ピアノの楽譜を初めて見たとき、「どうして五線が二段あるの?」「上と下はどんな順番で読めばいいの?」と戸惑う人は少なくありません。
検索するときも、「ピアノ 二段」「ピアノ 2段のやつ」のように、正式名称が分からないまま、見た目の特徴で調べている人は多いでしょう。
ピアノでよく使われる二段の楽譜は、一般的に「大譜表(だいふひょう)」と呼ばれます。上段と下段は別々の曲ではなく、同じ時間の流れを表している1組の楽譜です。
大譜表の仕組みが分かると、ト音記号とヘ音記号の関係、中央ドの位置、右手と左手をどのように合わせて読めばよいのかも整理しやすくなります。
最初から上下二段を同時に完璧に読もうとする必要はありません。まずは大譜表の構造を知り、中央ドなどの基準音を覚え、片手ずつ確認してから両手を合わせる順番で進めると理解しやすくなります。
- ピアノの二段楽譜「大譜表」の意味
- ト音記号とヘ音記号の基本的な読み方
- 中央ドを使って上下の譜表をつなげて考える方法
- 上下二段を同じ時間軸で読む方法
- 初心者が両手で読譜するための練習手順
- 音部記号が変わったときに迷わない考え方
ピアノの二段楽譜は大譜表
ピアノの楽譜で、上と下に五線が並び、左端で二段がひとまとまりに結ばれている形を見たことがあるでしょう。
この形は、一般的に大譜表と呼ばれます。英語では「grand staff」「great staff」「great stave」などと呼ばれるものです。
そもそも「五線譜」とは、5本の線と4つの間を使い、音符や休符などを書き表すための記譜の仕組みです。そこにト音記号やヘ音記号などの音部記号が付くことで、どの位置がどの高さの音なのかを具体的に読めるようになります。
ピアノでは高い音から低い音まで非常に広い範囲を扱うため、1本の五線だけで全音域を表そうとすると、五線の外側に加線を何本も書かなければならなくなります。
そこで、高い音を読みやすい譜表と低い音を読みやすい譜表を上下に組み合わせ、ひとつのピアノパートとして読む形が使われています。
大譜表で最初に覚えたいポイントは、「二段で1セット」ということです。
上段だけ、下段だけが独立しているのではなく、上下を同じ時間の流れとして読みます。
楽譜上では、二段の左端が縦線や括弧で結ばれていることがあります。これは、上下の譜表が同じ奏者のひとつのパートとして関連していることを視覚的に分かりやすくする役割があります。
初心者のうちは、大譜表を見ると情報量が多く感じられるかもしれません。しかし、「上段と下段を同時に全部読む」と考えるより、「同じ時間の中で右手側と左手側の情報が上下に整理されている」と考えると分かりやすくなります。
上段と下段は何を表す?
一般的なピアノの大譜表では、上段にト音記号、下段にヘ音記号が使われます。
上段は比較的高い音域を表し、多くの場合は右手で弾く音が書かれます。下段は比較的低い音域を表し、多くの場合は左手で弾く音が書かれます。
| 項目 | 位置・見た目 | 意味 | 初心者向けの考え方 |
|---|---|---|---|
| 上段 | 二段のうち上側 | 主に高い音域 | 右手で弾くことが多い |
| 下段 | 二段のうち下側 | 主に低い音域 | 左手で弾くことが多い |
| ト音記号 | 上段の左端に多い | 高音域を読むための音部記号 | 第2線のソを基準にできる |
| ヘ音記号 | 下段の左端に多い | 低音域を読むための音部記号 | 第4線のファを基準にできる |
| 小節線 | 上下にそろう縦線 | 拍のまとまりを区切る | 上下の同じ小節を一緒に見る |
| 加線 | 五線の上下に足す短い線 | 五線外の音を表す | 中央ドの位置から覚えると分かりやすい |
初心者向けの説明では「上段が右手、下段が左手」と覚えると理解しやすいのですが、これは絶対の決まりではありません。
曲によっては、左手が高い音域まで移動して上段の音を担当したり、右手が低い音域へ移動して下段の音を担当したりします。両手が交差するような曲もあります。
そのため、最初は「上段は主に右手、下段は主に左手」と理解しながら、少し慣れてきたら「本当にその手で弾くのかは、音域や指示を見て判断する」と考えるようにすると混乱しにくくなります。
なぜピアノ譜は二段なの?
