【この記事でわかること】
- 鍵盤の素材(木製・樹脂)が上達に与える決定的な影響
- 音源の違いやスピーカー数が練習の質を変える理由
- ヤマハ・カワイなど主要メーカーの特徴と最新モデル評価
- 予算別に見るコストパフォーマンス最強の推奨機種
これからピアノを始めたい、あるいは久しぶりに再開したいけれど、電子ピアノの種類があまりにも多すぎて、どのモデルを選べばいいのか途方に暮れてしまうことはありませんか。価格も数万円から数百万円までピンキリですし、カタログのスペック表を見ても「GH3鍵盤」だの「モデリング音源」だの専門用語ばかりで、自分にとって最適な一台を見つけるのは至難の業です。私自身、音楽高校時代には毎日グランドピアノに向かい、バンド活動ではシンセサイザーや電子ピアノを駆使してきました。当時の生ピアノのタッチの感覚と、現在のデジタル技術の進化を照らし合わせると、「失敗しないために見るべきポイント」は実は非常にシンプルで論理的です。この記事では、メーカーの宣伝文句に踊らされず、実際の演奏感と練習効率を重視した「損をしない選び方」を徹底解説します。
失敗しない電子ピアノの選び方とモデル判断の基準
電子ピアノを選ぶ際、どうしてもデザインの好みや「予算内に収まるか」という点だけで決めてしまいがちです。しかし、楽器としての本質を見落とすと、購入後に「指が思うように動かない」「表現力が身につかない」といった致命的な後悔をすることになります。ここでは、長く愛用し、確実に上達するために絶対に外せない5つの判断基準について、私の実体験と理論に基づいて詳細に解説します。
鍵盤のタッチや素材による違い
電子ピアノ選びにおいて、最も妥協してはいけないのが「鍵盤のクオリティ」です。断言しますが、電子ピアノの価格差の7割は、この鍵盤の構造と材質の違いにあると言っても過言ではありません。初心者のうちは「音が鳴ればなんでも同じ」と思いがちですが、実は初心者の時期こそ、正しい指のフォームや筋力を養うために、良質な鍵盤が必要なのです。
樹脂製(プラスチック)鍵盤の特徴と限界
15万円以下のエントリーモデルに多く採用されているのが、樹脂製鍵盤です。これらは軽量でメンテナンスフリー、コストも安いというメリットがあります。しかし、構造的な限界として、鍵盤の中身が空洞であったり、戻る力がバネや簡易的な重り(ウェイト)に依存していたりすることが多いのです。
私が実際に弾いてみて気になるのは、打鍵時の「底付き感」と「戻りの挙動」です。樹脂製鍵盤は、強く弾いた時に指に「ガツン」という衝撃が返ってきやすく、長時間練習していると指や手首を痛める原因になることがあります。また、鍵盤が指から離れる瞬間の挙動が、バネの力で「ピンっ」と跳ね返ってくるような感覚があり、これが生ピアノの「重力で自然に戻ってくる感覚」とは大きく異なります。トリル(2つの音を交互に素早く弾く)や連打をする際に、この不自然な反発力が邪魔をして、うまく弾けないという現象が起こりやすいですね。
木製鍵盤(無垢材・ハイブリッド)の圧倒的優位性
一方で、20万円以上のクラスに搭載されることが多い木製鍵盤は、生ピアノと同様の木材(スプルース材など)を使用しています。木材は樹脂に比べて適度な重量と剛性があり、弾いた時の振動を吸収してくれるため、指への負担が劇的に軽減されます。
「シーソー式」と呼ばれる構造を採用しているモデル(カワイのCAシリーズなど)では、鍵盤の手前を押すと、奥側にあるハンマーが跳ね上がるという、グランドピアノと同じ物理運動を再現しています。これにより、鍵盤を押した瞬間の「抵抗感(初動の重さ)」と、音が鳴った後の「抜け感」、そして指を離した時の「吸い付くような戻り」が得られます。これは単なる「高級感」の話ではなく、「生ピアノで弾いた時に、意図した通りの音が出せる指を作る」ために必須の要素なのです。
