トロンボーンを始めたばかりのころ、「音は出せるようになってきたけれど、楽譜を見ても何番ポジションなのかすぐに分からない」と感じる人は少なくありません。
とくに迷いやすいのが、トロンボーンで基本となるヘ音記号の読み方です。ピアノや学校の音楽でト音記号に慣れていると、同じ五線でも音名が変わるため、最初は戸惑いやすくなります。
さらに、トロンボーンはB♭管と呼ばれるため、「B♭管なら、トランペットのように移調して読むのでは?」という疑問も出てきます。ところが、日本の吹奏楽やオーケストラなどで一般的に使われるヘ音記号のトロンボーン譜は、基本的に実音で記譜されています。
そのため、初心者の段階では「B♭管だから全部読み替える」と考えるより、まずヘ音記号をそのまま読めるようになることが重要です。
この記事では、初心者がまず覚えたいヘ音記号から、音符とスライドポジションの結び付け方、調号やリズムの読み方、譜読みを速くする練習方法、そして将来必要になるテナー記号などのハ音記号まで順番に整理します。
- トロンボーンで基本となるヘ音記号の読み方
- 音符と1〜7のスライドポジションの結び付け方
- B♭管でも一般的な譜面を移調せず読む理由
- 調号、臨時記号、拍子、リズムの基本
- 譜読みを速くするための練習方法
- テナー記号やアルト記号を学ぶタイミング
トロンボーン楽譜はヘ音記号が基本
日本の吹奏楽や一般的な合奏でテナートロンボーンを演奏する場合、まず読むことになるのがヘ音記号です。
ヘ音記号は低い音域を五線の中へ収めやすくするための音部記号で、トロンボーンの音域を記譜するのに適しています。
楽譜を見たとき、最初に確認したいのは音符そのものではなく音部記号です。ヘ音記号なのか、テナー記号なのか、別の音部記号なのかによって、同じ五線上の位置でも音名が変わります。
初心者向けの吹奏楽譜などではヘ音記号が基本なので、まずはここをしっかり読めるようにしましょう。最初からテナー記号やアルト記号まで同時に覚えようとすると、五線上の位置と音名の対応が混ざりやすくなります。
初心者はまずヘ音記号を安定して読めることを優先すると、実際の演奏につなげやすくなります。
ヘ音記号の線と間の音名
ヘ音記号を読むときは、五線を下から数えるのが基本です。
五線は5本の線でできています。下から順に第1線、第2線、第3線、第4線、第5線と数えます。線と線の間も、下から第1間、第2間、第3間、第4間と数えます。
ヘ音記号の右側には2つの点があります。この2つの点に挟まれている第4線、つまり下から4本目の線が「F(ファ)」です。
ヘ音記号を英語でF clefと呼ぶのは、この第4線のFを基準にするためです。まずこの「第4線=F」を基準として覚えると、上下の音を順番にたどりやすくなります。
| 位置 | 音名 | ドレミ |
|---|---|---|
| 第1線 | G | ソ |
| 第2線 | B | シ |
| 第3線 | D | レ |
| 第4線 | F | ファ |
| 第5線 | A | ラ |
線の上にある音は、下から「ソ・シ・レ・ファ・ラ」です。英語音名なら「G・B・D・F・A」になります。
次に、線と線の間の音を見てみましょう。
| 位置 | 音名 | ドレミ |
|---|---|---|
| 第1間 | A | ラ |
| 第2間 | C | ド |
| 第3間 | E | ミ |
| 第4間 | G | ソ |
間の音は、下から「ラ・ド・ミ・ソ」。英語音名なら「A・C・E・G」です。
線と間を別々に丸暗記しても構いませんが、音楽の音名はAからGまで順番に並んでいるので、1つ基準が分かれば隣の音をたどることもできます。
たとえば第4線がFなら、そのすぐ上の第4間はG、その上の第5線はAです。反対に、第4線Fのすぐ下の第3間はE、その下の第3線はDになります。