ピアノ譜が二段になっている大きな理由は、ピアノが広い音域を持ち、両手で異なる音を同時に演奏することが多いからです。
ピアノでは、右手が高い音でメロディーを弾きながら、左手が低い音で伴奏を弾く形がよく使われます。また、両手とも和音を弾いたり、片方の手が音を伸ばしている間にもう一方の手が細かく動いたりすることもあります。
こうした情報を1本の五線に詰め込むと、音の高さだけでなく、どちらの手がどの音を担当するのかも読み取りにくくなります。
さらに、五線から大きく外れた音を書くには加線が必要です。加線が何本も続くと、瞬時に音を判別しにくくなります。
そこで、高音域をト音記号で、低音域をヘ音記号で表し、それぞれを上下に配置することで、音域と両手の動きを整理しやすくしています。
二段あるからといって、2人で弾くための楽譜という意味ではありません。一般的なピアノの大譜表は、1人の奏者が両手で演奏する内容を表しています。
ただし、「二段に見える楽譜」がすべてピアノの大譜表とは限りません。
たとえば、合唱では上下の段が別々の声部を表す場合があります。ギターでは五線譜とTAB譜が上下に並ぶことがあります。弾き語り用の楽譜では、旋律、コード、伴奏譜などが組み合わされている場合もあります。
したがって、「ピアノの二段のやつ」と検索した場合は大譜表を指す可能性が高いものの、二段という見た目だけで楽譜の種類を判断しないことも大切です。
大譜表の基本的な読み方
大譜表を読むときは、「上の段を最後まで読んでから、下の段を読む」と考えないことが大切です。
横方向は時間の流れ、縦方向は音の高さや同時に鳴る関係と考えると理解しやすくなります。
ただし、初心者の練習として片手ずつ読むことは問題ありません。楽譜としては上下を同時に読むものですが、練習では処理する情報を減らすために、上段と下段を分けて確認します。
まずは、それぞれの音部記号が何を基準にしているのかを知り、いくつかの目印となる音を覚えましょう。すべての音を一気に暗記する必要はありません。自分だけでは基準音や譜面の読み方が合っているか判断しにくい場合は、オンラインのピアノレッスンで講師に確認する方法もあります。
ト音記号の読み方
ト音記号は、主に高い音域を読むために使われる音部記号です。
ト音記号の形を見ると、記号の渦が五線の第2線付近を囲んでいます。この第2線は「ソ」です。
ト音記号はG音、つまり日本音名で「ト」の位置を示す音部記号であり、この第2線を基準にほかの音をたどることができます。
五線上の音は、下から上へ進むほど高くなります。
| 場所 | ト音記号の音 |
|---|---|
| 第1線 | ミ |
| 第1間 | ファ |
| 第2線 | ソ |
| 第2間 | ラ |
| 第3線 | シ |
| 第3間 | ド |
| 第4線 | レ |
| 第4間 | ミ |
| 第5線 | ファ |
初心者のうちは、一番下から「ミ、ファ、ソ……」と順番に数えて音名を出しても構いません。ただし、毎回すべて数えていると、音を読むたびに時間がかかります。
そこで、第2線のソ、第3間のド、中央ドなど、見た瞬間に分かる基準音を少しずつ増やしていくのがおすすめです。
たとえば第2線のソが分かれば、そのすぐ上の第2間はラ、そのすぐ下の第1間はファと判断できます。
このように、すべてを丸暗記するよりも、最初は「分かる音から近くの音へ広げる」ほうが取り組みやすくなります。
ヘ音記号の読み方
ヘ音記号は、主に低い音域を読むための音部記号です。
ピアノ初心者の中には、「ト音記号は読めるのに、ヘ音記号になると急に分からない」と感じる人もいます。
しかし、ヘ音記号だけが特別に難しい仕組みになっているわけではありません。ト音記号と同じく、五線の位置によって音の高さを読みます。
違いは、基準になる音の位置です。
