サックスの基礎練習としてよく出てくる「ロングトーン」。初心者のうちは、「何秒くらい伸ばせればいいの?」「8秒続かないと練習にならない?」「長く吹けるほど上手いの?」と迷いやすいですよね。
結論からいうと、サックスのロングトーンに「必ず○秒」という共通の基準があるわけではありません。初心者なら、まずは60BPMで4拍、約4秒から始め、安定してきたら8拍、約8秒へ伸ばしていくと取り組みやすいです。
大切なのは、秒数を競うことではありません。音を伸ばしている間に、音量・音程・音色・息の流れをできるだけ安定させることです。「20秒続いたけれど後半は音が揺れてしまった」という状態より、「4秒でも最初から最後まで良い音を保てた」という状態の方が、ロングトーンの目的には合っています。
この記事では、サックス初心者でも実践しやすいロングトーンの練習方法を順番に解説します。何秒吹けばよいかだけでなく、どの音から始めるか、チューナーやメトロノームをどう使うか、音が揺れるときに何を確認するかまで整理していきます。
- 初心者がロングトーンを続ける秒数の目安
- 音色・音程・息を整えるロングトーンの効果
- チューナーとメトロノームを使った練習方法
- 音が揺れる、息が続かないときの原因と対策
先に目安だけ知りたい人へ
初心者は60BPMで4拍、約4秒からで大丈夫です。4拍を安定して吹けるようになったら8拍、約8秒へ。最後まで良い音を保てなければ、無理に秒数を増やさず短い時間へ戻しましょう。
サックスのロングトーンは何秒が目安?

「サックスのロングトーンは何秒やればいいのか」という疑問には、ひとつの数字だけで答えるのは難しいです。肺活量や体格だけでなく、楽器の種類、音量、マウスピース、リード、演奏する音域などによって、無理なく維持できる時間が変わるからです。
アルトサックスとテナーサックスでも吹奏感は同じではありませんし、同じ人が吹いても中音域と低音では難しさが変わります。そのため、「初心者なら絶対に8秒」「10秒吹けなければ意味がない」といった考え方に合わせる必要はありません。
その代わりに基準にしたいのが、良い状態を維持できる時間です。
- 音色が途中で大きく変わらない
- 音量を意図した状態に保てる
- 音程が極端に上下しない
- 息を止めずに流し続けられる
- アンブシュアが大きく崩れない
- 肩や首、顎に余計な力が入らない
- 最後まで自分の意思で音をコントロールできる
こうした条件を満たせる範囲で練習し、少しずつ時間を延ばしていく方が実践的です。
ヤマハのアルトサックス向け基礎教材にも、テンポを60に設定したロングトーン練習が掲載されています。秒数を直接数えるより、メトロノームの拍を利用すると毎回同じ条件で練習しやすくなります(出典:ヤマハ「アルトサックス みんなでやろう!10分エクササイズ!!」)。
| 60BPMでの拍数 | 時間の目安 | 考え方 |
|---|---|---|
| 4拍 | 約4秒 | 初心者が始めやすい |
| 6拍 | 約6秒 | 4拍から8拍へ進む途中に使える |
| 8拍 | 約8秒 | 安定してきた段階の目安 |
| 10拍 | 約10秒 | 余裕が出てきた場合の発展 |
| 12拍 | 約12秒 | 長さより音質維持を優先 |
初心者は60BPMで4拍から始める
サックスを始めたばかりなら、まずはメトロノームを60BPMに設定して4拍伸ばしてみましょう。60BPMでは1拍が約1秒なので、4拍なら約4秒です。
「4秒だけでいいの?」と思うかもしれませんが、最初の段階では十分に確認することがあります。4秒の中でも、音の出だし、途中、終わりに分けて聴いてみると、自分の音の変化が分かりやすくなります。
音の出だしでは、狙った音がすぐ発音するか、余計な「プッ」「キュッ」といった音が混ざっていないかを確認します。
音の途中では、音量・音色・音程が安定しているか、息が止まっていないかを確認します。
音の終わりでは、息切れによって勝手に音が消えるのではなく、自分の意思で終えられているかを確認します。
4拍の間に、次のポイントもチェックしましょう。
- 最初から最後まで音量が大きく変わっていないか
- 途中で音が震えていないか
- 音色が急に細くなっていないか
- 音程が大きく上下していないか
- 肩や喉、顎に余計な力が入っていないか
