クラリネットを選ぼうとすると、ヤマハ、ビュッフェ・クランポン、セルマーをはじめ、ルブラン、ユーベル、ヨーゼフ、バックーンなど、思った以上に多くのメーカーやブランドが出てきます。
「有名メーカーなら間違いないのかな」「初心者はどのメーカーを選べばいい?」「セルマーはかなり高いと聞くけれど、実際はいくらくらい?」と迷う人も多いですよね。
クラリネットは、メーカー名だけで良し悪しを決められる楽器ではありません。音色の方向性だけでなく、息を入れたときの抵抗感、キイの操作感、音程の傾向、管体の材質、価格、修理しやすさ、国内での入手性まで含めて比べることが大切です。
特に木製クラリネットは、同じメーカーの同じ型番でも天然木による個体差があります。そのため、この記事では「どこが一番良いメーカーか」を決めるのではなく、あなたの予算や経験、使う環境に合わせて購入候補を絞れるように整理していきます。
- 有名クラリネットメーカーごとの特徴と違い
- ヤマハ・クランポン・セルマーの選び分け
- 初心者から上級者までの予算別の考え方
- 試奏や購入前に確認したい重要ポイント
この記事で主に扱うのは、日本の吹奏楽やクラシックで一般的なベーム式のB♭クラリネットです。必要に応じてA管、E♭管、バスクラリネット、ドイツ式やリフォームドベーム式にも触れます。
なお、価格は調査時点で確認できたメーカー希望小売価格や国内で案内されている参考価格をもとに整理しています。楽器の価格は改定されることがあり、輸入品は為替や仕様によっても変わります。実際に購入するときは、必ずその時点の価格を確認してください。
クラリネットメーカー選びの結論
クラリネットのメーカー選びで最初に覚えておきたいのは、知名度や価格だけでメーカーを決めないことです。
日本の吹奏楽やクラシックで一般的に使われているB♭クラリネットなら、ヤマハ、ビュッフェ・クランポン、Henri SELMER Parisが代表的な候補になります。ただし、この3社だけが正解というわけではありません。
F. Arthur Uebel、ヨーゼフ、バックーンなどにも、それぞれ異なる設計思想があります。さらに、ドイツ式を中心に考えるならヴルリッツァーなども候補になります。
初心者ほど、吹きやすさだけでなく、国内で調整や修理を受けやすいか、消耗品や純正部品を手配しやすいかまで確認しておくと安心です。
一般的な学校吹奏楽で最初の一本を探す場合は、B♭クラリネットが中心です。B♭クラリネットはクラリネット族の中でも使用機会が多く、メーカーの選択肢も豊富です。
オーケストラへ進むと、曲によってB♭管とA管を持ち替えることがあります。そのため、将来的に専門的な演奏を考えている人は、B♭管一台だけでなく、同じメーカーやシリーズのA管も含めた選択を視野に入れることがあります。
ほかにもE♭クラリネット、アルトクラリネット、バスクラリネット、バセットホルン、コントラ系などがあります。メーカーによって得意とする楽器や製造している種類が違うため、「クラリネットメーカー一覧」を見るときは、B♭クラリネットだけの話なのか、クラリネット族全体の話なのかを分けて考える必要があります。
また、日本で広く使われているのはベーム式、いわゆるフレンチシステムです。一方、ドイツではエーラー系などのドイツ式も使われています。Wurlitzerのように、フランス式に近い運指を使いながらドイツ的な音響を狙ったReform-Boehmを製作するメーカーもあります。
つまり「クラリネットならどれでも同じ運指、同じ方向性」と考えるのではなく、まず自分が必要としているシステムを確認することが大切です。日本の吹奏楽部で初めて購入するなら、通常はベーム式B♭クラリネットを中心に比較すればよいでしょう。
クラリネットは木管楽器に分類されますが、管体は木製だけとは限らず、初心者向けには樹脂製のモデルもあります。楽器分類と管体材は別に考える必要があります。
メーカーの違いを見るときは、音色のイメージだけで判断しないことも重要です。抵抗感、息の入り方、キイの配置、サムレストの位置、音程傾向、管体素材、修理体制などが合わないと、評判の良い楽器でも本人には使いにくく感じることがあります。
価格が上がれば必ず吹きやすくなるわけでもありません。プロ向けモデルでは、奏者が音色を細かく作れるように設計されていたり、一定の抵抗感を持たせていたりする場合があります。初心者にとっては、その抵抗感が「吹きにくさ」として感じられることもあります。
まずは「どこで使うのか」「どれくらい続けるつもりか」「予算はいくらか」「近くで修理できるか」を整理しておきましょう。この4点を決めるだけでも、メーカー候補をかなり絞りやすくなります。
主要3メーカーの特徴を比較