グランドピアノ特有の、鍵盤をゆっくり押し込んでいくと途中で「カクッ」としたクリック感を感じる仕組みを「エスケープメント」と言います。これが再現されている電子ピアノだと、ピアニッシモ(極めて弱い音)をコントロールする感覚が掴みやすくなります。中級機以上には大抵搭載されていますが、購入前に必ずスペック表で確認してください。
最近のトレンドとしては、ローランドやヤマハの上位機種で見られる「ハイブリッド鍵盤」も優秀です。これは木材と樹脂を組み合わせることで、木の弾き心地と樹脂の耐久性(湿気による歪みが少ない)をいいとこ取りしたものです。純粋な木製鍵盤信者もいますが、ハイブリッドもメンテナンス性の観点からは非常に賢い選択肢かなと思います。
音源の質とスピーカーの数
「どうせアパートだからヘッドホンでしか弾かないし、スピーカーなんて関係ない」と考えている方は非常に多いですが、これは大きな落とし穴です。実は、電子ピアノの上達には「空間で音がどう響いているかを感じ取る能力」が深く関わっているからです。
サンプリング音源とモデリング音源の違い
電子ピアノの音の出し方には、大きく分けて2つの方式があります。
| 音源方式 | 仕組み | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| サンプリング音源 (ヤマハ、カワイなど) |
最高級グランドピアノの音を1音ずつ丁寧に録音し、再生する方式。 | 本物のピアノの音そのものなので、違和感がなく、美しく整った音が鳴る。 | 録音された音以上の変化(弦の複雑な共鳴など)を再現するのに限界がある場合がある。 |
| モデリング音源 (ローランド上位機など) |
ピアノの構造を仮想的に計算し、リアルタイムで音を合成・生成する方式。 | 弾き方やペダルの踏み加減で、無限に音色が変化する。表現力の幅が広い。 | 計算で音を作るため、人によっては「デジタルっぽい」「作られた音」と感じることがある。 |
ヤマハの「CFXサンプリング」やカワイの「SK-EXレンダリング」などは、世界的に評価の高いコンサートグランドピアノの音を収録しており、非常に高品位です。特に最近のモデルでは「バイノーラルサンプリング」といって、ヘッドホンをした時にあたかもピアノ本体から音が鳴っているように聞こえる特殊な録音技術が採用されており、長時間のヘッドホン練習でも耳が疲れにくくなっています。
スピーカー数がもたらす「音の定位」
安価なモデル(5〜10万円)は、基本的にスピーカーが2つ(左右1個ずつ)しかありません。しかも、本体の下側に配置されていることが多く、音が足元からモゴモゴと聞こえてくる感覚になります。これでは、高音域のキラキラした倍音や、低音域の重厚な響きを正確に感じ取ることができません。
対して、15〜20万円以上の中級機になると、スピーカーが4つ(4ch)以上搭載されます。これを「2wayシステム」と呼びますが、高音用(ツイーター)を演奏者の耳に近い位置に向け、低音用(ウーファー)を本体下部に配置することで、音を分離させています。これにより、グランドピアノのように「高音は目の前から、低音は楽器全体から響く」という立体感(音の定位)が生まれます。
私が試奏した経験でも、4スピーカー以上のモデルで練習すると、自分が弾いた音の強弱やニュアンスがダイレクトに耳に届くため、「あ、今のは少しタッチが強すぎたな」といった微細なコントロールの修正が自然とできるようになります。練習効率を考えるなら、スピーカーの数は絶対に妥協すべきではありません。
ペダル機能と最大同時発音数
ピアノ演奏において、ペダルは「足で弾く」と言われるほど重要な表現装置です。しかし、電子ピアノ選びではどうしても鍵盤ばかりに目が行き、ペダルがおろそかにされがちです。