最初から8秒、10秒、20秒と伸ばそうとすると、後半で息が不足してフォームが崩れることがあります。長さを優先した結果、噛みしめたり、喉を締めたり、身体を固めたりするようでは本末転倒です。
初心者は「4秒しか吹けない」と考えるのではなく、まず4秒をきれいにコントロールすると考えると練習しやすいですよ。
吹いた後には4拍ほど休み、十分に息を吸ってから次の音へ移ります。休符を入れることで、アンブシュアの疲労を抑えながら、直前の音を振り返る余裕もできます。
休んでいる4拍では、ただ待つのではなく、「音程はどうだったか」「後半だけ音が細くならなかったか」「肩に力が入らなかったか」など、ひとつだけ振り返ると次の1音に反映しやすくなります。
慣れたら8拍まで少しずつ伸ばす
4拍を安定して吹けるようになったら、次は60BPMで8拍=約8秒を目安にしてみましょう。
8拍程度になると、吹き始めだけではごまかしにくくなります。息の配分、アンブシュアの安定、音程の変化などが途中から表れやすいため、自分の課題を見つける練習にもなります。
ただし、8秒吹き切ることそのものが目標ではありません。
たとえば8拍のうち6拍目から音が震え始めるなら、現時点では4拍や6拍に戻して構いません。反対に8拍を余裕を持って吹けるなら、10拍、12拍へ伸ばす方法もあります。
「きれいな8秒」と「崩れながら20秒」なら、ロングトーンの目的に近いのは前者です。秒数ではなく、最後まで音をコントロールできているかを確認してください。
また、毎回息が空になるまで吹く必要もありません。限界を超えて息を絞り出そうとすると、姿勢やアンブシュアが崩れやすくなります。通常の基礎練習では「まだ少し余裕がある状態で、自分の意思で音を終える」という考え方でも問題ありません。
長く伸ばせるようになった後は、単純に秒数だけを増やすより、弱音で安定させる、クレッシェンドやデクレッシェンドを付ける、全音域へ広げるなど、課題を変えていく方が実践的です。
たとえば8拍を使って、1~4拍目で少しずつ大きくし、5~8拍目で少しずつ小さくする練習もできます。強く吹いたときに音程が上がらないか、弱くしたときに音が消えないかを確認すると、単純な持続時間とは違うコントロール力を鍛えられます。
ロングトーンで得られる主な効果

ロングトーンは、単に肺活量を鍛えるための練習ではありません。1つの音を伸ばすことで、普段の曲練習では見逃しやすい音色や音程、息の使い方を細かく確認できます。
曲を吹いているときは、運指、リズム、音符、タンギング、次のフレーズなど、意識することがたくさんあります。その点、ロングトーンなら基本的には1音だけ。指の動きや複雑なリズムがない分、自分が出している「1音そのもの」に集中できるのが大きなメリットです。
そのため、ロングトーンを「長い音を出す練習」だけで終わらせるのはもったいないところです。毎回、何を確認するのかを決めると練習の質が変わります。
- 今日は音色を聴く
- 今日は音程の揺れを見る
- 今日は息の配分を確認する
- 今日は弱音を安定させる
- 今日は音の出だしをそろえる
こうして目的を絞ると、単調になりやすいロングトーンにも意味を持たせやすくなります。
音色・音程・息を安定させる
ロングトーンで特に確認したいのが、音色・音程・息の流れです。
まず音色については、吹き始めだけでなく最後まで同じ響きを保てているかを聴きます。「最初はしっかり鳴るけれど、後半になると細くなる」「途中から息っぽくなる」といった変化があれば、息の配分やアンブシュアが変わっているかもしれません。
ここで注意したいのは、「大きい音=良い音」とは限らないことです。必要以上に吹き込んで大音量にすると、最初の数拍で息を大量に使い、後半が苦しくなることがあります。最初から最後まで無理なく保てる音量を探しましょう。
音程については、音を伸ばしている途中で高くなったり低くなったりしていないかを確認します。サックスは、息の使い方やアンブシュア、セッティングなどによってもピッチが変化するため、長い音を吹くと自分の傾向を把握しやすくなります。
たとえば、息が減ってくる後半だけ音程が下がるなら、息の流れや口の支えが変化している可能性があります。反対に、後半になるほど高くなるなら、苦しくなって無意識に噛みしめていないか確認してみましょう。