日本でクラリネットを探すとき、特に候補に入りやすいのがヤマハ、ビュッフェ・クランポン、Henri SELMER Parisの3社です。
ただし、「ヤマハは初心者向け」「クランポンやセルマーは上級者向け」と単純に分けるのは適切ではありません。ヤマハにもプロ用カスタムモデルがありますし、クランポンにも学生向けモデルがあります。
この3メーカーは、それぞれ入門からプロまでの考え方やラインアップの広さが異なります。メーカーそのものを比較するより、「自分の予算帯にどのモデルがあり、そのモデルが何を重視して設計されているか」を見ると選びやすくなります。
| メーカー | 主な特徴 | 価格帯の広さ | 国内での入手性 |
|---|---|---|---|
| ヤマハ | 品質、音程、操作性、国内サポートの安定 | 初心者用からプロ用まで広い | 高い |
| ビュッフェ・クランポン | フレンチ系の代表格でモデル数が豊富 | 学生用から最高級モデルまで広い | 高い |
| セルマー・パリ | 柔軟性や独自設計、プロモデルが豊富 | 中上級からプロ向け中心 | 比較的高い |
表だけを見ると簡単に決められそうですが、実際は同じメーカー内でも性格の違うモデルがあります。たとえばクランポンのR13とRCは価格だけの上下関係ではなく、設計思想の違いを比較する必要があります。ヤマハでもCS系とSE系などで方向性が異なります。
ヤマハは安定性と国内サポートが強み
ヤマハは日本を代表する総合楽器メーカーで、クラリネットでも初心者向けからプロ用まで幅広いモデルを展開しています。
B♭クラリネットだけでなく、A管、E♭管、アルトクラリネット、バスクラリネット、ドイツ管なども扱っており、クラリネット族全体でラインアップを持つメーカーの一つです。
大きな特徴は、品質管理、音程、キイメカニズムの安定性を重視した設計と、国内でのサポート体制です。学校備品として使う場合や、初めて自分の楽器を購入する場合にも候補へ入れやすいメーカーでしょう。
代表的なB♭クラリネットでは、ABS樹脂管体のYCL-255が希望小売価格115,500円(税込)、木製のYCL-450が192,500円(税込)、YCL-450Mが203,500円(税込)、YCL-650が297,000円(税込)とされています。
YCL-255はABS樹脂の管体を採用しており、木製クラリネットと比べて温度や湿度の影響を受けにくい点が特徴です。学校備品、初めての一本、屋外で演奏する機会がある人などにとって扱いやすい条件があります。
YCL-255のようなABS樹脂管は、熱や湿気の影響を受けにくく、屋外演奏や学校備品、木部の割れが心配な初心者にも扱いやすい選択肢です。
一方、YCL-450はグラナディラ製で、木製クラリネットへ進みたい人が検討しやすいモデルです。YCL-450Mは上管内面の耐久性などを考慮した仕様になっています。
YCL-650はプロフェッショナルグレードに位置付けられており、メーカーは暖かくまろやかな音色を特徴として挙げています。学生が長期間使う一本として検討する場合にも、価格と目的が合えば候補になります。
さらにカスタムシリーズとして、YCL-CX、YCL-SE、YCL-CSV、YCL-SEV、YCL-CSVM、YCL-SEVMなどがあります。ヤマハの中でもシリーズごとに設計や吹奏感が異なるため、「ヤマハなら全部同じ」と考えないことが大切です。
国内メーカーならではの利点として、取扱店、修理拠点、純正部品の入手性を考えやすい点があります。楽器は購入したら終わりではなく、タンポ交換、コルク交換、キイ調整など定期的なメンテナンスが必要です。
そのため、初心者や保護者が購入する場合は、「今いくらで買えるか」だけでなく、数年後まで維持できるかという視点も役立ちます。
一方で、「安定しているから個性がない」と決めつけるのも適切ではありません。カスタムシリーズまで含めると選択肢は多いため、予算が上がるほど同じヤマハ内でも吹き比べる価値があります。
吹奏楽部で周囲との音程を合わせやすい楽器を探している場合や、近隣の楽器店で継続的に調整を受けたい場合は、ヤマハを基準にほかのメーカーと比較するのも一つの考え方です。
クランポンは豊富なモデルから選べる
ビュッフェ・クランポンは、1825年から続くフランスの木管楽器メーカーです。クラリネットの有名メーカーを挙げるとき、必ずといっていいほど名前が出てくるブランドの一つです。
特徴は、学生向けから最高級のプロフェッショナルモデルまで、非常に多くの選択肢を持っていることです。
2026年4月1日時点の国内価格表では、Prodigeが121,000円、E11標準パッケージが191,400円、E12F標準パッケージが276,100円、E13標準パッケージが408,100円とされています。
