調整します。高音ではより速い息が必要になり、低音ではそれよりゆったりした息を使います。
ハーモニクスでは、この音域による息の変化をさらに利用します。
低い音の運指をしたまま息の速度やアンブシュアを変えると、基音ではなく、その上に含まれる倍音が鳴ることがあります。同じ運指なのに違う高さの音が出るのは、この倍音を選んで鳴らしているためです。
一方、ホイッスルトーンでは非常に少ない息を使い、繊細なアンブシュアの変化によって高い倍音を鳴らします。
グリッサンドやピッチベンドでは、息の角度、顎、唇、楽器の角度などを変化させることで、同じ運指から音程を上下させます。
さらに、特殊運指やリングキイの部分開放を利用すれば、通常の半音よりも細かな音程を作ることも可能です。
このように、フルートの現代奏法は「特殊な装置がないとできない奏法」ばかりではありません。普段の発音で使っている要素を意図的に変化させたり、複数の要素を組み合わせたりすることで成立する奏法が多くあります。
特殊奏法を練習すると、通常奏法で使っていた息やアンブシュアがどのように音へ影響しているのかを再確認できることもあります。
代表的なフルート特殊奏法一覧
代表的なフルートの特殊奏法を一覧にすると次のようになります。
ただし、ここで示す難しさは、奏法そのものを一度鳴らす場合のおおまかな目安です。同じ奏法でも、正確な音高、強弱、長時間の持続、速い切り替えなどが指定されれば難易度は大きく変わります。
| 奏法 | 概要 | 代表的なやり方 | 難しさの目安 |
|---|---|---|---|
| フラッタータンギング | 音に細かな連続振動を加える | 舌先または喉を振動させる | 初級~中級 |
| ハーモニクス | 低い音の運指のまま倍音を鳴らす | 息を速くしてオーバーブローする | 初級~中級 |
| ホイッスルトーン | 非常に小さく高い笛のような音 | ごく弱い息で倍音を鳴らす | 初級~中級 |
| マルチフォニクス | 2音以上を同時に鳴らす | 特殊運指と息、アンブシュアを調整する | 中級~上級 |
| 循環呼吸 | 呼吸をしながら音をほぼ途切れさせずにつなぐ | 口内の空気を押し出す間に鼻から吸う | 上級 |
| グリッサンド/ピッチベンド | 音程を連続的に上下させる | アンブシュア、角度、キイ操作を使う | 初級~上級 |
| 微分音/四分音 | 半音より細かな音程を作る | 特殊運指、リングキイ、アンブシュアを使う | 中級~上級 |
| キークリック | キイの打撃音を音楽的に使う | キイを指で強めに閉じる | 初級 |
| ジェットホイッスル | 強い風圧を感じるノイズ的な音を作る | 歌口を覆って管内へ強く息を入れる | 初級~中級 |
| タンラム/タンストップ | 舌で空気を急停止させ打撃音を作る | 歌口を覆い、管内の空気を舌で止める | 中級 |
| Sing & Play | フルート音と声を同時に鳴らす | フルートを吹きながら発声する | 初級~上級 |
| エオリアンサウンド | 息の成分を多くした風のような音 | 音の芯を減らし息音を強調する | 初級~中級 |
「初心者向け」とされる奏法でも、実際の曲で使うと難しくなることがあります。
たとえばキークリックは単独なら比較的簡単ですが、複雑なリズムを正確に演奏したり、通常音と同時に鳴らしたりすれば難易度が上がります。
ホイッスルトーンも、ランダムに高い倍音を鳴らすだけなら試しやすい一方、指定された倍音を決められた順番で安定して鳴らすには細かなコントロールが必要です。
特殊奏法では「音が出たから習得できた」と考えず、何を要求されている奏法なのかまで確認することが大切です。
フラッターと巻き舌のやり方
フラッタータンギングは、通常のフルート音に細かな連続振動を加え、ザラザラ、ルルル、フルルルと聞こえるような音色を作る奏法です。
楽譜では「flutter tonguing」などと書かれるほか、略記で示される場合もあります。
ここでよくある疑問が、「フラッターと巻き舌は同じなのか」というものです。
結論からいうと、巻き舌はフラッタータンギングを作る方法のひとつであり、フラッターそのものと完全に同義ではありません。
フルートのフラッターには大きく分けて次の2つの方法があります。
- 舌先を振動させる舌フラッター
- 喉の奥を振動させる喉フラッター
日本語で一般的に「巻き舌」と呼ばれているものは、1つ目の舌先を振動させる方法に近いです。
