初心者向けトランペット教本の選び方|独学で役立つ教材を比較
トランペットを独学で始めようとすると、意外と早い段階で迷うのが「どの教本を使えばいいのか」という問題です。
書店や通販を探すと、初心者向けのトランペット教本、昔から使われているトランペット教則本、アーバンのような定番教材、毎日の基礎練習に特化した本まで、かなり性格の違う教材が見つかります。
しかも、表紙に「入門」「教本」「教則本」と書かれていても、すべてが完全初心者向けとは限りません。楽器を初めてケースから出す人を想定した本もあれば、すでに音を出せる人が技術を深めるための本もあります。
そのため、初心者がトランペット本を選ぶときは、単純に有名な1冊を探すよりも、今の自分がどこまでできていて、次に何を覚えたいのかを基準にする方が失敗しにくいですよ。
特に独学では、先生が隣で「今日はここまで」「この課題はまだやらなくて大丈夫」と整理してくれません。だからこそ、楽器の扱い方、構え方、呼吸、アンブシュア、音の出し方、運指、タンギングなどを、無理のない順番で学べる教材が重要になります。
この記事では、初心者向けトランペット教本を比較しながら、最初の1冊に向く教材、説明を補う教材、毎日の基礎練習に向く教材、そしてアーバンを取り入れるタイミングまで整理します。
- 初心者向けトランペット教本を選ぶ基準
- 主要な教本・教則本の特徴と違い
- アーバン教則本を使い始めるタイミング
- 独学で教本を無理なく使い続ける方法
初心者向けトランペット教本の選び方
初心者向けのトランペット教本を選ぶときに、最初に見るべきなのは本の知名度ではありません。
大切なのは、あなたが今いる段階から無理なく練習を始められる構成になっているかです。
完全初心者の場合、いきなり音階や練習曲から始まる本より、楽器を持つところから順番に説明してくれる本の方が使いやすくなります。一方、すでに基本的な音を出せる人なら、毎日の基礎練習やタンギング、スラーなどを集中的に練習する教材の方が役立つことがあります。
最初の1冊を選ぶときは、「有名かどうか」より、「今の自分が最初のページから取り組めるか」を確認することが大切です。
ここでは、教本・教則本・練習曲集の違いから、初心者が確認したい説明量、譜例、音源、収録内容まで順番に見ていきます。
教本・教則本・練習曲集の違い
トランペットの教材を探していると、「教本」「教則本」「メソード」「エチュード」「練習曲集」といった言葉が出てきます。
まず知っておきたいのは、「教本」と「教則本」には、すべての出版社で共通する明確な区別があるわけではないということです。
名称だけを見ると「教本は初心者用、教則本は本格的な人向け」と感じるかもしれません。しかし実際には、どちらも奏法や練習方法を学ぶ教材という意味で使われることがあります。
そのため、「教本だからやさしい」「教則本だから難しい」と決めつけず、中身を確認する必要があります。
一方で、エチュードや練習曲集は性格が少し異なります。エチュードは、実際に演奏する譜例や練習曲を通して特定の技術を身につけることを目的とした教材です。
つまり、姿勢、楽器の持ち方、呼吸、アンブシュア、マウスピースの当て方などを最初から丁寧に説明することよりも、譜面を吹きながら技術を練習する比重が大きい傾向があります。
完全初心者が独学する場合、この違いはかなり大切です。
例えば、楽器を初めて持ったばかりなのに、音符の並んだ練習曲だけを渡されても、「そもそも口をどう作るのか」「息はどう使うのか」「どのくらいマウスピースを当てるのか」といった疑問が残ります。
そこで最初は、楽器の扱い方、構え方、呼吸、アンブシュア、発音、運指などを一つずつ説明してくれる総合的なトランペット教本を選ぶ方が進めやすくなります。
アーバンのような有名なトランペット教則本にも、発音や呼吸などの基本事項は含まれています。しかし、練習課題の量が多く、そこから先の内容も広いため、完全初心者向けの入門書とは少し役割が違います。
教材名よりも目次を見るのがコツです。「楽器の扱い」「姿勢」「呼吸」「音の出し方」「運指」などが前半に並んでいれば、完全初心者でも始めやすい構成か判断しやすくなります。
教材選びで迷ったら、「これは説明を読む本なのか」「譜例を吹いて練習する本なのか」「毎日の基礎練習を決める本なのか」と役割を考えてみてください。
