フルートの練習で「ロングトーンをやった方がいい」と聞いても、実際には何秒くらい伸ばせばよいのか、どの音から始めればよいのか、毎日どのくらいやればよいのか分からないことがありますよね。
ロングトーンという名前だけを見ると、「とにかく長く音を伸ばす練習」と考えやすいのですが、目的はそれだけではありません。
フルートのロングトーンは、音の立ち上がりから終わりまで、音色・響き・音程・息の流れを安定させるための基礎練習です。長さを競うより、短い時間でも狙った音を安定して保つことを意識した方が、初心者には取り組みやすいですよ。
また、ロングトーンは自分の音をじっくり聞く時間でもあります。曲を吹いていると、指を動かしたりリズムを追ったりすることに意識が向きますが、1音だけを伸ばせば「息っぽくなっていないか」「最後に音程が下がっていないか」といった細かな変化へ集中できます。
この記事では、フルートのロングトーンの基本的なやり方から、初心者が意識したいコツ、楽譜の代わりに使える練習パターン、毎日5〜10分程度で続ける方法まで順番に解説します。
- フルートのロングトーンで意識したいポイント
- 初心者でも取り組みやすい基本的なやり方
- 楽譜代わりに使える具体的な練習パターン
- 毎日5〜10分で続けるための練習方法
フルートのロングトーンとは
ロングトーンとは、1つの音を一定時間伸ばしながら、音の状態を細かく確認する基礎練習です。
フルートでは、音色や響きだけでなく、息の流れ、音程、姿勢、アンブシュア、楽器の角度、吹き始めと終わりまでまとめて確認できます。
ロングトーンをしている間は指をほとんど動かさないため、曲の練習では気付きにくい「音そのもの」の問題を見つけやすいのも特徴です。
ロングトーンの目的は「できるだけ長く吹くこと」ではありません。
吹き始めから音の終わりまで、狙った音色や響きをできるだけ安定させることを第一に考えましょう。
長く吹くより音の安定が大切
初心者の場合、「10秒吹けた」「15秒吹けた」と、時間を伸ばすこと自体が目標になりがちです。
もちろん、息を一定に使える時間が長くなるのはひとつの変化です。ただし、途中で音程が大きく下がったり、息の音が急に増えたり、最後に音がしぼんだりしているなら、長さだけを伸ばしてもロングトーン本来の目的とは少しズレてしまいます。
「何拍伸ばせたか」より「何拍きれいな状態を保てたか」を基準にすると、何を練習すればよいかが分かりやすくなります。
たとえば8拍を目標にしていても、6拍目から音が大きく揺れるなら、まず4拍や5拍を安定して吹くことから始めて構いません。
4拍を余裕を持って吹けるようになったら6拍、さらに安定してきたら7拍、8拍と少しずつ延ばします。
この進め方なら、「息がなくなるまで我慢する練習」ではなく、「よい音を維持できる時間を少しずつ増やす練習」になります。
特に注意したいのが、音の最後です。息がほとんど残っていないのに無理に粘ると、音が細くなったり、音程が下がったりすることがあります。
ロングトーンでは最後の瞬間まで音の一部なので、息が完全になくなる前に、響きが残った状態で自然に終わることを意識した方がよいでしょう。
練習記録を付けるなら「今日は8秒できた」だけでなく、「6拍までは音色が安定」「最後に音程が下がった」といった内容も残しておくと、自分の変化を追いやすくなります。
初心者が確認したい5つのポイント
ロングトーンでは確認できることが多いため、最初からすべてを同時に直そうとすると、かえって何を聞けばよいのか分からなくなるかもしれません。
まずは次の5つを順番に確認してみてください。
- 音の出だし:息だけが先に漏れたり、強い打撃音が出たりしていないか
- 音色:途中で急にかすれたり、息っぽくなったりしていないか
- 音程:吹き始めから終わりまで大きく上下していないか
- 息の流れ:息が細切れにならず、一定方向へ流れているか
- 音の終わり:最後だけ急に細くなったり、音程が下がったりしていないか