舌フラッターを練習するときは、最初からフルートを持たず、息だけで舌先が連続的に振動する位置を探すと仕組みを理解しやすくなります。
「rrrr」「ルルルル」のような発音を試し、舌先を硬く固定せず、息によって自然に振動する感覚を探します。
重要なのは、舌を自分の筋力だけで高速に動かそうとしないことです。
舌先を強く押しつけると、振動しにくくなるだけでなく、顎や口周りまで力みやすくなります。
楽器を使わずに舌の振動が続くようになったら、そのままフルートを構え、ロングトーンに短時間だけフラッターを重ねます。
最初から何秒も続けようとする必要はありません。
普通の音を鳴らし、その途中だけフラッターを加え、また通常音へ戻る練習をすると、通常奏法との切り替えも同時に確認できます。
一方、巻き舌ができない場合でも、喉側の振動を利用した喉フラッターで近い効果を作れる場合があります。
喉フラッターでは、喉の奥のR音や軽いうがいに似た振動を利用します。
まず楽器を持たずに息を吐きながら喉の奥で連続的な振動が生まれるポイントを探し、その振動をフルートのロングトーンへ重ねます。
ただし、喉フラッターは喉を強く締める奏法ではありません。
フラッター練習の注意点
喉や舌へ無理な力を入れる必要はありません。痛みや強い違和感がある状態で練習を続けないようにしましょう。また、巻き舌ができない人なら必ず喉フラッターができるという意味でもありません。身体的な得意・不得意には個人差があります。
舌フラッターと喉フラッターでは音色にも違いが出ることがあります。
どちらか一方しかできないから演奏できないと決めつけるのではなく、曲が求める効果を確認しながら、自分に合った方法を探していくことが大切です。
ハーモニクスとホイッスルトーン
ハーモニクスは、倍音奏法、オーバートーンなどと呼ばれることがある奏法です。
低い基音の運指を保ったままオーバーブローし、その基音の倍音列に含まれる高い音を鳴らします。
同じ運指で複数の高さの音が出るため、初めて試すと「運指を変えていないのに音が変わった」と感じるでしょう。
基本的には、息の速度、息の方向、アンブシュア、舌の位置、口腔内の形などを変化させながら、狙った倍音が鳴るポイントを探します。
比較的低い次数の倍音から試す方が取り組みやすく、高次の倍音ほど繊細なコントロールが必要になります。
単に強く吹けばよいわけではありません。
高い倍音へ移るにつれて息の速度を高めながら、アンブシュアや口腔内もそれに合わせて調整します。
通常の運指で鳴らした音と、倍音として鳴らした同じ高さの音は、まったく同じ音色になるとは限りません。
この違いも、ハーモニクスを特殊な音色として使用できる理由のひとつです。
ハーモニクスの練習では、普段どのように息の速度や口の中を変えることで音域を移動しているのかがわかりやすくなります。
そのため、特殊奏法としてだけでなく、アンブシュアや息のコントロールを整理する練習として利用されることもあります。
ホイッスルトーンは、ハーモニクスとはかなり異なる印象の音です。
非常に小さく、高い口笛のような音が鳴ります。whistle tones、whisper tones、whistle soundsなどの名称で呼ばれることがあります。
ホイッスルトーンで最も誤解されやすいのが、「高い音だから強く吹く」という考え方です。
ホイッスルトーンでは、通常音よりもはるかに弱く繊細な息が必要です。
強く吹きすぎると、ホイッスルトーンではなく通常のフルート音や別の倍音が鳴りやすくなります。
最初は高い音域の運指を使い、ごく少量の息を歌口へ送ってみます。
音を押し出すのではなく、消えそうなほど弱い息の中で細い高音が鳴るポイントを探すイメージです。
ホイッスルトーンはわずかな唇の動きや息の角度の違いで別の倍音へ移りやすいため、唇を必要以上に固めないことも重要です。
舌の位置や口の中の形も安定に関係します。
ひとつのホイッスルトーンが短く鳴ったら、まずその音を数秒以内の短い時間で安定させます。その後、同じ運指のまま少しずつアンブシュアを変え、別の倍音へ移る感覚を確認するとよいでしょう。
低い運指では安定したホイッスルトーンを出す難易度が高くなることがあります。
そのため、最初から難しい低音運指を選ぶよりも、高めの音域から音が鳴るポイントを探す方が進めやすいです。
ホイッスルトーンが出ないときの確認ポイント
- 息が強くなりすぎていないか