ハーフペダル対応は必須条件
まず確認すべきは「ダンパーペダル(一番右のペダル)」の性能です。安価なモデルやポータブルタイプに付属している四角いスイッチ式のペダルは、単なる「ON/OFFスイッチ」です。踏めば音が伸び、離せば切れる。これだけです。しかし、実際のピアノ演奏では、ペダルを半分だけ踏んで響きを少し残したり、じわっと踏み込んで音を滲ませたりする「ハーフペダル」という奏法を多用します。
もし購入するモデルがハーフペダルに対応していないと、中級レベルの曲(例えばドビュッシーやショパンなど)に入った瞬間に、表現ができなくて詰んでしまいます。「連続検出」に対応したペダルユニットが搭載されているか、あるいは別売りで対応ペダルが接続できるかは、必ずチェックしてください。
3本ペダルの役割と重要性
据え置き型の電子ピアノには標準で3本のペダルが付いていますが、それぞれの役割を正しく理解しておきましょう。
- ダンパーペダル(右): 音を長く響かせる。最も使用頻度が高い。
- ソフトペダル(左): 音を少し柔らかく、小さくする。表現の幅を広げるために使う。
- ソステヌートペダル(中): 押した瞬間に弾いていた音だけを伸ばす。高度なクラシック曲で使用。
初心者のうちは右のペダルしか使わないかもしれませんが、左のソフトペダルを使う練習も徐々に入ってきます。また、ペダル自体の「踏み心地(重さ)」も重要です。軽すぎるペダルは微調整が難しく、踏み替えの練習になりません。ヤマハやカワイの上位機種には、踏み始めは軽く、効き始めると重くなるというグランドピアノ特有の感触を再現した「グランド・フィール・ペダル・システム」などが搭載されています。
最大同時発音数の目安
これは「同時にいくつの音を鳴らせるか」というスペック値です。ペダルを踏んで音を伸ばすと、前の音が消えずに残るため、見た目以上に多くの発音数を消費します。また、電子ピアノは1つの鍵盤を押した時に、ステレオ(左右)や共鳴音など複数の音を重ねて出力しているため、計算上はさらに消費が激しくなります。
- 64音: 初心者向けのエントリー機。ペダルを多用すると音がプツっと切れることがある。
- 128音: 一般的なポップスやブルグミュラー程度の練習曲なら十分。
- 192〜256音: 現在のスタンダード。 リストやラフマニノフのような超絶技巧曲を弾かない限り、音が途切れることはまずない。
これから購入するなら、最低でも192音以上のモデルを選んでおけば、将来的にどんな曲に挑戦することになってもスペック不足で困ることはありません。
予算と価格帯で見る性能の差
「高い電子ピアノと安い電子ピアノ、何がそんなに違うの?」という疑問を持つ方は多いでしょう。電子ピアノの価格設定は非常にシビアで、基本的に「鍵盤の構造」と「スピーカーシステム(アンプ出力)」のコストがそのまま価格に反映されています。ざっくりとした価格帯ごとの「できること・できないこと」を整理しました。
〜6万円(エントリー・卓上クラス)
この価格帯は、主に卓上タイプ(ポータブル)が中心です。スタンドや椅子、3本ペダルは別売りである場合が多いので、総額では結局8〜9万円になることもあります。
- 鍵盤: 軽量な樹脂製。バネ感が強く、打鍵音がカチャカチャと大きめ。
- 音源: 簡易的なサンプリング音源。スピーカーは2つで出力も小さめ(6W+6W程度)。
- 総評: 「続くかわからないからとりあえず」「持ち運んでバンドで使いたい」という用途向け。クラシックを真剣に学ぶには少し力不足です。
10万円〜15万円(スタンダード・レッスン初期クラス)
ここからが、いわゆる「家具調(キャビネットタイプ)」の電子ピアノになります。安定したスタンドと3本ペダルが一体化しており、見た目もピアノらしくなります。