さらにGALAは513,700円から、R13は587,400円から、RCは709,500円。Tradition、Prestige、Festivalは1,161,600円、Toscaは1,556,500円、Légendeは1,591,700円、Divineは1,765,500円、BCXXIは1,812,800円と、上位モデルになるほど価格帯も大きく広がります。
この価格差を見ると、「高いモデルほどR13より上」と考えたくなるかもしれません。しかし、プロ向けクラリネットでは、価格だけで単純な序列を作ると本質を見失いやすくなります。
特に有名なのがR13です。1955年にロベール・カレが開発した歴史の長いモデルで、メーカーは豊かで芯のある音色、全音域のバランス、柔軟性などを特徴として挙げています。
R13はプロだけの楽器というより、上達した学生、アマチュア奏者、プロ奏者まで幅広い層が比較対象にするモデルです。通常のグラナディラ仕様に加えて、Green LinE仕様もあります。
一方、RCはR13とは異なる設計思想を持つ代表的なプロモデルです。R13とRCのどちらが「上」かを決めるより、吹奏感、抵抗感、響き方、音程の取り方などを比較して、自分の感覚に合うものを探す方が実用的です。
Tradition、Festival、Prestigeなども同様です。同じ価格帯でも設計や方向性は異なるため、価格表だけで選ぶことはできません。
価格が高いモデルほど、自分にとって必ず良い楽器になるわけではありません。同じモデルでも天然木には個体差があるため、可能なら複数個体を比較してください。
クランポンは日本での知名度と流通量が高く、試奏できる店舗を探しやすい点も候補にしやすい理由です。中古市場でも多く見かけます。
ただし、中古でR13などを探す場合は、モデル名だけでは状態を判断できません。木部の割れや修理歴、キイの摩耗、タンポやコルクの状態、調整履歴などを確認する必要があります。
新品の場合も、木製クラリネットには個体差があります。同一モデルを複数本試せるなら、一本だけで「このモデルは合わない」と判断せず、別個体も比較すると印象が変わることがあります。
セルマーは独自設計のプロモデルが充実
Henri SELMER Parisは、フランスの老舗管楽器メーカーです。「セルマー」というとサクソフォンの印象が強い人もいるかもしれませんが、クラリネットにも長い歴史があります。
ここで覚えておきたいのは、Henri SELMER Parisと、後で紹介するConn-Selmer傘下のLeblancは別の系統として整理する必要があることです。
クラリネットでは、Prologue、Presence、Signature、Recital、Privilège、Museなど、複数のシリーズが展開されています。
近年の特徴の一つがEVOLUTION仕様です。上管内側の一部に新世代樹脂を組み合わせ、木製クラリネットの音響特性を生かしながら、安定性や耐久性の向上を狙った構造です。
PresenceはPrivilègeの設計思想を受け継ぐプロフェッショナルモデルで、近年はGeneration 2やDelta系へ更新されています。新設計ベル、バレル構成、軽量化など、世代による変更もあるため、旧Presenceと現行世代を同じものとして扱わない方がよいでしょう。
Museは、発音の正確さ、直接的なレスポンス、全音域の均一性を重視して設計されたシリーズです。B♭管では18キイや19キイ仕様があり、A管やE♭管も展開されています。
Privilègeは高価格帯のプロフェッショナルモデルで、メーカーは音程の安定性や全音域の均一性などを特徴として挙げています。
2026年3月改定時に確認できる税抜参考価格では、Presence B♭ EVOLUTION仕様が699,000円、Presence A EVOLUTION仕様が870,000円です。
Recital B♭、Signature B♭、Privilège B♭はそれぞれ1,140,000円、Muse B♭ 18キイは1,200,000円、19キイは1,310,000円、Muse Aは1,360,000円、Muse E♭は1,470,000円とされています。
これらは税抜参考価格なので、消費税を加えた店頭価格とは異なります。また、旧モデルの在庫価格や仕様によっても変わるため、購入時には最新価格を確認してください。
比較的導入しやすいシリーズにはPrologueがあり、2026年にはPrologue Concertも日本で発売案内されています。Prologue Concertはグラナディラ管体、ポリシリンドリカルボア、3軸調整式サムレスト、Echoマウスピース付属などの特徴があります。
