ギターの弦を1本だけ交換はアリ?バンドマンが教える音とリスク

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【30秒でわかる!この記事の結論】

  • 基本的には音質・バランスの面から「全交換(セット交換)」が推奨
  • ただし、直近の交換から1週間以内や、あくまで練習用と割り切るなら「1本交換」もOK。
  • ライブ本番やレコーディング前は、チューニング安定のため絶対に全交換すべき
  • バラ弦を買う際は、必ず「同じ太さ(ゲージ)」を選ぶことが最大の鉄則。

ギターを弾いていて、最も心臓に悪い瞬間の一つ。それは、気持ちよくチョーキングをした瞬間や、力強くコードをかき鳴らした瞬間に訪れる「プツン!」という乾いた破断音ではないでしょうか。そう、弦が切れてしまった時のあの絶望感です。

特に、ライブの前日やスタジオ練習の直前、あるいは「今月は金欠で新しい弦を買う余裕なんてない…」というタイミングに限って、弦は無情にも切れるものです。そんな時、手元に古いセット弦の余りがあったり、楽器店のバラ売りコーナーが頭に浮かんだりして、「切れたこの1本だけを交換して、なんとか急場をしのげないか?」と考えるのは、ギターを弾く人間なら誰しも一度は通る道です。

「たかが1本の弦を変えるだけでしょ? 音なんて鳴ればいいんだし、問題ないはず」

そう思う気持ちは痛いほどよく分かります。私も学生時代は、練習中に切れた1弦だけを交換して、他の5本は半年以上張りっぱなし…という、今思えば恐ろしい状態で平気で練習を続けていた時期がありました。当時は「音が鳴るならそれでいい」と本気で思っていたのです。

しかし、長く楽器に触れ、リペアマンやプロのミュージシャンと関わる中で、その選択が楽器の状態や音色、そして何より「自分自身の耳と演奏技術」にどのような悪影響を与えるかを知ることになりました。

1本だけの交換は、単なる「節約術」として有効な場面もあれば、逆に「楽器の寿命を縮め、上達を妨げる最悪の選択」になる場面もあるのです。

この記事では、私の実体験と失敗談、そして信頼できる専門家からの知見をフル動員して、「ギターの弦を1本だけ交換することの是非」について、どこよりも深く、詳しく、そして正直に解説します。初心者の方が抱く素朴な疑問から、中級者が気にするべきメンテナンスの観点まで、これを読めば「今の自分がどうすべきか」が明確に判断できるようになるはずです。

  1. ギターの弦を1本だけ交換するのはアリか?
    1. ギターの弦を1本だけ変えるメリットとリスク
      1. メリット1:圧倒的なコストパフォーマンス
      2. メリット2:時間短縮(タイパ)
      3. リスク1:楽器全体への物理的負荷(ネックのねじれ)
      4. リスク2:音色と音量バランスの崩壊
    2. ギターの弦が切れた際に1本だけ交換する基準
      1. 基準1:直近の交換から「1週間以内」か「1ヶ月以上」か
      2. 基準2:切れた原因は「物理的負荷」か「経年劣化」か
      3. 基準3:弦の見た目と触り心地
    3. ギターの弦交換で1本だけ変えた時の音の違和感
      1. 周波数特性の違い:倍音のミスマッチ
      2. サスティーン(音の伸び)の不揃い
      3. チューニングの安定度(ピッチのズレ)
    4. ギターの弦交換で1本だけ錆びが目立つ時の判断
      1. なぜ特定の弦だけ錆びるのか?
      2. 「錆びた弦」は楽器を破壊する凶器
    5. アコギの弦を1本だけ交換する際の影響と対策
      1. 「箱鳴り」のギャップが顕著に出る
      2. ブリッジピンへの影響
    6. エレキギターの弦を1本だけ交換する手順
      1. 1. 固定式ブリッジ(レスポール、テレキャスター等)の場合
      2. 2. シンクロナイズド・トレモロ(ストラトキャスター等)の場合
      3. 3. ロック式トレモロ(フロイドローズ等)の場合
  2. ギターの弦を1本だけ交換する際のバラ弦選び
    1. ギターの弦交換の頻度とセット弦の寿命
      1. 音の寿命は「2週間〜1ヶ月」
      2. 「死んだ弦」を使い続ける3つの弊害
    2. ギターの弦の1本売りがある楽器店と通販
      1. 実店舗:楽器店の「レジ横」や「カウンター」を狙え
      2. ネット通販:送料の罠に注意
    3. ギターの弦のバラ売りでおすすめの選び方
      1. 最重要:太さ(ゲージ)を絶対に合わせる
      2. 素材の違い(アコギは特に注意)
      3. メーカーによる違い
    4. 特定の弦が切れる原因とサドルのメンテナンス
      1. 「バリ」が弦を殺す
      2. 対処法:メンテナンスとリペア
    5. ギターの弦を1本だけ交換して楽しむまとめ