息については、「たくさん吹き込む」ことよりも必要な量とスピードを安定して送り続けることがポイントです。
最初の1~2拍で一気に息を使ってしまうと、後半で急に苦しくなります。8拍吹くなら、8拍全体へ均等に息を配るイメージを持つと、音量や音色もそろえやすくなります。
ロングトーンでは、音の途中だけでなく「音の出だし」と「音の終わり」も確認します。最後に息がなくなって自然消滅するのではなく、自分の意思で音を終えられるかも大切です。
さらに、一定音量を維持できるようになったら、8拍の前半をクレッシェンド、後半をデクレッシェンドにする練習にも発展できます。
この練習では、ただ音量を変えるのではなく、次の点を確認してください。
- 大きくしたときに音程が上ずらない
- 強くしても音が割れない
- 小さくしても音が途切れない
- 強弱を変えても音色が極端に変わらない
弱音のロングトーンも有効です。ただし、初心者がいきなり極端な小音量にすると発音しにくくなるため、まず普通の音量で安定させてから挑戦する方が取り組みやすいでしょう。
ロングトーンは音作りの大切な練習ですが、それだけでサックス演奏に必要なすべての能力を身につけられるわけではありません。タンギング、スケール、フィンガリング、リズム、曲の練習などとは目的が異なります。
ロングトーンは「良い1音を作る練習」、スケールは「音を連続してつなげる練習」のように考え、それぞれ組み合わせていくとよいでしょう。
初心者向けロングトーンの正しいやり方

ロングトーンは単純な練習だからこそ、「ただ長く吹くだけ」になりやすいものです。毎回ひとつでも確認するポイントを決めて行うと、練習の目的がはっきりします。
基本的な流れは次の通りです。
- 楽器を正しく組み立てる
- リードの状態を確認する
- 呼吸を妨げない姿勢を取る
- 無理なく十分に息を吸う
- メトロノームを設定する
- 吹きやすい中音域から1音出す
- 決めた拍数だけ伸ばす
- 音色・音量・音程を確認する
- 休符を取り、息と口を休ませる
- 半音または全音ずつ次の音へ移る
姿勢は立っても座っても構いません。重要なのは、呼吸を邪魔しないことです。上体を必要以上に丸めたり、首を不自然に曲げたり、肩を持ち上げたまま吹いたりしないようにします。
ネックストラップの長さも確認しておきましょう。マウスピースへ顔を近づけるのではなく、自然な姿勢を取った位置へ楽器が来るように調整すると、首や顎へ余計な負担をかけにくくなります。
息を吸うときも、「限界まで大量に吸わなければ」と考えて身体を固める必要はありません。肩を大きく持ち上げたり、喉を締めたりせず、自然に演奏へ使える空気を取り込みます。
吹きやすい中音域から練習する
初心者が最初から最低音や最高音をロングトーンする必要はありません。まずは比較的発音しやすい中音域から始める方が、良い音の状態を確認しやすくなります。
低音は発音が難しく、高音はアンブシュアや息の使い方によって音色や音程が変わりやすいため、最初から極端な音域に挑戦すると「ロングトーンそのものができない」と感じてしまうかもしれません。
まず中音域で「この吹き方なら楽に安定する」という基準を作り、それを少しずつ上下の音へ広げる方が分かりやすいです。
たとえば最初は中音域から5音程度を選び、60BPMで「4拍吹く+4拍休む」を繰り返します。
初心者向けの基本メニュー
- メトロノームを60BPMに設定
- 中音域の1音を4拍伸ばす
- 4拍程度休む
- 次の音へ移動する
- 5音程度を目安に繰り返す
この段階では、たくさんの音を吹くより、ひとつひとつの音を丁寧に確認しましょう。
特に「まっすぐな音」「一定の音量」「楽な姿勢」を意識すると、ロングトーンの基本をつかみやすくなります。
4拍が安定したら、同じ中音域の音を8拍へ伸ばします。いきなり音域と拍数を同時に増やすより、まず拍数を増やす、次に音域を広げるというように課題をひとつずつ変えると、何が原因で崩れたのか判断しやすくなります。
全音域へ少しずつ広げる
中音域で安定してきたら、低音側、高音側へ少しずつ範囲を広げます。最終的には通常演奏で使う全音域を対象にすると、音域ごとの違いを把握しやすくなります。
ただし、初心者が毎日必ず全音域を吹かなければならないわけではありません。音域を広げすぎて1音ごとの確認がおろそかになるなら、範囲を狭くして構いません。