音の出だしでは、吹き始めから狙った音がすぐに鳴っているかを聞いてみましょう。
強すぎるタンギングをすると「タン」という打撃感が目立つことがあります。反対に発音が弱すぎると、最初に息だけが「フッ」と漏れてから音が鳴る場合があります。
初心者の段階では、特殊な発音方法を急いで身につけるより、自然なタンギングで毎回できるだけ同じように音を立ち上げられることを優先して構いません。
次に音色です。吹き始めはよく響いていても、数拍後に息の音が増えたり、芯がなくなったりすることがあります。
その場合、単純に息が足りないとは限りません。途中で楽器の角度が動いたり、口元が必要以上に変化したりしていることもあります。
音程については、吹き始めだけでなく、音の途中と終わりまで見ることがポイントです。「最初は合っているけれど最後に低くなる」といったクセも、ロングトーンなら見つけやすくなります。
さらに、肩や首、あご、唇に余分な力が入っていないかも確認してみてください。
1音を吹いただけで肩や口周辺が強く疲れる場合は、必要以上に身体を固めている可能性があります。息を安定させようとして全身に力を入れてしまうと、かえって自然な呼吸がしにくくなることもあります。
毎日の練習では、5項目すべてを完璧にしようとしなくても大丈夫です。
「今日は音の出だし」「今日は最後の1秒」のように、観察するポイントを1つ決めるだけでも十分な練習になります。
ロングトーンの基本的なやり方
フルートのロングトーンは、難しい手順から始める必要はありません。
姿勢を整え、自分が比較的吹きやすい音を選び、一定のテンポで音を伸ばすだけでも立派な基礎練習になります。
大切なのは、「長く吹かなければ」と考えて身体を固めることではなく、楽に呼吸できる状態を作ってから音を出すことです。
姿勢とアンブシュアを整える
ロングトーンを始める前に、まず呼吸しやすい姿勢を作ります。
立っていても座っていても、背中を極端に丸めず、胸や腹部を強く圧迫しないようにします。
座って練習する場合も、身体を小さく丸めてしまうと深く息を吸いにくくなります。無理に胸を張る必要はありませんが、自然に呼吸できる範囲で上半身を起こしてみてください。
肩を上げたまま固めたり、フルートを顔へ強く押し付けたりしないことも大切です。
フルートを安定させようとして腕や手に力を入れすぎると、その緊張が肩や首までつながることがあります。
楽器は必要以上に握り込まず、自然に支えられる位置を探していきましょう。
首を大きく曲げたり、顔だけを横へ向けすぎたりしていないかも確認します。
自分ではまっすぐ構えているつもりでも、毎回少しずつ頭の角度が変わっていることがあります。鏡を使えば、頭の傾き、肩の高さ、歌口と唇の位置関係を確認しやすくなりますよ。
アンブシュアとは、フルートを吹くときの唇や口周辺の状態のことです。
唇を強く横へ引きすぎると口周辺が硬くなり、息の方向や音程を細かく調整しにくくなる場合があります。
反対に口元が緩みすぎると、息が広がってしまい、芯のある音を作りにくくなることがあります。
基本的には、軽くほほえむ程度の自然な状態を出発点にして、息が歌口へ安定して当たる位置を探します。
ただし、低音から高音までまったく同じ形に固定すればよいわけではありません。
音域によって必要な息の速さや唇の開き方は変化します。高い音では比較的速い息が必要になり、低い音ではそれよりゆったりした息を使う考え方が基本になります。
「アンブシュアを絶対に動かさない」と考えるのではなく、余計な動きを減らしつつ、必要な調整はするという捉え方の方が分かりやすいでしょう。
口の形や歯並び、唇の厚さ、楽器の構え方には個人差があります。特定の形へ無理に合わせるのではなく、自然に息を送りやすく、音が安定する位置を探してください。
息を一定に流して音を保つ
ロングトーンでは、たくさん息を吸うことだけでなく、吸った息を安定して流し続けることが重要です。