- 鍵盤: 高品質な樹脂製。各メーカーの工夫(ヤマハのGH3鍵盤など)により、重さと戻りのバランスが改善されています。
- 音源: 上位機種と同じサンプリングデータを使っているモデルも増えてきます。
- 総評: 小学生のピアノレッスン用として最も売れているゾーン。ただし、タッチにこだわり始めると数年で買い替えを検討したくなるかもしれません。
15万円〜25万円(ハイパフォーマンス・脱初心者クラス)
私が個人的に「最もコストパフォーマンスが高い」と推奨するのがこの価格帯です。
- 鍵盤: 木製鍵盤(またはハイブリッド)が標準装備になります。タッチのリアルさが格段に向上します。
- スピーカー: 4スピーカーモデルが登場し、音の立体感が生まれます。
- 総評: 趣味で弾く大人の方や、ソナチネ・ソナタレベルを目指す子供にとって、長く使える最適な選択肢です。このクラスを買っておけば、よほどのことがない限り「楽器のせいで上手くならない」という言い訳はできません。
25万円〜(フラッグシップ・本格派クラス)
各メーカーの技術の粋を集めたトップモデルたちです。
- 鍵盤: 鍵盤の長さ(支点距離)がグランドピアノと同等になり、奥側を弾いても重くなりません。さらに、鍵盤振動機能などが付きます。
- 音響: 6スピーカーや8スピーカーになり、天板が振動して音を出すなど、筐体全体を楽器として響かせる設計になります。
- 総評: 予算に余裕があり、生ピアノに近い環境を自宅に作りたい方には最高です。ただし、本体サイズも大きく重くなる(70kg〜)ので、設置場所の確認は必須です。
自宅での防音対策と設置環境
電子ピアノの最大のメリットは「音量調節ができる」「ヘッドホンが使える」ことですが、実は「音」以外の騒音問題があることをご存知でしょうか。それが「打鍵音(だけんおん)」です。
打鍵音という盲点
ピアノを弾くとき、指は結構な勢いで鍵盤を叩いています。その衝撃は「ゴトゴト」「コトコト」という低周波の振動となって、筐体の脚を伝わり、床へと抜けていきます。この振動音は、空気中を伝わる音(ピアノの音色)とは違い、ヘッドホンをしていても消えません。特にマンションやアパートなどの集合住宅では、この振動が階下の住人の天井を鳴らしてしまい、トラブルになるケースが後を絶ちません。
環境省のデータなどを参照しても、固体伝播音(床や壁を伝わる音)は対策が難しいため、発生源での対策が重要とされています。
集合住宅における騒音トラブルの多くは、音そのものよりも「床への衝撃音」が原因です。特に夜間の練習では、静まり返っているため打鍵音が響きやすくなります。
(出典:環境省『生活騒音の現状と対策』)
効果的な防音・防振対策
トラブルを未然に防ぐために、以下の対策を強くおすすめします。
- 専用の電子ピアノ用マットを敷く:
ホームセンターで売っている薄いカーペットではなく、楽器店で売っている「防音・防振マット」を使用してください。これらは打鍵時の衝撃を吸収する特殊な素材で作られています。予算は1万円〜2万円ほどかかりますが、近隣トラブルのリスクを考えれば安い投資です。 - ディスクふにゃふにゃシステム(自作防振台):
これはネット上のDTM界隈などで有名な方法ですが、バランスディスク(空気の入ったゴムのクッション)の上に板を渡し、その上にピアノを設置するという方法です。ピアノを床から「浮かせる」ことで、振動をほぼ完全に遮断できます。見た目は少しゴツくなりますが、効果は絶大です。 - 練習時間を区切る:
物理的な対策だけでなく、やはり「夜21時以降は弾かない」といったルール決めもマナーとして大切です。
設置スペースの確認
88鍵盤の電子ピアノは、横幅が約130cm〜145cmあります。しかし、設置に必要なのは本体のサイズだけではありません。
- 椅子のスペース: 演奏者が座るために、鍵盤の手前から60cm〜80cmほどの空間が必要です。