ギターの弦を1本だけ交換するのはアリか?

まず結論を明確にしておきましょう。ギターの弦を1本だけ交換することは、「緊急避難的な措置」あるいは「割り切った練習用途」としては完全にアリです。しかし、「基本的には全弦交換(セット交換)が推奨される」というのが、揺るぎない正解です。

これは単に楽器店が弦を売りたいから言っているセールストークではありません。ギターという楽器が、6本(あるいは7本以上)の弦がトータルでバランスを取り合うことで成立している繊細な木工製品だからです。1本だけ状態の違う異物が混入することで、その絶妙な均衡が崩れ、様々な不具合の引き金になりかねません。

では、具体的にどのようなメリットがあり、どのようなリスクが潜んでいるのか。表面的な話だけでなく、物理的なメカニズムまで踏み込んで詳しく見ていきましょう。

ギターの弦を1本だけ変えるメリットとリスク

ここでは、バラ弦交換(1本だけの交換)を選択する際のメリットと、それに伴うリスクを徹底的に比較します。判断に迷ったときは、この天秤にかけて考えてみてください。

【メリットとリスクの比較】

  • メリット:圧倒的な安さ、交換時間の短縮(タイパ)
  • リスク:ネックへの負荷、音色の不均衡、チューニングの不安定化

メリット1:圧倒的なコストパフォーマンス

私たちアマチュアにとって、最も切実な問題はお金です。趣味にかけられる予算は限られています。一般的なエレキギターのセット弦(ダダリオやアーニーボールなど)は、値上げの影響もあり、今では1セット800円〜1,200円ほどします。コーティング弦のエリクサーに至っては2,000円近くにもなります。

一方で、バラ売りされている弦(特に切れやすい1弦や2弦のプレーン弦)は、1本あたり120円〜180円程度で購入可能です。もし月に1回弦を切ってしまうとして、その都度セット交換していたら年間で1万円以上の出費になりますが、バラ弦で済ませれば2,000円程度に抑えられます。この差額でエフェクターが1個買えてしまう計算です。「練習頻度は高いけれど、お金はない」という学生バンドマンにとって、この経済的メリットは無視できません。

メリット2:時間短縮(タイパ)

弦交換は、慣れていても面倒な作業です。古い弦を全て緩めてニッパーで切り、外し、指板やフレットを掃除し、新しい弦を6本通してペグを巻き、チューニングを安定させる…この一連の作業には、どんなに急いでも20分〜30分はかかります。初心者の方なら1時間仕事でしょう。

しかし、切れた1本だけの交換なら、わずか5分で完了します。仕事や学校から帰ってきて「寝る前の30分だけ練習しよう」と思った矢先に弦が切れた時、全交換していたら練習時間がなくなってしまいます。モチベーションを維持し、練習のルーティンを崩さないという意味で、この「手軽さ」は最大の武器と言えます。

リスク1:楽器全体への物理的負荷(ネックのねじれ)

ここからが重要なリスクの話です。ギターのネックは、弦の強い張力(レギュラーチューニングのエレキギターで合計約40〜50kg、アコギなら約70kg以上)によって常に順反り方向へ引っ張られています。全ての弦が同じ時期に張られ、同じように劣化(伸び)していれば、ネックにかかる力は均一です。