進め方の一例は次の通りです。
- 中音域の5音程度
- 中音域から低音側へ少しずつ拡大
- 中音域から高音側へ少しずつ拡大
- 慣れたら通常音域全体
半音ずつ移動するクロマチックのロングトーンも便利です。
- 音ごとの音程傾向を確認できる
- 低音と高音の鳴らしやすさを比較できる
- 苦手な音を見つけやすい
- 運指も一緒に確認できる
たとえば中音域の吹きやすい音を基準にして、そこから半音ずつ下がっていく方法があります。別の日には上方向へ半音ずつ進むなど、負担が大きくなりすぎない範囲で分けても構いません。
ただし、中音域では8拍吹けても低音では4拍で音が崩れることもあります。その場合は、すべての音を同じ秒数にそろえる必要はありません。
安定して吹ける時間を音域ごとに設定し、少しずつ差を縮めていくと考えれば大丈夫です。
低音は発音そのものが難しいため、極端に出にくい場合はアンブシュアや息だけでなく、リードの状態や楽器の調整も確認対象になります。
高音では、音を出そうとして口を必要以上に締めることにも注意してください。音域が上がるたびに噛みしめると、リードの振動を妨げたり、音程が高くなりすぎたりする場合があります。
最終的には低音から高音まで同じ条件で安定させることを目指せますが、最初から完璧にそろえる必要はありません。音域ごとの違いを「失敗」と考えるのではなく、自分の楽器や吹き方の傾向を見つける材料として使いましょう。
チューナーとメトロノームの使い方

ロングトーンでは、自分の感覚だけで判断するより、チューナーやメトロノームを補助的に使うと練習内容を客観的に確認しやすくなります。
チューナーは音程、メトロノームは時間と拍数を確認する道具として使い分けましょう。
ただし、どちらも「表示どおりにすること」だけを目的にすると、かえって身体が固くなることがあります。道具は自分の音を確認するための補助として使うのがポイントです。
チューナーで音程の揺れを確認する
チューナーを見える位置に置いてロングトーンをすると、音程が途中でどのように変化しているか確認できます。
チェックしたいのは、単に中央に合っているかだけではありません。
- 吹き始めの音程
- 伸ばしている途中の音程
- 息が減ってきたときの変化
- 音量を変えたときの変化
- 音域によるピッチの違い
たとえば、1~4拍目までは安定しているのに、6拍目以降で音程が下がるなら、息の流れやアンブシュアが後半で変化している可能性を考えられます。
反対に、音程が高くなる場合には、苦しくなって口周りへ力が入り、リードを噛みすぎていないか確認してみましょう。
チューナーの表示を中央にするために、口を強く締めたり顎を大きく動かしたりするのは避けましょう。音程だけ合っていても、音色やリードの振動が不自然になってはロングトーンの目的から外れてしまいます。
サックスではアンブシュアによって音色や音程が変化するため、口周りのコントロールも重要です。ヤマハも、歯で強く噛むのではなく、口周りを使ってマウスピースを支えることを基本として説明しています(出典:ヤマハ「サクソフォンの吹き方 アンブシュア」)。
チューナーを見る順番も工夫できます。
- まず耳で自分の音を聴く
- 音色・息・音量をできるだけ安定させる
- その状態でチューナーを見る
- 音程がどちらへ動いているか確認する
- 同じ音をもう一度吹いて変化を見る
最初から針だけを凝視すると、表示を合わせるために口を動かしすぎることがあります。先に自分の耳で音を聴いてから結果を確認する方が、チューナーへ依存しすぎにくくなります。
録音を併用するのも便利です。吹いている最中には気付きにくい音色や音量の変化を、あとから客観的に確認できます。同じ音、同じテンポ、同じ拍数で定期的に録音しておくと、秒数以外の成長も比べやすくなります。
メトロノームで拍数を管理する
「ロングトーンを何秒やるか」を毎回感覚で測ると、練習条件がばらつきやすくなります。そこで便利なのがメトロノームです。
60BPMに設定すれば1拍が約1秒になるため、初心者でも時間を把握しやすくなります。「4秒数えながら吹く」より、「クリックを4回聞く」と考えた方が分かりやすい人も多いでしょう。
| 拍数 | 60BPMでの目安 | 練習の考え方 |
|---|---|---|
| 4拍 | 約4秒 | 初心者のスタート地点にしやすい |