- 壁との距離: 多くの電子ピアノは、背面からも音が出る設計になっていたり、転倒防止金具が付いていたりします。壁にぴったりくっつけすぎると音がこもる原因にもなるので、5cm〜10cmほど隙間を空けて設置するのが理想的です。
メーカー別電子ピアノの選び方と推奨モデル比較
スペックや構造の話を一通り理解したところで、いよいよ具体的なメーカー選びに入ります。現在、世界の電子ピアノ市場は、日本のメーカーが圧倒的なシェアと技術力を誇っています。「どのメーカーも同じようなものでしょ?」と思うかもしれませんが、実は各社には創業以来の明確な「設計思想」や「音への哲学」があり、弾き比べてみるとそのキャラクターの違いに驚かされます。
ここでは、主要メーカー(ヤマハ、カワイ、ローランド、カシオ、コルグ)の2026年現在の立ち位置と特徴、そして私が自信を持っておすすめする最新モデルについて、忖度なしで解説します。
ヤマハやカワイなどメーカーの特徴
ヤマハ (YAMAHA):優等生にして絶対王者
言わずと知れた世界最大の楽器メーカーです。ヤマハの電子ピアノ「Clavinova(クラビノーバ)」シリーズの最大の特徴は、「癖のなさ」と「圧倒的な安心感」です。自社でコンサートグランドピアノ(CFXなど)を作っている強みを活かし、その音をそのままサンプリングしています。
音色は明るく、華やかで、粒立ちが良いのが特徴。「ピアノと言えばこの音」というスタンダードな響きなので、学校の音楽室やピアノ教室でヤマハのピアノに慣れ親しんでいる人には、最も違和感が少ないでしょう。また、耐久性に関しても信頼性が高く、故障のリスクが比較的低いのも、長く使う上での大きなメリットです。アプリ「Smart Pianist」の使い勝手も洗練されており、楽譜表示や音色設定がスマホで直感的に行える点も評価できます。
カワイ (KAWAI):鍵盤への執念と重厚な響き
ヤマハと双璧をなすピアノメーカーですが、カワイはより「職人気質」なイメージがあります。カワイの電子ピアノ(CAシリーズ、CNシリーズ、最新のCXシリーズ)は、とにかく「鍵盤(タッチ)」へのこだわりが凄まじいです。
他社がまだ樹脂製鍵盤をメインにしていた時代から、カワイはいち早く木製鍵盤を主力モデルに採用してきました。「白鍵だけでなく黒鍵も木製」「支点の位置を奥にしてシーソーの動きを再現」など、物理的な構造で生ピアノに近づけるアプローチが得意です。音色はヤマハに比べると「重厚で落ち着いた、深みのある音」です。キラキラした派手さはありませんが、芯のある響きはクラシック愛好家や、指先のコントロールを重視する層から熱狂的な支持を得ています。
ローランド (Roland):電子楽器のパイオニア
ローランドはアコースティックピアノを作っていない、純粋な電子楽器メーカーです。だからこそ、「電子でしかできないこと」を追求する姿勢が面白いメーカーです。
最大の特徴は「モデリング音源」と「スピーカーシステムの空間設計」です。録音した音を再生するのではなく、リアルタイムで音を生成するため、表現の自由度が非常に高いです。また、Bluetooth機能やスマホ連携などのIT機能の導入も早く、現代のライフスタイルに合わせた製品作りが得意です。音色は煌びやかで透明感があり、特に空間系エフェクト(リバーブなど)の美しさはさすがシンセサイザーメーカーといったところです。
カシオ (CASIO) & コルグ (KORG):スリム&ハイコスパ
カシオは以前は「安いキーボード」のイメージがありましたが、現在は「Celviano(セルヴィアーノ)」や「Privia(プリヴィア)」ブランドで、本格的な電子ピアノを展開しています。特にカシオはベヒシュタイン(世界三大ピアノの一つ)とコラボレーションした音源を搭載するなど、音質面での進化が著しいです。また、デザイン性にも優れており、インテリアに馴染む薄型モデルが得意です。