しかし、そこに1本だけ「新品の、張りの強い元気な弦」が混ざるとどうなるでしょうか。古い弦は金属疲労で伸びきっており、張力(テンション)が落ちています。対して新品の弦はパンパンに張っています。この不均衡が、ネックに対して「ねじれ」の力として働く可能性があります。

ネックが「順反り」するだけならトラスロッドで調整できますが、「ねじれ(波打ち)」てしまうと、素人の調整では直せません。最悪の場合、高額なリペアやネック交換が必要になります。「たかが1本の交換」を繰り返すことで、徐々にネックを歪ませている可能性があることを知っておいてください。

リスク2:音色と音量バランスの崩壊

新品の弦は「ブライト」で、倍音成分(キラキラした高音)が豊富に含まれています。一方、古い弦は手汗や皮脂、酸化によって「デッド」になり、高音が削がれて音が丸くなっています。また、サスティーン(音の伸び)も新品の方が圧倒的に長いです。

これらが混在すると、例えばコードストロークをした際に、「1本の弦だけ音が飛び出してくる」という現象が起きます。全体の音が馴染まず、凸凹したサウンドになります。これは聴き手にとって非常に不快であり、バンドアンサンブルの中でも「ギターの音が浮く」原因になります。

【重要】ライブやレコーディングでは絶対NG

もしあなたが、ライブ本番やレコーディング、あるいはYouTubeへの「弾いてみた動画」の投稿を控えているなら、1本だけの交換は絶対に避けるべきです。聴き手にとって、音色のバラつきやチューニングの不安定さは、あなたが思う以上に「下手に聞こえる」要因となります。人前で演奏する際は、必ずセットで交換して万全の状態を整えるのが、プレイヤーとしてのマナーであり、自分自身のパフォーマンスを守るための鉄則です。

ギターの弦が切れた際に1本だけ交換する基準

メリットとリスクを理解した上で、「じゃあ具体的にどう判断すればいいの?」という疑問にお答えします。私が長年のバンド生活で実践している、失敗しないための判断フローチャートをご紹介します。迷った時は以下の基準に照らし合わせてみてください。

基準1:直近の交換から「1週間以内」か「1ヶ月以上」か

最も客観的で分かりやすい基準は、時間の経過です。

  • 【交換から1週間以内】→ 1本交換OK
    弦を張り替えたばかりなのに、ペグを回しすぎて切ってしまった、あるいはナットの溝に引っかかって切れてしまった場合。これは「事故」です。他の5本の弦もまだ新品同様の鮮度を保っています(まだ死んでいません)。このタイミングであれば、切れた弦と同じメーカー・太さのバラ弦を張っても、音色の差やテンションの差は誤差の範囲内に収まります。迷わず1本交換を選んで大丈夫です。
  • 【交換から2週間〜1ヶ月】→ 要検討(用途による)
    毎日弾いているなら、そろそろプレーン弦(1〜3弦)の表面に曇りや微細な錆びが出始める頃です。巻き弦(4〜6弦)も輝きを失っています。

    • 個人練習用なら:1本交換で延命措置もアリ。
    • スタジオ練習やライブ用なら:全交換の良いきっかけと捉えるべき。
  • 【交換から1ヶ月以上、または不明】→ 全交換必須
    ここが一番重要です。「いつ変えたか覚えていない」というレベルなら、他の弦も金属疲労で限界を迎えています。1本が寿命で切れたということは、他の弦も寿命です。ここで1本だけ新品に張り替えると、その新しい弦の強い張力に引っ張られる形でバランスが変わり、翌日や数日後に別の弦が「バチン!」と切れることが非常に多いです。これを「連鎖切れ」と呼びます。何度も楽器店に行く手間を考えれば、ここで潔く全交換するのが最も賢い選択です。

基準2:切れた原因は「物理的負荷」か「経年劣化」か

弦が切れた瞬間の状況を思い出してください。

  • 物理的負荷で切れた: チョーキング(ベンディング)をした瞬間、激しいカッティングをした瞬間、ペグを巻いている最中。これらは局所的な力が加わったことによる破断なので、その弦だけの問題である可能性が高いです。
  • 経年劣化(寿命)で切れた: 普通にコードを弾いていただけなのに切れた、あるいはケースを開けたら勝手に切れていた。これは明らかに金属疲労や錆びによる寿命です。1本が寿命なら、残りも寿命です。全交換しましょう。