このように、位置を単独で暗記するだけでなく「線と間を1段ずつ進むと音名も1つずつ進む」と理解しておくと、新しい音域でも対応しやすくなります。
ドレミと英語音名の対応も一緒に覚えておきましょう。
- ド=C
- レ=D
- ミ=E
- ファ=F
- ソ=G
- ラ=A
- シ=B
トロンボーンでは楽譜、教則本、ポジション表などで英語音名が使われることもあるため、「ド」と「C」を別々のものとして覚えるのではなく、同じ音として結び付けておくと便利です。
よく使う音域から覚える
ヘ音記号のすべての音を最初から一度に暗記しようとすると負担が大きくなります。初心者なら、実際によく使う音域から少しずつ覚えていくほうが、譜読みと演奏を結び付けやすくなります。
五線の中だけでなく、その上下にも音は続きます。五線から外れた音は「加線」と呼ばれる短い線を足して表します。
| 音 | ヘ音記号上の位置 |
|---|---|
| E2 | 五線下の加線 |
| F2 | 五線直下の間 |
| G2 | 第1線 |
| A2 | 第1間 |
| B2 | 第2線 |
| C3 | 第2間 |
| D3 | 第3線 |
| E3 | 第3間 |
| F3 | 第4線 |
| G3 | 第4間 |
| A3 | 第5線 |
| B3 | 五線直上の間 |
| C4 | 五線上の加線 |
C4は一般に「中央のド」と呼ばれる音です。ヘ音記号では、五線の上に1本加線を書いた位置になります。
初心者が最初に譜読みを練習するときは、譜面を見ながら「第3線だからD」「第4線だからF」というように、位置と音名を声に出して確認してみると分かりやすくなります。
慣れてきたら、毎回「第3線だから」と数えず、音符を見た瞬間にDと判断できることを目指します。
ただし、音符の形だけを見ていきなりポジション番号へ変換する覚え方には注意が必要です。
たとえば「この高さなら4番」という図形のような覚え方だけに頼ると、調号や臨時記号が付いたときや、別の音域、テナー記号へ進んだときに混乱しやすくなります。
「音符→音名→ポジション」の順番で理解することを意識すると、後から応用しやすくなります。
この流れを実際の音と結び付けながら身に付けたい場合は、トロンボーンにも対応しているEYS音楽教室のような対面レッスンで確認する方法もあります。
音符とポジションを結び付ける
トロンボーンの譜読みで特徴的なのが、音符を読んだあとにスライドポジションへ変換する作業です。
ピアノなら書かれた音に対応する鍵盤があり、押す位置が固定されています。しかしトロンボーンには、ギターのフレットや鍵盤のような明確な段差がありません。
さらに、同じスライドポジションから複数の高さの音を出せます。そのため「何番ポジションか」だけを暗記するのではなく、何の音を吹いているのかまで理解することが大切です。
基本ポジションは1〜7
通常のトロンボーンには、1〜7の基本的なスライドポジションがあります。
第1ポジションはスライドをもっとも入れた状態です。数字が大きくなるほど、スライドを外側へ伸ばしていきます。
同じ倍音系列の中では、1ポジション外側へ移るごとに管が長くなり、基本的に半音ずつ低くなります。ヤマハのトロンボーンのスライド構造に関する公式解説でも、スライドによって管長を変え、無段階に音の高さを変えられる仕組みが確認できます。
| 音 | ヘ音記号上のおおよその位置 | 基本ポジション |
|---|---|---|
| E2 | 五線下の加線 | 7 |
| F2 | 五線直下 | 6 |
| F♯2 / G♭2 | F2とG2の間 | 5 |
| G2 | 第1線 | 4 |
| A♭2 / G♯2 | 第1線と第1間の間 | 3 |
| A2 | 第1間 | 2 |
| B♭2 | A2とB2の間 | 1 |
| B2 | 第2線 | 7 |