最初に十分な息を吸ったら、一度にすべて吐き出すのではなく、音が安定して鳴る息の量と速度を保つようにします。
初心者のうちは、「長く伸ばしたい」という気持ちから最初の息を節約しすぎる場合があります。
すると音量が小さくなりすぎたり、響きの薄い音になったりして、本来確認したい音色が分かりにくくなることがあります。
反対に、最初から勢いよく大量の息を使うと、数拍で息が足りなくなることもあります。
フルートでは、吹いた空気のすべてがそのまま管の内部へ入るわけではありません。そのため、始めたばかりの頃は思っていた以上に息を使うと感じることがあります。
だからこそ、「とにかく強く吹く」「できるだけ息を節約する」の両極端にならず、十分な響きが出る範囲で効率のよい息の使い方を探していくことが大切です。
息の流れを確認するときは、音の最初、中間、最後で息の感覚が大きく変わっていないか意識します。
最初だけ強く、途中で急に弱くなっているなら、息の配分を見直す余地があります。
また、息がなくなってきたときに肩やあごへ力が入っていないかも確認してください。
身体を固めることで数拍長く伸ばせたとしても、音色が崩れてしまえば、その状態を繰り返す必要はありません。
息が足りなくなり、音程や音色が大きく崩れているのに無理に続ける必要はありません。
息苦しさやめまいを感じた場合はすぐに練習を中断し、十分に休憩してください。体調に違和感がある場合は無理をしないことが大切です。
息の使い方は、肺活量だけで決まるものでもありません。
息がすぐなくなる場合には、必要以上に大量の息を使っている、息の方向が安定していない、唇の開きが大きく息が拡散しているなど、いくつかの可能性があります。
「自分は肺活量がないからできない」と決めつけず、まずは4拍程度の短いロングトーンで、息と音の関係を観察してみてください。
それでも息の方向や唇の開き、楽器の角度など、どこを調整すればよいのか自分では判断しにくい場合は、フルートを講師に見てもらえる音楽教室で実際の吹き方を確認してもらう方法もあります。
4〜7拍から無理なく始める
ロングトーンには「必ず何秒」「必ず何拍」という絶対的な決まりはありません。
初心者なら、まず4拍程度から始めても十分です。
分かりやすい方法は、メトロノームの使い方やテンポ60の意味も確認しながら、♩=60前後に設定することです。
♩=60なら1拍がおよそ1秒なので、4拍なら約4秒、7拍なら約7秒という感覚で練習できます。
秒数を感覚だけで数えるより、「テンポ60で4拍」のように条件を固定しておくと、前回との比較もしやすくなります。
基本的な流れは次のようになります。
- 自然な姿勢を確認する
- 比較的鳴らしやすい中音域から1音選ぶ
- メトロノームを♩=60前後にする
- 無理なく十分に息を吸う
- 音の立ち上がりを意識して発音する
- 4〜7拍程度、音色と音程を保つ
- 1拍以上休み、力を抜いて息を吸い直す
- 同じ音、または隣の音へ進む
数値はあくまで練習を始めるための目安です。
4拍でも途中で大きく崩れるなら、さらに短くして構いません。逆に7拍を無理なく安定して吹けるようになれば、少しずつ8拍程度まで広げることもできます。
重要なのは、拍数を達成するために音質を犠牲にしないことです。
また、最初から最低音や最高音を使う必要もありません。
フルートでは音域によって鳴らしやすさが変わります。初心者にとって最低音付近は難しく感じることもあるため、まずは自分が比較的楽に鳴らせる中音域から始める方が取り組みやすいでしょう。
その音が安定したら、半音または全音ずつ上下へ範囲を広げます。
「この音から始めなければ間違い」という唯一の正解はありません。
ロングトーンを始めるときは、毎回同じ開始音に固定する方法だけでなく、その日の状態を確認して一番鳴らしやすい音から始める方法もあります。
まず良い音を1つ作り、そこから隣の音へ広げるイメージです。
ロングトーンの楽譜と練習パターン