基準3:弦の見た目と触り心地

切れていない他の弦をチェックしてみてください。

  • 指でなぞるとザラザラしている、引っかかりがある。
  • プレーン弦が黒く変色している、または赤茶色の斑点(錆び)がある。
  • 巻き弦の溝に手垢が白く詰まっている。

これらの症状が他の弦に見られる場合、1本だけ新品に交換しても、音色のギャップ(新品のキラキラ音 vs 古い弦の曇った音)が激しすぎて、弾いていて気持ち悪くなるレベルです。精神衛生上も全交換をおすすめします。

ギターの弦交換で1本だけ変えた時の音の違和感

ここでは、1本だけ交換した際に生じる「音の違和感」について、もう少し音楽的かつ感覚的な側面から深掘りします。これを読むと、「なぜプロが全交換にこだわるのか」が理解できるはずです。

周波数特性の違い:倍音のミスマッチ

ギターの音色は、基音(ドならドの音)の上に積み重なる「倍音(ハーモニクス)」によって決定されます。新品の弦は、この倍音が非常に豊富で、高周波帯域まで綺麗に出ています。これが「ジャリーン!」という煌びやかさの正体です。

しかし、弦は使用に伴い、手汗や空気中の水分で酸化し、フレットとの摩擦で物理的に削れていきます。すると倍音が失われ、基音中心の丸い音(ボロン…という音)に変化します。これを「デッドな音」と言います。

1本だけ交換した状態というのは、例えるなら「5人の疲れたおじさんの中に、1人だけ元気な若者が混ざって合唱している」ようなものです。若者(新品の弦)の声だけが張りがあり、高くまで響くため、どうしてもコーラス(和音)として馴染みません。Cコード(ドミソ)をジャラーンと弾いた時、特定の弦だけが「カキン!」と硬く響き、他の弦が「モコッ」と鳴る。この分離感は、弾き語りやクリーントーンでのアルペジオにおいて致命的な違和感となります。

サスティーン(音の伸び)の不揃い

音色だけでなく、「音の消え際」にも差が出ます。新品の弦は振動エネルギーのロスが少ないため、いつまでも音が伸び続けます(ロングサスティーン)。対して古い弦は、汚れや錆びが振動を阻害するため、音がすぐに減衰して消えてしまいます。

バラードなどのゆったりした曲を弾く際、このサスティーンの不揃いは非常に厄介です。1弦だけ音が残り続け、2弦はすぐに消える…となると、メロディラインが途切れ途切れに聞こえたり、意図しないリズム感が生まれたりしてしまいます。自分の演奏が下手になったように感じるかもしれませんが、それは腕のせいではなく、弦の状態のせいなのです。

チューニングの安定度(ピッチのズレ)

新品の弦は、張り替えてからしばらくの間、金属が伸びようとする性質(初期伸び)があるため、チューニングが安定しません。演奏中にどんどんピッチが下がっていきます。

一方で、古い弦はすでに伸びきっているため、チューニングは比較的安定しています(※古すぎてオクターブが狂う場合は別ですが)。1本だけ交換すると、「その1本だけが演奏中に狂い続ける」という状況になります。曲の途中で特定の弦だけフラット(音が下がる)してしまうと、コード全体の響きが濁り、非常に気持ち悪い演奏になります。ライブ中にこれが起きるとパニックになるため、やはり本番での1本交換は避けるべきなのです。

ギターの弦交換で1本だけ錆びが目立つ時の判断

「久しぶりにケースを開けたら、なぜか2弦だけ真っ赤に錆びていた…」 「いつも3弦だけ手触りがザラザラになる…」

このような経験はありませんか? 全体ではなく「特定の弦だけ」劣化が激しい場合の判断基準と、その背景にある原因について解説します。

なぜ特定の弦だけ錆びるのか?