| 6拍 | 約6秒 | 4拍から8拍へ移る途中の目安 |
| 8拍 | 約8秒 | 安定してきた段階の練習に使いやすい |
| 10拍 | 約10秒 | 余裕がある場合の発展練習 |
| 12拍 | 約12秒 | 長さより質を維持できるか確認する |
メトロノームを使うと、「昨日は8拍だったけれど今日は6拍で音が崩れた」といった変化にも気付きやすくなります。
このような日ごとの差は珍しいことではありません。その日の疲れ、リードの状態、ウォームアップの程度などでも吹奏感は変わります。そのため、毎日必ず同じ秒数を達成することより、同じ条件で自分の状態を観察することが大切です。
また、ロングトーン中にも拍を感じるため、基礎的な拍感を意識するきっかけにもなります。
「60BPMで8拍」が安定した後は、必ずしも拍数を増やし続ける必要はありません。同じ8拍で音量を変える、弱音で吹く、音域を広げるといった練習へ進めます。メトロノームは秒数を測るだけの道具ではなく、毎回同じ練習条件を作る役割もあります。
ロングトーンが安定しない原因と対策

ロングトーンを始めると、「思ったより音が揺れる」「息が8拍まで続かない」「低音だけ全然鳴らない」と感じることがあります。初心者は自分の吹き方を疑いやすいものですが、原因はひとつとは限りません。
息の使い方、アンブシュア、姿勢、リード、楽器の状態などを順番に確認していきましょう。
特に大切なのは、ひとつの症状だけで原因を決めつけないことです。「息が続かない=肺活量不足」「音程が高い=もっと口を緩めればよい」と単純に考えると、別の問題を見落とすことがあります。
音が揺れる・息が続かない場合
音が揺れるときは、息の圧力や流れが一定になっていない、アンブシュアが動いている、身体に力が入っているなど、いくつかの原因が考えられます。
特にロングトーン後半だけ音が揺れるなら、設定している秒数が現時点では長すぎる可能性があります。
8拍で崩れるなら6拍、6拍でも崩れるなら4拍というように、音を安定させられる長さへ一度戻すのも立派な練習です。
「昨日8拍できたから、今日は絶対に8拍吹かなければ」と考える必要もありません。その日の状態によって短くしても問題ありません。毎回の最優先は、良い状態で音をコントロールすることです。
息が続かない場合も、肺活量だけが原因とは限りません。
- 吹き始めに大量の息を使っている
- 必要以上に大きな音で吹いている
- 喉や肩に力が入っている
- リードが硬すぎる
- アンブシュアでリードを押さえ込みすぎている
こうした状態でも息は苦しくなります。
まず試しやすいのは、設定する拍数を短くすることです。4拍を楽に吹けるなら、4拍の中で一定の息を使うことへ集中します。そこで安定したら6拍、8拍と増やします。
また、最初の音量にも注意してください。吹き始めから必要以上に強い音を出すと、息を早く消費しやすくなります。「最後まで同じ音量で吹ける程度」を基準にすると、息の配分をつかみやすくなります。
ロングトーンでは「最後まで我慢する」のではなく、「最後までコントロールする」ことを目標にしましょう。
音程が後半で下がる場合は、何拍目から下がるかをチューナーで見てみる方法もあります。毎回6拍目から崩れるなら、その手前までを安定させ、少しずつ維持できる時間を伸ばしていきます。
反対に音程が高くなる場合は、口周りへ力が入っていないか確認します。音程を下げよう、上げようとしてさらに噛むと、音色まで悪くなることがあります。
また、長く吹こうとして肩や首、顎に力が入るようなら、一度時間を短くしてください。痛みがある状態で無理に練習を続ける必要はありません。
リードやアンブシュアも確認する
ロングトーンがうまくいかないと、すべて自分の息のせいだと思ってしまいがちですが、リードやセッティングも確認しましょう。
リードについては、次のような状態がないかチェックします。
- 先端が欠けている
- 大きく反っている
- 十分に湿っていない
- 硬さが自分に合っていない
- マウスピースへ正しく取り付けられていない
リードの状態が悪いと、息を入れても振動しにくかったり、逆に音が安定しなかったりします。その状態で「もっと息を吹かなければ」と考えると、さらに苦しくなることもあります。