「フルート ロングトーン 楽譜」と検索すると、どの音をどの順番で、何拍吹けばよいのか知りたい方も多いでしょう。
ロングトーン練習の譜面は、長い音価の音符と休符を組み合わせた比較的シンプルな形が基本です。
半音ずつ移動するもの、音階に沿って動くもの、跳躍を含むものなど、目的によってさまざまな形があります。
初心者は、複雑な譜面をこなすことよりも、1音ごとに同じような響きを作れるかを意識してみましょう。
ここでは、特定の既存楽譜を転載せずに練習できるシンプルなパターンを紹介します。
中音域から半音ずつ練習する
比較的吹きやすい中音域を基準に、隣り合う音へ少しずつ移動する方法があります。
半音ずつ進むと、それぞれの音で響きや抵抗感がどのように変わるかを聞き比べやすくなります。
練習例1:半音ずつ下がる
B4 → B♭4 → A4 → A♭4 → G4
練習例2:半音ずつ上がる
G4 → A♭4 → A4 → B♭4 → B4
練習例3:全音で移動する
G4 → A4 → B4 → C5 → D5
各音を4〜7拍程度伸ばし、その後に1拍以上休んで次の音へ進みます。
最初からすべて行う必要はなく、5音程度でも十分です。
半音で隣の音へ移動するときに意識したいのは、指を動かした瞬間に息や口元まで不必要に大きく動かさないことです。
音が変わるたびに息の方向が大きく変化すると、音色もそろいにくくなります。
一方で、すべての音を完全に同じ吹き方へ固定する必要もありません。
音域が変われば、必要な息の速度やアンブシュアには調整が必要です。
余計な変化は減らしながら、各音が自然に響く範囲で必要な調整をするという考え方が分かりやすいでしょう。
同じ強さで吹いているつもりなのに、ある音だけ急に細くなったり、息っぽくなったりすることもあります。
その場合は、すぐに「苦手な音だから仕方がない」と考えず、楽器の角度、指がキイをきちんとふさいでいるか、息の方向などを確認してみてください。
低音域に広げる場合は、息を強く吹き込みすぎると上の音へひっくり返ることがあります。
低音では、必要以上に息の速度を上げるのではなく、豊かな響きを保つ意識がポイントになります。
また、キイが十分にふさがっていないと音が出にくくなることがあります。リングキイの楽器では指孔を十分にふさげているかも確認してみましょう。
一方、高音域では低音より速い息が必要になりますが、力任せに大量の息を吹き込むこととは違います。
唇を強く締めすぎたり、肩やあごに力が入ったりすると、細く硬い音になる場合があります。
初心者は中音域が安定してから、少しずつ高音・低音へ範囲を広げれば十分です。
実際の運指については、使用している運指表や教本で確認してください。
7拍吹いて1拍休む練習例
毎日の基礎練習に取り入れやすい方法として、「7拍吹いて1拍休む」という8拍単位のパターンがあります。ヤマハのフルート向け基礎練習資料でも、時短を意識したロングトーンとして「7拍吹いて1拍休む」練習例が紹介されています。
| 拍 | 内容 | 確認すること |
|---|---|---|
| 1拍目 | 音を立ち上げる | 息だけが先に漏れず、狙った音が鳴るか |
| 2〜6拍目 | 音を保つ | 音色・音程・息の流れが安定しているか |
| 7拍目 | 音を終える | 最後まで響きと音程を保てるか |
| 8拍目 | 休む | 力を抜いて次の息を吸う |
♩=60なら7拍は約7秒です。
ただし、7拍に届く前に音が大きく崩れる場合は無理をしません。
4拍や5拍へ短くして、安定した状態で終える方が練習目的に合っています。
「7拍+1拍休み」は、吹く時間と休む時間の区切りが分かりやすいのもメリットです。
ロングトーンでは吹き続けることばかりに目が向きますが、休符も重要です。
休んでいる間に肩や口元の力を抜き、次の音を出すために息を吸い直します。
毎回息継ぎが慌ただしいなら、1拍休みにこだわらず、最初は2拍程度休んでも構いません。
一定音が安定したら強弱を付ける