セルマーはモデルごとの差が大きいため、「セルマーの音はこう」と一つの言葉でまとめない方が分かりやすいです。PresenceとMuseでも設計思想は異なりますし、旧世代とGeneration 2、通常仕様とEVOLUTION仕様を混同しないようにしましょう。
セルマーが気になっている場合は、ブランドのイメージよりも、どのシリーズを比較しているのかを明確にした上で試奏することが大切です。
注目メーカーとブランドの特徴
主要3メーカー以外にも、クラリネットには魅力的なメーカーがあります。
特に検索されやすいのがルブラン、ノブレ、F.A.ユーベル、ヨーゼフ、バックーンです。また、「モパネ」という名前をメーカーだと思っている人もいますが、これはブランド名ではなく木材名です。
このあたりはメーカー名、ブランド名、素材名が混ざりやすいため、整理して理解すると購入候補を探しやすくなります。
ルブランとノブレの違いを整理
Leblancは、フランスの木管製作の流れを持つ歴史あるクラリネットブランドです。現在はConn-Selmerのクラリネットブランドとして展開されています。
ここで注意したいのが、Henri SELMER ParisとConn-Selmer傘下のLeblancは、同じ「セルマー」という言葉が関係していても別のブランドとして整理する必要があることです。
現行Leblancでは、学生向けのDebut LCL211S、Vito LCL302N、Advancedに位置付けられるEsprit LCL402NやSerenade LCL511Sなどが確認できます。
Debut LCL211SはB♭クラリネットで、Reso-Tone ABS樹脂管体、ベームシステム、銀メッキの洋白製キイ、可動式サムレスト、Valentinoパッドなどを備えた学生向けモデルです。
現行のルブランは、歴史上のヴィンテージLeblancと同じイメージだけで見るのではなく、現在のConn-Selmer系ブランドとしてのラインアップを確認する必要があります。
一方、Nobletは現在の主要な独立メーカーとして新品ラインアップを広く展開しているブランド、と理解するのは適切ではありません。
Noblet家の楽器製作はLeblancの前史と深く関係しています。1904年にDenis Toussaint Nobletが事業をGeorges Leblancへ譲渡し、その後Leblancブランドが発展しました。
過去にはNobletの名前を冠したクラリネットが製造されており、中古市場で現在も見つかることがあります。
中古市場にはNobletの名前を持つクラリネットが残っています。購入する場合は、製造年代、管体の割れ、メッキ、タンポ、コルク、キイの摩耗などを確認してください。現在の新品と同じ保証や部品供給を期待できるとは限りません。
したがって、「ノブレ=現在販売されているルブランの別名」と単純に置き換えるのも適切ではありません。中古Nobletを検討するときは、個別の年代、モデル、状態を確認して判断してください。
ユーベルとモパネ材の特徴
F. Arthur Uebelは、1936年創業のドイツのクラリネットメーカーです。
大きな特徴は、ドイツ式クラリネットの伝統を持ちながら、日本で一般的なフレンチ・ベーム式の製品も展開していることです。
Oskar Oehlerの系譜を受けたドイツ式製作の背景を持つ一方、現在はフレンチシステムも豊富です。そのため、フランス系メーカーとは異なる方向性の楽器を探している人が比較候補にすることがあります。
フレンチシステムでは、Étude、Classic、Advantage、Rêve、Preference、Superior、Superior II、Romanza、Excellence、Zenit、Vision、Unityなど、多数のシリーズがあります。
日本で確認できる希望小売価格の例では、Advantage B♭が462,000円、Advantage Aが528,000円、Rêve B♭が627,000円、Rêve Mが693,000円です。
さらにRomanza B♭は1,034,000円前後、Zenit B♭は1,408,000円前後とされています。仕様変更や価格改定の可能性があるため、購入時には再確認が必要です。
Advantageは17キイ6リングのベーム式B♭モデルで、グラナディラ管体、銀メッキキイ、バレル2本、可動式指掛けなどを備えています。
Superiorでは、フレンチ系の響きとドイツ系の温かさや深さを組み合わせることを狙った設計が示されています。
そして、ユーベルを調べていると出てくるのが「モパネ」です。
モパネはメーカー名ではなく木材の名称です。
一般的な木製クラリネットではグラナディラが広く使われていますが、F.A.ユーベルではモパネもクラリネット材として使用しています。