リードの硬さについても、数字だけで一律に決めることはできません。マウスピースの開きや奏者との組み合わせで吹奏感が変わるため、自分が使っているセッティング全体で考える必要があります。
初心者向けの一例として、ヤマハは標準的な4Cマウスピースと2 1/2程度のリードを使用し、ロングトーンなどの基礎練習を通してアンブシュアを整えていく考え方を案内しています。ただし、これは全員が必ず同じ番手を使うという意味ではありません。
アンブシュアでは、下唇でリードを強く押さえ込みすぎたり、音程を合わせるために噛んだりしないよう注意します。
「チューナーの中央へ合わせたい」と思うあまり、音ごとに顎を大きく動かすのも避けたいところです。まず全体のチューニングを整え、そのうえで楽器や自分の音程傾向を把握していきます。
特に高音で音が細くなる場合、音域が上がるにつれて口を締めすぎていることがあります。一方で低音が極端に出にくい場合は、噛みすぎ、息の使い方、タンギング、リードの状態に加え、楽器のキーが正しく閉じているかも確認対象です。
低音だけが極端に出にくい、特定の音だけ毎回鳴らないといった場合は、奏法だけでなく楽器側の状態も候補になります。「全部自分の吹き方が悪い」と決めつけないようにしましょう。
原因をひとつに決めつけず、息・口・リード・楽器を分けて考えると問題を整理しやすくなります。
ロングトーンを毎日の練習に取り入れる

ロングトーンには「毎日必ず○分」という全員共通の時間があるわけではありません。初心者なら、まずは5~10分程度を基礎練習の一部として取り入れる方法が実践しやすいでしょう。
ただし、10分という数字そのものにこだわる必要はありません。数分でも集中して音を確認できれば意味があります。反対に、長時間続けて口が疲れ、後半はただ音を伸ばしているだけになってしまうなら、時間を短くする方がよい場合もあります。
毎日のメニューとしては、たとえば次のように段階を付けられます。
| 段階 | 練習内容 | 重点ポイント |
|---|---|---|
| ステップ1 | 60BPM・4拍+4拍休み・中音域5音程度 | 一定音量・姿勢・まっすぐな音 |
| ステップ2 | 60BPM・8拍+4拍休み | 音色・音程・息の安定 |
| ステップ3 | 8拍でクレッシェンドとデクレッシェンド | 強弱を変えても音を崩さない |
| ステップ4 | 半音ずつ音域を拡大 | 音域ごとの音色と音程 |
ステップ1では、まず「普通の音量でまっすぐ吹く」ことへ集中します。4拍で問題なければ8拍へ。ステップ2では時間を伸ばすだけでなく、最後の拍まで音色や音程を保てているかを見ます。
ステップ3では、一定音量とは違うコントロールへ進みます。前半で少しずつ大きくし、後半で小さくしていきます。音量が変化しても、息の流れ自体を止めないことがポイントです。
ステップ4では音域を広げます。中音域でできていたことが低音や高音でも再現できるか確認し、苦手な音を把握します。
毎回すべてをチェックしようとすると集中しにくいので、「今日は音程」「今日は音の出だし」「今日は弱音」とテーマを決めるのも有効です。
テーマを1つ決める例
- 月曜日:音色
- 火曜日:音程
- 水曜日:音の出だし
- 木曜日:弱音
- 金曜日:低音域
曜日で固定する必要はありませんが、「今日は何を確認するか」を先に決めると、ただ長く伸ばすだけになりにくくなります。
また、自分の演奏を録音すると、吹いている最中には気付きにくい音色や音量の変化を確認できます。同じ条件で定期的に録音すると、単純な秒数以外の変化も分かりやすくなります。
記録するなら、「最高で何秒吹けたか」だけでなく、次のような項目も残しておくと役立ちます。
- 何拍まで音色を維持できたか
- 音程はどの拍から動いたか
- 低音と高音で差があったか
- 弱音でも音が途切れなかったか
- 肩や顎に余計な力が入らなかったか
こうすると、たとえば「8拍という長さは変わらないけれど、以前より音程が安定した」といった成長も確認できます。
ロングトーンだけでサックス演奏のすべてが上達するわけではありません。タンギング、スケール、フィンガリング、リズム、曲の練習などと組み合わせながら、「良い1音を作るための基礎練習」として取り入れるとよいでしょう。
サックスの基礎練習メニューも確認しておくと、ロングトーン以外の練習を含めて毎日の流れを組み立てやすくなります。