コルグはシンセサイザーの老舗で、日本製の高品質な鍵盤(RH3鍵盤など)を搭載しながら、驚くほど低価格なモデル(C1 Airなど)を販売しています。余計な機能を削ぎ落とし、「良い音と良いタッチ」に特化した質実剛健なモデルが多いのが特徴です。
初心者におすすめのコスパ機種
「ピアノを始めたいけれど、続くかどうかわからないし、いきなり20万円は出せない…」という方も多いはずです。ここでは、実売価格10万円前後で購入でき、かつ「おもちゃ」ではなくしっかりと「楽器」として練習に使える、コストパフォーマンス最強のモデルを厳選しました。
(実勢価格:約6万円〜 ※スタンド別)
ポータブルタイプのド定番です。前モデルP-125からデザインが一新され、よりスリムになりました。最大の売りは、この価格帯でヤマハの最高峰「CFX」の音源を搭載していること。鍵盤は「GHC鍵盤」という新開発のコンパクト鍵盤ですが、従来の重さをしっかりキープしつつ、連打性も確保されています。別売りのスタンドとペダルを揃えれば、立派な据え置きピアノになります。
(実勢価格:約11万円前後)
2025年に登場したカワイの新スタンダード「CXシリーズ」のエントリーモデルです。旧CNシリーズの後継にあたりますが、音源チップが刷新され、空気感の再現性が向上しています。鍵盤は樹脂製ですが、ウェイトバランスが絶妙で、カワイらしい「しっかりした弾き応え」があります。Bluetooth Audio/MIDIも標準装備で、隙のない一台です。
(実勢価格:約12万円前後)
「使いやすさ」で選ぶならこれです。操作パネルが日本語表示でわかりやすく、子供でも直感的に音色を変えたり録音したりできます。音源は上位機種譲りの「スーパーナチュラル・ピアノ音源」で、表現力も十分。デザインも家具調で高級感があり、リビングに置いても様になります。
本格的な練習に向く木製鍵盤機種
「子供のレッスン用に先生から勧められた」「昔やっていたピアノを本格的に再開したい」という方には、妥協なく木製鍵盤搭載モデルをおすすめします。このクラスを選んでおけば、中級〜上級レベルの曲になっても買い替える必要がなく、結果的に最も安上がりになることもあります。
| モデル名 | メーカー | 特徴・推奨理由 |
|---|---|---|
| CA401 | カワイ | 【木製鍵盤の入門機】 実売10万円台後半でフル木製鍵盤(シーソー式)を搭載している奇跡のモデル。スピーカーは4つあり、音の広がりも十分。タッチ重視なら最強のコスパを誇ります。 |
| CX302 | カワイ | 【2026年の大本命】 CXシリーズの上位機種。樹脂と木のハイブリッド的なアプローチで、反応速度と耐久性を両立。上面放射スピーカーによる音の包まれ感が素晴らしく、楽器店大賞も納得の完成度。 |
| CLP-835 / 845 | ヤマハ | 【王道の安心感】 CLP-835は樹脂鍵盤ですが、CLP-845からは木製鍵盤になります。ヤマハ特有の明るい音と、VRM(バーチャル・レゾナンス・モデリング)による複雑な共鳴音が美しく、弾いていて気持ちが良いモデルです。 |
| LX-5 | ローランド | 【表現力の鬼】 ローランドの最新LXシリーズのエントリー。モデリング音源による滑らかな音色変化は、ドビュッシーなどの繊細な曲で威力を発揮します。アプリとの連携機能も最強クラス。 |
私個人の見解としては、タッチ(弾き心地)最優先ならカワイのCA401、音色の華やかさと総合バランスならヤマハのCLP-845、機能性と表現力の幅ならローランドのLX-5、という選び分けがベストだと考えます。
スタイリッシュな薄型モデル