モパネは褐色系の外観になることがあり、一般的な黒色系のグラナディラとは見た目の印象も異なります。
ここで注意したいのは、「モパネなら柔らかい音になる」「モパネなら暗い音になる」といった断定をしないことです。
奏者による感想として特定の傾向が語られることはありますが、実際の音色やレスポンスは管体材だけで決まりません。ボア、バレル、ベル、マウスピース、リード、リガチャー、奏者、個体差など、多数の条件が関係します。
素材を比較するときは、材質名だけで優劣を決めるのではなく、その楽器全体としてどう吹けるかを見ることが重要です。
ヨーゼフとバックーンの特徴
Josefは、株式会社美ら音工房ヨーゼフが製造する日本の木管楽器ブランドです。本社工場は沖縄県南城市にあり、クラリネットのほかオーボエやピッコロなども製造しています。
創業者の仲村幸夫氏が1986年に東京でムジーク・ヨーゼフを設立した流れを持ち、2007年に沖縄へ本社を移しています。
クラリネットにはMK11 series、K10 series、S11 seriesがあり、独自機構を多く採用していることが特徴です。
たとえば、バレルを抜いてチューニングした際の内部形状を考慮したダブルジョイントソケット、てこの原理を利用してAキイの操作を軽くすることを狙ったYUKIO key、DとAの音抜け改善を狙うDダブルトーンホールなどがあります。
MK11ではF♯メカやEメカ、低音F・Eの音程補正を目的としたキイなども採用されています。
最上位のMK11BはB♭クラリネットで、19キイ7リング、ベームシステム、グラナディラ管体、銀メッキという仕様です。公式サイトでは一律の固定価格が表示されていないため、価格や在庫はメーカーや取扱店への確認が必要です。
ヨーゼフは国内メーカーで、製造だけでなく修理事業も行っています。一方、全国どこの一般楽器店でも常時複数本を比較できるブランドではないため、試奏を希望する場合は事前確認が必要です。
Backunはカナダのクラリネットメーカーで、修理工房から発展しました。クラリネット本体だけでなく、バレル、ベル、マウスピースなどでも知られています。
主なシリーズにはAlpha、Alpha Plus、Protégé、Q Series、Essence、MoBa、Lumière、CG Carbonなどがあります。バスクラリネットでもAlpha BassやQ Series Bassがあります。
バックーンの特徴は、伝統的なクラリネット設計に現代的な加工技術や素材を組み合わせていることです。
Q Seriesではグラナディラとココボロを選べる仕様があり、ポリシリンドリカルボア、トーンホールのアンダーカット/オーバーカット加工、カーボンファイバー製ジョイントリング、可動式サムレスト、ストラップリングなどを採用しています。
2026年9月1日からの国内税込価格では、Q SeriesのGrenadilla B♭ SP Keysが605,000円、Grenadilla B♭ SP Keys/GP Postsが632,500円、Cocobolo B♭ SP Keys/GP Postsが797,500円です。
A管ではGrenadilla A SP Keysが753,500円、Cocobolo A SP Keys/GP Postsが1,153,900円とされています。
さらに上位では、Essence Grenadilla B♭ SPが1,155,000円、Lumière Grenadilla B♭ SPが2,005,300円とされ、高価格帯まで幅広く展開しています。
バックーンは価格改定が行われることがあるため、過去の記事や古い価格表だけで予算を決めないようにしましょう。
バックーンは材質、キイ仕上げ、バレルやベルなどの選択肢が多いため、自分なりのセッティングを細かく追求したい人には興味深いブランドです。
ただし、上位モデルは非常に高額です。ココボロとグラナディラも材質名だけで判断せず、可能なら実物を比較してください。
予算とレベル別のメーカー選び
メーカー名をある程度理解したら、次は予算と経験に合わせて候補を絞ります。
クラリネットは10万円台から100万円を大きく超えるものまで幅がありますが、高価な楽器ほど全員に向いているわけではありません。
また、「初心者なら10万円台」「上級者なら100万円以上」と機械的に分ける必要もありません。演奏環境、どれくらい続けるか、将来的に買い替える可能性などを考えながら予算を決める方が現実的です。
初心者・中高生が選ぶポイント
初めてクラリネットを購入する初心者や中学生なら、まず10万~20万円台が現実的な候補になりやすいです。