- 唇を締めすぎていないか
- 息の角度が大きく動いていないか
- 顎や舌まで固めていないか
- 最初から難しい低音運指を使っていないか
ホイッスルトーンは大きな音を出す奏法ではありません。むしろ、弱い息を安定して扱えるかどうかが重要です。
マルチフォニクスと微分音
マルチフォニクスは、日本語では多重音奏法と呼ばれることがあり、1本のフルートから2音以上を同時に鳴らす奏法です。
一般的なフルート演奏では1つの明確な音高を鳴らしますが、マルチフォニクスでは複数の振動状態を同時に成立させます。
多くの場合、通常運指とは異なる特殊運指を使います。
そのうえで、息の速度、方向、アンブシュアなどを調整し、複数の音が同時に鳴るポイントを探します。
マルチフォニクスは「特殊奏法だからすべて非常に難しい」とは限りません。
組み合わせによっては比較的鳴らしやすいものもあります。
ただし、音が一度鳴ることと、指定された音程を安定して維持することは別です。
さらに、すべてのマルチフォニクスを自由な強弱で鳴らせるわけでもありません。
ある組み合わせでは弱い音量なら鳴りやすくても、強くすると一方の音だけになってしまうことがあります。
反対に、ある程度息を入れなければ複数音が成立しない組み合わせもあります。
楽器や奏者によって反応が変わることもあるため、現代作品では楽譜に運指が指定される場合があります。
曲中でマルチフォニクスが出てきたら、一般的な運指表だけでなく、その作品に記載された奏法説明も確認してください。
微分音も、現代フルートでよく見られる奏法のひとつです。
microtoneは半音より細かい音程を広く指す言葉で、quartertoneは半音の半分に相当する四分音を指します。
フルートでは、特殊運指、アンブシュアの調整、リングキイの部分開放などを利用して微分音を作ります。
リングキイの場合、指穴を完全に開けるか閉じるかだけではなく、途中まで開けることができます。
そのため、通常の半音単位より細かな音程を作りやすいという特徴があります。
ただし、カバードキイでは微分音がまったくできないという意味ではありません。
代替運指を使うことで出せる音程もあります。
また、特殊運指を使うと通常運指とは音色が変化することがあります。
同じ「四分音」であっても、ピッコロ、Cフルート、アルトフルート、バスフルートで運指が完全に共通するとは限りません。
微分音の記号も作品によって意味が異なる場合があるため、楽譜の凡例を確認することが重要です。
キークリックなどの音色奏法
特殊奏法では、通常のフルート音だけでなく、キイが閉じる音、息だけの音、声、管内の空気の衝撃なども音楽表現として利用します。
キークリックは、キイを閉じたときに発生する機械的な打撃音を音楽的に使う奏法です。
息を使わずキイの音だけを鳴らすこともあれば、通常のフルート音にキークリックを重ねることもあります。
単独のキークリックであれば、特殊奏法の中では比較的仕組みを理解しやすいでしょう。
しかし、複雑なリズムでキイを操作したり、通常音と正確に同期させたりすると難易度が上がります。
歌口を閉じた状態でキイを打つと、単純な機械音だけではなく、管内の共鳴を伴う低い打撃音が聞こえることもあります。
ジェットホイッスルは、通常のフルート音よりも息そのものを強く利用する奏法です。
一般的には歌口を大きく覆い、管内へ強い息を送り込みます。
結果として、通常のフルート音とは異なる、勢いのある風や噴射音のような音響になります。
空気の速度を変えることで、ノイズの強さや音高感も変化します。
強い呼気を必要とするため、長時間繰り返すのではなく、短い時間から確認した方が安全です。
タンラム/タンストップも、管内の空気を利用した打楽器的な奏法です。
歌口付近を口で覆って空気を送り、その空気を舌で急に停止させることで、衝撃的な「ポン」「ドッ」といった音を作ります。
通常のフルート音とは異なる共鳴の仕方をするため、楽譜では運指する音と実際に響く音を区別して書く場合があります。
Sing & Playは、その名前のとおり、フルートを吹きながら同時に声を出す奏法です。
フルートの音と同じ高さを歌うこともあれば、異なる音程を歌うこともあります。
同じ音を歌う方が比較的始めやすく、声とフルートで別々の音程や旋律を維持する場合は難しくなります。
声とフルートの音高がわずかに異なると、うなりや複雑な響きが生まれます。