この整理ができると、「評判がよさそうだから買ったけれど、自分にはまだ難しかった」という失敗を避けやすくなります。
最初の1冊で見るポイント
完全初心者が最初のトランペット教本を選ぶ場合は、まず音を出す前の説明がどこまであるかを確認しましょう。
トランペットは、正しいピストンを押せば必ず狙った音が出る楽器ではありません。同じ運指でも、息や唇の状態によって異なる高さの音が出ることがあります。
そのため、最初から指番号だけを覚えるよりも、呼吸やアンブシュア、発音を含めて理解する必要があります。
最初の1冊では、次のような項目を確認できると安心です。
- 楽器の持ち方と置き方
- 姿勢と構え方
- マウスピースの扱い
- 呼吸
- アンブシュア
- 音の出し方
- タンギング
- 運指
- 日常の手入れ
特に独学の場合、楽器の扱い方や手入れまで載っているかは見逃しやすいポイントです。
演奏方法だけを理解しても、楽器のしまい方や日常的な手入れが分からなければ、別の情報を探す必要が出てきます。最初の段階では、演奏と取り扱いを一緒に確認できる本の方が迷いを減らせます。
次に確認したいのが、譜例が段階的になっているかです。
初心者向けの教材では、いきなり広い音域や速いフレーズへ進むより、少ない音数と長めの音符から始め、少しずつ使える音やリズムを増やしていく構成の方が取り組みやすくなります。
最初は「たくさん吹く」よりも、「何を練習しているのか分かる」ことの方が大切です。
例えば、全音符を使って音を長く保つ課題なら、音の立ち上がり、息の流れ、音が途中で揺れないかなどに集中できます。
そこへ音数が増え、4分音符、休符、タンギング、スラーと一つずつ要素が加われば、練習の目的も整理しやすくなります。
反対に、最初から複数の技術を同時に要求されると、「音が出ない原因が息なのか、舌なのか、運指なのか」が分からなくなりやすいです。
完全初心者なら、次のような流れを大きく飛ばさず学べる教本が扱いやすいでしょう。
楽器の扱い方 → 姿勢・構え方 → 呼吸 → アンブシュア → マウスピースでの発音 → 楽器で音を出す → 運指 → ロングトーン → タンギング → 簡単なリズム → スラー → 音階 → 簡単な曲 → 日々の基礎練習
また、説明量も重要です。
譜面を読める人なら、短い説明と譜例だけでも練習の意図を理解できることがあります。しかし、楽器も楽譜も初めてという場合は、文章や図が少ないと「この練習は何のためにやるのか」が分かりません。
独学では、横で説明してくれる人がいないぶん、教本自体が先生の役割の一部を担います。
だからこそ、練習譜だけでなく、何を意識するのか、どこで失敗しやすいのか、次へ進む目安は何かといった説明がある本は使いやすいですよ。
ただし、文章が多ければ必ず優れた教本というわけでもありません。説明を読んでも実際に吹く課題がほとんどなければ、知識だけが増えて練習につながらないことがあります。
理想は、説明を読む → 短い譜例で試す → 次の技術へ進むという流れがある教材です。
音源と収録内容を確認
独学でトランペットを練習するなら、音源の有無も確認しておきたいポイントです。
模範演奏を聴けると、楽譜だけでは分かりにくい音の長さ、リズム、タンギング、フレーズのまとまりなどを耳で確認できます。
特に楽譜を読むことに慣れていない人は、「このリズムで合っているのかな」と不安になることがあります。そんなとき、実際の音を確認できる教材は役立ちます。
ただし、音源にはできることと、できないことがあります。
音源を聴けば、目指す演奏のイメージはつかめます。しかし、自分のアンブシュアが適切か、息を止めていないか、マウスピースを押し付けすぎていないかまでは判断してくれません。こうした吹き方を自分だけで判断しにくい場合は、EYS音楽教室のレッスンについて確認するなど、実際に演奏を見てもらう方法もあります。
模範音源は「正しい吹き方を自動で判定してくれるもの」ではありません。音程、リズム、発音、音の長さなどを確認するための参考として使いましょう。
また、CD付き教材を選ぶ場合は再生環境も確認してください。
現在はスマートフォンだけで音楽を聴いている人も多いため、CDをそのまま再生できない場合があります。CDプレーヤーやパソコンの光学ドライブがない場合は、購入後に再生方法で困る可能性があります。
教材紹介に「音源付き」と書かれている場合でも、CDなのか、別の方法で聴けるのかは商品ごとに確認が必要です。