| C3 | 第2間 | 6 |
| D♭3 / C♯3 | C3とD3の間 | 5 |
| D3 | 第3線 | 4 |
| E♭3 / D♯3 | D3とE3の間 | 3 |
| E3 | 第3間 | 2 |
| F3 | 第4線 | 1 |
| G3 | 第4間 | 4 |
| A♭3 / G♯3 | G3とA3の間 | 3 |
| A3 | 第5線 | 2 |
| B♭3 | 五線直上付近 | 1 |
この表は、標準的なB♭テナートロンボーンでF管アタッチメントを使わない場合の基本的な代表ポジションです。音ごとの位置を確認したい場合は、ヤマハ公式のトロンボーンポジション図も参考にできます。
ここで注意したいのは、「4番ならこの位置」と機械的な一点で考えすぎないことです。
トロンボーンのポジションには、ギターのフレットのような固定された境目がありません。同じ番号でも、楽器、温度、音域、倍音、奏法などによって最適な位置にはわずかな違いが生じます。数字は基本位置の目安として覚え、最終的には耳やチューナーを使って音程を確認する必要があります。
そのため、「第4ポジションはベルの先端と必ず同じ場所」のような固定的な覚え方だけでは対応できない場合があります。
初心者のうちは代表的な位置を身に付けることが必要ですが、同時に「ポジション番号は音程を作るための目安」と理解しておくとよいでしょう。
また、F管アタッチメントを使用すると管長が変わるため、通常時とはポジションの間隔が変わります。F管使用中は、同じ番号でも通常のB♭管状態とまったく同じ場所になるとは限りません。
ヤマハのテナーバストロンボーン・バストロンボーンの公式解説でも、バルブ使用時にはスライド位置が通常より外側へ変化することが示されています。
バストロンボーンでも、バルブ構成やチューニング方式によって低音域でのポジションや操作が変わるため、基本の7ポジション表だけですべてを説明することはできません。
同じポジションで音が変わる理由
初心者がよく迷うのが、「第1ポジションならB♭と覚えたのに、第1ポジションでFも出てくるのはなぜ?」という点です。
これはトロンボーンが、スライドの位置だけで音程を決める楽器ではないためです。
トロンボーンでは、同じ管の長さから複数の倍音を出せます。奏者は唇の振動、息の速さ、アンブシュアなどを調整して、同じポジションのまま異なる高さの音を吹き分けます。
たとえば第1ポジションでは、初心者がよく使う範囲だけでもB♭2、F3、B♭3などを吹き分けられます。ヤマハのスライドと音の仕組みに関する公式解説でも、1つのポジションから複数の音を出せることが説明されています。
つまり「第1ポジション=B♭」ではありません。
1つのポジションには複数の音があることを理解するのが、トロンボーンの譜読みではとても重要です。
実際に楽譜を読むときは、まず書かれている音の高さを判断します。そのうえで、その高さを出せる倍音とスライドポジションを選びます。
同じポジションから違う音を吹き分ける感覚は、楽譜だけを見ていると分かりにくいかもしれません。B♭2、F3、B♭3のように、同じ第1ポジションで異なる音を順番に確認すると、「同じ場所でも高さを変えられる」ことを理解しやすくなります。
音域が上がるにつれて、同じ音を別のポジションで演奏できるケースも増えます。これを替えポジションとして利用することがあります。ただし、初心者が最初から替えポジションをすべて覚えようとすると混乱しやすいため、まずは基本ポジションを確実にするほうが理解しやすくなります。
上達すると、前後の音との移動距離を短くしたり、音程や音色を考えたりして替えポジションを選ぶことがあります。ただし、どの替えポジションが適切かは曲や前後の音によって変わるため、「この音は必ずこの替えポジション」と一律に決めることはできません。
B♭長音階で覚える