エオリアンサウンド/ウインドトーンでは、通常の芯のあるフルート音より息成分を増やします。
完全な息だけの音から、少しずつ通常音へ近づけたり、逆に通常音から息音へ変化させたりすることもできます。
通常のロングトーンを吹きながら、音の芯を少しずつ減らして息成分を増やす練習は比較的取り組みやすいでしょう。
このようにフルートの特殊奏法では、「きれいな単音だけがフルートの音」という考えから離れ、楽器から発生するさまざまな音を表現として利用します。
循環呼吸の仕組みと練習方法
循環呼吸は、通常なら息継ぎで途切れる音を、できるだけ切れ目なく維持しながら鼻から新しい息を吸う技術です。
長いフレーズや持続音を演奏するときに使われることがあります。
ただし、「鼻から吸いながら同時に肺から息を吐いている」と理解すると仕組みをつかみにくくなります。
循環呼吸では、鼻から息を吸う短い時間だけ、肺の代わりに口の中へためておいた空気を頬や舌などで押し出して音をつなぎます。
基本的な流れは次のとおりです。
- 頬や口腔内に少量の空気をためる
- 肺からの呼気を一時的に止める
- 口内の空気を頬や舌の動きで押し出す
- 口の空気を出している短い時間に鼻から息を吸う
- 鼻から吸い終わったら肺からの呼気へ戻す
- 口内の空気と肺からの息の切り替えを目立たなくする
理屈だけを見ると単純に感じるかもしれませんが、フルートではアンブシュア自体が発音に大きく関わるため、切り替えを滑らかにすることが難しいところです。
特に、口内の空気だけで音を維持する瞬間は、通常の肺からの呼気とは息の圧力が変わりやすくなります。
その結果、音量が小さくなったり、音程が変わったり、音色が急に変化したりします。
循環呼吸を練習するときは、いきなりフルートを吹きながら完成形を目指す必要はありません。
まずは「口の中の空気を押し出す」「鼻から吸う」という2つの動作を別々に確認します。
ストローなどから一定の空気を出しながら鼻から吸う練習は、口から空気を送り続けた状態で鼻から吸う感覚を理解する方法として知られています。
最初の段階では、肺の息から口内の空気へ切り替えられるかだけを確認します。
次に、口内の空気を押し出している間に鼻から短く息を吸います。
ここで大量に吸おうとすると切り替えの時間が長くなりやすいため、一度に大きく吸うことより、短い時間で必要な息を取り込む感覚をつかむことが重要です。
フルートで練習するときも、最初から長いロングトーンで完全に切れ目のない音を目指す必要はありません。
トリル、音階、動きのあるフレーズなど、切り替えの変化が比較的目立ちにくいところで練習する方法もあります。
ロングトーンで練習するときは、音の長さよりも、口内の空気から肺の息へ戻る瞬間の音量や音色が大きく変わっていないかを確認するとよいでしょう。
循環呼吸では「大量の空気を頬にためる」ことが目的ではありません。
必要なのは、鼻から吸う短い時間を橋渡しできるだけの空気です。口の中の空気を一時的な予備タンクとして使うイメージで考えると理解しやすくなります。
循環呼吸で失敗しやすいポイント
循環呼吸で起こりやすい失敗のひとつは、鼻から吸う瞬間に音量が急に小さくなることです。
これは、肺の呼気から口内の空気へ切り替わったときに息の圧力が不足している可能性があります。
反対に、口内の空気を強く押し出しすぎると、一瞬だけ音量が大きくなったり、音程が変化したりすることもあります。
循環呼吸で目指したいのは、口内の空気と肺の呼気をまったく同じものにすることではなく、聴いている側から切り替えが目立ちにくい状態へ近づけることです。
もうひとつ起こりやすいのが、息が限界まで減ってから循環呼吸を始めることです。
苦しくなってから鼻で大量に息を吸おうとすると、口内の空気で橋渡しする時間が長くなり、音の変化も大きくなりやすくなります。
息を完全に使い切る前に切り替える方が、余裕を持って鼻から吸うことができます。
また、頬を膨らませること自体に意識が向きすぎる場合もあります。
循環呼吸で重要なのは、頬を大きく膨らませることではなく、口内に残した空気をコントロールして押し出せることです。
頬の動きによってアンブシュアが大きく崩れると、フルートの音そのものが不安定になります。
練習では次の順番で確認すると整理しやすいでしょう。
- 口の中に少量の空気を残す
- その空気だけを口から押し出す
- 押し出しながら鼻から吸う
- 肺からの呼気へ戻る
- 一連の動作を短い音で試す
- 切り替え時の音量や音程の段差を減らす