日本の住宅事情において、「ピアノを置く場所がない」というのは切実な問題です。しかし、最近は技術の進歩により、奥行きわずか30cm程度でも高音質なモデルが増えています。
カシオ Privia PX-S1100 / PX-S5000
「世界最小クラスのスリムボディ」を謳うカシオのヒット商品です。奥行きはなんと約23cm。光沢のあるフラットな天板にタッチパネルが浮かび上がるデザインは、未来感があり非常にカッコいいです。PX-S5000以上のモデルには、木材と樹脂のハイブリッド鍵盤が採用されており、この薄さで本格的なタッチを実現しているのは驚異的です。ただし、構造上、鍵盤の支点が短めなので、鍵盤の奥側を弾くときは少し重く感じるかもしれません。
コルグ C1 Air / G1B Air
コルグのスタイリッシュピアノは、脚付きのデザインが美しく、蓋を閉めると完全なフラットテーブルになります。特にG1B Airは、背面に大きなスピーカーを搭載しており、壁に音を反射させてグランドピアノのような響きを作る設計が秀逸です。鍵盤も日本製(RH3鍵盤)で、しっかりとした重さがあり、クラシックの練習にも耐えうる仕様です。
中古のリスクと寿命に関する注意点
最後に、よくある「中古で安く済ませたい」という相談について、私の考えを述べます。結論から言うと、電子ピアノの中古購入は「目利き」ができない限り推奨しません。
電子ピアノの寿命は、一般的に10年から15年と言われています。しかし、これは「音が鳴らなくなるまで」の期間であり、「快適に弾ける期間」はもっと短いです。
- 鍵盤のグリス切れ: 5年ほど使われた個体は、内部の潤滑油(グリス)が劣化し、鍵盤がスムーズに戻らなくなったり、プラスチック同士が擦れる雑音が出たりします。
- クッションのへたり: 鍵盤の底にあるフェルトが潰れると、「カタンカタン」という打鍵音が大きくなり、指への衝撃も強くなります。
- センサーの故障: 特定の鍵盤だけ音が急に大きくなったり、逆に鳴らなくなったりする接触不良も多いトラブルです。
これらの不具合は、外見からは全く分かりません。ネットオークションやフリマアプリで「美品です」と書かれていても、内部の状態は不明です。しかも、メーカーの補修用性能部品の保有期間(生産終了から7〜8年)を過ぎていると、故障しても修理さえ断られてしまいます。
電子ピアノは精密機器であり、消耗品です。数万円ケチって状態の悪い中古を買うくらいなら、新品のエントリーモデル(P-225など)を買った方が、保証も付きますし、精神衛生的にも絶対に良いはずです。
電子ピアノの選び方とモデルまとめ
長くなりましたが、電子ピアノ選びの旅は、これで終わりです。最後に要点を振り返りましょう。
- 鍵盤が命: 予算が許すなら「木製鍵盤(20万円〜)」、最低でもメーカーこだわりの樹脂鍵盤を選ぶこと。タッチの悪さは上達を妨げます。
- スピーカー数: 4スピーカー以上のモデルは、音の聞こえ方が段違いに良く、練習効率が上がります。
- メーカーの個性: ヤマハは安心感、カワイはタッチ、ローランドは表現力。自分の好みに合わせて選んでOKです。
- 設置環境: 打鍵音対策(マットなど)は必須。サイズは椅子を含めたスペースで計算すること。
ピアノという楽器は、弾けば弾くほど自分の感情に応えてくれる素晴らしいパートナーになります。電子ピアノであっても、その喜びは十分に味わえます。「今の自分にはもったいない」なんて思わず、ぜひ、あなたがワクワクするような一台を選んでください。この記事が、あなたの音楽ライフの最初の一歩を後押しできれば、これ以上の喜びはありません。
ネットの情報だけで決めるのではなく、最終的には楽器店で実機に触れてみてください。ピアノが弾けなくても大丈夫。「ドレミ」と弾くだけでも、鍵盤の重さや音の響きが自分に合うかどうか、直感で分かるはずですよ。