考えられる原因は主に3つです。

  1. プレーン弦と巻き弦の素材差: エレキギターの場合、1〜3弦は「プレーン弦」と呼ばれる、メッキされただけの裸の鉄線です。4〜6弦の「巻き弦」に比べて、皮脂や酸(手汗)の影響をダイレクトに受けやすく、錆びの進行が早いです。特に湿度が高い日本のような環境では、梅雨時期などにあっという間に錆びます。
  2. よく触る弦だった: リードギターの練習で1弦や2弦ばかり集中的に使っていた、あるいは特定の曲のリフで3弦を多用していた場合、そこに汗や汚れが集中します。拭き取りが不十分だと、そこから腐食が始まります。
  3. ギターケース内の環境: ケースの内装(クッション材)が湿気を含んでいる場合、弦と接触している部分から錆びることがあります。

「錆びた弦」は楽器を破壊する凶器

もし1本でも「ザラザラする」「色が赤茶けている」と感じるレベルの錆びがあれば、即座に交換が必要です。ここで「もったいない」とケチってはいけません。

錆びた弦の表面は、ミクロの視点で見るとギザギザしており、いわば「金属製のノコギリ」と同じ状態です。その状態でチョーキングやビブラートをかけるということは、ギターの指板に打ち込まれている「フレット」をノコギリで削っているのと同じ行為になります。

フレットは一度削れると元には戻りません。凹んでしまったフレットは、音詰まりやビビリの原因となり、修理(すり合わせや打ち直し)には数万円〜5万円以上の費用がかかります。「数百円の弦代を惜しんで、数万円の修理費を払う」ことほど愚かなことはありません。1本だけ錆びがひどい場合、他の弦が無事ならその1本だけの交換でも構いませんが、「錆びた弦で弾き続けることだけは絶対に避ける」のが、賢いプレイヤーの鉄則です。

アコギの弦を1本だけ交換する際の影響と対策

アコースティックギター(アコギ)は、エレキギター以上に弦の状態がサウンドに直結する楽器です。電気的な増幅に頼らない分、生音(箱鳴り)のバランスが全てだからです。アコギ特有の問題点を見ていきましょう。

「箱鳴り」のギャップが顕著に出る

アコギのボディは、弦の振動をブリッジからトップ板へ伝え、空気を震わせて音を出すスピーカーの役割を果たしています。新しい弦は振動エネルギーが強く、ボディを大きく共鳴させます。一方、古い弦は振動が弱いです。

1本だけ新しい弦を入れると、その弦を弾いた時だけボディが「ドーン!」と大きく鳴り、他の弦の時は「スン…」となる。つまり、音量のダイナミクス(強弱)が凸凹になってしまうのです。 これは弾き語りなどでストロークをする際、非常にコントロールしづらい状態です。コードの構成音が綺麗に混ざり合わず、分離して聞こえるため、歌っていても気持ちよさが半減してしまいます。

ブリッジピンへの影響

アコギの弦は「ブリッジピン」というパーツで固定されています。弦交換の際、このピンを抜く必要がありますが、プラスチック製のピンは経年変化で脆くなっていることがあります。1本だけ交換しようとしてピンを抜く際に、誤って折ってしまう…というトラブルもアコギあるあるです。

バラ弦を買うついでに、予備のブリッジピンも数百円で売っているので、もしピンが古くなっているなら一緒に交換することをおすすめします。

【裏技:新品の弦を馴染ませる】

どうしても金欠で1本だけ交換し、そのまま人前で弾かなければならない時の応急処置です。
交換した新しい弦を、あえて少し「痛めつける」ことで、古い弦との音質差を埋めるテクニックがあります。
1. 張り替えた直後、通常よりも強めに指で引っ張り(ストレッチ)、強制的に伸ばす。
2. ピックのエッジを使って、少し強めにジャカジャカとかき鳴らし、初期の鋭すぎる高音を落ち着かせる。
※これはあくまで「音質を劣化させて揃える」という後ろ向きな解決策ですが、キラキラ浮きすぎて困る場合には有効です。ただし、やりすぎると寿命を縮めるので加減してください。

エレキギターの弦を1本だけ交換する手順

エレキギターの場合、搭載されているブリッジ(弦を固定している部分)の構造によって、1本だけ交換する難易度やリスクが天と地ほど異なります。「レスポールなら簡単だけど、フロイドローズなら地獄を見る」というのは、ギタリストの間では常識です。自分のギタータイプに合わせて手順を確認しましょう。