音名とポジションをまとめて覚える練習として使いやすいのが、B♭長音階です。
初心者が頻繁に練習する1オクターブのB♭長音階では、次のような音とポジションの対応になります。
| 音 | ポジション |
|---|---|
| B♭2 | 1 |
| C3 | 6 |
| D3 | 4 |
| E♭3 | 3 |
| F3 | 1 |
| G3 | 4 |
| A3 | 2 |
| B♭3 | 1 |
ポジションの順番は1→6→4→3→1→4→2→1です。
ただし、この数字の順番だけを暗記して終わらせないようにしましょう。
「B♭は1番」「Cは6番」「Dは4番」というように、音名とセットで確認します。さらに譜面上の位置も一緒に見れば、「音符の位置・音名・ポジション」の3つを結び付ける練習になります。
たとえばB♭2、F3、B♭3はいずれも第1ポジションですが、高さは異なります。この3音を見比べるだけでも、トロンボーンではスライド位置だけで音が決まらないことが分かります。
練習するときは、最初に楽譜を見て音名を言い、次にポジション番号を言い、最後に実際に吹くという順番でも構いません。
「譜面を見る→すぐ数字を思い出す」という練習だけではなく、「何の音を吹いているのか」を意識しておくことが大切です。
B♭管でも移調せずに読む
トロンボーン初心者が譜読みで迷いやすいポイントの一つが、「B♭管なら移調する必要があるのでは?」という疑問です。
標準的なテナートロンボーンは一般にB♭管と呼ばれます。
ただし、日本の吹奏楽やオーケストラなどで一般的に使われるヘ音記号のトロンボーンパートは、基本的に実音で記譜されています。
つまり、ヘ音記号にCと書かれていれば、通常は実際にもコンサートCを鳴らします。
一般的なヘ音記号のトロンボーン譜は移調せずに読むと覚えておくと、最初の混乱を減らせます。
トランペットなどのB♭管では、記譜音と実音が異なる場合があります。その知識から「B♭管ならトロンボーンも同じ」と考えると分かりにくくなります。
トロンボーンの「B♭管」という呼び方は、第1ポジションを基準にした管の倍音系列がB♭を基礎としていることを示しています。
一方で、どのように楽譜へ記譜するかは別の問題です。
そのため、「楽器がB♭管であること」と「B♭移調譜を読むこと」を同じ意味として考えないことがポイントです。
初心者が通常のヘ音記号譜を読む場合は、B♭管だからといって楽譜のすべての音を全音ずらす必要はありません。
ト音記号で読む例外もある
一般的なヘ音記号のトロンボーン譜は実音で読みますが、例外もあります。
代表的なのが、英国式ブラスバンドなどで使用されるテナートロンボーンのト音記号です。
この場合は、テナートロンボーンをB♭移調楽器として扱う記譜方式が使われるため、一般的な実音ヘ音記号とは読み方が異なります。
つまり、「トロンボーンは絶対に移調しない」と覚えてしまうのも正確ではありません。
大切なのは、どの音部記号と記譜方式で書かれている譜面なのかを最初に確認することです。
一方、バストロンボーンは英国式ブラスバンドでもヘ音記号・実音表記が基本です。
初心者が日本の吹奏楽で一般的なヘ音記号のトロンボーン譜を読む場合、英国式ブラスバンドのB♭ト音記号の仕組みを混ぜて考えないようにしましょう。通常のヘ音記号譜なら、まずは実音でそのまま読むと理解しておけば十分です。
もし初めて見る譜面で「いつもの読み方と合わない」と感じたときは、音部記号や編成、記譜方式を確認してみましょう。
譜読みで確認する基本記号
トロンボーンの楽譜を読むときは、音符の高さだけを追いかけても演奏にはつながりません。
実際の楽譜には、調号、臨時記号、拍子、リズム、休符、タイ、スラー、強弱、アーティキュレーションなど多くの情報が書かれています。