収録内容では、次のような基礎項目を見ておくと教材を比較しやすくなります。
- 呼吸
- ロングトーン
- タンギング
- フィンガリング
- リップスラー
- 音階
- 音程
- リズム
- アーティキュレーション
- 簡単な練習曲やレパートリー
- 運指表
- 日常の手入れ
もちろん、これらがすべて1冊に入っていなければダメということではありません。
例えば、完全初心者用の薄い入門書なら、最初の音を出すところまでに内容を絞っていることがあります。その場合は役割が明確なので、教材として不足しているというより「次の本へつなぐための入口」と考える方が自然です。
反対に、アーバンのような大きな教則本は、一冊の中に幅広い技術課題が入っています。しかし、内容が多いからこそ、完全初心者が自分だけで練習順序を決めるのが難しくなる場合があります。
教材は、収録量が多いほど初心者向きになるわけではありません。
今の段階で必要な内容が、分かりやすい順番で入っているか。ここを基準にすると選びやすくなります。
初心者向けトランペット教本を比較
ここからは、初心者が候補にしやすい主要なトランペット教本を比較します。
同じ「初心者向け」と考えられる本でも、内容の方向性はかなり違います。
楽器を初めて触る人向けの総合教本、短い練習を順番に進める本、模範音源が付いている本、奏法について詳しく読む本、毎日の基礎練習を決める本など、それぞれに役割があります。
最初から全部をそろえる必要はありません。まず主教材を1冊決めて、不足を感じたときに補助教材を追加するくらいで十分です。
| 教材 | 主な位置付け | 主な特徴 | 音源 | 価格の目安 |
|---|---|---|---|---|
| パワーアップ吹奏楽!トランペット | 総合的な初心者向け | 楽器の扱いから奏法、基礎練習まで幅広い | 公式商品情報では付属CD等の記載なし | 税込1,980円 |
| ラーン・トゥ・プレイ 最新トランペット/コルネット教本 Book1&2 | 段階的に進む初心者向け | 少ない音数や基本的な音符から徐々に進む | ― | 税込2,200円程度 |
| トランペット&コルネット教本 | 説明と実践を進める初心者向け | 楽器の基礎からスラー、タンギングなどへ進む | 現行商品情報では確認できず | 税込1,320円 |
| 入門トランペット | 最初の導入確認 | 16ページで必要な初歩を簡潔に確認 | ― | 税込770円程度 |
| 美しく吹こう! トランペット入門ブック | 音源を使いたい初心者向け | トレーニングCD付き | トレーニングCD付 | 税込1,980円 |
| 上達の基本 トランペット | 奏法を理解する参考書 | 基礎奏法や練習の考え方を幅広く解説 | ― | 税込1,760円 |
| 新版 朝練トランペット | 毎日の基礎練習 | 約30分のウォーミングアップと基礎練習 | ― | 税込1,320円程度 |
| アーバン:金管教則本 | 基礎後の総合的な技術練習 | 基礎から複数タンギングまで幅広い課題 | ― | 税込3,190円程度 |
価格は2026年9月時点で確認された情報をもとにした目安を含みます。価格改定、販売店による違い、送料、在庫状況などで変わる可能性があるため、購入時は正確な情報を出版社などの公式情報で確認してください。
完全初心者向けの4冊
楽器を初めて手にする段階なら、まず候補にしやすいのが「パワーアップ吹奏楽!トランペット」「ラーン・トゥ・プレイ 最新トランペット/コルネット教本 Book1&2」「トランペット&コルネット教本」「入門トランペット」です。
4冊とも役割は同じではないので、「一番よい本」を決めるより、自分がどのタイプの説明を必要としているかで比較しましょう。
パワーアップ吹奏楽!トランペット
「パワーアップ吹奏楽!トランペット」は、ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングスから刊行されている教材です。
著者は上田じん氏。2026年1月15日発売の現行商品は104ページ、B5判縦、税込1,980円です。
この本の特徴は、単に練習譜を並べるのではなく、楽器を演奏する前の段階から説明していることです。
楽器の取り出し方、組み立て方、置き方、しまい方、手入れに触れたうえで、呼吸、構え方、アンブシュア、ロングトーン、タンギング、音階、リップスラーへ進みます。