1. 固定式ブリッジ(レスポール、テレキャスター等)の場合

これらのギターは構造がシンプルで、弦の張力がボディに直接かかっています。そのため、1本だけの交換は非常に簡単で、他の弦への影響も最小限です。

【手順のポイント】

  • 古い弦を外す前に、ペグを緩めてテンションを抜く。
  • 新しい弦を通したら、ペグポスト(巻き取る柱)への巻き数を、他の弦と合わせるように意識する。
  • 例えば、他の弦がポストに2〜3回巻かれているなら、新しく張る弦も同じくらい巻くことで、ナットからペグへ向かう角度(テンション感)をある程度揃えることができます。これがズレると、チョーキングした時の感触がその弦だけ変わってしまいます。

2. シンクロナイズド・トレモロ(ストラトキャスター等)の場合

アームが付いているタイプのギターです。このタイプは、弦の張力とボディ裏側のバネ(スプリング)の張力が釣り合って、ブリッジが宙に浮いている(フローティング)状態です。

【要注意ポイント】

  • 1本だけ弦を外すと、全体の張力が下がり、バネの力でブリッジが沈み込みます。すると、他の5本の弦のチューニングが一気に上がります(シャープします)。
  • 新しい弦を張ってチューニングを合わせようとすると、今度は他の弦が下がります。
  • つまり、1本だけの交換であっても、結果的に「全ての弦のチューニング調整」を何度も繰り返す必要があります。「サッと変えて終わり」とはいかないことを覚悟してください。

3. ロック式トレモロ(フロイドローズ等)の場合

これが最も厄介です。ナット部分で弦をロックし、ブリッジで微調整するタイプです。このギターで1本だけ交換するのは、正直言って「修羅の道」です。

【覚悟すべきこと】

  • まず、弦のボールエンド(留め具)を切断してロックする必要があります。
  • 全体のバランスが極めてシビアなので、1本の張力が変わるだけで、全ての弦のチューニングが狂います。
  • さらに、もし違うメーカーや太さ(ゲージ)の弦を張ってしまった場合、バネの張力調整からやり直さなければならず、ブリッジが水平を保てなくなります。
  • フロイドローズ搭載ギターで1本だけ交換する場合、「絶対に同じメーカーの同じ太さの弦」を用意してください。違うものを張ると、いつまで経ってもチューニングが合わない地獄を見ることになります。初心者のうちは、素直に楽器店に持ち込むのが無難です。

ギターの弦を1本だけ交換する際のバラ弦選び

ここまで読んで、「リスクは承知の上で、練習用に1本だけ交換する!」と決めたあなたへ。ここからは、失敗しないための「バラ弦の選び方」について解説します。適当な弦を買うと、張れなかったり、すぐに切れたりと後悔することになります。

ギターの弦交換の頻度とセット弦の寿命

「バラ弦で凌ぐべきか、セットで変えるべきか」を判断する上で、最も重要なのが「弦の寿命」に対する正しい認識です。多くの初心者は「切れるまでが寿命」と思いがちですが、実は音質的な寿命はもっと早く尽きています。

音の寿命は「2週間〜1ヶ月」

一般的なニッケルワウンド弦(エレキギター用)やブロンズ弦(アコースティックギター用)の場合、毎日1時間程度弾く人であれば、「2週間〜1ヶ月」で音の美味しい帯域(倍音成分)は失われます。コーティング弦(エリクサーなど)であれば3ヶ月〜半年ほど持ちますが、ノンコーティング弦は驚くほど短命です。

もし、あなたのギターに張られている弦が「3ヶ月以上前」のものだとしたら、それはもう完全に寿命を迎えています。この状態で1本だけ切れたなら、それは「交換のサイン」です。バラ弦で150円を節約するよりも、セット弦(600円〜)を買って全交換し、「本来のギターの音」を取り戻すことのほうが、長い目で見れば得られる満足度は遥かに高いはずです。