初心者のうちは、これらを全部同時に読もうとすると処理が追い付かなくなりやすいため、確認する順番をある程度決めておくと整理しやすくなります。
基本的には、次のような順番で確認できます。
- 音部記号
- 調号
- 拍子記号
- リズム
- 音名
- スライドポジション
- アーティキュレーションと強弱
- 実際に演奏
曲によっては途中で音部記号が変わる場合もあるため、冒頭だけ確認して安心しないことも大切です。
調号と臨時記号を読む
楽譜の冒頭で音部記号を確認したら、次に調号を見ます。
調号とは、五線の先頭付近に並ぶ♯や♭です。その曲や部分で、どの音を基本的に半音高くしたり低くしたりするのかを示しています。
♯はシャープ、または嬰記号と呼ばれ、元の音を半音高くします。
♭はフラット、または変記号と呼ばれ、元の音を半音低くします。
♮はナチュラル、または本位記号と呼ばれ、それまで有効だった♯や♭を取り消して本来の音へ戻します。
トロンボーンでは半音の違いがスライドポジションの違いに直接関係するため、♯や♭を見落とすとポジションも変わってしまいます。
たとえばD3は基本的に第4ポジションですが、D♭3なら第5ポジションです。音符の位置だけを見て「Dだから4番」と判断すると間違えてしまいます。
そのため、まず譜面上の位置から音名を判断し、そのあと調号や臨時記号を反映して実際の音を決め、最後にポジションを選ぶという順番が役立ちます。
「音符の場所を見る→調号や臨時記号を反映する→実際の音名を決める→ポジションを選ぶ」と整理すると、間違えたときに原因を見つけやすくなります。
臨時記号についても注意が必要です。
臨時記号は原則として、その小節内の同じ高さの同名音に作用します。たとえば1つの音に♭が付いていた場合、「その音だけが♭で次は元に戻る」とは限りません。
同じ小節内に同じ高さの音がもう一度出てきた場合は、臨時記号の影響が続いているかを確認します。
初心者の譜読みでは、最初の音は正しくポジションを変えられても、同じ小節の2回目の音で元のポジションに戻してしまうことがあります。臨時記号を見つけたら、小節の終わりまで少し意識しておくとよいでしょう。
拍子とリズムを確認する
音程が合っていても、リズムが違えば譜面どおりの演奏にはなりません。
そこで音名を読むだけでなく、拍子と音符・休符の長さも確認します。
代表的な拍子では、次のように考えます。
- 4/4拍子:4分音符を1拍として1小節に4拍が基本
- 3/4拍子:4分音符を1拍として1小節に3拍が基本
- 2/4拍子:4分音符を1拍として1小節に2拍が基本
- 6/8拍子:8分音符6個分で1小節
6/8拍子は8分音符を1つずつ数える場合もありますが、実際には8分音符3個をひとまとまりとして、大きく2拍で感じることが多くあります。
続いて、基本的な音符の長さを確認します。
| 音符 | 長さの基本 |
|---|---|
| 全音符 | 4分音符4個分 |
| 2分音符 | 4分音符2個分 |
| 4分音符 | 基本の1拍として扱われることが多い |
| 8分音符 | 4分音符の半分 |
| 16分音符 | 8分音符の半分 |
付点が付くと、元の音符の半分の長さが加わります。
たとえば付点2分音符は「2分音符+4分音符」、付点4分音符は「4分音符+8分音符」の長さです。
休符も同様に、音を出さずにその長さを数えます。長い休符で数え方を失うと、正しいタイミングで入れなくなるため、音符と同じくらい大切です。
タイとスラーの違いにも注意しましょう。
タイは同じ高さの音同士をつなぎ、それぞれの音価を足して1つの長い音として伸ばします。
一方、スラーは複数の異なる音をひとまとまりとして滑らかにつなぐ指示です。見た目は似ていますが、役割は異なります。
また、楽譜には強弱やアーティキュレーションも記されています。
- p:弱く
- f:強く
- mp:やや弱く
- mf:やや強く