循環呼吸は、すべてのフルート奏者に必須の標準技術ではありません。
演奏する作品で必要になった場合や、長いフレーズを切らずに表現したい場合に練習する選択肢のひとつです。
1日で完成させようとせず、口の空気、鼻からの吸気、肺の息への復帰という要素を分解して練習する方が理解しやすくなります。
グリッサンドとポルタメント
フルートのグリッサンドは、音から音へ音高を滑らせるように移動させる奏法です。
弦楽器やトロンボーンのように、広い音域を完全な連続音程で自由に移動できるイメージを持つかもしれませんが、通常のフルートでは楽器の構造上、同じ方法で全音域を連続的に滑らせることはできません。
そこでフルートでは、いくつかの方法を使ってグリッサンド効果を作ります。
- アンブシュアによるピッチベンド
- フルートを内側・外側へ回す方法
- リングキイの穴を少しずつ開閉する方法
- 特殊運指を連続的に切り替える方法
- 半音階を高速に演奏してグリッサンドのように聞かせる方法
これらはすべて同じ種類のグリッサンドではありません。
アンブシュアやリングキイを使えば、本当に音程が連続して変化する区間を作ることができます。
一方、高速の半音階は実際には音程が段階的に移動していますが、十分に速く演奏するとグリッサンドのような効果になります。
ポルタメントも、音から音へ滑らかに音程を移動する意味でグリッサンドと重なる部分があります。
一般的な音楽用語では、グリッサンドが音程間を滑走する効果を広く表すのに対し、ポルタメントは2つの主要な音を表情的につなぐ音程移行というニュアンスで使われることがあります。
ただし、フルートの具体的な奏法ではpitch bend、glissandoなどの言葉で説明されることが多く、実際の使い分けは作品によって異なります。
楽譜に専用の記号や奏法説明がある場合は、一般的な用語の意味だけで判断せず、その作曲者の指定を優先してください。
グリッサンドのやり方と下げ方
フルートで最初に試しやすいグリッサンドの練習は、運指を変えずにアンブシュアで小さく音程を上下させるピッチベンドです。
まず、無理なく安定して吹ける音でロングトーンをします。
その音を保ったまま、唇、顎、息の方向、口の中の形、歌口を覆う割合などを少しずつ変化させます。
音程を下げたい場合は、息の方向をやや下向きにし、アンブシュアホールを少し多く覆う方向へ変化させます。
下顎や唇の位置を調整しながら、フルートをわずかに内側へ回すロールインも音程を下げる方向に働きます。
ただし、楽器だけを大きくロールインすると、音色が急にこもったり、発音が不安定になったりすることがあります。
滑らかなピッチベンドを作るには、楽器の角度だけに頼らず、唇、顎、口腔内、息の方向を少しずつ連動させることがポイントです。
最初は音程幅を大きくしようとしなくても構いません。
ロングトーンの途中でほんの少し音程を下げ、元の音へ戻します。
この動きをゆっくり繰り返すと、自分のアンブシュアでどの程度まで音程を動かせるかがわかってきます。
一般に下方向のピッチベンドは上方向より大きな幅を取りやすい傾向がありますが、実際に動かせる幅は音域、運指、奏者によって異なります。
「必ず何音下げられる」と固定して考えない方がよいでしょう。
リングキイのフルートでは、指穴を少しずつ開閉することで、さらに連続的な音程変化を作れる場合があります。
上昇方向では穴を徐々に開く動きが利用しやすく、下降方向では穴を徐々に閉じていきます。
ただし、下降ではキイ自体を閉じる必要がある運指もあるため、指の操作が複雑になる場合があります。
指だけで完全に滑らかにつながらないところでは、アンブシュアによるピッチベンドを組み合わせると段差を目立ちにくくできます。
ヤマハの公式解説でも、カバードキイではキイを順番にゆっくり動かしながら吹く角度を調整する方法や、リングキイで穴を徐々に開ける方法が紹介されています。構造上グリッサンドできない範囲があることも含め、ヤマハのフルート奏法解説で確認できます。
グリッサンドが途中で「カクッ」と段になる場合は、次の点を確認してみてください。
- キイを一気に開閉していないか
- 指穴を完全に離してから次の動作へ移っていないか
- アンブシュアを急に動かしていないか
- 息の速度が途中で変わっていないか
- 構造上、連続的につなぎにくい運指をまたいでいないか
- カバードキイでリングキイと同じ動きを再現しようとしていないか