練習開始時のウォームアップとして取り入れる方法もありますが、必ず最初でなければならないという絶対的な決まりもありません。その日の状態を確認したいとき、音作りへ集中したいときなど、自分の練習メニューの中で使いやすい位置に取り入れてください。
唇や顎が痛い、極端に疲れているときは無理をしないことも大切です。「毎日やる」と決めていても、良いフォームを維持できない状態で長時間吹く必要はありません。
独学で改善しないときは講師に相談する

ロングトーンは一人でも取り組みやすい練習ですが、独学では原因を判断しにくい問題もあります。
たとえば数週間練習を続けても、極端に音が揺れる、低音がほとんど出ない、すぐ音が裏返る、正しい音程に近づかないといった状態が続く場合は、経験のある講師に実際の音やフォームを確認してもらう方法があります。
サックスでは、息だけでなくアンブシュア、姿勢、リード選び、セッティング、楽器の状態など複数の要素が関係します。自分では「息が弱い」と思っていても、別の部分が原因になっている可能性もあります。
たとえば低音が出ない場合でも、候補はひとつではありません。
- アンブシュアで噛みすぎている
- 息の使い方が合っていない
- タンギングが強すぎる
- リードが合っていない
- 楽器の調整状態に問題がある
こうした複数の候補を自分だけで切り分けるのは難しいことがあります。
サックスを独学で続ける場合の練習方法も参考にすると、独学で確認しやすい部分と、講師へ相談した方が判断しやすい部分を整理できます。
実際の音と姿勢を同時に見てもらえることは、対面レッスンのメリットのひとつです。
また、ロングトーンをするとすぐ顎や唇が痛くなる場合には、「初心者だから我慢するもの」と考えないようにしてください。口周りの使い方や楽器の構え方など、確認できる部分を見直します。
特に顎や唇などに痛みが出る場合は、無理に練習を続けないようにしてください。演奏フォームについて判断できない場合は講師など経験のある人へ相談し、痛みが続く場合は必要に応じて適切な専門家へ相談することも大切です。
音楽教室で学ぶ場合も、初心者だからといって最初から難しい演奏をする必要はありません。ロングトーンのような基礎練習であれば、実際の音を聴いてもらいながら、姿勢や口の形、息の使い方を確認できます。
「自分では音が安定していると思っていたけれど、実際には途中から噛んでいる」「低音が出ない原因を息だと思っていたけれど、セッティングも確認した方がよかった」といったように、第三者に見てもらうことで原因候補を整理しやすくなる場合があります。
EYS音楽教室について検討したい場合は、EYS音楽教室の特徴やレッスン内容をまとめた記事も参考にしてください。教室を利用するかどうかは、独学で困っている点や通いやすさなどを整理して判断するとよいでしょう。
独学を続ける場合でも、教本を使って練習内容を整理する方法があります。ロングトーンだけを毎日繰り返すのではなく、呼吸、アンブシュア、タンギング、スケールなどを組み合わせると、基礎練習全体を組み立てやすくなります。
ロングトーンは「何秒できたか」を競う練習ではありません。初心者なら60BPMで4拍ほどから始め、音量・音程・音色を安定させられたら8拍へ伸ばす。これを基本にすれば十分です。
8秒を吹けないからと焦る必要はありません。4秒でも、自分で音の出だしから終わりまでコントロールできているなら、その4秒にはしっかり意味があります。
反対に、10秒、20秒と伸ばせても、後半で音程が大きく下がる、音量が急に小さくなる、アンブシュアを強く噛んで耐えているのであれば、一度短い時間へ戻してみましょう。
ロングトーンの本質は「息をどれだけ長く持たせられるか」ではなく、自分が目指す1音をどれだけ安定してコントロールできるかにあります。
少しずつ安定する時間を伸ばし、慣れてきたら弱音、強弱、全音域へと課題を広げていきましょう。秒数よりも「今日はどんな音を作るか」を意識することが、ロングトーンを実りある基礎練習にするポイントです。
まずはメトロノームを60BPMに設定して4拍。そこで音色、音程、音量、息の流れをひとつずつ確認してみてください。4拍が安定したら8拍へ。無理なく積み重ねるだけでも、自分の音を以前より細かく聴けるようになります。