さらに、音色、フィンガリング、発音、音域、耐久力、音程、ダブルタンギング、トリプルタンギング、ダイナミクスなど、上達してから必要になる内容も扱われています。
目的別に取り組める「10分でできる練習」や、合奏、音楽記号、楽譜、スコアの読み方、運指表なども含まれているため、吹奏楽部を想定した教材でありながら、独学初心者にも応用しやすい構成です。
「どこから手を付ければいいか分からない」という人は、演奏だけでなく、楽器の扱いから順番に学べる教材の方が安心しやすいですよ。
なお、現在販売されている版については、旧版「パワーアップ吹奏楽!トランペット」と内容が同じであることが公式商品情報で示されています。
ラーン・トゥ・プレイ 最新トランペット/コルネット教本 Book1&2
「ラーン・トゥ・プレイ 最新トランペット/コルネット教本 Book1&2」は、全音楽譜出版社から刊行されている初心者向け教材です。
編者はC.F.グース、訳は杉原道夫氏。96ページで、税込販売例は2,200円です。
この教本の大きな特徴は、少ない音数、簡単な音符、短い練習から段階的に進む構成にあります。
音楽と楽器の基礎、演奏準備から始まり、全音符、2分音符、4分音符などを使いながら、少しずつ演奏に必要な要素を増やしていきます。
短い曲やデュエットも含まれているため、一つの課題が長すぎる教本に不安を感じる人にも取り組みやすいでしょう。
初心者の段階では、長い曲を最後まで吹き切るより、「今日はこの音符」「今日はこのリズム」と課題を小さく分けられる方が進めやすいことがあります。
書名にある「最新」は、新しく発売されたという意味ではありません。全音楽譜出版社の公式情報では発売日は1989年12月15日です。「最新刊」という意味で選ばないよう注意しましょう。
古い発売日の教材だから使えない、ということでもありません。音符、リズム、運指、基本的な奏法など、現在でも練習に使われる基礎は多くあります。
一方、奏法の説明については著者や出版年代によって考え方が異なる場合があるため、一つの文章だけを絶対的な正解として受け取らない姿勢も大切です。
トランペット&コルネット教本
ドレミ楽譜出版社の「トランペット&コルネット教本」は、板倉駿夫氏による管楽器メソード・シリーズの教材です。
現行版は103ページ、税込1,320円で、2026年の出版社商品資料でも掲載が続いています。
内容は、トランペット/コルネットの種類、各部名称、構え方、マウスピース、楽器選び、手入れ、運指、呼吸、音の出し方などから始まります。
そこからスラー、タンギング、スタッカート、リップスラーなどへ進み、簡単な曲も収録されています。
基本テクニックを低音域中心に配置し、無理なく技能を身につけることを意図した教材なので、説明を読みながら、そのまま演奏練習へ進みたい人には分かりやすい選択肢です。
「楽器について読む本」と「練習譜を吹く本」を別々に用意するより、1冊の中で両方を進めたい人にも合わせやすいでしょう。
付属音源については現行商品情報では確認できないため、音源を最優先にしたい場合は購入前に商品仕様を確認してください。
入門トランペット
全音楽譜出版社の「入門トランペット」は、金石忠夫氏による16ページのコンパクトな教材です。
税込販売例は770円で、楽器の扱い、持ち方、構え方、音の出し方、呼吸法など、最初の段階で必要になる内容をイラスト入りで確認できます。
ページ数だけを見ると「少なすぎるのでは」と感じるかもしれません。
ただ、この教材は最初から長期間使う総合教本というより、楽器を始める入り口を短く整理する本と考えると役割が分かりやすくなります。
出版社自身も、最初の段階で必要なことを扱ったうえで、その後の学習は別の教本へ委ねる位置付けを示しています。
そのため、最初の構えや音出しだけを簡潔に確認したい人には候補になりますが、「この1冊で半年、1年と練習を続けたい」という人には練習量が不足しやすいでしょう。
購入価格だけを見ると手に取りやすい本ですが、後から別教材が必要になることまで考えて選ぶと納得しやすいですよ。
解説・音源重視の2冊
初心者向け教本を探している人の中には、「譜例をどんどん進めるより、吹き方を理解したい」「模範演奏を聴きながら練習したい」という人もいると思います。
その場合に確認しやすいのが、「美しく吹こう! トランペット入門ブック」と「上達の基本 トランペット」です。