どうしても構造的に連続させにくい区間では、高速の半音階によって下降グリッサンドのように聞かせる方法もあります。
これは完全な連続ピッチではありませんが、音楽的な効果としてグリッサンドを作る方法のひとつです。
リングキイとカバードキイの違い
フルートでグリッサンドを調べると、「リングキイでなければできないのでは」と疑問を持つ人もいるでしょう。
結論からいうと、グリッサンドにリングキイが必須というわけではありません。
カバードキイでも、アンブシュアによるピッチベンド、楽器の角度、キイを徐々に操作する方法、高速の半音階などを使ってグリッサンド的な効果を作ることができます。
リングキイの大きな違いは、指穴を部分的に開閉できることです。
カバードキイではキイが開くか閉じるかという変化になりやすい一方、リングキイでは指を少しずつずらしながら穴の開き具合を変えることができます。
そのため、リングキイは連続的なグリッサンドや微分音など、細かな音程変化を作るときに自由度が高くなります。リングキイとカバードキイの構造上の違いや、リングキイで穴を少しずつ開けるグリッサンドについては、ヤマハ「フルートの選び方:キイタイプから選ぶ」でも解説されています。
ただし、リングキイであればどの音からどの音へでも完全な連続グリッサンドができるという意味ではありません。
フルートには複数のトーンホールとキイがあり、開始音、終了音、指使いによって穴を連続的に操作しやすい場所と、そうでない場所があります。
実際のグリッサンドでは、リングキイの部分開放とアンブシュアによるピッチベンドを組み合わせることもあります。
つまり、リングキイはグリッサンドの可能性を広げてくれますが、すべての特殊奏法に必要な装備ではありません。
カバードキイでもフラッター、ハーモニクス、ホイッスルトーン、循環呼吸、キークリック、Sing & Play、ジェットホイッスルなど多くの特殊奏法を行えます。
リングキイが特に有利になるのは、指穴の部分開放を利用するグリッサンド、ピッチベンド、微分音などです。
さらに、通常のフルートとは異なる方法で音程を連続変化させるために、頭部管そのものを伸縮させる専用のグリッサンド用ヘッドジョイントも存在します。Robert Dickが開発したGlissando Headjointは伸縮する構造を持ち、通常の頭部管とは異なる連続的な音程変化を可能にします。詳細はRobert Dick公式サイトで確認できます。
ただし、これは一般的なフルートに標準装備されているものではありません。
通常のフルートで行うグリッサンドと、専用機構を使うグリッサンドは区別して考えましょう。
特殊奏法の難易度と練習順序
特殊奏法を練習するときに重要なのは、「一度その音が出た」という状態と「曲の中で音楽的に使える」という状態を分けて考えることです。
たとえばホイッスルトーンは、偶然高い倍音が鳴るだけなら比較的早く経験できることがあります。
しかし、指定された倍音を狙い、決められた長さと強弱で安定させるとなれば難易度は上がります。
マルチフォニクスも同様です。
鳴りやすい2音を単発で出す場合と、複数のマルチフォニクスを高速で切り替え、さらにダイナミクスまで指定される場合では、必要な技術が大きく異なります。
特殊奏法の難易度を高める主な条件には次のようなものがあります。
- 特定の音高を正確に要求される
- ppやffなど特定の強弱が指定される
- 特殊奏法と通常音を瞬時に切り替える
- 速いテンポで行う
- 長時間持続する
- 複数の特殊奏法を同時に使う
- 難しい運指と組み合わせる
- 音程を厳密に合わせる
そのため、「フラッターは初級」「循環呼吸は上級」といった分類は、あくまで大まかな目安として考えた方がよいでしょう。
特殊奏法を始める前には、通常奏法の基礎も確認しておきたいところです。
具体的には、通常のロングトーンがある程度安定していること、低・中・高音域で息の速度を使い分けられること、アンブシュアを動かしても首や肩へ過度な力が入らないこと、通常のタンギングが安定していることなどが役立ちます。
また、息の「量」と「速さ」をある程度分けて考えられると、特殊奏法を理解しやすくなります。
ホイッスルトーンのように息量を減らしたい奏法もあれば、ジェットホイッスルのように強い呼気を使う奏法もあります。
ハーモニクスでは息の速度や方向が重要になり、グリッサンドではアンブシュアと音程の関係を耳で確認する必要があります。