一定の音量でロングトーンが安定してきたら、無理のない範囲で音量を変化させる練習へ発展できます。
たとえば、p → mf → pのように、少し小さめの音から中くらいまで大きくして、再び小さくする方法です。
このときに確認したいのは、単に音量を変えられたかだけではありません。
大きくしたときに音程が上がりすぎていないか、小さくしたときに急に音程が下がっていないか、音色が大きく変わっていないかも聞きます。
フルートでは、強弱の変化によって息の使い方も変わります。
初心者は極端なppやffから始めず、無理なく音を保てる範囲から試してください。
ロングトーン楽譜を選ぶ考え方
ロングトーン練習用の楽譜には、半音進行、音階に沿った進行、跳躍、強弱変化など、さまざまなパターンがあります。
初心者の場合、「難しい楽譜ほど効果が高い」と考える必要はありません。
今の目的が音の立ち上がりを安定させることなら、5音程度の単純なパターンでも十分です。
一方、音色作りを体系的に取り組みたい段階になれば、ソノリテや音色練習を扱う教本を使う方法もあります。
大切なのは、楽譜を最後までこなすことを目的にせず、各音で何を聞くのかを決めて練習することです。
毎日続けやすい練習メニュー
ロングトーンは長時間やらなければ意味がない練習ではありません。
毎日の練習前に短時間取り入れ、その日の音や身体の状態を確認する時間として使う方法があります。
「毎日全音域を全部やる」と決めてしまうと負担になることもあるので、初心者なら最低ラインを3〜5分程度に設定するのもひとつのやり方です。
5分と10分のメニュー例
時間がない日は5分程度でも構いません。
重要なのは、その5分で何を確認するかを決めることです。
| 時間 | 5分メニュー | 意識すること |
|---|---|---|
| 0〜1分 | 姿勢と呼吸を確認し、鳴らしやすい音を短く吹く | 肩、首、口元に余計な力がないか |
| 1〜4分 | 中音域5〜8音程度を4〜7拍ずつ吹く | 音の出だし・音色・音程・終わり |
| 4〜5分 | 気になった音を2〜3回確認する | その日の課題を1つに絞る |
5分メニューでは、全音域を網羅しようとしなくて大丈夫です。
「今日はG4からB4だけ」という日があっても構いません。
むしろ音数を少なくすると、1音ごとの変化をじっくり聞きやすくなります。
もう少し時間が取れる日は、10分程度へ広げてもよいでしょう。
| 時間 | 10分メニュー | 意識すること |
|---|---|---|
| 0〜2分 | 姿勢、呼吸、鳴らしやすい音でウォームアップ | その日の身体と音の状態 |
| 2〜6分 | 中音域を中心に半音ずつロングトーン | 音色をそろえる |
| 6〜8分 | その日の課題となる低音域または高音域 | 音域に合った息の使い方 |
| 8〜10分 | 強弱を付けた練習や録音による確認 | 音程や音色の変化を聞く |
毎日同じ内容を繰り返す方法だけでなく、曜日ごとにテーマを変えても構いません。
たとえば、月曜日は中音域の音色、火曜日は半音進行と音程、水曜日は低音、木曜日は高音、金曜日は強弱といった形です。
土曜日に短く全体を録音し、日曜日は軽く確認するだけ、または休むという組み方もできます。
毎日必ず同じ量をこなさなければならないという決まりはありません。
練習時間や唇の疲れ、身体の状態に合わせて調整しましょう。
また、ロングトーンだけでその日の練習時間を使い切る必要もありません。
フルートには、スケール、アルペジオ、タンギング、レガート、運指、曲の練習などもあります。
ロングトーンは音作りの基礎として大切ですが、それだけですべての演奏技術を身につけられるわけではありません。
続けるコツは、「毎日完璧にやる」より「短くても始められるメニューを決めておく」ことです。
忙しい日は3〜5分、時間がある日は10分など、無理なく変えられる形にすると続けやすくなります。
練習記録を残すのもおすすめです。