この価格帯には、ヤマハYCL-255が115,500円、ビュッフェ・クランポンProdigeが121,000円、E11が191,400円から、ヤマハYCL-450が192,500円などがあります。
大きな分かれ目は、ABS樹脂管にするか木製にするかです。
ABS樹脂は温度や湿度の変化に比較的強く、学校、屋外、初心者の管理環境でも扱いやすいという利点があります。落としても問題ないという意味ではありませんが、天然木の割れを心配する負担は減ります。
木製クラリネットではグラナディラが一般的な素材の一つです。木製だから必ず樹脂管より優れているという意味ではなく、演奏環境や管理のしやすさを含めて選びます。
高校生になり、長く続けることを考えるなら、ヤマハYCL-450やYCL-650、クランポンE13、GALA、R13なども候補に入ってきます。
20万~40万円台では、YCL-650やE12F、E13など、本格的な木製モデルの候補が増えてきます。学校卒業後も一般バンドや大学で続ける予定なら、この先何年使うかも考えて選ぶとよいでしょう。
ただし、学校の先生や周囲が使っているメーカーと同じにしなければならないわけではありません。周囲と同じメーカーにすることで相談しやすくなることはありますが、最終的には本人の手や息に合うことが重要です。
初心者は「高いモデルを買えば長く使える」と考えるより、今の自分が無理なく吹けて維持できる楽器を選ぶ方が現実的です。
吹きやすさを確認するときは、単に音が大きく出るかだけを見ないようにしましょう。軽い息でも発音できるか、低音から高音まで無理なくつながるか、レジスターをまたいだときに極端な難しさがないかを確認します。
クラリネットはマウスピースへ1枚のリードを取り付けて発音するシングルリード式の木管楽器です。マウスピースやリードが変わるだけでも反応が変わるため、本体を比較するときはできるだけセッティング条件をそろえましょう。
手が小さい人は、右手・左手の小指キイまで自然に届くか、親指に重さが集中しすぎないか、サムレストを調整できるかも確認しましょう。
購入後のことも重要です。近くの楽器店でそのメーカーを修理できるか、純正部品を取り寄せられるか、学校や地域のリペア技術者が扱い慣れているかなども実用品としては大切な条件です。
付属品も確認してください。マウスピース、リガチャー、キャップ、ケース、ケースカバー、バレルの本数などはメーカーやモデルによって異なります。高級モデルではマウスピースが付属しない場合もあります。
本体価格だけを見て予算を使い切るのではなく、必要に応じてリード、スワブ、コルクグリス、マウスピースなどにも費用がかかることを考えておくと安心です。
上級者・音大生・プロの選び方
上級アマチュアや音大受験を考える段階になると、メーカー名よりも具体的なモデルと個体の違いが重要になります。
クランポンならR13やRC以上、ヤマハならカスタムシリーズ、セルマーならPresenceやMuse、さらにユーベル、バックーン、ヨーゼフなども比較対象になるでしょう。
この価格帯では、40万~70万円台でも選択肢がかなり広がります。ユーベルAdvantageが462,000円、クランポンGALAが513,700円から、R13が587,400円から、Backun Q Seriesが605,000円から、ユーベルRêveが627,000円、クランポンRCが709,500円です。
ここまで来ると、「メーカーごとの大まかな特徴」よりも「そのモデルを自分がどう鳴らせるか」が重要になります。
同じR13でも複数個体を吹くと印象が異なる場合があります。同じように、ヤマハカスタムやセルマー、バックーンでも、本人との相性は実物を吹かなければ判断しきれません。
100万円以上になると、クランポンTradition、Festival、Prestige、Tosca、Légende、Divine、BCXXI、セルマーSignature、Recital、Privilège、Muse、Backun EssenceやLumière、ユーベルRomanzaやZenitなどが候補になります。
このクラスまで来ると、価格順に並べて「一番高いものが一番良い」と考える意味はほとんどありません。
高級モデルほど試奏結果と用途を優先することが大切です。
音大受験やプロ志向では、指導者の意見も参考にしながら、本人が複数個体を試奏します。本人の好みと、離れた位置で聴いたときの響きの両方を確認すると判断材料が増えます。
将来オーケストラで使うことを考えるなら、B♭管だけでなくA管との組み合わせも意識します。B♭管とA管で吹奏感、音色、音程感をなるべくそろえられるかも重要な比較ポイントになります。
また、高級楽器では本体以外の条件も重要です。交換用バレルやベル、上管の供給、修理体制、輸入代理店、特殊キイの修理対応などを確認しておくと、長期使用を考えやすくなります。