「死んだ弦」を使い続ける3つの弊害

「音なんて鳴ればいい」と思うかもしれませんが、寿命の尽きた「死んだ弦」を使い続けることには、音質以外にも無視できないデメリットがあります。

  1. チューニングが合わない(音痴になる): 弦は古くなると、部分的に伸びたり錆びたりして、オクターブチューニング(フレットごとの音程)が狂いやすくなります。チューナーで開放弦を合わせても、コードを弾くと濁って聞こえるのはこのせいです。正しい音程感で練習できず、あなたの耳が育ちません。
  2. フレットの偏摩耗: 先ほども触れましたが、錆びた弦はヤスリのようにフレットを削ります。特にチョーキングを多用するポジションだけ凹んでしまい、ビビリの原因になります。
  3. 指へのダメージ: 錆びた弦は滑りが悪く、スライド時に指の皮を傷つけたり、破傷風のリスク(極端な例ですが)もゼロではありません。スムーズな運指を妨げる要因にもなります。

ギターの弦の1本売りがある楽器店と通販

いざ「1本だけ交換しよう!」と決めた時、どこに行けばバラ弦が買えるのでしょうか。コンビニには売っていませんし、リサイクルショップでも扱っていないことが多いです。賢い購入ルートを紹介します。

実店舗:楽器店の「レジ横」や「カウンター」を狙え

最も確実なのは、島村楽器、イシバシ楽器、クロサワ楽器、ミュージックランドKEYといった「楽器専門店」の実店舗に行くことです。これらの店では、ほぼ100%、バラ弦の在庫を持っています。

ただし、セット弦のように棚に並んでいないことが多いです。店員さんのいるレジカウンターの奥や、引き出しの中にストックされています。そのため、買うときは勇気を出して店員さんに声をかけましょう。

【店員さんへのスマートな頼み方】

「すみません、バラ弦ありますか?」と聞くだけでは不十分です。店員さんは「何の楽器の、どの弦で、太さは?」と聞き返さなければなりません。以下のように伝えるとスムーズです。
「エレキギター用の、1弦で、太さは09(ゼロキュー)のものをください」
このように「楽器の種類」「弦番号」「太さ」の3点を明確に伝えれば、すぐに用意してくれます。

ネット通販:送料の罠に注意

Amazon、楽天、サウンドハウスなどのネット通販でもバラ弦は購入可能です。「ギター 弦 バラ」で検索すればすぐに見つかります。

しかし、ここで注意したいのが「送料」の問題です。1本100円の弦を買うのに、送料が500円かかってしまっては意味がありません。 ネットで買う場合は、他の機材(ピック、シールド、メンテナンス用品など)と一緒に買うか、「バラ弦5本セット」のようなまとめ買い商品を選ぶのが賢い方法です。サウンドハウスなどは2,000円以上で送料無料になることが多いので、消耗品をまとめてカートに入れるのがおすすめです。

ギターの弦のバラ売りでおすすめの選び方

バラ弦を買う際、最も失敗しやすいのが「適当な太さ(ゲージ)を選んでしまう」ことです。「1弦ならなんでも同じでしょ?」と思ったら大間違い。選び方のポイントを解説します。

最重要:太さ(ゲージ)を絶対に合わせる

ギターの弦には「ライトゲージ」「スーパーライトゲージ」などのセット規格があり、それぞれ各弦の太さが決まっています。もし、あなたが普段「ライトゲージ(.010〜.046)」を使っているのに、バラ弦で「スーパーライト(.009)」の1弦を買って張ってしまうと、テンション(張り)が弱すぎてビビリの原因になります。逆に太い弦を張ると、ナットの溝に入らず、弦高が高くなって弾きにくくなります。

セット名 1弦の太さ (インチ) 2弦の太さ (インチ) 3弦の太さ (インチ)
スーパーライト (.009-.042) .009 .011 .016
ライトゲージ (.010-.046) .010 .013 .017
カスタムライト (.009-.046) .009 .011 .016

自分のギターに何が張られているか分からない場合は、切れた弦のパッケージを確認するか、購入した楽器店に問い合わせるのが確実です。初心者の場合、エレキなら.009か.010、アコギなら.011か.012が張られていることが大半です。

素材の違い(アコギは特に注意)