ロングトーン練習記録の例
日付:
テンポ:♩=60
拍数:7拍+1拍休み
練習音域:
今日の課題:音の出だし/音色/音程/息/音の終わり
最も安定した音:
最も不安定だった音:
次回の重点項目:
毎回細かく書く必要はありません。
「終わりに音程が下がる」「A4が安定した」など一言だけでも、数週間後に振り返ると変化を見つけやすくなります。
録音やチューナーで確認する
演奏中は息を使うことや指に意識が向くため、自分の音の細かな変化に気付きにくいことがあります。
そこで役立つのが録音とチューナーです。
録音では、次のようなポイントを聞いてみましょう。
- 息の音が目立ちすぎていないか
- 音量が途中で不自然に揺れていないか
- 音色が途中で変わっていないか
- 音の出だしが明確か
- 最後まで響きが残っているか
スマートフォンの録音機能でも、毎回同じような条件で記録すれば比較材料になります。
できれば、楽器とスマートフォンの距離、部屋、立つ位置などを大きく変えずに録音すると比較しやすくなります。
録音は、演奏直後に聞くだけでなく、少し時間を空けて聞く方法もあります。
吹いた直後は「うまくいった」「失敗した」という感覚が強く残っていますが、時間を置くことで音だけを聞きやすくなることがあります。
毎日すべてを録音する必要はありません。
週1回程度、同じ練習パターンを録音して保存し、以前の音と比較する方法でも十分です。
一方、チューナーはロングトーン中の音程変化を客観的に確認するのに便利です。
使うときは、単に針や表示を中央で止めることだけを目標にしないようにしましょう。
たとえば、「吹き始めは少し高くなりやすい」「最後に低くなりやすい」といった自分の傾向を見る道具として使うと有効です。
チューナーの針を合わせるためだけに、ロングトーン中ずっと唇を細かく動かし続けないことも大切です。
表示だけを追うと、音色や響きを聞く意識が薄くなる可能性があります。
最初はチューナーを見ずに耳で吹き、その後に表示を確認する方法もあります。
また、合奏では周囲の音や基準音との関係があるため、チューナーの中央表示だけが常に音楽的な正解というわけではありません。
チューナーは「耳の代わり」ではなく、「自分では分かりにくい変化を確認する補助道具」と考えるとよいでしょう。
ロングトーンが安定するコツ
同じ音を伸ばしているのに、途中で音程が動く、音がかすれる、揺れる、最後だけ細くなるといった問題が出ることがあります。
そんなときは「もっと息を強く吹けばよい」とひとつの原因に決めつけず、どこが変化しているのかを順番に見ていくと原因を探しやすくなります。
音程や音色が崩れる原因を探す
音程が安定しない場合は、息の速さや方向、唇の開き、頭部管と唇の位置関係、楽器の角度などが途中で変化していないか確認します。
- 息の速さが途中で大きく変わっている
- 息を出す方向が途中で上下している
- 唇の開きが大きく変化している
- 頭部管と唇の位置関係が動いている
- 姿勢が崩れて楽器の角度が変わっている
- 息が不足して終盤を支えられていない
- 強弱を変えたときに音程まで大きく動いている
また、楽器の温度や頭部管の差し込み量など、楽器側の条件も音程に関係します。
そのため、音程が動いたからといって、必ずアンブシュアだけが原因だと決めつけないこともポイントです。
音が揺れるとき
意図していないのに音が大きく揺れる場合、息を一定にしようとするあまり身体が固まっていないか確認してください。
腹部、肩、喉、あごなどに強い緊張があると、自然な息の流れを保ちにくくなることがあります。
まず8拍を目指すのではなく、4拍程度へ短くして安定した状態を作ります。
4拍ならまっすぐ吹けるようになったら6拍、さらに余裕があれば8拍へ広げます。
意図しない揺れと、表現として使うビブラートは分けて考えることも大切です。
初心者のロングトーンでは、まず意図しない大きな揺れを減らし、まっすぐな音を確認すると課題を見つけやすくなります。