- pp:とても弱く
- ff:とても強く
- cresc./<:徐々に強く
- dim./decresc./>:徐々に弱く
- スタッカート:音を短く区切る
- アクセント:その音を際立たせる
- スラー:複数の音を滑らかにつなげる
- フェルマータ:音や休符を通常より長く保つ指示
- ブレス記号:息継ぎの位置を示す
トロンボーンでは、リズムに合わせてタンギングとスライド移動を行う必要があります。
たとえば第1ポジションから第6ポジションへ移るときは、音の高さを理解するだけでなく、正しいタイミングまでに腕を動かさなければなりません。
そのため、速い曲や遠いポジション移動が続く部分では、音名だけを読んで終わらず、「1→6」「6→1」といった腕の動きまで確認しておくと整理しやすくなります。
譜読みを速くする練習方法
譜読みを速くするには、楽譜を何度も最初から最後まで演奏するだけではなく、「どこで処理に時間がかかっているのか」を分けて考えることが大切です。
譜読みには、音符の高さを判断する、調号を反映する、リズムを読む、ポジションを選ぶ、腕を動かす、息を使う、タンギングする、といった複数の作業があります。
初心者がこれらすべてを最初から同時に処理すると、間違えたときに原因が分からなくなりやすくなります。
「音名は合っているのにポジションを間違えた」のか、「ポジションは合っていたのにリズムがずれた」のか、「音もリズムも分かっているけれどスライド移動が間に合わない」のかでは、練習方法が異なります。
譜読みと実奏を分けて練習する
譜読みを効率よく練習するためには、いくつかの作業に分けてみる方法があります。
楽器を持たずに音名を読む
まずは楽器を持たず、譜面だけを見て音名を読みます。
音符を見て「B♭」「C」「D」というように答えます。このとき、調号や臨時記号も忘れず反映します。
慣れてきたら、音名を答えたあとにポジション番号も続けて言います。
たとえばB♭長音階なら、「B♭・1、C・6、D・4、E♭・3」というように確認します。
ここで音名を飛ばして数字だけ答えないことがポイントです。
リズムだけを読む
次に、音の高さを無視してリズムだけを確認します。
手拍子や声を使い、音符と休符の長さを読みます。必要に応じてメトロノームに合わせると、自分の拍が速くなったり遅くなったりしていないか確認しやすくなります。
この段階ではポジションや音程を考えないため、リズムそのものに集中できます。
スライドだけを動かす
次に、楽器を構えて音を出さず、譜面に合わせてスライドだけを動かします。
「1→6」「6→1」のような大きな移動が連続する場所では、腕の動きが間に合うかを確認できます。
遠いポジションへの移動で遅れる場合は、音を出しながら何度も失敗するより、まずスライド移動だけを整理したほうが原因を確認しやすくなります。
最後に実奏する
音名、リズム、ポジション、スライド移動をそれぞれ確認したら、最後に実際に演奏します。
ここで初めて、音高、リズム、息、タンギング、スライド操作をまとめます。
譜読み・リズム・スライド・実奏を分けて練習すると、「何ができていないのか」を見つけやすくなります。
それぞれを分けても実奏でうまくつながらない場合は、トロンボーンのレッスンで実際の音やスライド操作を確認する方法もあります。
初見の譜面を見るときにも、いきなり最初から吹き始めるのではなく、事前にいくつかの項目を確認するとミスを減らしやすくなります。
- 音部記号は何か
- 途中に音部記号変更がないか
- 調号に♯・♭が何個あるか
- 拍子は何か
- テンポはいくつか
- 開始音は何か、何ポジションか
- 最高音と最低音はどこか
- 臨時記号はどこにあるか
- 大きな跳躍がどこにあるか
- 長距離のスライド移動がどこにあるか
- 難しいリズムがどこにあるか
- 休符の長さを正しく数えられるか