この2冊は同じ役割ではなく、前者は音源付きの入門書、後者は奏法の考え方や基礎を理解する参考書として捉えると整理しやすくなります。
美しく吹こう! トランペット入門ブック
ドレミ楽譜出版社の「美しく吹こう! トランペット入門ブック」は、山口りえ氏による入門教材です。
約64ページで、トレーニングCDが付属しています。2026年の出版社資料では税込1,980円として掲載されています。
完全独学で練習する人にとって大きな特徴は、模範演奏を聴きながら練習できることです。
楽譜に慣れていない段階では、譜面に正しい音符が書かれていても、「どのようなリズムになるのか」「どのくらいの長さで吹くのか」が頭の中で再現できないことがあります。
そんなとき、模範演奏を確認できれば、耳から演奏イメージを作れます。
また、この教材はトランペットの基礎だけでなく、姿勢や演奏時の見た目にも触れるタイプの入門書です。
ただし、CDが付属している点は購入時に注意も必要です。
中古品ではCDが欠品している可能性があります。また、古い通販ページや中古商品では旧版が混在する場合があるため、ISBNや付属品を確認しておきましょう。
2026年の出版社資料にも掲載されていますが、実際の在庫状況は変わる可能性があります。購入時点の正確な販売状況は販売元で確認してください。
上達の基本 トランペット
音楽之友社の「上達の基本 トランペット」は、高橋敦氏による96ページの教材です。
2018年11月発行、定価は税込1,760円です。
呼吸、姿勢、アンブシュア、タンギング、ロングトーン、リップスラーといった基本から、スラー、スタッカート、スケール、ダイナミクス、ダブル/トリプルタンギング、ピッチ、ヴィブラート、音域などまで幅広く扱います。
さらに、1日10分のデイリートレーニング、練習計画、メンテナンス、マウスピース選びなどにも触れています。
この本は、最初のページから譜面を一つずつクリアしていくタイプの練習帳というより、奏法や基礎練習について理解を深めるための解説書として使いやすい教材です。
例えば、初心者用の総合教本を進めていて「ロングトーンって、ただ長く吹くだけ?」「タンギングは何を意識するの?」と疑問が増えてきたときに、考え方を整理する参考書として使えます。
完全初心者が最初の1冊として使えないわけではありませんが、譜例を順番に進める主教材と組み合わせる方が役割を分けやすいでしょう。
独学では「練習譜を進める本」と「奏法を理解する本」を同じ役割だと思わないことが大切です。主教材で実際に吹きながら、疑問が出た部分を解説書で補う方法もあります。
毎日の基礎練習向け1冊
ある程度音を出せるようになると、次に出てきやすい悩みが「毎日何を練習すればいいのか分からない」というものです。
そんな段階で役割が分かりやすいのが、全音楽譜出版社の「新版 朝練トランペット」です。
著者は藤井完氏。2016年3月の新版で、46ページ、税込販売例は1,320円です。
この教材は、毎日の基礎練習を約30分で行うことを想定し、ウォーミングアップと基礎練習を効率よく進めることを目的としています。
重要なのは、楽器を初めてケースから出す人向けの入門書ではないという点です。
構え方、最初の音の出し方、楽器の扱い方などをゼロから順番に説明する本というより、基本的な音を出せるようになった人が日課を作るための教材と考えると分かりやすくなります。
「音は出せるようになったけれど、毎日ロングトーンだけでいいのか分からない」という段階で検討しやすい本です。
基礎練習は地味に感じるかもしれません。
しかし、トランペットではロングトーン、タンギング、スラー、音階など、曲を演奏する前の土台になる練習があります。
毎回気分で練習内容を変えると、得意な練習だけを繰り返し、苦手な項目が抜けることもあります。決められた基礎練習の流れがあると、日課を作りやすくなるのが利点です。
一方で、「30分と書かれているから毎日必ず30分吹かなければならない」と考える必要はありません。
トランペットは唇を使って演奏するため、疲労した状態で無理に続けると音が崩れやすくなります。
その日の体調、唇の状態、練習できる時間を考えながら量を調整しましょう。
完全初心者なら、まず入門教本で構え方、呼吸、アンブシュア、運指などを覚え、その後で「朝練」のような教材を加える方が使い方を理解しやすくなります。
アーバン教則本は初心者に必要?