メーカーを固定してB♭管とA管をそろえる方法もありますが、重要なのはブランド名を統一することそのものではなく、実際の演奏で持ち替えたときに違和感が少ないことです。
試奏と購入前に確認するポイント
クラリネットは、スペック表を読んだだけでは最終判断しにくい楽器です。
特に木製モデルは、同じ型番でも個体差があります。できれば店頭で実際の個体を比較し、吹奏感や操作性を確認してください。
試奏するときは、可能なら同一モデルを2~3本比較すると違いが分かりやすくなります。一台だけを吹いて判断すると、その感触が「そのモデルの特徴」なのか「その個体の特徴」なのか分けにくいからです。
メーカーを変えて比べる場合も、できるだけ同じマウスピースとリードを使いましょう。マウスピースやリードを変えると、レスポンスや抵抗感、音色が大きく変わるためです。
ロングトーンだけでなく、低音E付近から高音域まで吹き、スロートトーンやレジスターをまたぐ音階も確認します。
たとえば、低音はよく鳴るのに中音域で急に抵抗が強くなる、スロートトーンだけ極端に音程が取りにくい、レジスターをまたいだ瞬間に息の使い方が大きく変わる、といった違いは実際に吹かないと分かりにくい部分です。
小さい音から大きい音まで反応するかも確認してください。ppでは音が立ち上がりにくい、ffでは音がまとまりにくいなど、音量による反応の違いも比較材料になります。
タンギングの立ち上がりも確認しましょう。発音の瞬間が思った通りに反応するか、速いタンギングでも音がついてくるかを見ることで、レスポンスの相性を判断しやすくなります。
音程はチューナーの数字だけを見るのではなく、普段のアンブシュアや息で吹いたときに、特定の音だけ大きく補正し続けなければならない状態になっていないかを見るとよいでしょう。
どのクラリネットにも音程の傾向はあります。重要なのは「一音もずれない楽器」を探すことではなく、自分にとって無理なく補正できる範囲かどうかです。
キイについては、小指が無理なく届くか、親指に負担が集中しないかを確認してください。手の大きさや指の長さによって、同じキイ配置でも使いやすさは変わります。
可動式サムレストがある場合は、位置を調整してもらってから吹くと印象が変わることがあります。ストラップリングの有無を気にする人は、その点も確認してください。
数分の試奏では問題なくても、長時間吹くと疲れ方が変わることがあります。短時間で「よく鳴る」と感じる楽器だけでなく、ある程度吹き続けても息や手に無理がないかを見ることも大切です。
試奏では同じモデルを複数個体で比べると、モデルの傾向と個体差を分けて考えやすくなります。
店頭の試奏個体は、調整状態によって印象が変わることがあります。気になる楽器があれば、必要に応じて調整後にもう一度確認する方法もあります。
可能なら、自分で吹いた感触だけでなく、少し離れた場所で第三者にも聴いてもらうと判断材料が増えます。奏者が耳元で感じる音と、客席側で聞こえる音が同じとは限らないためです。
購入条件も重要です。新品保証、木部割れの保証、初回調整の有無、定期メンテナンス、純正部品の取り寄せ、返品・交換条件、付属マウスピースやケースの内容を確認しておきましょう。
特に木製クラリネットでは、通常の製品保証と木部割れに関する保証の条件が同じとは限りません。保証期間や対象条件を購入前に確認しておくと安心です。
木製クラリネットは、急激な温度や湿度の変化によって割れる可能性があります。新品購入後の慣らし方についてはメーカーや販売店の説明に従い、演奏後は管内の水分をスワブで取り除いてください。
組み立てや分解の際はジョイントを無理にねじ込まず、コルクの状態も確認します。硬すぎる場合や緩すぎる場合は自己流で無理に直さず、調整を依頼する方が安全です。
通販を利用する場合は、型番だけで決めず、「選定品か」「調整済みか」「保証窓口はどこか」「返品条件はどうなっているか」を確認すると安心です。
特に木製クラリネットは個体差があるため、可能であれば試奏して選べる購入方法が向いています。通販しか選択肢がない場合は、選定の有無や返品・交換条件をより慎重に確認してください。
価格はメーカー希望小売価格や国内正規取扱店の表示価格が改定されることがあります。在庫や為替によっても変わるため、正確な情報は各メーカーや正規取扱店の最新情報をご確認ください。
高額な楽器選びで判断に迷う場合は、指導者やクラリネットに詳しいリペア技術者など専門家へ相談してください。メーカー名だけでなく、実際の個体を見ながら意見を聞くと、候補を絞りやすくなります。
クラリネットメーカーのよくある質問
Q1. 初心者はどのクラリネットメーカーを選べばいいですか?