音がかすれるとき
音がかすれる場合は、息が歌口の適切な位置へ当たっているかを確認します。
「かすれるならもっと強く吹こう」と考えがちですが、息を大量に使えば必ず良い音になるわけではありません。
唇と歌口の位置関係を少しずつ確認し、フルートを内側へ巻き込みすぎたり、外側へ向けすぎたりしていないか見てみましょう。
唇の開きが必要以上に大きく、息が広く散っている可能性もあります。
吹き始めは問題なくても、練習の後半だけかすれる場合は、唇や口周辺の疲労も考えられます。
疲れてアンブシュアを保ちにくくなった状態で何度も繰り返すより、一度休憩してから再開する方がよいでしょう。
低音が安定しないとき
低音は息を強く吹き込みすぎると、上の音へひっくり返りやすくなることがあります。
必要以上に息の速度を上げるより、豊かな響きを保ちながら落ち着いた息を流すことを意識します。
また、低音はキイが十分にふさがっていないことで鳴りにくくなる場合もあります。
特に最低音付近だけ極端に鳴りにくい場合は、吹き方だけでなく指がキイを正しく押さえられているかも確認してみてください。
それでも特定の音だけ極端に鳴りにくい場合には、楽器の調整状態が関係している可能性もあります。
高音が安定しないとき
高音では低音より速い息が必要になりますが、「大量の息を力任せに吹く」という意味ではありません。
高い音を出そうとして唇を必要以上に締めたり、肩やあごに力を入れたりすると、細く硬い音になりやすくなります。
中音域で自然に響く状態を作ってから、隣の音へ少しずつ上がる方が変化を確認しやすいでしょう。
初心者のうちは、毎日最低音から最高音まで全部ロングトーンしなくても構いません。
まず中音域を中心に安定させ、少しずつ音域を広げていく方が無理なく続けられます。
音の立ち上がりと終わりも練習する
良いロングトーンは、音を伸ばしている途中だけが大切なのではありません。
最初の瞬間から音が整っているか、最後まで響きを保ったまま終われるかも重要です。
音の立ち上がりでは、強すぎるタンギングによる打撃音や、弱すぎる発音による息漏れがないか聞きます。
音の終わりでは、息がなくなるまで粘った結果、最後に音程が下がったり音が細くなったりしていないか確認します。
録音するときは、全体だけでなく「最初の1秒」「最後の1秒」に注目して聞いてみると、自分のクセを発見しやすくなりますよ。
一度に直そうとしない
ロングトーンを始めると、「音程も悪い」「音色も気になる」「息も続かない」と一度に多くの課題が見つかることがあります。
でも、すべてを同時に直そうとすると何を変えた結果、音がどう変化したのか分からなくなりがちです。
一度に直す項目は1つでも十分です。
「今日は音程」「次は音の出だし」「今日は最後まで響きを残す」というように観察する対象を絞ると、自分の変化を確認しやすくなります。
毎回同じテンポ、同じ拍数で練習しておけば、「以前は5拍目で音が崩れていたけれど、今日は7拍まで保てた」と比較することもできます。
上達の指標も、秒数だけではありません。
同じ拍数でも音色の変化が少なくなった、吹き始めから狙った音が鳴る回数が増えた、最後まで音程を保てた、以前より少ない力で安定するようになった、といった変化も立派な上達です。
よくある質問
フルートのロングトーンを始めると、秒数や練習時間、開始音、チューナーの使い方など細かな疑問が出てきます。
ここでは、初心者が迷いやすいポイントをまとめます。
Q1. ロングトーンは何秒やればよいですか?
A. 必ず何秒という統一された決まりはありません。初心者なら♩=60で4拍程度から始め、安定してきたら6〜8拍程度へ延ばす方法が分かりやすいでしょう。
重要なのは「長く吹けたか」より、音色や音程を最後まで保てたかです。8拍で大きく崩れるなら、まず4〜6拍を安定させる方が練習目的に合っています。
Q2. ロングトーンは毎日何分くらい練習すればよいですか?