トランペット教則本を探すと、かなりの確率で名前が出てくるのが「アーバン」です。
長く使われている代表的な教材なので、「トランペットを始めるなら最初からアーバンを買った方がいいのでは」と考える人もいるでしょう。
アーバンは、基本から幅広い技巧まで練習できる重要な教材です。
ただし、有名な教材であることと、完全初心者が最初から独学しやすいことは別です。
まずアーバンがどのような内容を持つ教則本なのかを理解し、自分の段階に合わせて使い始めるのがおすすめです。
アーバンの特徴と現行版の注意点
全音楽譜出版社から刊行されている現行の「アーバン:金管教則本」は、ジョゼフ・ジャン=バプティスト・アーバンを原著とし、曽我部清典氏が校訂した教材です。
全音では「ISM(International Standard Methods)for Trumpet」のシリーズとして扱われています。
現行版は200ページ、菊倍判。ISBNは9784115495029で、全音公式の発売日は2009年4月15日です。税込販売例は3,190円で、現在も販売が続いています。
内容はかなり幅広く、マウスピース位置、発音、呼吸、音程とリズムの基礎、最初の練習曲から始まり、シンコペーション、付点音符、各種リズム、スラー、長音階、短音階、半音階、音の跳躍へ進みます。
さらにシングルタンギング、ダブルタンギング、トリプルタンギングなど、より発展的な技術まで扱います。
つまりアーバンは、一つの技術だけに特化した練習帳ではなく、さまざまな金管奏法を大量の譜例で練習する総合的な教則本です。
最初の部分には基本事項も載っているため、「初心者には使えない本」という理解も正確ではありません。
ただ、200ページという分量があり、そこから多くの練習課題へ発展するため、完全初心者が一人で「1ページ目から毎日順番に進めればよい」と考えると、途中で負担を感じやすくなります。
何を練習しているのか、今の段階でどの課題が必要なのかを判断しながら使う方が、アーバンの特徴を生かしやすいでしょう。
現在の全音200ページ版を、以前の「アーバン・金管教本 全3巻」の内容すべてを1冊にまとめた版と考えないよう注意してください。公式説明では、従来版の第1巻にあたる内容とされています。
旧第2巻に含まれていた「14の特別な練習曲」に相当する教材は、現在「アーバン:14の性格的練習曲」として別に刊行されています。
中古でアーバンを探す場合は、旧全音版、現行版、輸入版などが混在する可能性があります。
現行の全音ISM版を探す場合は、商品名だけではなくISBN 9784115495029を確認するのが一つの目安になります。
また、アーバンの原典がコルネットを中心としたメソードであることから、「トランペットには使えないのでは」と疑問を持つ人もいるかもしれません。
しかし、現在はトランペットの標準的な教材の一つとして扱われています。「コルネット用だからトランペットでは使えない」という理解は適切ではありません。
初心者が使うタイミング
完全初心者がアーバンを使うなら、最初に考えたいのは「買うか、買わないか」よりも、いつ、どのような役割で使うかです。
おすすめしやすい流れは、まず初心者向けの総合教本で、楽器の持ち方、構え方、呼吸、アンブシュア、基本的な音の出し方、運指、タンギングなどを一通り理解することです。
そのうえで、基礎技術を深める教材としてアーバンを加えると、今取り組んでいる課題の意味が分かりやすくなります。
例えば、タンギングという言葉も、まだ舌の使い方を理解していない段階では、アーバンの譜例を吹くだけになってしまう可能性があります。
一方、基本的なタンギングを理解した後なら、「均等に発音する」「テンポを変える」「さまざまなリズムで発音する」といった技術練習として使いやすくなります。
スラーや音階も同じです。
最初から課題を全部こなすのではなく、今強化したい技術に合わせて選んで使う方法があります。
例えば、教材を次のように分けると役割を整理しやすくなります。
主教材=初心者向け総合教本
日課用=朝練などの基礎練習教材
発展教材=アーバン
このように分ければ、「全部の本を毎日最初から順番に進めなければならない」という状態になりません。
アーバンは長く使える教材ですが、だからこそ一気に終わらせようとする必要もありません。
基礎を覚えた後に少しずつ加え、自分の弱点や目標に合わせて使う方が現実的です。
また、アーバンを持っていないから基礎練習ができない、ということでもありません。
まだ音を安定して出す段階なら、初心者教本に載っているロングトーンや簡単なタンギングを丁寧に行うことも十分に意味があります。