ヘ音記号の右側には二つの点があります。この二つの点に挟まれている第4線が「ファ」です。
ヘ音記号はF音、日本音名の「ヘ」の位置を示す記号なので、このファが大切な目印になります。
| 場所 | ヘ音記号の音 |
|---|---|
| 第1線 | ソ |
| 第1間 | ラ |
| 第2線 | シ |
| 第2間 | ド |
| 第3線 | レ |
| 第3間 | ミ |
| 第4線 | ファ |
| 第4間 | ソ |
| 第5線 | ラ |
初心者が最初に覚えるなら、第4線のファ、第2間のド、中央ドを基準にするとよいでしょう。
ト音記号を覚えたあとでヘ音記号を見ると、同じ位置なのに音名が違うため混乱することがあります。
たとえばト音記号の第2線はソですが、ヘ音記号の第2線はシです。これは間違いではなく、音部記号が違うことで、五線の位置に割り当てられる音の高さが変わっているためです。
ヘ音記号を読むときは、「全部暗記しなければ」と考える必要はありません。まず2~3個の基準音を覚え、その周囲を一音ずつたどる方法から始めれば十分です。
特にピアノでは、左手の伴奏を読むためにヘ音記号が頻繁に登場します。最初のうちから少しずつ触れておくと、両手奏へ進んだときの負担を減らしやすくなります。
中央ドを基準に音を読む
大譜表を理解するうえで非常に役立つのが、中央ド、つまり真ん中のドです。
ト音記号では、五線のすぐ下に短い加線を1本引き、その線上に書かれるドが中央ドです。
一方、ヘ音記号では、五線のすぐ上に短い加線を1本引き、その線上に書かれるドが中央ドになります。
ここで、「上段の中央ドと下段の中央ドは別の音なの?」と疑問に思うかもしれません。
この二つは同じ高さの音です。ト音記号側から書く場合と、ヘ音記号側から書く場合で、譜面上の位置が変わって見えるだけです。
| 見方 | 中央ドの位置 |
|---|---|
| ト音記号側 | 五線の下に加線1本を引いた線上 |
| ヘ音記号側 | 五線の上に加線1本を引いた線上 |
| 音の高さ | どちらも同じ中央ド |
大譜表を「上段と下段の別世界」と考えるのではなく、中央ドを中心として上下へ音域が広がっていると考えると、二段の関係が分かりやすくなります。
中央ドから上へ進めば、レ、ミ、ファ、ソ……と音が高くなります。反対に中央ドから下へ進めば、シ、ラ、ソ……と低くなります。
初心者が最初に覚える基準音としては、次の5つを目印にするとよいでしょう。
- 中央ド
- ト音記号の第2線のソ
- ト音記号の第3間のド
- ヘ音記号の第4線のファ
- ヘ音記号の第2間のド
この5つを基準にすると、すべての音を五線の端から数えなくても、近い基準音から音名を判断しやすくなります。
また、中央ドは「大譜表の中央をつなぐ音」として考えると便利です。上段と下段が完全に切り離されているのではなく、中央ド付近で連続した音域としてつながっていることが理解しやすくなります。
上下二段を合わせて読むコツ
それぞれの段で音名が分かるようになっても、「両手になった途端に読めなくなる」と感じることがあります。
これは不自然なことではありません。片手の音を読むだけでも、音名、リズム、指使いなど複数の情報を処理します。両手になると、さらに左右のタイミングを合わせる作業が増えます。
そのため、最初からすべてを同時に処理しようとせず、いくつかの作業に分けて読むことが大切です。
まず音名を確認し、次にリズムを確認し、それぞれ片手で弾けるようにしてから両手を合わせると整理しやすくなります。左右を合わせた途端に片方の手がもう一方につられてしまう場合は、ピアノで左手がつられるときの練習方法も参考になります。
縦は同時・横は時間で読む
二段楽譜を読むときに覚えておきたい基本が、「横は時間、縦は同時」という考え方です。