特殊奏法は基礎奏法から切り離されたものではなく、普段使っているコントロールをより広い範囲で使う技術として考えると理解しやすくなります。
初心者が試しやすい特殊奏法
初めて特殊奏法へ取り組む場合は、発音の仕組みを理解しやすく、身体へ無理な負担をかけにくいものから試していくとよいでしょう。
取り組む順番の一例は次のとおりです。
- キークリックや息音で、通常音以外の音を使う感覚に慣れる
- ハーモニクスで息の速度とアンブシュアの変化を確認する
- ホイッスルトーンで非常に弱い息をコントロールする
- 短いフラッターで舌または喉の振動を通常音へ重ねる
- 小さなピッチベンドで音程を意図的に上下させる
- 特殊運指やリングキイを使った微分音・グリッサンドへ進む
- 鳴らしやすいマルチフォニクスを試す
- 必要に応じて循環呼吸を長期的に練習する
キークリックは、通常のフルート音を安定させなくても仕組みを確認できるため、特殊奏法の入り口としてわかりやすい奏法です。
次にエオリアンサウンドのような息音を試すと、「通常音とノイズの割合を変える」という考え方が理解しやすくなります。
ハーモニクスでは、同じ運指のまま息を変化させることで別の音が鳴るため、息と音高の関係を体感できます。
その感覚を持ったうえでホイッスルトーンへ進むと、強い息だけでなく、非常に弱い息でも倍音をコントロールできることがわかります。
フラッターでは、最初から長時間続けず、ロングトーンの途中に短い振動を入れるところから始めるとよいでしょう。
グリッサンドも同様に、最初から大きな音程幅を狙わず、小さなピッチベンドから始めます。
音が滑らかに上下するポイントがわかってきたら、リングキイや特殊運指を組み合わせる方法へ進みます。
マルチフォニクスは特殊運指を必要とすることが多いため、作品で指定されている場合はその運指を優先します。
循環呼吸は、口内の空気、鼻からの吸気、肺からの呼気への復帰という複数の動作を組み合わせるため、急いで身につける必要はありません。
必要な曲に取り組むときや、継続音を必要とするときに、段階的に練習していくとよいでしょう。
特殊奏法は「できないから強く吹く」で解決するとは限りません。
ホイッスルトーンのように、強く吹くほど通常音になりやすい奏法もあります。唇、顎、舌、喉を必要以上に固定すると、特殊奏法だけでなく通常奏法にも影響することがあります。ジェットホイッスルなど強い呼気を使う奏法は短時間から始め、喉フラッターなどで痛みや強い違和感がある場合は無理に続けないでください。
また、特殊奏法の運指や反応は、楽器の種類やモデルによって異なる場合があります。
特にマルチフォニクス、微分音、グリッサンドなどは、楽器の構造やキイ形式によって結果が変化することがあります。
曲中で特殊奏法が指定されている場合は、一般的な方法だけでなく、その作品に書かれた奏法説明や凡例を優先しましょう。
フルート特殊奏法のよくある質問
Q1. フラッタータンギングと巻き舌は同じですか?
A. 完全に同じではありません。巻き舌はフラッタータンギングを作る代表的な方法のひとつです。舌先を息で振動させる舌フラッターのほか、喉の奥で振動を作る喉フラッターがあります。そのため「フラッター=必ず巻き舌」と考える必要はありません。
Q2. 巻き舌ができなくてもフルートのフラッターはできますか?
A. 巻き舌が難しい場合でも、喉フラッターによって近い効果を作れる場合があります。まず楽器を持たず、軽いうがいのような喉の振動を息に重ねる感覚を確認します。ただし、喉フラッターにも個人差があります。喉を強く締めたり、痛みを我慢して続けたりしないようにしましょう。
Q3. ホイッスルトーンが出ないときは強く吹けばいいですか?
A. 強く吹くのは逆効果になりやすいです。ホイッスルトーンでは、通常音よりかなり少ない息を使います。普通のフルート音が鳴ってしまう場合は、息が強すぎないか確認してください。唇を固めすぎず、息の角度を少しずつ変えながら、高い音域の運指から安定するポイントを探すと取り組みやすくなります。
Q4. ホイッスルトーンとハーモニクスは同じですか?
A. どちらも倍音と関係する奏法ですが、音色や発音方法は異なります。ハーモニクスは低い運指のままオーバーブローして倍音を鳴らします。ホイッスルトーンは非常に弱い息と繊細なアンブシュアで、口笛のような高い音を作ります。
Q5. 循環呼吸は鼻から吸いながら肺から息を吐くのですか?