教材を増やすことより、今持っている教材の目的を理解して練習することを優先しましょう。
独学で教本を使うコツと注意点
自分に合いそうな教本を選べても、独学では「どう使うか」が同じくらい重要です。
最初から何冊も並べたり、難しい課題まで一気に進んだりすると、練習量は増えても、自分が何を改善しようとしているのか分からなくなることがあります。
特にトランペットは、同じ運指でも息や唇の状態によって異なる倍音が出る楽器です。
ピストンの番号だけ覚えれば演奏できるわけではないため、音の出し方そのものを丁寧に確認する必要があります。
独学では「たくさん吹く」より、「何を確認しながら吹くか」を決めることが大切ですよ。
主教材を1冊に絞って進める
初心者のうちは、トランペット本を何冊も同時に買うより、まず主教材を1冊決める方が練習内容を整理しやすくなります。
教本によって、アンブシュア、呼吸、練習順序、表現の仕方には違いがあります。
ある本では「ここを意識する」と説明され、別の本では別の言い方をされることもあります。
経験者なら、それぞれの説明を比較しながら自分に合う考え方を選べます。
しかし完全初心者の場合、まだ判断材料が少ないため、「結局どちらが正しいの?」と混乱しやすくなります。
だからこそ、まず総合的な初心者向け教本を1冊進めてみてください。
その中で、「毎日の基礎メニューが欲しい」「奏法の意味をもっと詳しく知りたい」「タンギングや音階をさらに練習したい」といった不足が見えてから、補助教材を加える方が管理しやすくなります。
例えば、次のように考えられます。
- 最初の主教材は初心者向けの総合教本
- 毎日の基礎練習を決めたくなったら「朝練」などを追加
- 奏法の説明を深く読みたくなったら解説書を追加
- より多くの技術課題に取り組みたくなったらアーバンを追加
これなら、それぞれの教材が競合せず、「何のために開く本なのか」が明確になります。
また、トランペットは実際に音を出せる環境を確保することも大切です。自宅で音量が問題になる場合は、静かに楽器を練習するための選択肢を確認したり、十分に音を出して基礎練習をしたい場合は自宅以外で楽器を練習できる場所を検討したりすると、教材を使った練習を続けやすくなります。
1回の練習で全部やろうとしない
教本を買うと、最初から最後まで早く進めたくなるかもしれません。
ただ、トランペットは唇を振動させて音を出すため、疲労の影響を受けます。
唇が疲れて音が崩れている状態で、さらに高い音や強いタンギングを続けても、課題の意図を確認しにくくなります。
練習中に音が急に出しにくくなったら、「まだ練習量が足りない」と決めつけず、疲れていないかも確認してみてください。
アンブシュアを強く固定しすぎたり、マウスピースを必要以上に押し付けたり、高音を無理に出し続けたりするのは避けましょう。
痛みが出るほど無理に吹き続けないことも大切です。
演奏中に痛みが続く場合や、自分で吹き方を判断できない場合は、無理に練習を続けず、必要に応じてトランペットのレッスンで吹き方を確認するなど、指導者へ相談してください。
音源は細かく分けて聴く
音源付き教本を使う場合は、模範演奏と最初から最後まで一緒に吹くだけで終わらないようにしましょう。
確認する項目を分けると、音源をより活用できます。
まずリズムだけ聴き、次に音の立ち上がりを聴き、その後に音の長さ、音程、フレーズを確認する、といった方法です。
自分の演奏と比べるときも、「なんとなく違う」で終わらせず、「最初の音が遅れている」「4分音符が短い」「タンギングの強さがそろっていない」と具体的に分けると練習しやすくなります。
チューナーも便利ですが、画面の針を合わせることだけが練習にならないよう注意してください。
自分の音を耳で聴き、「安定しているか」「音色が急に変わっていないか」と確認する習慣も大切です。
購入時は版と付属品を確認する
トランペット教本は、長く販売されている教材が多いため、新旧の版が通販検索に同時に表示されることがあります。
中古品を購入するときは、書名だけでなくISBN、ページ数、付属品などを確認しましょう。
特にCD付き教材は、商品説明に本の状態だけが書かれていて、CDが欠品している可能性があります。
アーバンも、旧全音版、現行版、輸入版などが混在しやすい教材です。
Amazonなどの通販を利用するときも、商品名だけではなくISBNを確認すると版を見分けやすくなります。
また、通販価格、送料、在庫状況は日時や販売元によって変わります。
この記事に記載している価格は判断材料の一つとして考え、最終的には購入時点の販売情報を確認してください。
トランペット教本のよくある質問
Q1. 完全初心者でもアーバン1冊だけで練習できますか?