楽譜は左から右へ進むほど時間が進んでいきます。そして、上段と下段で音符が同じ横位置に並んでいる場合、それらは基本的に同じタイミングで鳴らします。
たとえば、上段の1拍目に右手の音符があり、下段の1拍目に左手の音符があるなら、両方を同時に弾きます。
逆に、上段に音符があって下段が休符なら、上段側だけが音を出し、下段側は休みます。
また、上下の音符の長さが異なる場合もあります。
左手が2分音符を伸ばしている間に、右手が4分音符や8分音符で動くこともあります。この場合、左手を次の音へ動かしてはいけません。左手は指定された長さだけ音を保ち、その間に右手が動きます。
小節線は上下で同じ位置にそろっています。左右が合わなくなったときは、小節ごとに区切り、「1拍目」「2拍目」「3拍目」と拍ごとの縦位置を確認すると整理しやすくなります。
音名だけでなくリズムも同時に読む
楽譜を読むというと「この音符はド、この音符はミ」と、音の高さに意識が向きがちです。
しかし、音符には高さだけでなく、どれだけの長さ鳴らすのかという情報も含まれています。
たとえば4分音符を1拍とする場合、2分音符は2拍、全音符は4拍、8分音符は半拍として数えるのが基本です。
休符も同じです。休符は「何もしない記号」ではなく、「その長さだけ音を出さない」という時間情報を表します。
付点音符が出てきた場合は、元の音符の長さに、その半分の長さを加えます。タイで同じ高さの音が結ばれている場合は、結ばれた音価を足した長さだけ伸ばします。
二段楽譜では、右手と左手で違う音価が同時進行することがあります。そのため、音名だけ分かっても両手を合わせられない場合は、拍の数え方を分けて確認するとよいでしょう。
片手ずつ読んでから合わせる
初心者が二段楽譜を読むときは、最初から両手で完成させようとしなくて大丈夫です。
むしろ、最初から両段を同時に読むことだけにこだわると、音名、リズム、指使い、左右のタイミングが一度に押し寄せて混乱しやすくなります。
次のような順番に分けると、整理しやすくなります。
- 上段だけを見て音名を確認する
- 上段のリズムを確認する
- 右手だけで弾く
- 下段だけを見て音名を確認する
- 下段のリズムを確認する
- 左手だけで弾く
- 上下で同時に鳴る位置を確認する
- ゆっくり両手で合わせる
このとき、いきなり曲全体を通す必要はありません。
1小節ずつ、難しければ1拍ずつに区切って構いません。両手がずれる場所があるなら、その前後だけを取り出して何度か確認します。
曲の最初から最後まで毎回通すより、引っかかる場所を短く切り出して確認するほうが、何が合っていないのか分かりやすくなります。
基本の順番は「上段を読む→下段を読む→片手ずつ弾く→同時になる場所を確認する→ゆっくり両手で合わせる」です。
テンポを落とすことも重要です。
速いテンポのまま何度も間違えるより、左右のタイミングを確認できる速さまで落とし、正しい動きを確かめるほうが練習しやすくなります。
最初は曲らしい速さにならなくても問題ありません。読譜の段階では、「正しい音を正しいタイミングで理解できているか」を優先して考えましょう。
音の動きも一緒に見る
楽譜を読むとき、すべての音符に対して毎回「これは何の音だろう」と一音ずつ考えていると、どうしても時間がかかります。
慣れてきたら、音名だけでなく、音符がどの方向へ動いているかにも注目してみましょう。
音符が一つ上の線や間へ移れば、音階上でも隣の音へ進みます。音符が上方向へ移れば音は高くなり、下方向へ移れば低くなります。
同じ位置に音符が並んでいれば、同じ高さの音の繰り返しです。
線から隣の線へ移る、あるいは間から隣の間へ移る動きは、五線上では一段飛ばして見えるため、音階上でも1音を飛ばした動きになりやすくなります。