エレキギターは「ニッケルワウンド」が主流ですが、アコースティックギターには大きく分けて2種類の素材があります。

  • 80/20ブロンズ: 色は明るい黄色(金色)。音はキラキラして明るい。
  • フォスファーブロンズ: 色は赤っぽい銅色。音は煌びやかでサスティーンがあり、少し高価。

これらを混ぜると、見た目がチグハグになるだけでなく、音色のバランスも崩れます。金色の中に1本だけ赤色の弦が混ざっているのは、見た目にもあまり格好良くありませんよね。自分のギターに張ってあるのがどちらか、よく観察してから買いましょう。

メーカーによる違い

「太さえ合っていればメーカーは違ってもいいか?」という質問をよく受けます。答えは「緊急時はOKだが、できれば合わせるべき」です。

例えば、D’Addario(ダダリオ)とErnie Ball(アーニーボール)は、同じ太さでも指触りやテンション感が微妙に異なります。特にElixir(エリクサー)のようなコーティング弦の中に、普通のノンコーティング弦を混ぜると、その1本だけすぐに錆びてしまい、また交換が必要になります。寿命を揃える意味でも、同じメーカーのバラ弦を選ぶのが理想的です。

特定の弦が切れる原因とサドルのメンテナンス

最後に、バラ弦交換を検討する前に確認してほしい「根本的な問題」についてお話しします。もしあなたが「いつも1弦ばかり切れる」「張り替えたばかりなのに、同じ場所で切れた」という状況なら、それは弦の寿命ではなくギター本体のトラブルである可能性が極めて高いです。

「バリ」が弦を殺す

ギターの弦が触れる部分、つまり「ナット(ヘッド側の白いパーツ)」や「ブリッジサドル(ボディ側の金属パーツ)」に、金属の小さなささくれや突起(バリ)ができていることがあります。これが刃物のように作用し、弦に少し力が加わっただけでスパッと切断してしまうのです。

特に、安価なギターや、長年メンテナンスをしていないギターでは、サドルが弦の摩擦で削れて鋭利になっていることがよくあります。この状態では、いくら新しい弦(バラ弦でもセット弦でも)を張っても、数時間〜数日でまた同じ場所で切れます。

対処法:メンテナンスとリペア

バリが原因の場合、自分でできる応急処置としては、目の細かい紙やすり(#1000〜#2000番程度)で、サドルの溝を優しく磨き、角を丸くする方法があります。また、ナットの溝であれば、鉛筆の芯(黒鉛)を溝に塗り込むことで潤滑剤代わりになり、滑りを良くして切れにくくする裏技もあります。

しかし、不安な場合はプロのリペアマンに見てもらうのが確実です。数千円でサドル調整をしてもらえば、弦切れのストレスから完全に解放されます。
(出典:ヤマハ株式会社『ギター・ベースのお手入れ』)

ギターの弦を1本だけ交換して楽しむまとめ

ここまで、ギターの弦を1本だけ交換することの是非について、様々な角度から解説してきました。最後に、重要なポイントを整理して終わりにしましょう。

【まとめ】バラ弦交換の心得5か条

  • 基本は全交換: 音質、バランス、楽器保護の観点から、セット交換がベストな選択肢であることは変わりません。
  • 例外は「1週間以内」: 張り替えた直後のトラブルや、練習用と割り切るなら1本交換もアリです。その際、罪悪感を持つ必要はありません。
  • 選び方が命: 必ず「同じ太さ(ゲージ)」の弦を選ぶこと。できればメーカーも揃えましょう。
  • ライブ前はNG: 人前で演奏する時は、必ずセット弦でフレッシュな音を届けるのがマナーです。
  • 頻発するならリペアへ: いつも同じ場所で切れるなら、楽器本体のバリを疑いましょう。

ギターは、弦を張り替えたその瞬間が一番いい音がします。あの「ジャリーン!」という響きは、何度聞いてもワクワクするものです。バラ弦交換はあくまで「緊急用のスペアタイヤ」のようなもの。上手く活用してコストを抑えつつ、ここぞという時は新品のセット弦で、最高の演奏を楽しんでくださいね。あなたのギターライフが、より快適で楽しいものになることを応援しています!

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