A. アーバンにも発音、呼吸、リズムなどの基本事項は含まれているため、初心者が使えない教材ではありません。ただし、現行版は200ページあり、練習課題が多く、タンギング、スラー、音階、複数タンギングなどへ幅広く発展します。
完全初心者が独学で最初から最後まで順番に進めるには負担が大きくなりやすいため、まず楽器の扱い方、構え方、アンブシュア、音の出し方、運指などを段階的に説明する初心者向け教本を主教材にし、基礎を覚えた後にアーバンを追加する方法が分かりやすいでしょう。
Q2. 音源付きのトランペット教本を選んだ方がいいですか?
A. 独学では音源付き教材にメリットがあります。リズム、タンギング、フレーズ、音の長さなどを耳で確認できるため、楽譜だけでは演奏イメージがつかみにくい人には便利です。
ただし、模範演奏を聴くだけでは、自分のアンブシュア、息の使い方、マウスピースの当て方まで適切かどうかを判断することはできません。音源は演奏例を確認する材料として使い、必要に応じて専門家の指導も活用してください。
Q3. 「教本」と「教則本」はどちらを買えばいいですか?
A. 「教本」「教則本」という名前だけで選ぶ必要はありません。名称の使い方は出版社によって異なり、どちらも奏法や練習方法を学ぶ教材として使われることがあります。
大切なのは、対象レベル、説明量、譜例の段階性、音源の有無、収録されている基礎練習を確認することです。完全初心者なら、楽器の持ち方や呼吸、アンブシュアなど、音を出す前の段階から説明されている教材を優先すると選びやすくなります。
Q4. 楽譜が読めなくてもトランペット教本で独学できますか?
A. 初心者向け教本の中には、基本的な音符や休符、リズムから段階的に進む教材があります。「ラーン・トゥ・プレイ 最新トランペット/コルネット教本 Book1&2」のように、全音符、2分音符、4分音符などから少しずつ学ぶ構成の教材もあります。
楽譜経験がない場合は、単に練習曲が多い本を選ぶより、楽譜の読み方や基本的なリズムにも触れている教本を選ぶと進めやすいでしょう。
Q5. トランペット教本は何冊も買った方が早く上達しますか?
A. 教本の冊数が多いほど早く上達するとは限りません。むしろ初心者の段階で複数の教本を同時に進めると、アンブシュアや練習方法の説明が異なり、混乱することがあります。
まず初心者向けの総合教本を主教材として1冊決め、毎日の基礎練習が必要になったら「朝練」、奏法の理解を深めたくなったら解説書、さらに技術課題を広げたくなったらアーバン、というように役割を分けて追加すると整理しやすいですよ。
まとめ
初心者向けのトランペット教本を選ぶときは、有名な本やページ数の多い本を選べばよいわけではありません。
大切なのは、今の自分のレベルと練習目的に合っていることです。
完全初心者なら、楽器の扱い方、姿勢、構え方、呼吸、アンブシュア、マウスピースでの発音、運指、ロングトーン、タンギングなどを順番に学べる総合的な教本から始めると理解しやすくなります。
- 完全初心者なら楽器の扱いから説明される総合教本を選ぶ
- 少ない音数や短い譜例から段階的に進む教材は独学でも使いやすい
- 楽譜に不慣れなら説明量や楽譜の基礎解説も確認する
- 音源付き教材はリズムや発音のイメージ確認に役立つ
- 「朝練」は基本的な音を出せるようになった後の日課作りに使いやすい
- アーバンは完全初心者用入門書というより基礎から技巧まで深める発展教材として考える
- 最初から何冊も並行せず、まず主教材を1冊決める
- 中古品や通販ではISBN、版、付属CDなどを確認する
最初の教本だけですべての奏法を身につける必要はありません。
初心者用の主教材で基礎を学び、「毎日の練習を整理したい」「奏法をもっと理解したい」「タンギングや音階などの課題を深めたい」と感じた段階で、別の教材を追加すれば十分です。
アーバンのような大きなトランペット教則本も、基礎を理解してから使うことで、それぞれの課題の意味をつかみやすくなります。
教材をたくさん集めるより、今取り組んでいる1冊を「何のための練習なのか」と考えながら進めることを大切にしてください。
価格、在庫、版、付属品などは変更される可能性があります。購入前にはISBNを含め、正確な情報を出版社などの公式情報で確認してください。
また、独学でアンブシュアや息の使い方に迷った場合や、演奏中に痛みが続く場合は無理に練習を続けず、必要に応じてトランペットの指導者など専門家へ相談してください。
自分の段階に合ったトランペット教本を1冊選び、無理なく少しずつ進めていけば十分です。最初から難しい教材を完璧にこなすことより、今日できる基礎を一つずつ積み重ねていきましょう。