こうした「形」を見ることで、「ド、レ、ミ、ファ」と毎回数えなくても、「一つずつ上がっている」「同じ音が続いている」「少し離れた音へ跳んでいる」とまとまりとして捉えられるようになります。
大譜表では、中央ドをまたいで音が上下へ移動することもあります。
そのため、上段と下段を完全に別々のものとして覚えるより、中央ドを中心にして音がどちらへ動いているのかを見る習慣をつけると、譜面全体を理解しやすくなります。
音名を読む力と、音符の動きを見る力はどちらも大切です。最初は音名を確認しながら、慣れてきたら「上がる・下がる・同じ・跳ぶ」といった動きも一緒に見ていきましょう。
二段楽譜で迷いやすいポイント
大譜表には「上段は右手、下段は左手」という分かりやすい基本があります。
しかし、この説明だけを絶対のルールとして覚えると、少し難しい楽譜に進んだときに混乱することがあります。
また、「段の位置」と「音部記号」を同じものだと思ってしまうことも、初心者が迷いやすいポイントです。
ここでは、二段楽譜を読むときに特に誤解しやすい点を整理します。
| よくある勘違い | 正しい考え方 |
|---|---|
| 上段を最後まで読んでから下段を読む | 上下を同じ時間軸で左から右へ読む |
| 上段は必ず右手 | 主に右手だが例外がある |
| 下段は必ずヘ音記号 | 途中でト音記号へ変わる場合がある |
| 中央ドは上下で2種類ある | 書く位置が違うだけで同じ高さの音 |
| 縦に並んだ音は順番に弾く | 同じ時間位置なら基本的に同時に鳴らす |
| 二段だから2人で演奏する | 通常のピアノ大譜表は1人で両手を使う |
上段が右手とは限らない
初心者向けの多くのピアノ譜では、上段が右手、下段が左手という対応になっています。
最初の理解としては、それで問題ありません。
ただし、ピアノの音楽では両手が広い範囲を動くため、左手が高い音域へ移動して上段の音を弾くことがあります。
反対に、右手が低い音域へ移動し、下段に書かれた音を担当する場合もあります。
両手を交差して演奏する曲もありますし、片手だけで複数の声部を弾くような書き方もあります。
「上に書いてあるから絶対に右手」「下に書いてあるから絶対に左手」と決めつけないことが大切です。
実際にどの手で弾くかは、音域、音の流れ、指番号、楽譜上の指示などを確認します。
また、ピアノ譜が必ず二段とは限りません。
音域が広い曲や、複数の声部を読みやすく整理する必要がある曲では、三段の譜表が使われる場合もあります。
三段になっていても、必ずしも3人で演奏するという意味ではありません。1人のピアニストの演奏内容を、読みやすくするために三段に分けることがあります。
初心者の段階では、まず一般的な二段の大譜表を読み慣れることを優先すれば十分です。
音部記号が変わったときの読み方
もう一つ注意したいのが、曲の途中で音部記号が変わる場合です。
たとえば下段が、それまでのヘ音記号から途中でト音記号へ変わることがあります。
この場合、その位置からはト音記号として読みます。
「下段だからヘ音記号として読む」のではありません。
反対に、上段にヘ音記号が出てきた場合は、上段であってもヘ音記号として読みます。
段の位置より、現在そこに書かれている音部記号を優先すると覚えてください。
音部記号を変える理由の一つは、加線を減らして楽譜を読みやすくすることです。
たとえば左手が高い音域へ移動したとき、ヘ音記号のまま書こうとすると五線の上に加線が何本も必要になる場合があります。
そのようなとき、途中からト音記号へ変更すれば、同じ音域をより少ない加線で表しやすくなります。
初心者が曲の途中で突然音を読めなくなったときは、自分の読譜力だけを疑うのではなく、まず音部記号が変わっていないか確認してください。
音部記号が変わったらどこまで有効?