- 強弱やアーティキュレーションはどう指定されているか
- 繰り返し記号や進行指定がないか
とくに、繰り返し記号、1番括弧・2番括弧、D.C.、D.S.、Codaなどがある場合は、音符を正しく吹けても曲の進み方を間違えることがあります。
初見では、細かな音を1つずつ読むだけでなく、曲全体の地図を見るようなつもりで先に確認しておくとよいでしょう。
初心者のうちは、スライド位置を目で確かめるために譜面から視線を外してしまうこともあります。しかし、演奏中に何度も下を見ると、次に読む音を見失いやすくなります。
最初はゆっくりでも構わないので、少しずつスライドの位置を体の感覚で覚え、譜面から目を離さず動かせる範囲を広げていきます。
また、ポジション番号だけを覚えても正確な音程になるとは限りません。トロンボーンには固定された段差がないため、目で場所を確認するだけでなく、耳で音程を確認する習慣も必要です。
譜面を読む力と音を聴く力を別々に考えず、両方を少しずつ結び付けることが大切です。
ハ音記号は必要になってから覚える
トロンボーンについて調べていると、「ヘ音記号だけではなくハ音記号も読めないといけない」という情報を目にすることがあります。
確かに、クラシック、オーケストラ、専門的な独奏曲などへ進むと、テナー記号を読む機会が増えます。
また、一部のオーケストラ譜や歴史的な譜面、アルトトロンボーンなどではアルト記号が登場することもあります。
ただし、初めてトロンボーンを吹く段階からヘ音記号・テナー記号・アルト記号をすべて同時に暗記する必要はありません。
まずはヘ音記号を安定して読めるようにし、その後必要になった段階でハ音記号へ進むほうが整理しやすくなります。
ハ音記号は英語でC clefと呼ばれます。
記号の中央部分が指している線を「中央のC」、つまりC4として読む音部記号です。
「ハ音記号」という名前の「ハ」は、ハ長調を意味しているわけではありません。
日本語の音名ではCを「ハ」と呼びます。つまり、Cの位置を示す音部記号という意味です。
ハ音記号は、五線のどの位置に置かれるかによって名称と音の配置が変わります。
現在、トロンボーンで知っておきたいのは主にテナー記号とアルト記号です。
トロンボーン奏者がヘ音記号の次に出会いやすいのがテナー記号です。
テナー記号では、ハ音記号の中心が五線の第4線、つまり下から4本目の線に置かれます。この第4線が中央のCです。
| 位置 | テナー記号の音 | ドレミ |
|---|---|---|
| 第1線 | D | レ |
| 第2線 | F | ファ |
| 第3線 | A | ラ |
| 第4線 | C | ド |
| 第5線 | E | ミ |
線の音は、下から「レ・ファ・ラ・ド・ミ」です。
間の音は、下からE、G、B、D、つまり「ミ・ソ・シ・レ」です。
テナー記号を使う大きな理由の一つは、高い音域を大量の加線で書かず、五線の中へ収めやすくすることです。
ヘ音記号のまま高い音を書き続けることもできますが、加線が増えると読みにくくなります。そこで音部記号を変え、高い音を五線の中へ配置します。
アルト記号もハ音記号の一種です。
アルト記号では、ハ音記号の中心が第3線、つまり中央の線に置かれます。第3線が中央のCになります。
| 位置 | アルト記号の音 | ドレミ |
|---|---|---|
| 第1線 | F | ファ |
| 第2線 | A | ラ |
| 第3線 | C | ド |
| 第4線 | E | ミ |
| 第5線 | G | ソ |
間の音は、下からG、B、D、F、つまり「ソ・シ・レ・ファ」です。
ヘ音記号、テナー記号、アルト記号を比較すると、中央のCの位置がそれぞれ異なることが分かります。
| 音部記号 | 中央のCの位置 | トロンボーンでの主な用途 |
|---|---|---|