A. 毎日必ず何分という固定時間はありません。初心者なら5〜10分程度の短い基礎練習として組み込む方法があります。
忙しい日は3〜5分だけでも構いません。疲れた状態で長時間続けるより、目的を決めて短時間集中し、スケールや曲の練習などとのバランスを取る方が続けやすいでしょう。
Q3. 最初は低いドから始めるべきですか?
A. 必須ではありません。最低音付近は初心者には鳴らしにくい場合があります。
まずは自分が比較的安定して鳴らせる中音域から始め、隣り合う音へ少しずつ範囲を広げる方法で構いません。「必ずこの音から」という唯一の開始音はありません。
Q4. チューナーやメトロノームは必要ですか?
A. 必須ではありませんが、練習条件をそろえる道具として便利です。
メトロノームを使えば毎回同じテンポと拍数で練習でき、チューナーを使えば音程が途中で上がるのか下がるのかを客観的に確認できます。
ただし、表示だけに頼らず自分の耳で音色や響きを聞くことも大切です。
Q5. ロングトーンではビブラートをかけない方がよいですか?
A. ロングトーンは必ずノンビブラートでなければならないわけではありません。
ただし、音の安定性を確認する段階では、まずビブラートをかけずにまっすぐ吹いた方が、意図しない揺れや息の変化を判断しやすくなります。
安定してから、意図的にビブラートを加え、揺れの幅や速さをコントロールする練習へ発展させることもできます。
ほかにも「小さい音で長く吹けばよいのか」と迷うことがありますが、単純に音量を小さくして息を節約することがロングトーンの目的ではありません。
十分な響きを保ちながら、自分がコントロールできる範囲で音を伸ばすことを優先してください。
また、「息が続かないのは肺活量が足りないから」と決めつける必要もありません。
息の方向、量、唇の開きなどによって、必要以上に空気を使っている可能性もあります。
ロングトーンだけですべての音の問題が解決するわけでもありません。
音作りには有効な基礎練習ですが、スケール、アルペジオ、タンギング、レガート、運指、曲の練習などと組み合わせて取り組むことが大切です。
まとめ
フルートのロングトーンは、単に息を長く続ける練習ではありません。
音の立ち上がりから終わりまで、音色・音程・響き・息の流れを安定させるための基礎練習です。
初心者は、まず鳴らしやすい中音域から始め、♩=60前後で4〜7拍程度をひとつの目安にすると取り組みやすいでしょう。
7拍吹いて1拍休むパターンも、毎日の練習条件をそろえやすい方法です。ただし、7拍に届くこと自体を目的にする必要はありません。
4拍でも安定して吹けるなら、そこが今のあなたにとってのスタート地点です。
そして大切なのは、「何秒伸ばせたか」だけでロングトーンを評価しないこと。
音の出だし、途中の音色と音程、息の流れ、音の終わりまで聞きながら、最後まで同じ質の音をどこまで保てたかを確認してみてください。
毎日すべての音域を長時間吹く必要もありません。
5〜10分程度でも、その日の目的を1つ決めて取り組み、録音やチューナーを補助的に使えば変化を追いやすくなります。
慣れてきたら、半音進行、低音・高音、強弱を付けたロングトーンなどへ少しずつ内容を広げていきましょう。
「今日は音の出だし」「明日は音程」というように課題を小さく分ければ、ただ長い音を吹くだけの練習になりにくくなります。
ロングトーンで目指したいのは、息を限界まで我慢することではなく、自分が出したい音を安定してコントロールできる時間を少しずつ増やすことです。
個人の口の形や歯並び、使用する楽器、経験によって、適切な息の方向やアンブシュアは異なります。自己流では原因を判断しにくい場合は、フルートの講師など専門家に実際の姿勢や歌口の位置、息の方向を確認してもらう方法もあります。
焦って全音域を完璧にしようとせず、まずは1音を気持ちよく響かせるところから始めてみてください。その1音を丁寧に聞く時間が、毎日の音作りにつながっていきますよ。