途中で新しい音部記号が出てきたら、その位置から新しい読み方に切り替えます。
その後、別の音部記号が書かれるまでは、原則として変更後の音部記号で読み続けます。
つまり、「その音だけ一時的にト音記号」と決めつけるのではなく、楽譜上で新しい音部記号がどこから有効になっているかを確認する必要があります。
音名を読み間違える場合は、音符を見る前に「いま何記号を読んでいるか」を確認する習慣をつけると整理しやすくなります。
初心者におすすめの練習方法
大譜表は、一度説明を読んだだけですべてが瞬時に読めるようになるものではありません。
大切なのは、基準音を少しずつ増やしながら、実際の譜例や楽譜で繰り返し確認することです。
特に初心者のうちは、「音名」「リズム」「指使い」「左右を合わせる作業」を全部同時に行おうとすると負担が大きくなります。
そこで、読む作業を分けて練習します。曲の練習全体をどう組み立てればよいか迷う場合は、ピアノ初心者向けの練習の進め方もあわせて確認すると整理しやすくなります。自分では読譜や指使いのどこでつまずいているのか判断しにくい場合は、自宅から受けられるピアノの個人レッスンで確認してもらう方法もあります。
まず音名だけを声に出して読む
鍵盤を弾く前に、短い範囲の音名だけを声に出して読んでみます。
中央ドに近い音だけが使われている簡単な譜面から始めると、基準音との位置関係を覚えやすくなります。
上段だけ、下段だけと分けて読んでも構いません。
ただし、いつまでもすべての音を一番下の線から数えるのではなく、中央ドやト音記号のソ、ヘ音記号のファなど、見つけやすい音を基準に読むようにしていきます。
リズムだけを取り出して確認する
音の高さが分かっていても演奏が止まる場合は、リズム処理が追いついていないことがあります。
その場合は、鍵盤から一度離れ、音程を無視して手拍子だけでリズムを確認する方法があります。
「1、2、3、4」と拍を数えながら手をたたけば、どの音を何拍伸ばすのか、どこで休むのかを整理しやすくなります。
左右のリズムが違う場合も、それぞれの段を別々に確認してから合わせると理解しやすくなります。
ドレミを書き込みすぎない
譜面を見ると、すべての音に「ド・レ・ミ」と書き込みたくなるかもしれません。
最初の補助として書き込むこと自体が問題なのではありませんが、すべての音へ書き込み続けると、音符の位置ではなく文字を読む癖がつきやすくなります。
迷いやすい音だけ、あるいは中央ドなどの基準音だけを補助的に書き、少しずつ書き込みを減らしていく方法が取り組みやすいでしょう。
初心者向けの楽譜を選ぶ
二段楽譜の練習では、最初から音数の多い曲を選ばなくても構いません。
初心者向けの楽譜では、次のような特徴があると読みやすくなります。
- 音符が比較的大きい
- 中央ド周辺から始まる
- 使用する音域が広すぎない
- 指番号が分かりやすく書かれている
- テンポが速すぎない
- 左右を片手ずつ確認しやすい
大人やシニアの初心者で、細かな譜面が見づらい場合は、譜面そのものの大きさや文字の読みやすさも重要な判断材料になります。
また、読譜を学ぶ教材を選ぶ場合は、「ト音記号だけでなくヘ音記号も扱っているか」「中央ドから説明されているか」「音名だけでなくリズムも学べるか」を確認すると、大譜表の理解につながりやすくなります。自宅で教材を見ながら段階的に繰り返し学びたい場合は、初心者向けのピアノ教材を確認する方法もあります。
ヘ音記号を後回しにしない
ピアノ初心者が特につまずきやすいのがヘ音記号です。
右手のメロディーに使われるト音記号のほうが目に入りやすく、左手のヘ音記号を後回しにしてしまうこともあります。
しかし、ピアノの大譜表を読めるようになりたいなら、ヘ音記号も早い段階から少しずつ読んでおくことが大切です。
ヘ音記号も、最初からすべての音を覚える必要はありません。
中央ド、第4線のファ、第2間のドなどを基準にして、その周囲の音を少しずつ確認していきましょう。
たとえば第4線のファが分かれば、その一つ下はミ、一つ上はソです。
第2間のドが分かれば、その一つ上はレ、一つ下はシと判断できます。
このように、基準音を増やしながら近い音を読んでいくと、毎回五線の端から数える必要が減っていきます。
短時間でも、ヘ音記号だけを読む練習を取り入れる方法があります。
鍵盤を使わず、短い譜例を見ながら音名を声に出すだけでも構いません。
読譜で重要なのは、一度に全部覚えることではなく、「見たらすぐ分かる音」を少しずつ増やすことです。中央ドなどの基準音から始めれば、大譜表全体の位置関係も見えやすくなります。
また、実際のピアノ譜には音名以外の記号も登場します。
| 記号・要素 | 主な意味 |
|---|---|
| 指番号 | 親指から小指まで1~5で示す |
| 強弱記号 | 音の大きさやその変化を示す |
| 速度記号 | 曲の速さや雰囲気を示す |
| ペダル記号 | ペダルを使う位置を示す |
| スラー | 音をなめらかにつなげる目安 |
| スタッカート | 音を短く切って演奏する目安 |
| 臨時記号 | シャープ、フラット、ナチュラルなどで音を変化させる |
| 反復記号 | 指定された範囲を繰り返して演奏する |
シャープやフラットなどが出てきたときは、それぞれがどの音に作用しているのかも確認します。シャープと鍵盤の関係で迷いやすい例については、ピアノのミのシャープの位置と読み方でも詳しく確認できます。
また、曲の最初に並ぶシャープやフラットは調号です。調号そのものの覚え方を整理したい場合は、調号の数から長調を覚える方法も参考になります。
これらは大譜表そのものを意味する記号ではありませんが、実際にピアノの楽譜を読むときには一緒に確認する必要があります。
最初から全部を完璧に覚える必要はありません。まず大譜表、音部記号、中央ド、音符と休符、拍子といった基本から少しずつ理解を広げていきましょう。
ピアノの二段楽譜についてよくある質問
Q1. ピアノの2段の楽譜は何という名前ですか?