| ヘ音記号 | 五線上の1本目の加線 | 初心者、吹奏楽、低〜中音域、一般的な譜面 |
| テナー記号 | 第4線 | 高音域、クラシック、オーケストラ、独奏曲など |
| アルト記号 | 第3線 | 一部のオーケストラ譜、アルトトロンボーンなど |
ヘ音記号からテナー記号へ切り替わると、五線上の同じ位置でも音名が変わります。
そのため、譜面の途中で音部記号が変わったことに気付かず、ヘ音記号のつもりで読み続けると、まったく違う音になってしまいます。
テナー記号やアルト記号は、楽譜を別の調へ移調するための記号ではありません。通常のトロンボーンで読む場合は、音部記号が変わっても書かれている実音の高さそのものを示します。
初心者の段階では、「ヘ音記号を完全に覚える前にテナー記号も覚えなければ」と焦る必要はありません。
ヘ音記号を先に固め、必要になった段階でテナー記号へ進むという順番で問題ありません。
どの段階でテナー記号を学ぶかには、全員に共通する決まりはありません。
学校や教材、指導者によっても練習順序は異なります。オーケストラ作品や専門的な独奏曲などを演奏するようになり、実際にテナー記号が必要になったときに学び始める方法でも構いません。
一方で、将来クラシックのレパートリーへ進みたい場合は、ヘ音記号が安定したあと少しずつテナー記号に触れておくと、実際に譜面へ登場したときの負担を減らしやすくなります。
大切なのは、音部記号ごとの音名を機械的に暗記するだけでなく、「どの線が中央のCなのか」という基準を理解することです。
まとめ
トロンボーンの楽譜を読めるようになるには、最初からすべての記号やポジションを一気に暗記する必要はありません。
まずはヘ音記号の線と間を理解し、よく使う音を「譜面上の位置・音名・ポジション」の3つで結び付けていくことが基本です。
ヘ音記号では、線の音は下からG・B・D・F・A、間の音はA・C・E・Gです。2つの点に挟まれた第4線がFであることを基準にすると、周囲の音もたどりやすくなります。
スライドには1〜7の基本ポジションがありますが、トロンボーンは同じポジションから複数の倍音を出せるため、「1番ポジション=1つの音」のようには覚えられません。
まず音符を見て音名を判断し、それから対応するポジションを選ぶことが大切です。
また、日本の吹奏楽やオーケストラなどで一般的に使われるヘ音記号のトロンボーン譜は実音で書かれているため、B♭管だからといって通常は移調して読む必要はありません。
ただし、英国式ブラスバンドのB♭ト音記号など、別の記譜方式が使われる例外もあります。初めて見る譜面では、最初に音部記号と記譜方式を確認すると混乱しにくくなります。
譜読みでは、音の高さだけでなく調号、臨時記号、拍子、リズム、休符、強弱、アーティキュレーションも確認します。
一度にすべて処理するのが難しい場合は、音名を読む練習、リズムだけの練習、スライドだけの練習、実奏というように分けてみてください。
この方法なら、「音名が読めない」「ポジションが出てこない」「リズムが分からない」「腕の移動が間に合わない」といった問題を切り分けやすくなります。
ハ音記号については、初心者ならまずヘ音記号を優先し、クラシックやオーケストラなどで必要になった段階からテナー記号を学んでいけば問題ありません。
譜面を見た瞬間にすべての音とポジションが分からなくても、最初は自然です。
「音符の位置を見る」「音名を判断する」「ポジションへ変換する」という手順を繰り返し、少しずつ処理の時間を短くしていけば、譜面とスライドの動きが徐々につながっていきます。
なお、実際のポジションは楽器、温度、音域、倍音、奏法などによって微調整が必要です。F管アタッチメントやバストロンボーンでは条件が変わる場合もあるため、基本表だけですべてを決めず、使用している楽器に合った資料も確認してください。