A. ヤマハやビュッフェ・クランポンなど、初心者向けモデルがあり、国内で調整や修理を依頼しやすいメーカーから比較すると選びやすいです。ただし、メーカー名だけで決めず、手の大きさ、吹奏感、予算、学校や近隣店でのサポート体制まで確認してください。屋外や学校での管理を重視するなら樹脂管、長期使用を考えて木製を希望するならグラナディラ製モデルなど、使用環境から絞る方法もあります。
Q2. セルマーのクラリネットはいくらくらいしますか?
A. 2026年3月改定時に確認できる税抜参考価格では、Presence B♭ EVOLUTION仕様が699,000円、Signature・Recital・PrivilègeのB♭が各1,140,000円、Muse B♭ 18キイが1,200,000円です。A管やMuseの別仕様ではさらに価格が上がります。消費税や販売価格、仕様によって変わるため、購入時には最新情報を確認してください。
Q3. ノブレは現在もクラリネットメーカーとして存在しますか?
A. Nobletは現在、新品クラリネットを幅広く展開する主要な独立メーカーというより、Leblancの歴史につながる名称として理解する方が正確です。中古市場にはNobletのクラリネットがありますが、製造年代や部品供給、保証条件は現行新品とは異なるため確認が必要です。中古で見つけた場合は、名前だけで判断せず、管体やキイ、タンポ、コルクなど楽器そのものの状態を確認してください。
Q4. モパネはクラリネットのメーカー名ですか?
A. いいえ。モパネはメーカー名ではなく木材の名称です。F.A.ユーベルなどがクラリネットの管体材として使用しています。材質による傾向だけで音色を断定せず、ボア設計やバレル、ベル、マウスピース、リード、個体差も含めて判断してください。
Q5. 高いクラリネットほど初心者でも吹きやすいですか?
A. 必ずしもそうではありません。プロモデルは音色を作る自由度や一定の抵抗感を持たせた設計になっている場合があり、初心者には扱いにくく感じることがあります。価格よりも、自分の息で無理なく発音できるか、手に合うか、長時間吹いて疲れにくいかを確認してください。
まとめ
クラリネットのメーカー選びでは、「有名だから」「高いから」という理由だけで決めないことが大切です。
- ヤマハは品質管理や国内サポートを重視したい人が比較しやすい
- クランポンは学生向けからプロ用までモデル数が多い
- セルマーは独自設計の中上級・プロモデルが充実している
- ルブラン、ユーベル、ヨーゼフ、バックーンにも独自の特徴がある
- ノブレはLeblancの歴史と深く関係する名称として理解する
- モパネはメーカー名ではなくクラリネットに使われる木材名
- 木製クラリネットは同じ型番でも個体差を考えて試奏する
- 価格だけでなく修理体制や保証、部品供給も確認する
初心者なら、まずは自分が無理なく吹けて、購入後も調整や修理を続けやすい楽器を選ぶところから始めるとよいでしょう。
中高生で長く続ける予定なら、現在の吹きやすさに加えて、数年後も使えるか、学校卒業後も修理を受けやすいかまで考えておくと選びやすくなります。
上達して選択肢が増えてきたら、メーカー名ではなく、モデルや個体ごとの違いまで比較していくことが重要です。
特に高価格帯では、ブランドの知名度や価格表より、実際の試奏で得られる吹奏感、音程、操作性、長時間吹いたときの疲労感、修理体制などを総合して判断してください。
クラリネットは、メーカーごとに特徴があっても、最後に演奏するのは奏者本人です。メーカー名より自分との相性を確かめることを忘れず、複数の候補を比較しながら自分に合う一本を探してみてください。