A. 一般的には「大譜表」と呼びます。ピアノでは、上段のト音記号と下段のヘ音記号を組み合わせた形が基本です。
Q2. 上段と下段はどちらの手で弾きますか?
A. 初心者向けの多くのピアノ譜では、上段を右手、下段を左手で弾きます。ただし絶対ではなく、曲によって担当する手が変わることがあります。
Q3. 上段を全部読んでから下段を読めばよいですか?
A. 練習では片手ずつ読んでも構いませんが、楽譜としては上下を同じ時間軸で読みます。同じ横位置にある音は、基本的に同じタイミングで鳴らします。
Q4. 中央ドは上段と下段で別の音ですか?
A. 別の音ではありません。ト音記号では五線の下、ヘ音記号では五線の上に加線を使って書かれますが、同じ高さの中央ドを表しています。
Q5. ヘ音記号が読めないとピアノは弾けませんか?
A. 最初からすらすら読める必要はありません。中央ド、第4線のファ、第2間のドなどを基準にして、少しずつ読める音を増やしていけば大丈夫です。
Q6. 下段にト音記号が出てきたらどう読みますか?
A. 下段であってもト音記号として読みます。段の位置ではなく、その場所に書かれている音部記号を優先してください。
Q7. 二段ある楽譜は必ずピアノ用ですか?
A. 必ずではありません。合唱、アンサンブル、ギターのTAB併記、弾き語り譜などでも上下に譜表が並ぶことがあります。ピアノでは大譜表であることが多い、という理解が適切です。
まとめ
ピアノでよく見る二段の楽譜は、一般的に大譜表と呼ばれます。
基本的には上段にト音記号、下段にヘ音記号が置かれ、上段は高い音域、下段は低い音域を担当します。初心者向けのピアノ譜では、上段を右手、下段を左手で弾く形が多くなっています。
ただし、「上段=必ず右手」「下段=必ず左手」という絶対的な決まりではありません。音部記号が途中で変わる場合もあるため、最終的にはその場所に書かれている音部記号、音の流れ、指番号などを確認することが重要です。
大譜表を読むときは、「横は時間、縦は同時」と考えてください。上下の音符が同じ時間位置に並んでいれば、基本的には同じタイミングで演奏します。
そして初心者が最初に覚えたいのが中央ドです。
中央ドを大譜表の中心として考え、ト音記号の第2線のソ、ヘ音記号の第4線のファなど、いくつかの基準音を覚えると、上下二段の関係が整理しやすくなります。
ヘ音記号が読みにくくても、すべてを一度に暗記する必要はありません。基準音から近い音をたどり、少しずつ「見たら分かる音」を増やしていけば読みやすくなります。
最初から両手で二段を完璧に読もうとする必要もありません。
まず上段を確認し、次に下段を確認し、片手ずつ練習してから、上下で同時に鳴る場所を確かめながらゆっくり両手を合わせていきましょう。
音名だけでなく、音符の長さ、休符、拍子にも目を向けることが大切です。
「ピアノの2段のやつ」が何なのか分からなかった段階から、大譜表という名前と基本構造が分かっただけでも、楽譜を読むための大切な一歩です。
中央ドを中心に上下の音域がつながっていることを意識しながら、片手ずつ、短い範囲から確認し、二段をひとつの音楽として読めるようにしていきましょう。