A. 厳密には異なります。鼻から吸っている短い時間は、肺からの呼気ではなく、口の中へためた空気を頬や舌などで押し出して音をつなぎます。吸気が終わったら再び肺からの呼気へ戻します。この切り替えを目立たなくすることが循環呼吸の重要なポイントです。
Q6. 循環呼吸はフルート奏者なら必ず習得した方がいいですか?
A. 必須の標準技術ではありません。循環呼吸を使わなくても演奏できる作品は数多くあります。循環呼吸が指定される作品を演奏するときや、長い持続音やフレーズを切らずに表現したい場合に身につける技術と考えるとよいでしょう。
Q7. フルートのグリッサンドはどうやって下げますか?
A. 同じ運指のまま下げる場合は、息の方向を少し下向きにし、唇や顎を調整しながら歌口をやや多く覆う方向へ変化させます。フルートをわずかに内側へロールインする方法もあります。リングキイでは、指穴を徐々に閉じる動きとアンブシュアによるピッチベンドを組み合わせる方法もあります。
Q8. フルートのグリッサンドにはリングキイが必要ですか?
A. 必須ではありません。カバードキイでも、アンブシュア、楽器の角度、キイ操作、高速の半音階などを使ってグリッサンド的な効果を作れます。ただし、リングキイは指穴を部分的に開閉できるため、連続的なグリッサンドや微分音では自由度が高くなります。
Q9. グリッサンドとポルタメントは何が違いますか?
A. どちらも音から音へ滑らかに音程を移動する意味で重なる部分があります。一般には、グリッサンドは音程間を滑走する効果全般、ポルタメントは2つの主要な音を表情的につなぐ滑らかな音程移行というニュアンスで使われることがあります。ただし、作品によって使い方が異なるため、楽譜の奏法説明を確認してください。
Q10. 特殊奏法は現代音楽だけで使うものですか?
A. 現代作品で使われることが多い奏法ですが、用途を現代音楽だけに限定する必要はありません。ハーモニクス、ピッチベンド、声との組み合わせ、息音などは、音色の研究や即興的な表現などにも応用できます。特殊奏法を通して息やアンブシュアの変化を理解することは、通常奏法を考えるきっかけにもなります。
まとめ
フルートの特殊奏法には、フラッタータンギング、ハーモニクス、ホイッスルトーン、マルチフォニクス、循環呼吸、グリッサンド、微分音、キークリック、ジェットホイッスル、タンラム、Sing & Play、エオリアンサウンドなどがあります。
特殊奏法は正式な総数が決められているものではなく、通常奏法との境界も完全に固定されているわけではありません。
フラッタータンギングは巻き舌だけで行うものではなく、舌フラッターと喉フラッターという異なる方法があります。巻き舌ができない場合でも、喉側の振動によって近い効果を作れる場合があります。
ホイッスルトーンは強く吹いて高い音を出す奏法ではありません。通常音よりも弱い息を使い、繊細なアンブシュアと息の方向で倍音を鳴らします。
循環呼吸では、鼻から吸っている短い時間だけ口内にためた空気を押し出し、その後肺からの呼気へ戻します。最初から長い音を完全につなぐのではなく、口の空気、鼻の吸気、呼気への復帰を分けて練習すると仕組みを理解しやすくなります。
フルートのグリッサンドには、アンブシュアによるピッチベンド、楽器の角度、リングキイの部分開放、特殊運指、高速の半音階など複数の方法があります。
音程を下げるときは、息の方向、唇、顎、歌口を覆う割合、軽いロールインなどを少しずつ組み合わせます。
リングキイはグリッサンドに必須ではありませんが、指穴を途中まで開閉できるため、連続的なグリッサンドや微分音では自由度が高くなります。
特殊奏法を練習するときは、難しそうな奏法を一度に全部試す必要はありません。
キークリックや息音から始め、ハーモニクス、ホイッスルトーン、短いフラッター、小さなピッチベンドというように、音が変化する仕組みをひとつずつ理解していくと進めやすくなります。
そして、単発で音が出ることと、曲の中で正確に使えることは別です。音高、強弱、持続時間、通常奏法との切り替えなどが加わるほど難易度は上がります。
特殊奏法の土台にあるのは、息、アンブシュア、舌、口腔内、指を細かくコントロールする力です。
「普通のフルートとは別の奏法」と考えすぎず、普段使っているフルートの音をどこまで変化させられるのかを確認する感覚で、ひとつずつ試してみてください。

